供託金が返ってくる。パチパチパチ。今日は、その証明書をもらいに、選挙管理委員会の事務局に行ってきた。
 供託金とは、公職の選挙において、無責任な立候補を制限するために設けられた制度で、立候補に際して、予め寄託しなければならない金銭のことである。その額は、市議選の場合は30万円、市長選だと100万円、知事選だと300万円というように、選挙の種類によって定められている。
 このお金は、一定の得票数を下回れば没収される。「その選挙の有効投票数の10分の1÷定員数」がその没収点である。それを上回れば返ってくる。
 例えば、弘前市議会議員の場合、簡単に、有効得票数を78000票だとすれば、10分の1で7800票。それを議員定数の28で割るので、300票がその分岐点となる。
 だからまぁ、普通に選挙運動をして、親戚やご近所、学校の同期生等に応援をしていただいていれば、めったにそれを下回ることはないだろう。今回の選挙でも、没収された人は一人もいなかったはずだ。
 8年前の選挙の時であった。告示を1か月後に控えた3月上旬に、女房が亡くなった。その直後、東日本大震災が起こり、朝礼をさせていただく予定だった百貨店が倒産するなど、なにもかもバタバタと慌ただしかった頃だ。
 ある日、M銀行から通知が届いた。女房が、クレジットの支払かなにかで、30万円近く未払いを残していたらしい。後回しにすることも出来たのかもしれないが、選挙前の大切な時期でもある。変なトラブルも起こしたくない。すぐに窓口を訪ねた。
 銀行の担当者に僕は、「これから選挙があって30万円を供託しなければならない。無事、没収されずに返ってきたら、それで支払いますから」と説明をした。担当者は、「何票とれば返ってくるのか?」と尋ねた。僕は選管に確認した上で、さっきの数式を教えた。
 「ちょっとお待ち下さい」担当者は奥に消えた。上役と相談でもしていたのだろう。しばらくして帰ってくると、「それでOKです」と了承してくれた。
 良かった。もしそこで、「駄目だ」と言われるようなら、僕はその程度の票もとれないような泡沫候補と見られていた、ということになる。そうではなかったというだけで、当選が約束されたわけでもないのだが、ものすごーく安心した記憶が鮮明に残っている。「供託金が返ってきますよう、よろしくお願いします」と言ったかどうかまでは憶えていない。
 勿論、その銀行には、供託金が戻ってきたあと、すぐに返済をした。公約を一つ守った。(4977)