技術マーケティング+プラス

技術マーケティンに関わり30余年。仕事・生活、その時々の出来事を感じたままに書いています。

カテゴリ: 戦略

社会が急激に変化する状況下で事業の将来の方向性を過去の延長線上で描いても、空虚なものになってしまいます。社員が納得感を得られる道筋を描くのは簡単ではありません。

このような状況に役立つ手法がホライズン・スキャニング(Horizon Scanning)です。
ホライズン・スキャニングは未来の社会の変化仮説構築などに有効な手法で、近年、政府の中長期的な施策検討にも使用され、シナリオ作成に有効な手法として注目されています。

ホライズン・スキャニングについては一橋大学の鷲田教授が未来洞察と関連し論文を多く出講されています。

・モザイク型AI普及社会への「備え」の必要性 (多型化する時代のマーケティングを考える) https://ci.nii.ac.jp/naid/40021280855
 ホライズン・スキャニングを用いたワークショップについて説明されています。
 鷲田先生の関連するインタビュー https://www.jst.go.jp/ristex/hite/topics/312.html 
・「自動運転による新たな社会的価値及びその導入シナリオの研究」経済産業省 
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/automobile/FY28_report/FY28report.html
 スキャニングワークショップでの活用事例が詳細に記述されています。


研究開発部門の重要な役割の一つである中長期的な技術戦略シナリオ構築にも適応できると考えています。

市場の変化が激しい時代では、今日の利益を確保するために、市場に向き合い、変化に対応しニーズに応えることが大切です。一方で、将来の利益の獲得を目指すには、社会の変化を予測し、社会が求める価値を実現する技術を明らかににし技術を磨いていくことが必要です。
そのためには、まず、技術を熟知している技術部門が自ら未来を洞察することが必要ではないでしょうか。

ところで「Horizon Scanning」日本語ではホライズン・スキャニングとホライゾン・スキャニング両方使用されていますが
私は ホライズン・スキャニングで行こうと思います。

これからの商品開発は、エフェクチュエーションとSTPマーケティングを最適化し商品開発プロセスに組込むことが重要です。これは、STPマーケティングを基盤とした商品開発の進化版です。

STPマーケティングによる商品開発は
〇夏する市場(業界)を顧客・競合・自社の視点でビジネス環境を調査・分析し市場を細分化(Segmentation)
⊆社のビジネスにとり魅力的な分野を選定(Targeting)
A定分野での競争関係や顧客状況から、最適なポジションを設定(Positioning)
という´↓のステップを踏みながら極めて論理的に進められます。

最近は(私のまわりでは)経験と勘と度胸によるKKD開発を卒業し、STPマーケティングによる商品開発を進めている企業が多くなっています。(私もそれを支持し推進してきました)

問題は、STPマーケティングを開発プロセスに単純に取入れてもヒット商品が生み出せない点にあります。
精緻にSTP分析をすることで突破口が見いだせないほど、社会は複雑に、そして、不確実になっているのです。

エフェクチュエーションは不確実な市場でより効果を発揮する事業の考え方・行動原理です。
したがって、エフェクチュエーションとSTPマーケティングを最適に合成することで、時代に即した、商品開発プロセスが構築できるのではないでしょうか。

商品開発における、エフェクチュエーションとSTPマーケティングの合成のポイントは、開発のプロセスでそれぞれの良い点を使い分けることです。
前回のブログ、エフェクチュエーションとSTPマーケティングの関係の図を参照ください。(前回のブログ)

商品開発のプロセスを技術開発と市場開発の視点で捉え、商品開発の出発点から商品化までの軌跡を
みた場合、商品開発のスタートの時点では、商品を具現化する技術情報も市場の情報も充分な状態にはない場合ほとんで商品化の道筋は幾通りも想定できます。
従来この段階からSTP分析が進められるのですが、それに費やす、時間・労力を押さえ(これに時間がかかり企画担当者が疲弊していまっている事が多く見受けられます。)
開発初期の段階でエフェクチュエーションの原則を取り入れ、テストマーケティングを進める。

テストマーケティンの結果をうけて、その成果を活かし、STPマーケティングを効率的に推進する。
また、開発を前に進めている途上で、予測外の事態が生じた場合は、エフェクチュエーションの原則のクレイジーキルトの法則やレモネードの法則を思い出し、開発を前に進める(もしくは断念する)力が重要なのです。



これからの商品開発の鍵は「エフェクチュエーション」です。

「エフェクチュエーション Effectuation」はアメリカの学者サラス・ サラスバシーが提示した成功した起業家の研究から導き出された行動原理で、日本語では”実効論”と訳されています。
日本語版『エフェクチュエーション:市場創造の実効理論』(加護野忠男 監訳,高瀬進・吉田満梨訳)が出版されたのは2015年で、エフェクチュエーションは比較的新しい概念ですが、ビジネスでも、既に話題にのぼるようになっています。
これは、エフェクチュエーションのエッセンスである「5つの行動原則」が実務で効果を発揮すると感じる人が多いからでしょう。

以下が5つの行動原則です。(いかにもアメリカっぽい表現ですね。。)

1)手中の鳥の原則
目的を達成するために効果的な方法を発見するのではなく、
今ある経営資源を最大限活かせることを考える。
まず行動!


2)許容可能な損失の原則
最適な戦略を選びリターンを最大化するというような思考ではなく
はじめから「いくらまでなら損してよいか」決めておく。
損切りの決断!

3)クレイジーキルトの原則
可能な所から実行し、そのプロセスで生まれた協力者の特長や強みを柔軟に組み合わせ
そこから新しいものを創造する。
走りながら成長あるのみ!

4)レモネードの原則
「すっぱいレモンをつかまされたら、レモネードを作れ」の格言のように
想定外の事も逆境と悲観せず、逆手にとって利用する。
転んでもただでは起きない!

5)飛行中のパイロットの原則
不確実な未来における予測可能な側面に焦点をあてるのではなく
予想できない未来の中のコントロール可能な側面に焦点を合わせ,パイロットのように、常に注意と活動を怠らない。
事業機会をたぐり寄せるのはその場そのときの人間! 

以上が5つの行動原則です。
確かに私も回りでも、バイタリティ旺盛にビジネスに取組む方々は、この行動原則に基づく言動が多いように感じます。

「エフェクチュエーションによる戦略は、未来が予測不能で、目的が不明瞭で、環境が人間の行為によって変化する場合に有効である。」とサラスバシ-は話しています。
まさに、新規事業開発や新商品開発はそのようなケースばかりです。

起業家のみならず、経営者や組織のリーダも、エフェクチュエーションの行動原則を
ビジネスにとりいれることが必要なのではないでしょうか。

昨日は広島でした。

公益財団法人ひろしま産業振興機構が推進する、
ものづくり企業のネットワーク「ヤマトプロジェクト」の会合に出席するためです。
ヤマトプロジェクトは、広島県の中小ものづくり企業の共同受注グループで、
ものづくりに対する熱い志と技術にすぐれた企業ばかりです。
ヤマトプロジェクト HP 
今回、私は、パネルディスカッションのモデレータとして参加し、導入部分で、合成(二つ以上のものを合わせて一つの状態にする)が重要で新しい合成(Xエックス合成)への挑戦を提案しました。

一番目は、「マーケティング×デザイン」です。
論理的に市場を把握し分析、価値提供の方法論を言語化するマーケティングと顧客を深く理解し新しいものを創造する「デザイン」を“合成”し、あえて“正解を追わず”新しい何かを創り出すことにチャレンジすることが現状打破の第一歩だと考えます。

二番目は「先端技術×職人技」です。
ものづくり中小企業の得意とする職人や現場の経験・勘を切り捨てるのではなく、また頼りきるのでもなく先端技術と職人技を“合成”し中小企業ならではの技を磨く。現場の重要性が再認識されている、今こそチャンスとなるのです。

そして三番目は「ハード×サービス」です。
従来のように。サービスはハードを売るための手段という枠に入れず、ハードとサービスを”合成”しユーザーの利便性やワクワク感を高める情報や知識をハードに組込むなどして、価値を高め、他社に真似され難いNEWハードを創る。そのような志向が大切なのではないでしょうか。

その後の懇親会でも、意見や感想を聞くことができ中身の濃い出張となりました。
ヤマトプロジェクト頑張ってほしいです。

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