♬あなたがいて  私がいて ほかになにもない♬
 岩崎宏美のデビュー曲「二重唱」を初めて聞いたとき僕は、いきなり延髄切りを喰らったような衝撃を受けた。学生時代、目黒に部屋を借りて暮らし始めた頃である。暗い独りぼっちの部屋が、その瞬間だけ、閃光が走ったかのように光り輝いた。
 彼女の、デビュー時のキャッチコピーは「天まで響け!!」。その言葉の通り、身体から脳を突き抜け、空まで突き刺さるような声に、僕はすっかり魅了されてしまった。 
 アイドル遍歴では人後に落ちない僕だったが、これほど歌の上手いアイドルとは出会ったことがなかった。何せ当時は、浅〇美〇子とか、天〇真〇とか、ルックスのみが売りだった時代だ。
 いや、岩崎宏美もルックスだって悪くない。ただ、いかにもアイドル然とした造られた美少女とは趣を異にはしていた。清楚な、純朴な、手を伸せば届きそうな、そんな感じだった。
 すぐに、ファンクラブに入会した。後にも先にも、ファンクラブなるものに入ったのは、岩崎宏美と松田聖子だけである。
 早速、特典が来た。リサイタルの先行予約の案内である。その日のうちに申し込んだ。色々な会のご案内をいただいても、つい出欠の返事が遅れがちとなっている今の僕からは、とても考えられない。
 数日後、申込み受付表が届いた。番号は”3”となっている。やったー! 最前列の一番いい席で見られる! 僕は小躍りをした。
 それにしても、即日葉書を出した僕でも3番だなんて、1番と2番はどんな人間なんだろう? 事務所のすぐ近所に住んでいて、その日のうちに直接申込みに行ったのかしら? などと考える余裕もあった。
 ところが、当日、会場に入ってみると、最前列は最前列でも、下手の端から3番目。東京の横に広い舞台である。ほとんど真横から遙か前方を見ているようなものだった。ひたすら首を右に曲げ続けていたために、僕より早く予約した連中のことなど、すっかり眼中から消えていた。
 遠い遠い、青春時代の思い出である。いやいや、僕と岩崎宏美との物語は、第二幕第三幕と続くのだが、それはまたいずれ。とても一日のブログに書き切れるものではない。
 今日、弘前市で、岩崎宏美のコンサートが行なわれた。勿論、僕も聴きに行った。
 1300人収容の市民会館大ホールは超満員だった。早々にソルドアウトしたらしい。顔見知りの人と、何人とも出会った。
 一曲目が「ロマンス」。二曲目が「センチメンタル」。三曲目が「未来」。残念ながら「二重唱」は歌われなかった。でも、「思秋期」「聖母たちのララバイ」等、往年のヒット曲を聴いているうちに、目頭が熱くなるものを感じた。
 そうか。これが恋だ。初恋は永遠なのだ。何歳になっても、その煌めきを失うことはない。甘酸っぱいカルピスのような味がこみ上げてきた。(6066)

 追伸
 いつもならここで、僕の好きな歌、岩崎宏美編ベスト3を発表するところだが、彼女の場合、3曲はおろか、10曲にだって絞りきれそうにない。