最初に断っておくが、「手は語る」と言っても、手話の話ではない。
市民会館で行われた「文楽」の公演を鑑賞してきた。人形浄瑠璃である。能や狂言は何度か観たことがあるが、これは生まれて初めてだった。
いやぁ、想像していた以上に面白かった。何が凄いって、人形の所作である。特に手の動きだ。
今日初めて知ったことをひけらかすが、人形浄瑠璃とは、その名の通り、舞台中央で演ずるのは人形である。その他に、語り手の太夫と三味線方が、舞台袖(?)の”床”と言われる所にいる。
人形が演じるといっても、勿論、人形は、AI搭載のロボットではない。1つの人形後後に、3人の人形遣いがついていて、それぞれ右手と頭、左手、足を動かしている。3人の息がピッタリと合っていなければ、動作はへんてこりんなものになってしまう。
今日の演目は「冥土の飛脚」の「羽織落としの段」と「封印切り」の段。300両という公金を手にした飛脚問屋の若旦那(養子)が、恋い焦がれた花魁のところへ行こうか、それともお金をそのまま届け先へ持って行こうか悩むシーンでは、足や頭もさることながら、その手の動きで、主人公の葛藤が、それこそ”手”にとるようによく理解することができた。
廓の座敷のシーンも絶品である。人形(花魁)が三味線を弾いている。その手の動きは、実際に”床”で三味線方が奏でている音とピッタリ合致しているように見える。その昔、実際には弾けないアイドルが、さもさも弾いているように見せていたギターなどとは全然レベルが違うのだ。
第一部は2時間ほどで終わった。第二部も観たくなった。でも、18時からは、世界をまたに活躍しているハープ奏者の琴平メイさんを囲んでの夕食会に誘われている。後ろ髪を引かれる思いで市民会館を後にした。
ハープ奏者との会も面白かった。琴平さんは今、弘前市内の学校を回って、ハープの実演を行っているという。
ハープ単独の演奏というものを、実はちゃんと聞いたり観たりしたことはない。でも、何となく奏者の流れるような手の動きが頭に浮かぶ。
あっ、ここでも手だ。手は口ほどに物をいうのかもしれない。
同席した同級生のM君から、帰り際に、「市議会議員がヨタヨタ歩いているとみっともないよ」と言われた。彼からは以前「ヨチヨチ歩いていればみっともない」という忠告を受けたこともある。
そうか、そう見えているのか。僕の場合は、手よりも足の動きの方が問題のようだ。(5368)