技術マーケティング+プラス

技術マーケティンに関わり30余年。仕事・生活、その時々の出来事を感じたままに書いています。

タグ:エフェクチュエーション

「技術マーケティングによる新規R&Dテーマの発掘とその進め方」

月刊研究開発リーダー」2023年12月号に掲載された要約です。 技術情報協会 研究開発リーダー ページ


技術マーケティングとは

技術マーケティングとは、市場のお客様に対して技術を用いて価値を創造することを主活動とするマーケティングの事です。

技術マーケティングは図の示す通り主要な4要素より構成されます。

1 取りまく環境
2 顧客及び顧客の顧客
3 価値の提供
4 製品開発・管理と販路開拓・管理

図1




新規テーマ推進のポイント
技術マーケティングの視点で新規テーマ推進のポイントは以下の2点です。

(1)筋の通った市場化仮説

(2)対話による市場化仮説の検証



(1)筋の通った市場化仮説

個人の思い付きだけでは開発テーマは進みません。
関係者との整合や事業責任者の認可などが不可欠です。
そのためには、価値を創造し届ける道筋を“筋の通った仮説”として持ち、メンバーが納得することが必要です。

筋の通った仮説を立てるには3つ問に明確に応えることです。

1.社会にどのように貢献するのか?

2.だれのために役立つのか?

3.わが社がなぜ行うのか?



1.社会にどのように貢献するのか
企業は社会に支えられ存在していることに異を唱える方はないでしょう。
だとすれば、日頃から私達は、社会の動向に興味を持ち理解しようとしなくてはいけません。
SDGs,ウェルビーイング、デジタルトランスフォーメーション,グリーントランスフォーメーションなどが挙げられます。
これらの環境下での企業の関わり方、役割を俯瞰することを忘れてはなりません。
また、生活者の視点で、社会課題に関心を向け、現場に足を運び、肌で感じ、直観を磨き、想像力を高めることが大切です。

2.だれのために役立つのか
”だれ”の切り口は、企業規模、組織形態、業界、用途など様々ですが、特に用途の想定が大切です。
用途は、使用目的、設置や組込み状況、使用環境、信頼性の程度、耐用年数、操作性などの面から検討します。
技術をブランディング化し技術そのものを、業界や市場に広く告知し、新たな用途のヒントを得る事も有効です。

3.なぜわが社が行うのか
具体的な実現方法や他社との優位性がはっきりしない開発は、わが社が行わなくてもよいのです。
実現方法は、テクノロジーだけでなく、人、物、知的財産、経営者や社員の知識/技能/資格/人的ネットワーク、工場、店舗、設備、機械、システムソフトウエア、特許、実用新案、意匠、商標、著作権、現場の技術、生産プロセス、工法、新素材、アーキテクチャーなどあらゆる経営資源を統合しなくてはいけません。
競合優位性を構築するには、テクノロジーだけでなく経営資源を総動員するのです。
また、優位性は、競合の視点に顧客の視点を加えて評価することが必要です。
さらに .灰鵐札廛函´▲咼献優好皀妊襦´事業性(経済性)を検討し自社のテーマとすべきかどうかを判断します。
これが、ニーズとシーズの結合による事業シナリオであり、筋の通った市場化仮説のエッセンスなのです。


(2)対話による市場化仮説の検証

答えは市場にある
思い込みによる市場との乖離を少なくする唯一の方法は市場と対話することです。
対話方法はアイディア創造、コンセプト創造、発売直前、発売後などステージ毎に異なりますが、文献やネット調査、アンケートなどのほかデザイン思考によるユーザー目線での現場観察や、モックアップやプロトタイプを使うなど自ら汗し、感じることが大切です。
また、必用最小限の仕様(Minimum Viable Product)で発売し市場の評価を受け製品に改善を加え先に進める手もあります。

いずれの場合も“答えは市場にある”と信念を持ち、考えるより対話することを優先し、価値創造していく姿勢が大切です。

実験場をつくろう
私は、開発企業、ユーザー、関係組織が一堂に会せる実験場を設け、集合知を創造し活することが”対話の鍵”であり”価値の源泉”だと思っています。
実験場は、行政主体の実証実験のコンパクトかつフレキシブルな場で、企業のPoC(Proof of Concept)の拡張版のイメージです。

実験場の特徴は、主役はユーザーであり支援者という点です。
現場の独自性を尊重すれば、思わぬ発見につながり、開発企業は、新たなニーズを知り、シーズとの結合が生まれ、魅力的な商品に活かせるのです。
また、実験場を続けていけば、現場のノウハウが深化し経験値や技術力の向上が期待できますし、これが新サービスのヒントになるのです。

図2


いきいきとした現場力
筋の通った市場化仮説とはいえ、間違っていることもあります。
その状況を覚悟し、エフェクチュエーション(Effectuation)を取り入れ、市場と向き合う姿勢が大切です。すなわち、今ある技術や強みを活かしてまず実行し、”出会った人は仲間”の意気で賛同者を増やし、想定外の事は大歓迎、肌で感じたコトを活かすぞ!とスピード感を持って進める。意志決定は、前例や組織の力学に従うのではなく、メンバーが意見を出し合い、感性や情熱、専門性、多様な解釈を活かしてチャレンジし時には中止などダイナミズムに決断しプロジェクトを進めて行く。このような現場の力が会社を支えるのです。


「わかっちゃいるけど、なかなか..。」
と言われそうです。定着させるには手間がかかるし、障壁もあります。

既に、デザインレビューなど開発プロセスに組み込んで運用している企業はありますが、まだ定着していない企業は、開発の取組姿勢を見直し、はやりのツールや手法に安易に妥協せず、自社にあった仕組みをつくり、業務に落とし込み、実践していただきたいと思います。

日本のものづくり力を向上するのは現場です。
ものづくりは、現場から手放すわけにはいけません。

関西圏の緊急事態宣言が解除されました。

新型コロナウイルスの影響で人々の意識、行動、生活スタイルが変容しています。
今は正に変換点、現下の困難を乗り越え変化に対応すべくリスタートの時。

先の予測が困難で変化が激しい時代は、自社の資源を棚卸し、出来る事からはじめ実践によりマーケットで学習し力をつけ前に進む、現場主義、スピード重視の経営が必要です。

今こそ、 サラスバシーのエフェクチュエーションの行動原則を活かす時。
エフクチュエーションの実践では、大企業の場合、マネージャーが率先しようとしても、経営が理解を示さず決裁がおりないとか、中小企業では、また社長の独断専行だと、社員は他人事のように受け止めて組織全体の合意形成が上手くいかないケースが見られます。

組織力を活かして事を前にすすめるには、リーダーが未来像を描き方向性を示すことが大切です。(今は、短期間でやりきる)

blogpic20524



私は、未来像を描くにはホライズンスキャニングが役立つと考えています。
ホライズン・スキャニングは、政治・経済・社会、技術などの観点から抽出した事象を分析し変化の兆候を可視化する点に特徴があり、国の政策検討にも活用されています。

企業単独で、社会変化の兆候を探索するのは大変な労力などので、この点は、国などが実施した調査研究資料を活用し、自社の視点で社会変化仮説として仕上げればよいのです。
参考:日本学術会議 日本の展望2020検討委員会「未来からの問い」

ホライズンスキャニングのもう一つの特徴は社会変化仮説と技術の進化を掛け合わせる点。
技術の進化といっても多分野に及ぶので、企業ではコア技術の分野などに絞り込み技術の進化を想定するのが良いでしょう。

社会変化仮説と技術進化を掛け合わせ、将来求められる社会的価値を発想するのです。
この検討プロセスにより、メンバーの知を結集することになり、独自性のあるものになります。
そして、創出した複数のアイディア整理しを統合し、社会的価値アイディア創出への貢献方向を決定付けるのです。

blogpic10524



ホライズンスキャニング×エフェクチュエーションによる実践 

これからの、リスタートは、ホライズンスキャニングにより描いた将来の方向性を社内やステークホルダーと共有し、今は、エフェクチュエーションの行動原則でスピード感を持ってビジネスを進めていく。今のための将来、将来のための今、価値ある方法論だと思います。

私も、今の気持ちを大切に、リ・スタートしたいと思います。

これからの商品開発は、エフェクチュエーションとSTPマーケティングを最適化し商品開発プロセスに組込むことが重要です。これは、STPマーケティングを基盤とした商品開発の進化版です。

STPマーケティングによる商品開発は
〇夏する市場(業界)を顧客・競合・自社の視点でビジネス環境を調査・分析し市場を細分化(Segmentation)
⊆社のビジネスにとり魅力的な分野を選定(Targeting)
A定分野での競争関係や顧客状況から、最適なポジションを設定(Positioning)
という´↓のステップを踏みながら極めて論理的に進められます。

最近は(私のまわりでは)経験と勘と度胸によるKKD開発を卒業し、STPマーケティングによる商品開発を進めている企業が多くなっています。(私もそれを支持し推進してきました)

問題は、STPマーケティングを開発プロセスに単純に取入れてもヒット商品が生み出せない点にあります。
精緻にSTP分析をすることで突破口が見いだせないほど、社会は複雑に、そして、不確実になっているのです。

エフェクチュエーションは不確実な市場でより効果を発揮する事業の考え方・行動原理です。
したがって、エフェクチュエーションとSTPマーケティングを最適に合成することで、時代に即した、商品開発プロセスが構築できるのではないでしょうか。

商品開発における、エフェクチュエーションとSTPマーケティングの合成のポイントは、開発のプロセスでそれぞれの良い点を使い分けることです。
前回のブログ、エフェクチュエーションとSTPマーケティングの関係の図を参照ください。(前回のブログ)

商品開発のプロセスを技術開発と市場開発の視点で捉え、商品開発の出発点から商品化までの軌跡を
みた場合、商品開発のスタートの時点では、商品を具現化する技術情報も市場の情報も充分な状態にはない場合ほとんで商品化の道筋は幾通りも想定できます。
従来この段階からSTP分析が進められるのですが、それに費やす、時間・労力を押さえ(これに時間がかかり企画担当者が疲弊していまっている事が多く見受けられます。)
開発初期の段階でエフェクチュエーションの原則を取り入れ、テストマーケティングを進める。

テストマーケティンの結果をうけて、その成果を活かし、STPマーケティングを効率的に推進する。
また、開発を前に進めている途上で、予測外の事態が生じた場合は、エフェクチュエーションの原則のクレイジーキルトの法則やレモネードの法則を思い出し、開発を前に進める(もしくは断念する)力が重要なのです。



商品開発・管理学会第30回全国大会が、8月31日、京都大学で開催されました。

統一論題テーマは:ロボット、ものづくりネットワークです。

基調講演は
京都大学工学研究科 松野文俊教授とJOHNAN株式会社山本光世代表取締役社長が登壇し、松野教授は「ロボット革命の気配」について、ロボットの起源や発展経過、現在のビジネス用途、そして今後の動向を解説下さいました。
また、山本社長は、JOHNAN株式会社の新規事業展開や京都ものづくりバレー構想の概要と、今後の取組みについて話されました。
お二人のお話は、日本のものづくり産業は、厳しい環境に置かれているのは間違いありませんが、決して悲観する状況ではなく、まだまだ世界をリードする力を持っていることを再認識させるような興味深いテーマで、わくわくする内容でした。


統一論題・自由論題報告では、私も「ものづくり中小企業の新市場展開を目指した新商品開発」をテーマに発表しました。(おかげさまで、優秀発表賞を受賞しました!)


ものづくり中小企業の新事業への取組み意欲は高く、新商品を投入し新分野の開拓を試みる企業が多く見られようになっていますが、現実には、新事業展開がうまくいかず中止・撤退する企業も少なくありません。
新市場は外からみると魅力的ですが、現実には、不確実性が高い市場であり、新商品を開発し事業化を図るのは容易なことではありません。

今回の発表では
S. サラスバシが提示した、成功した起業家の研究から導き出された考え方、行動原理「エフェクチュエーション(Effectuation)」が、自社の技術を出発点として新商品を新市場に展開にするにあたり有効であるとの仮説の基、商品開発の実務においては、エフェクチュエーションとSTPマーケティングを最適化し商品開発プロセスに組込むことで、効果を発揮することを提言しました。


(商品開発における、エフェクチュエーションとSTPマーケティングの関係は下図のようなイメージです。)

図1エフェクチュエーション


これを実践するには、エフェクチュエーションとSTPマーケティングを併用するための
フレームや指標が求められますが、この点については、今後ブログでもお伝えしたいと思います。



*エフェクチュエーションの 5つの行動原則は前回のブログでも書きましたが
1) 手持ちの鳥の原則
2) 許容可能な損失の原則
3)クレイジーキルトの原則
4)レモネードの原則
5)飛行中のパイロットの原則
です。

これからの商品開発の鍵は「エフェクチュエーション」です。

「エフェクチュエーション Effectuation」はアメリカの学者サラス・ サラスバシーが提示した成功した起業家の研究から導き出された行動原理で、日本語では”実効論”と訳されています。
日本語版『エフェクチュエーション:市場創造の実効理論』(加護野忠男 監訳,高瀬進・吉田満梨訳)が出版されたのは2015年で、エフェクチュエーションは比較的新しい概念ですが、ビジネスでも、既に話題にのぼるようになっています。
これは、エフェクチュエーションのエッセンスである「5つの行動原則」が実務で効果を発揮すると感じる人が多いからでしょう。

以下が5つの行動原則です。(いかにもアメリカっぽい表現ですね。。)

1)手中の鳥の原則
目的を達成するために効果的な方法を発見するのではなく、
今ある経営資源を最大限活かせることを考える。
まず行動!


2)許容可能な損失の原則
最適な戦略を選びリターンを最大化するというような思考ではなく
はじめから「いくらまでなら損してよいか」決めておく。
損切りの決断!

3)クレイジーキルトの原則
可能な所から実行し、そのプロセスで生まれた協力者の特長や強みを柔軟に組み合わせ
そこから新しいものを創造する。
走りながら成長あるのみ!

4)レモネードの原則
「すっぱいレモンをつかまされたら、レモネードを作れ」の格言のように
想定外の事も逆境と悲観せず、逆手にとって利用する。
転んでもただでは起きない!

5)飛行中のパイロットの原則
不確実な未来における予測可能な側面に焦点をあてるのではなく
予想できない未来の中のコントロール可能な側面に焦点を合わせ,パイロットのように、常に注意と活動を怠らない。
事業機会をたぐり寄せるのはその場そのときの人間! 

以上が5つの行動原則です。
確かに私も回りでも、バイタリティ旺盛にビジネスに取組む方々は、この行動原則に基づく言動が多いように感じます。

「エフェクチュエーションによる戦略は、未来が予測不能で、目的が不明瞭で、環境が人間の行為によって変化する場合に有効である。」とサラスバシ-は話しています。
まさに、新規事業開発や新商品開発はそのようなケースばかりです。

起業家のみならず、経営者や組織のリーダも、エフェクチュエーションの行動原則を
ビジネスにとりいれることが必要なのではないでしょうか。

↑このページのトップヘ