今子青佳

2019年09月

吉原幸子という詩人をある方に教えて頂いて、
どハマりしました。

『ブラックバードを見た日』より

現代詩の実験

肌をなでる 青い風は去った
信じられる唯一つの事実のために
深夜 にじむ脂汗をぬぐひ
うつくしい匕首を研いであそぶ
いちまいの皮膚の下に息づく死を
はらわたのやうにとり出して 煮る
(オーヴンに顔を突込んで死んだ
アメリカの女詩人は 三十歳だった)

(中略)

ジョニイは戦場へ行った
手足と五感を失った彼は
胸にさす 太陽のぬくみだけを感じた
彼の苦しみは 誰にも見えなかった
だがもし
愛するひとが 目の前で叫んでゐたら
もし アジのやうにはねてゐたら?

夏になったら死なう と
春には思はなかった
秋には 思った
冬になった死なう と
冬には 思ふだらうか
次の春まで待たう と

(略)
 

『新選 吉原幸子詩集』より

死に方について



目覚めて しばらくは
夢の出口をふさいでゐる
夢は 魚のやうにはねてゐる


(中略)

泣いてくれるひとがゐる といふのは
うれしい くるしい不自由だ
失ひたくないひとがゐる のも――――

ある場合には
<死ぬのをみる>ことのはうが
<死ぬ>ことよりもおそろしい
だが<死ぬ>ことが
<死ぬのをみる>のを<みる>ことなら
ある場合には
深いかなしみをみる ことが
深くかなしむ よりおそろしいなら

唇かんで つらいはうを引きうけようと思っても
どれを引きうけていいのか ほんたうにわからない
だから もし
わたしが間違って選んでしまっても
どうか泣かないで
いいえ やっぱり泣いて

(中略)

<死>について考へるとき
生きてゐるあらゆるものに
人はやさしくなる
肩をさする

だからあれは 死そのものの音ではない
いのちが 炎えながら言ひ遺す音だ
そして いのちが何かを言ひ遺すとしたら
<愛>しかない

かげるとき はじめて
ほほゑみは 愛だ

(略) 




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これほどの孤独さと優しさと、苦しさを感じた詩はありませんでした。
すごい方。
この詩を書かれた時に、どうか幸せを少なからず感じていてほしい、感じていたはず、と思うのですが、それは私には全然伝わっていないのかもしれません。そうしたら、ごめんなさい。

近々、作品の発表の機会が無いので、今は言葉探しをしたり
いつかの展示会に向けて少しずつ準備をしています。

この言葉探しだったり、物語の世界に触れたりする時間が
今の私の特別な時間です。
全然知らない世界がたくさんあることに改めて気づきます。
外国文学が好きですが、それも知らない世界をはっと気づかせてくれるからです。
日本のSFも大好きです。

小説がもともと苦手でしたが、少しずつ克服しようと思っています。
「物語」って不思議だなと思います。
その話はまたこんど。

吉原さんの詩は日記のようで、俯瞰しているようで
それなのにあまりにも孤独で、勇ましくて
大好きになりました。
いつか、書いてみたいなと思います。
 

個展が終わりました。
ご来場くださったみなさま、応援して下さったみなさま、ありがとうございました。

令和元年にちなんで選んだ短歌でしたが
あらためて、書と短歌はきっと相性がいいんだろうと感じました。

勝手なイメージと好みですが、 短歌は文字数が決まっていながら、たぶんそうではなくて、字数とは違う世界で物語性がとっても強いもののような気がしています。物事の出来事という瞬間だけではなくて、そこに至るまでの背景がダイレクトに伝わるような気がします。

それを書くことの、楽しさを今回初めて知りました。

一番長い時間をかけて書いたのは、藪内亮輔さんの「私のレッスン」。
一枚書きあげるのに4時間ほど。

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反対に一番短かったのは服部真里子さん。
たぶん30秒くらい。書き直しもすごく少ない作品でした。

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私は短歌を詠まないので、作り手の大変さはわからないけれど、言葉で生きている方は心から尊敬します。言葉をこんなにも多彩に使うことができたら、どれだけ世の中が輝いて見えるんだろうと思います。ご本人からしたら、全然違うかもしれませんが、いつか1日だけでも入れ替わってみたいです。

今回言葉をお借りした方々は、私の「書かせてください」のオファーを快く許して下さった方々でした。面白がって下さった方もいます。なんて、なんて嬉しいことでしょう。本当にありがとうございます。

この世の中に言葉が溢れていて、誰かと意思を伝達するために言葉を使わなくてはいけないのならば、自由には程遠い気もしますが、だからこそ、今を生きていることが尊いことだとも感じます。その中で、言葉を使って生きている人を愛しています。私は言葉で考えることができないし、言葉を読んだ時の衝撃だとか、楽しさだとか、面白さが大好きなので、言葉と発生する事故を、こよなく愛しています。

言葉を書かせて下さった原作者のみなさま、
暑いなか、私がいなくても来て下さったみなさま、
私の在廊に合わせて下さったみなさま、
遠くから応援をして下さったみなさま、
本当にありがとうございました。
毎回言っているようですが、個展は、その度にたくさんの人に会えるので私が一番幸せなんです。ありがとうございます。今回はいつも以上に多くの方にお越し頂きました。

今年はたぶんこれでおしまいです。来年以降、お目にかかれる日を楽しみにしています。

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