”華”が死んだ。我が家の愛犬だ。
”華”は、17年前のちょうど今頃の季節に、鶴田町の鶴の舞橋付近の売店から連れてきた。捨てられていた2匹に、売店の人が、餌を与えていたのだ。ところが、秋も深まり、もうそのシーズンは店じまいをすることになった。そこで、翌日には保健所に電話をして引き取ってもらおうと相談していたらしい。たまたまそういう折に、僕らがその売店に立ち寄って、事情を聞かせてもらうことが出来た。
二匹のうち、一匹は、フランクフルトソーセージを差し出しても、寄ってこなかった。つかまえようとしたら茂みの向こうに逃げて行ってしまった。もう一匹は、いともたやすく寄ってきた。それが”華”だった。
以来、ずーっと傍にいた。車が好きな犬で、岩崎海岸まで一緒にドライブにも行った。
我が家で出産も体験した。四匹の仔犬が生まれた。三匹は貰われて行ったが、一匹は残った。今も家にいる。
今年の夏、最初に具合が悪くなったのは、この仔犬の方だった。いろいろ調べてもらった結果、拡張型心筋症と診断された。でも、毎日、薬を飲ませているせいか、その後、症状はおさまっている。
”華”の様子がおかしくなったのは、10月の中旬であった。実際は、もっと早くから悪かったのかもしれないが、仔犬にかかりっきりで、異常に気がつかなかったのかもしれない。医者に連れて行ったら、内臓が炎症をおこして腹水が溜まっているとのことだった。
薬を貰ってきたが、”華”は、なかなか薬を飲まない。仔犬の方は、ジャーキーやハムに薬をくるんでやると、何の疑いも無く食いついてくるのだが、”華”は、最初の数日間その手にのってきただけで、それ以降は、頑として口を開かなくなってしまった。
容態が明らかに悪化したのは、先週末あたりからだ。今週に入ってからは、水すら飲まなくなった。歩くこともままならなくなってしまった。日曜日を除き、毎日医者へ連れて行ったが、快方に向かうことはなかった。
そして今日、医者から帰ってきて約一時間後、息をひきとった。僕らが愛した優しい目は、ぱっちりと見開いたままであった。
明日、11月1日は、1(ワン)が3つ重なることから、”犬の日”と定められているらしい。なんとも悲しい”犬の日”を迎えることになった。