今日のこの気分を、いつもの通りに歌謡曲で表わすとしたら、どんな歌がいいだろう?
例えば、沢田研二の「TOKIO」。♬空を飛ぶ 街が飛ぶ 雲を突き抜け星になる♬ はいかにも大袈裟だ。続くフレーズの♬火をふいて 闇を裂き スーパーシティーが舞い上がる♬ とまでなると、いかに郷土愛が強い僕でも、さすがに弘前をスーパーシティーと呼ぶほど、鉄面皮ではない。
五つの赤い風船の「遠い世界に」の中の、♬雲に隠れた 小さな星は これが日本だ わたしの国だ♬ という歌詞は大好きなのだが、今日の体験を表わすには、さらに桁が違いすぎる。
ん、いきなり話が飛躍した。実は生まれてヘリコプターに乗ったのである。感動した。空からの我が町弘前は美しかった。
そもそも僕は、超のつく文科系である。非科学人間なのだ。大体にして鉄の塊が空を浮くはずがないと、今までは遠ざけてきた。
飛行機は、若い頃から、仕事上、数え切れないくらいに乗ってきた。だがあれは、鉄塊の落下速度以上の推進力を与えることで飛ぶのだろうと、勝手に出鱈目な解釈して身を委ねてきた。
今回、紹介してくれる方がいて、勢いで搭乗することになった。「面白そうだな」「晴れればいいな」「もし落ちたらどうしよう」・・・、昨夜から期待と不安が交互に脳裏をかすめていた。
やっぱり、かなり動揺していたのだろう。直前に安全についての講習を受けている時に、初めて気がついた。右の靴と左の靴とが別々のものなのである。右がレジャー用のボロ靴。左が仕事用のビジネスシューズ・・・。笑い話のようだ。恥ずかしいったらありゃしない。でも、誰も足下を見るような人がいなくて助かった。

岩木川も、弘前公園も、禅林街も。町田の清掃工場も、樋の口の浄水場も、郊外のショッピングセンターも、あっという間に眼下を通り過ぎて行く。夢中でスマホのシャッターを切った。
それにしても弘前は広い。東そして南には、延々と街区が連なっている。北の方へは、山沿いの農村地帯の中を道路が延びているのが見える。
それにしても弘前は狭い。離陸から着陸まで、実際は10分強くらいの短いフライトなのに、それで弘前市の市街地を約半周した。2~30分もあれば、東西南北の境界線まで、ぐるっと一周できたであろう。選挙の時は1週間がかりで回ったのに・・・。
今回の体験で、益々弘前が好きになった。城趾公園を中心に、雑然と、しかし美しく広がる我がふるさと弘前。500メートル上空にまで、街が醸し出す雰囲気が伝わってくるような気がした。
昨夜までは怖がっていたのに、お調子者の僕は、すっかり強気になった。また乗りたい。何度でも乗りたい。今度は土手町や駅前、そして自宅のあたりを空からみてみたい。
口ずさんでいた歌が、いつの間にか「TOKIO」から「翼をください」に替っていた。(11482)