以前からずーっと、やってみたい事があった。 何が面白そうとか、何かの役に立ちそうとかいうわけではない。ただ「やってみたい」という好奇心からだけのことだ。それを、64歳間近になって、生まれて初めて体験した。
 選挙の投票立会人である。町会長宛に案内が来て、これまでも2回ほどチャンスがあったのだが、市長選挙とか県議選とか、あまりにも身近過ぎて遠慮をしてきた。県知事だと、雲の上の存在(?)なので、勇んで引き受けることにした。
 朝の6時半、指定された投票所に行った。準備はあらかた出来ていた。
 最初の仕事は、その朝初めて訪れた投票者と一緒に、投票箱の中が空っぽなことを確かめてから、施錠に立ち会うことだ。7時から投票受付開始だというのに、入り口で待っている有権者がいたことには驚いた。
 ところが、その後が単調だ。職員から貸していただいた手引き書によれば、立会人は、投票が正しく行われているか監視することと、何か異議の申し立てがあったときに意見を述べることが、主な職務のようだ。
 しかし、そうそう異議申し立てに至るようなトラブルが発生するはずもない。つまり、投票開始時間から終了時間まで、一連の投票事務が目の前で行われているのを、淡々と見守っていることが、仕事の99%を占めることになる。
 そんなことを覚悟して、一応、本は持って行った。だけど、誰かが会場に入ってくれば、それを目で追わなければならない。とても読書に没頭するような雰囲気ではない。かといって、投票者がひっきりなしに入ってくるわけでもないし、何となく手持ち無沙汰だ。
 そこで、弛緩しがちな脳を活性化するため、人間の行動を観察することにした。
 投票の記載台は、投票用紙配布係のいるテーブルのすぐ隣から、奥に向かって8台一列に並んでいる。仮に一番手前を1枠、最奥を8枠とする。受付を済ませた投票者が、その何枠へ向かうかの数をチェックした。
 一番多かったのが2枠。一人で来場した人は、かなりの割合で2枠に向かう。次が3枠、その次が1枠と続く。その3つの記載台だけで、僕が数えた範囲内では、全体の8割にも及ぶ。反対に、7枠と8枠で記載した人は0人だった。
 もっとも、立会人にも、食事時間もあれば、小用で席を立つこともある。正確な数字とは言えないかもしれないが、当たらずとも遠からずであろう。やっぱり人出来るだけ近場で済ませようという心理が働くに違いないと、当たり前のことを今さらながら考えた。
 なんてことをしなければ耐えられないほどの、時間との闘いだった。
 午後8時で投票を締め切ったあと、開票所である市民体育館まで、投票管理者と一緒に、投票箱や台帳等を持って行った。そこまでが投票立会人の仕事なのだそうだ。朝6時半から夜の8時半近くまで。ほぼ14時間に及ぶ耐久レースがそこで終わった。(9021)

 追伸
 だけど、僕がこんなことを言える立場にはない。市の職員の中には、その後も、開票業務に従事する人もいる。14時間どころか19時間近くにもなるかもしれない。ただただ敬意と感謝の意を申し上げたい。