「無人島に一冊だけ本を持って行けるとしたら、何を持って行くか?」 昔から話の種によく使われてきた設問である。西洋人であれば、「聖書」と答える割合が、比較的高いのかもしれないが、日本人の多くには、そういった一家に一冊必備をしておくような、万人共通の愛読書は無いようにも思う。
一昨日、弘前読書人倶楽部で、たまたまそういった話題になった。僕の恩師であるSa先生は、さすがに元国語の教師である。「広辞苑」と答えた。そう言えばSa先生は、僕が書店を経営していたころ、広辞苑の改訂版が出れば、必ず購入していてくれた。
僕は、一冊物の百科事典なんてどうですか? と言った。そうしたら、その時居合わせた人は、怪訝そうな表情を浮かべた。どうやら全員、百科事典と言えば、全〇巻なんていう、重厚長大な物じかイメージにないようだった。
昨日のブログにも書いたように、僕は中学時代は、部活に入っていなかった。テニス部の友人の練習が終わるのを待って一緒に寄り道をする時もあったが、一人で帰る日も多かった。
そんな時、家でどうしていたかというと、たいがいは本を読んでいた。学校から帰ると夕食まで読書をするといった生活だった(名誉のために断っておくが、”本”の中には、当然漫画も含まれている)。
それともう一つ。一冊物の机上版百科事典で遊んでいた。例えば、目を閉じて適当にページを開き、そこに知っている人名が載っているかどうかなんてことで、一人で楽しんでいた。プロ野球に喩えて、「おっ、今日の打率は3割を超えた」なんて感じで遊んでいたのである。

奥付を見ると、1968年発行とある。そうか、中学1年の時だったのだ。多分、父が買ってくれたものだったと思う。
今思えば、そういう生活を、高校に進んでからも続けていればよかった。そうすれば今頃は博士か大臣か・・・。
でも、高校では山岳部に入り、プロレスに明け暮れてしまった。それはそれで、有意義な3年間ではあった。
山は、せいぜい大学生のうちは、年に一度くらいは登っていたくらいで、長続きしなかった。プロレスは、爾来、50年余の付き合いになっている。
というわけで、僕が無人島に持って行く本は、「日本プロレス70年史」に落ち着きそうだ。