2017年05月15日

本『夜行』

本来の私と今ちょっと手が離せない私とを繋ぐ唯一のものが読書であるが、けして時間が多くとれるワケではないので面白くても読み進むのが遅いのが現状。




今回は森見登美彦『夜行』についてのあらすじと感想を書こう。




まずジャンル的にはコミカルでファンタジーな『有頂天家族』『夜は短し歩けよ乙女』『聖なる怠け者の冒険』『四畳半神話大系』が人気だが、他にも色々な作品がある。



エッセイのような『美女と竹林』



SF作品『ペンギンハイウェイ』



少し怖いファンタジー『きつねのはなし』『宵山万華鏡』など。





今回の『夜行』は少し怖いファンタジーに分類されるのではないかと思う。















↓↓あらすじ↓↓



十年前、英会話スクールで知り合った大学生数人組。鞍馬の火祭に出かけた夜、長谷川さんが失踪する。



そして十年後、それぞれの人生を歩んだメンバーは再び鞍馬の火祭に集結する。



宿に着きそれぞれの話を始めるが、彼らには奇妙な共通点があったことが発覚する。それは岸田道生という銅板作家の四十八連作『夜行』。









そして物語りは1人が1章語る形式で進んでゆく。
















第一夜『尾道』



中井さんは話し出した。5年前妻が家を出てしまい尾道まで迎えに行ったこと。妻とおぼしき女性を見つけるが『どちらさまですか…?』との答え。その夜宿泊したホテルのロビーには岸田道生の作品『夜行──尾道』が飾られていた。住んでいると聞いた家はどう見ても崩れた廃墟であったこと、そして妻は妻なのか、それとも他人のそら似か、はたして無事連れ戻す事ができるのか。まだまだ先のわからない第一章。














第二夜『奥飛騨』



次に語り出したのは武田君だった。勤務先の先輩とその彼女、そして彼女の妹。先輩と彼女は仲が悪くしょっちゅう喧嘩をしていた。今回の飛騨旅行も4人連れではあるが仲裁役として同行するだけの事であった。道中車の故障で立ち往生している初老の女性ミシマさんを乗せる。ミシマさんは未来が見えると言い『東京へお戻りなさい、お二人の方にシソウが出ています』とのこと。自由行動になり喫茶店にかかっていた銅板画『夜行──奥飛騨』、はたして皆の心にはりついて取れない『死相』の言葉。4人は無事東京へ帰れるのか。













第三夜『津軽』



三番目に語り始めたのは藤村さん『三年前の二月、青森へ行ったときの話です』鉄道好きの夫とその友人の児島君は年に一度か二度鉄道の旅に出るので出来る限り同行することにしていた。夜行列車に乗ったことがないという話から寝台列車『あけぼの』に乗車。淋しく暗く心細い夜行列車、夫は旅情だというが…。途中、車窓から見えた火事で燃える家とその隣に立ってこちらに手を振っていた女の人。そして現地に着くなり歩き出す児島君は一軒家を見つける『これは夜の家ですよ』気付くと昨夜燃えていた家がそこに。そしてもっと昔に画廊で見た連作『夜行──津軽』にも同じ家があった事を思い出す。ふと目を離した隙に消えてしまった児島君、さらに、もっとずっと昔にこの家の淋しさを感じたような…。














第四夜『天竜峡』



四番目は田辺さんだった。年長者でありメンバーが入学した時にはすでに卒業していた人物である。伯母夫婦のところから帰る電車の中。反対側のボックス席で語り合うのは女子高生と坊さん。ふいに女子高生に『どこまで乗るんですか?』と声をかけられる。しばらく3人で話したあと女子高生が席を立った時坊さんは岸田らしき人物の話をした。『あんた、岸田のことを言っているのか?』よく見れば岸田のアトリエに出入りしていた大勢の中でどうしても好きになれない男、佐伯だった。岸田道生をめぐる田辺と佐伯と連作『夜行』、そして岸田の死と生き方、描き方、あるのかないのか『曙光』という作品の謎に迫る。そして佐伯が持っていた風呂敷包みには『夜行──天竜峡』が。













最終夜『鞍馬』



場面は再び英会話スクールから(長谷川さんの失踪から)十年後の鞍馬の火祭に戻る。



皆、行きたくない気持ちを引きずっており宿で立ち上がる気になれないままでいた。『そろそろ行かないとね』仕方なく祭りに出かけるメンバー。叡山電車は混んでおり歩いて行く事になった。道すがら宿で話したそれぞれの旅となぜか関係してくる岸田道生の四十八連作の夜行。その奇妙な共通点と夜行の闇に吸い込まれる体験を皆がしていた謎。そんな時ふと振り返ると誰もついてきていない。前に向き直ったが先を歩いていた田辺さんも消えていた。不安になり中井さんに電話をした『どちらさまですか?』『何を言ってるんです、大橋ですよずっと駅でみんなを待ってるんですよ』『冗談を言わないでくれ』














はたして十年前、鞍馬の火祭の闇に消えたのは本当に長谷川さんだったのか。夜行の対となる作品『曙光』の謎とは何なのか。
















↑↑以上↑↑



ちょっと書きすぎたかな?でも一気読みできちゃうおもしろさでした。




色々と受賞された作品だそうで詳しくは森見登美彦さんのブログ『この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ』をご覧下さい。























ISBN978-4-09-386456-5

森見登美彦『夜行』










_20170515_144617



























imari__ at 22:15│Comments(0)ごちゃまぜの記事 

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
プロフィール

イマリ

記事検索