僕にとって、マスクは必需品である。
 前々回の選挙の時に、喉を痛めた。何ヶ月も咳が止まらなかった。声がほとんど出なくなった。結局”百日咳”ではないかと診断されて、携帯用吸入器を常用してどうにか収まった。
 それ以来、睡眠時にはマスクが欠かせない。乾いた空気と埃から喉を守るためだ。視察だろうが研修だろうが、必ず鞄に入れていく。一種のマスク依存症だ。
 その手持ちが少なくなった。そこで、先ず最初に、全国チェーンのドラッグストアに行った。マスクの棚は、見事に空っぽだった。念のため、近くいた店員に在庫を尋ねてみた。返ってきた答えが、「ただ今、切らしております」ではない。「入荷しておりません」だった。愕然とした。
 マスク仕方がない。一箱に数十枚入った、”お徳用”はあきらめよう。3~5枚が袋に入ったものでもいいや、とコンビニに行った。そこにも無かった。もう一軒、別のコンビニでも売っていなかった。いやはや、巷で報じられている”マスク不足”は、こんな北国の地方都市にまで波及していたのだ。
 困った。あと数日分はストックがある。でも、マスクが切れたらどうしよう。それを考えれば、眠られなくなりそうだ。
 だけど、このような事態を見ていると、僕がまだ高校生の頃の、トイレットペーパー騒動を思い出す。もう47年も前から、日本人はあまり進歩していないようだ。
 いやいや、大量に買い占めて、それをネットで、法外な値段を付けて売っている輩もいるとのことだ。それが日本人だとしたら、もはや精神は、あの頃よりも退化していると言っても過言ではなさそうだ。
 蓬莱橋から駅まで、市内循環100円バスに乗った。歩いた方が遙かに早く着きそうなものだが、そこは気にしないでほしい。
 市役所前から、マスクを着用した外国人観光客らしき人が二人、乗り込んできた。通路を挟んで僕の隣りに座った。女性が頭を布でスッポリ覆っているところを見れば、イスラム圏の人で、中国からの旅行客ではない。
 だけど僕は、一瞬、ビビってしまった。おお、これが濃厚接触か!? やばいぞ。息を吸うのを止めようか、なんてことまで考えた。
 なんだかんだ言って、僕も、完璧に、コロナウィルス狂詩曲の渦中に放りこまれている。(11179)