弘前ペンクラブは、現在、弘前市から指定を受け、「弘前市立郷土文学館」と「太宰治まなびの家」の管理を受け持っている。今日は、その二施設の指定管理実行委員会が開催された。  
 先ずは前月の実績の報告があった。両施設とも8月は好調であった。郷土文学館は、来館者数前年対比82%増、まなびの家も27%増と、大幅に増加した。
 コロナ明け(5類に降格?)後初めての夏休みだったし、各地で夏祭りが平常通り再開されたということもあるのだろう。コロナ前の実績に、ようやく近づきつつあるようだ。
 まなび僕は、指定管理開始からの成り行きで、まなびの家に深く係わっている。色々と試行錯誤を重ねながらも、運営の仕組みを考えてきた。その意味で、どちらかというと気になるのは、まなびの家の方なのである。
 まなびの家では、入館時に、お客様に簡単なアンケートをとっているので、どこからお見えになったかがわかるようになっている。そのデータに目をやると、圧倒的に県外からのお客様が多い。約三分の二が県外客だ。反面、市内からのお客様は20%に留まる。
 さらに詳細を見ると、カタカナが目にとまった。カナダ・シンガポール・ポーランド・・・。他にも中国・韓国・台湾と海外の国名が並んでいる。まなびの家も随分と国際的になったものだ。
 いやいや、もともと太宰治は海外でも読まれている作家の一人だ。数年前に僕がここで文学講座を行なった際に調べた資料では、全世界オールタイムのベストセラーの中に、日本人作家ではただ一人、太宰の「斜陽」がランクインしていたほどだ。もっとも今だったら、村上春樹に抜かれているかもしれない。
 さらに遡って10年前くらいになるだろうか。弘前読書人倶楽部にケニアからの留学生が出入りしていて、日本語を勉強していた。その時に、向こうにいた時にはどんな本を読んでたの? と尋ねたら、何と太宰治の名前が出てきて驚いた。太宰は、ケニアでも翻訳されて出版されていたのだ。
 ことほど左様に太宰文学は、全世界に広まっている。普段何気なく管理をしているまなびの家が、実は隠れた国際観光の拠点になるのではないかと、ちょっぴり自惚れたくもなった。
 でも、ポーランド人が来た時に、一体どうやって対応をしたのだろうと、その日の当番だったスタッフに尋ねた。そうしたら、双方が片言の英語で会話を交したという。
 片言でも通じたのが凄い。僕も、この先も、代打で解説員を務める日も何度かあるが、頼むからその日は、外国からのお客様にはご遠慮願いたいものだ。(5875)