弘前読書人倶楽部、10月のブックトークを開催した。2週間前のブログで紹介したように、今日の講師は、 板柳中央病院院長のHa先生。警察医として、様々な死体と接してこられた経験をお話いただいた。
 実は、何を隠そう、僕も大学で「法医学」を選択していた。といっても、法学部の法医学で、人体の専門的な知識はさっぱりわからない。単に、推理小説ファンとして、興味があっただけだ。それでも、週に一回、信濃町にある医学部の教室へ、割合真面目に通っていた。少なくとも三田のキャンパスよりもは頻繁に通った。ん?
 教科書がグロテスクだった。ぱっくりと傷があいた頭の写真が並んでいて、日本刀で切り付けられた傷頭、鉈を打ち下ろされた頭、バットで殴られた頭などとキャプションがついている。
 絞殺と首吊りの索状痕の違い。自殺者に見られるためらい傷など、まぁまぁ、物凄い写真をたくさん見せられた。僕の人生で、何の役にたっているかは、今もってさっぱりわからない。
 きょうも、そういうお話しかなぁと思っていた。そうしたら、さすがに、あの時以来40年も経っている。今は”AI”というのだそうだ。
 人工知能ではない。死後画像診断のことだ。遺体を、CT検査する。あるいはMRI検査する。先進的な医師は、遺体の内視鏡検査もするそうだ。その結果、僕らが習ったような、従来の体表面を目で見るだけの診断よりも、はるかに死亡原因判断の精度は上がったとのことだ。
 実際にCTの画像を見せていただきながら講話が進められた。だけど、ここに脳内出血があります。ここが肺です。膀胱が膨らんでいます・・・と説明を受けても、僕には画像の意味はよくわからない。しかし、昔の教科書のようなグロテスクなものではなかった。
 最初は、遺体とか、死を取り扱ったテーマだけに、講話終了後の懇親会が盛り上がらないのではないかと、内心心配していた。Ha先生の話術の巧みさもあって、それは杞憂に終わった。
 ブックトークも7年目を迎えた。実に様々な方々に、様々なテーマで、お話しを伺ってきた。その中でも、今日はかなり異色の部類に入る話材だったと思う。
 だけど、そこはHa先生だ。話の中で、ちゃんと本の紹介もしてくれた。
 結局、人類の歴史が全て、本によって伝えられている。森羅万象が本の中にある。逆に言えば、森羅万象を語ることは、すなわち本の話になる。
 そう思えば、ブックトークの種は尽きない。さて来月は、誰にお願いしようかしら。(7712)