昨日のことである。どうしても緊急に連絡をとりたいことがあって、高松空港から母の携帯に電話をかけた。出ない。
義父の携帯にもかけた。出ない。
空港到着から飛行機の離陸時間まで、約1時間半。何度もかけた。でも、どちらも出ない。
心配もしたが、いらいらもした。携帯電話なんだから、いつも携帯すればいいのにと、正直、心の中で愚痴もこぼした。
それを今日、僕がやってしまった。
知人との情報交換を終えて、比較的早めに家に帰った。あまり暑かったので、Yシャツのポケットに携帯をいれたまま寝室で脱ぎすてた。そのまま隣の部屋へ行き、パソコンで調べ物をしていた。
はたと気がついて、携帯をとりに行くまで、約30分。その間に、不在着信の表示があった。それも3件も。
あわてて電話をかけなおしたけど、あとの祭りであった。緊急の用件だったけど、もう済んでしまったという。僕は、力になってあげることができなかった。
電話をくれた人へは、本当に申し訳ない事をした。これでは、昨日の母や義父を叱れない。
結局、心のスキなのだ。自宅にいると、特に、携帯を持たずに過ごす時間が多い。犬の散歩にだって、普段は携帯を持っては歩かない。家にいるという安心で、油断が生じているのだろうと思う。
だけど、自分が安息の地にいるからといって、当然のことながら、誰もがそうだとは限らない。仮に僕が一息ついているときにでも(今日はくつろいでいたわけではかったが)、大変な場面に遭遇し、僕と連絡をとりたいと思っている人もいるのだ。
古い話で恐縮だが、14年前、会社を倒産させたあとのことだ。、経営者失格の烙印をおされ、地位も名誉も失ったあとで、「あなたの力が必要なんです」と言われた時の、こみあげてきた感動が、僕のその後の生きていく糧となっていたはずだ。
今日の失態は、いつのまにかその大切なものを忘れかけていたことを気づかせてくれた。
などと、大袈裟な話になってしまったが、その電話が女性からのものだったので、出られなかったことを、これほど悔いているだけだ。これが男の飲み友達からの電話だったら、「悪い、悪い」で済ませていたかもしれないなぁ。うーん、我ながら、なんていい加減な人間なんだろう。
さあ、これから犬の散歩だ。しっかりと携帯電話を持って行こう。