今子青佳

2019年08月

最後の作品の紹介です。

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藪内亮輔さんの歌集『海蛇と珊瑚』(角川書店 2018)より言葉をお借りしました。
「私のレッスン」というタイトルの、たくさんの言葉の塊を書かせて頂きました。

短歌や詩を作られる方の思考ってどうなっているんだろうといつも不思議に思います。どうしてこんなに面白い言葉を作ることが出来るんでしょう。

この藪内さんの「私のレッスン」は、私にとって、「こうやって考えているんだ」と少しだけ教えてくれるような説明でもあり、そしてそれ自体が作品であり、活字となった文字が生き物のように見えました。その緩急を私なりに書いてみたくて、選びました。



これが、DMのデザインの基の作品です。

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個展のタイトルにも藪内さんの歌を使わせて頂きました。


歌はないことすら歌で 赤蜻蛉とまりてわづか薄は沈む


この歌がすごく好きです。俯瞰している感じが最初はしたけれど、きっとそうではないんだと思います。
タイトルのために、大切な歌をぶった切ってしまってごめんなさい。

短歌には全く詳しくないけれど、短歌は面白いなと思います。
ルールがあって、あるからこそ自由で、でもきっとルールはあってないようなものなんだとも思います。

短歌は書に近いと私は思っているので、短歌に、歌人さんに片想いしています。

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最終日の31日(土)の夜、9時頃から最後まで在廊しています。
もしお時間が合う人がいらっしゃいましたら、お越しください。
最後なので、作品をご購入頂いた方には直接その場でお渡しもできます。

今年の展示はこれでおしまい。(たぶん)
会いにいらしてください。


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「歌はないことすら歌」(藪内亮輔歌集『海蛇と珊瑚』より) 

日時:8月1日(木)~31日(土)11:00~23:00 ※定休日なし 

場所:76CAFE OMOTESANDO (東京都渋谷区神宮前4-9-2 神宮前MMビル1F) 




 

作品を紹介します。

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雨降らでとの曇る夜の濡れひづと
恋ひつつをりき君待ちがてり
安部広庭 

 

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「親指が数センチ入る図書館」より
 
斉藤斎藤さんの歌集『人の道、死ぬと町』(短歌研究社 2016)より言葉をお借りしました。 

斉藤斎藤(さいとうさいとう)
第一歌集『渡辺のわたし 新装版』
第二歌集『人の道、死ぬと町』


前から大好きな斉藤斎藤さんの歌を、今回書かせて頂けて、心より感謝しています。こんな日が来るなんて。嬉しすぎます。この歌集は詳しい詳しくないをおいておいてくれるような、作られる言葉の並びがとっても面白い歌集です。ランダムにページを開いて読んでいます。
絶対、読んでもらいたいです。

今回どうしても斉藤斎藤さんの歌を書きたかった理由は、コンセプトに関係します。

コンセプトは、まず今年改元があったことを理由に万葉集を選びました。今年は多くの人が筆文字や「文字」を改めて意識した年でもあると私は考えています。

また、現代の歌人は、今現在生きている方を選ばせて頂きました。短歌から受け取るイメージが私自身に近く、会場の表参道に来られる方にとっても近いのではないかと思ったからです。
今しかできないことをテーマにしたいと思い、上記の2つをコンセプトに致しました。

そして、この2つの「短歌」の真ん中にいらっしゃる方が、斉藤斎藤さんだと感じています。繋げる橋として、また核として、書かせて頂きました。

短歌の世界と書の世界は別物だと思いますが、似ている所もあると私は思います。
書の世界は閉鎖的です。いろんな力が働いていますし、それが良い悪いではなく、書道はそうやって伝統を守ってきたのだと思います。それは、誰かが壊せるものではないですが、そことは違う所で、書や「言葉を使うこと」が、私の作品を見てくれた誰かの生活の中でふと意識されたら、面白い作用が広がって行くのではないかと考えています。
 
それは、私自身が斉藤斎藤さんの歌集を読んでいる時の感覚でもあります。同時に歌集の言葉や、歌集でない所での言葉も、私のなりたい憧れでもあります。

今回、斉藤斎藤さんの短歌を横長の布に、巻物のように書きました。現代の書の作品の中に、古き日本の伝統が垣間見えますように。

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「歌はないことすら歌」(藪内亮輔歌集『海蛇と珊瑚』より) 

日時:8月1日(木)~31日(土)11:00~23:00 ※定休日なし 

場所:76CAFE OMOTESANDO (東京都渋谷区神宮前4-9-2 神宮前MMビル1F) 






今日はこれから、夜まで(たぶん20時くらいまで)在廊します!会いにお越し下さい。


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「歌はないことすら歌」(藪内亮輔歌集『海蛇と珊瑚』より) 



日時:8月1日(木)~31日(土)11:00~23:00 ※定休日なし 



場所:76CAFE OMOTESANDO (東京都渋谷区神宮前4-9-2 神宮前MMビル1F) 

作品を紹介します。

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葦屋の菟原処女が八歳児の片生ひの時従をはなりの髪たぐ迄に並び居る家にも見えずうつつゆふの籠りてませば見てしがといぶせむ時の垣ほなす人の訪ふ時茅渟壮夫菟原壮士の臥せ家たきすすし競ひて相よばひしける時は焼大刀の手上おしねり白壇弓靫取り負ひて水に入り火にも入らむと立ち向かひ競へる時に吾妹子し母に語らく倭文手纒賤しきわが故健男の争ふ見れば生けりとも逢媾ふべくあれやししくしろ黄泉に待たむと隠沼の下ばへ置きてうち嘆き妹が去ぬれば茅渟壮夫の夜夢に見とりつづき追ひ行きければ後れたる菟原壮士は天を仰ぎ叫びおらび足摺りし牙がみたけびてもころ男に負けてはあらじとかけはきの小大刀とり佩きところづらとめ行きければ族どちい行きつどひて長き世に標にせむと遠き世に語りつがむと処女塚中に築き置き壮士塚此方彼方に築き置ける故由聞きて知らねども新喪の如も哭泣きつるかも

高橋連虫麻呂


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青空を押して回転ドアを出る 見るものすべてに檸檬の付箋を
蒼井杏
 
蒼井杏さんの『瀬戸際レモン』(書肆侃侃房 2016)より言葉をお借りしました。

蒼井杏(あおい・あん)
2015年、未来短歌会に入会。加藤治郎に師事。とてもひとみしりな雨女。
第6回中城ふみ子賞、第57回短歌研究新人賞次席。
https://twitter.com/aoianaoian

檸檬って、こんなに甘かったかしら、と思う言葉たちが集まった歌集です。


レモンパイなど食べながら わかってる もう檸檬には戻れないこと

てのひらの心臓としてくるむレモンふりさけ見てもため池がない

いちまいのきおくのたどりつくところ瀬戸際レモン明るんでゆく


「レモン」という言葉を使っていない歌も、このほろ苦さや甘酸っぱくないのだれど、甘さと酸っぱさを感じます。


いもうとに見られたくなくて便箋を食べたことがあります 夕暮れ

ぶなしめじぼろっとほぐれてだれもだれもわたしがわたしでごめんなさいって


歌集の歌全部書きたいくらい宝物のような言葉が散りばめてあるんです。初めて読んだ時は、心に響きすぎて、悶々としましたし、かなり落ち込みました。でも、書かせて頂いた歌は晴れた空を愛せるような気がしています。


青空を押して回転ドアを出る 見るものすべてに檸檬の付箋を
蒼井杏

蒼井さんの言葉は、翳りを見せたまま、背中を押してくれる世界を見せてくれる気がします。
短歌を読まれない人たちにも、この歌集をよくプレゼントしていました。
ぜひ読んでください。
 


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「歌はないことすら歌」(藪内亮輔歌集『海蛇と珊瑚』より) 


日時:8月1日(木)~31日(土)11:00~23:00 ※定休日なし 


場所:76CAFE OMOTESANDO (東京都渋谷区神宮前4-9-2 神宮前MMビル1F) 


在廊日程

8月26日(月)13:00頃から 


作品を紹介します。


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東の野に陽光立つ見えてかへりみすれば
月傾きぬ
柿本人麻呂 

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句読点の句点をぷちぷち潰してく言葉にならない言葉の代わりに
九螺ささら

九螺ささらさんの歌集『神様の住所』(朝日出版社 2018)より言葉をお借りしました。

九螺ささら(くら・ささら)
神奈川県生まれ。2009年春より独学で短歌を作り始める。2010年、短歌研究新人賞次席。
2014年から新聞歌壇への投稿を始め、朝日新聞「朝日歌壇」、日本経済新聞「歌壇」、東京新聞「東京歌壇」、ダ・ヴィンチ「短歌ください」、NHKラジオ「夜はぷちぷちケータイ短歌」など掲載無数。
趣味は時空遊び、好きな食べ物は光エネルギーとしての緑黄色野菜で、人体依存症。本書が初の著書となる。
2018年8月には初の歌集も刊行予定(東直子監修、書肆侃侃房「新鋭短歌シリーズ」)。
 
「言葉の代わりに」

この言葉を読んだ時に、ぞくっとしました。それを「ぷちぷち潰してく」なんて、可愛らしすぎる。こんなに可愛いのに、きっと何かに絶望しているんだなとも感じました。

私はそれが「透明」に近いと思いました。無色透明ではなくて、何色かには見えるのかもしれないけれど、「ぷちぷち」の奥に何かがあるのがわかる。

薄墨に色味はありませんが、見る人によっては、何色かに見えればいいなと思います。

記号がなくなって、「」も()もなくなって、どの言葉にその修飾語がかかるのか分からなくなった世界は、優しくて、狂気的で、寄り添うという言葉もない世界のような気がします。そこでは、色もない、味気ない世界な  のか   もしれま        せん。

句読点の句点をぷちぷち潰してく言葉にならない言葉の代わりに
九螺ささら


在廊日程

8月24日(土)14:00頃から
8月26日(月)13:00頃から

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「歌はないことすら歌」(藪内亮輔歌集『海蛇と珊瑚』より) 

日時:8月1日(木)~31日(土)11:00~23:00 ※定休日なし 

場所:76CAFE OMOTESANDO (東京都渋谷区神宮前4-9-2 神宮前MMビル1F) 

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