hitsukaiten こんにちは。
 最初のうちは勢いで制作できたYOUTUBE動画ですが、だんだんネタが枯渇してくると難しくなってきます。
 お伝えしたいネタ自体はたくさんあるのですが、それを一本の動画にまとめるのがなかなか厄介。

 今までは”ゆっくりムービーメーカー”に直接アタマの中の台本を記述していきましたが、それが難しくなってきたのでいったんブログの投稿記事を書いてからそれを動画化する、という手法を取ってみようと思います。

 今回はゆっくり動画「第10回いつの間にかなくなってしまった境界標は復元できるのか?」からその続き、境界標復元の方法と限界についてです。

【2020/09/15:動画アップしました】



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◆ 境界標とは?           
 今まで簡単に境界標と言ってきましたが、境界標とは何か?といったことをかいつまんで説明します。

1.筆界を表すもの
 境界標を一言で表すと「筆界を目で見てわかるようにしたもの」です。
 筆界を図面や座標でいくら表現したところで、現実の土地の境界はどこか?というのはわかりづらいので、現地に目印をしたものが境界標です。
 本来なら筆界標と呼ぶべきなのですが、昔から境界標と呼んでいるのでそちらの方が通じやすいのでそう呼んでます。

2.恒久的地物で表す
P1030878 境界標は筆界を表すものですから、筆界の場所が判れば何でもいいのです。
 ただ、簡単になくなっても困るので丈夫なものである必要があります。
 これを我々は「恒久的地物」と呼びます。

 昔は大きめの石や樹木などを境界標として使っていたこともあります。
 そういったモノも恒久的地物と言えますが、少々おおざっぱなかんじです。
 なので現代の不動産登記ではコンクリート杭、金属プレート、金属鋲を使用するのが一般的です。
 ただ使用する境界標はケースバイケースでプラスチック杭などが使用される場合もあります。

3.測量誤差
 測量には必ず測量誤差が発生します。
 よく測量の表現で「1ミリの誤差も許されない」とか書かれていますが、誇大広告です。ぶっちゃけウソです。
 気温や湿度によって基準点や境界標が設置されているアスファルト、コンクリートは伸縮しますし、光波測距儀ももともと数ミリの誤差(器械定数という)があるのです。
 そのため測量には「誤差配分」という手法があり、誤差の影響をマイルドにする(なくすことは不可能)のです。

4.設置誤差
 そして境界標を設置するにも設置誤差があります。
 どんなに慎重に作業しても、誤差なく設置するのは困難です。ぶっちゃけムリです。
 仮に寸分の狂いなく設置できたとしても、その後の気象や経年により変化するのは測量誤差と同じです。

5.座標が優先
 なので、登記の地積測量図が座標で表現されている場合、原則的に座標を優先します。
 「原則的」なので、測量調査や聞き取り調査などの結果で変化はします。
 しかし、境界標は測量誤差と設置誤差
 地積測量図の座標は測量誤差のみなので、基本的には誤差が少ない方を優先します。

5.民法的意義
 境界標設置も人のすることです。
 ひょっとしたら誤差ではなく、人為的な設置ミスがあるかもしれません。
 じゃあ、境界標を勝手に正しい位置に動かしてもいいのか?といえば、そうとも言えません。
 その場合、不動産登記法上の筆界を表していなくても、土地所有者当人同士の所有権界を表す境界標、と見ることができるからです。

◆ 亡失境界標の復元手順          
 いつの間にかなくなってしまった境界標は復元できるのか?その方法は?
 復元可能かどうかは現場の状況や収集できる資料によります。
 方法については各調査士により違う場合もありますし、地方によっても違います。
 特に近畿地区は「筆界確認書」の重要性が他の地域より高い、という特殊性があります。
 なので、ここでの話は近畿地区限定の話が入っている、という前提で読み進めてください。

1.現地踏査・見積り
 まずは登記記録や基準点資料を下調べして、現地踏査に赴きます。
 そこで土地の状態、境界標残存の有無、基準点の確認などをして、作業と報酬の見積りをします。
 この時点ではかなり不確定要素が多いですが、できるだけ正確な見積もりを出します。
 見積り段階で近隣との筆界確認書の有無はとても重要です。
 作業が大幅に短縮できる可能性があります。

2.現地測量調査
 近隣に測量調査の声がけをしたのち、現地を実測します。
 見積りの段階で測量範囲はある程度決めていますが、実際の測量に入ると予定外の作業が発生することがあります。

3.測量結果と資料の突合せ
 測量結果と既存の資料などを突き合わせ、当初の予想との差異を確認します。
 ここで妙な結果が出れば再度測量に赴くこともあります。
 結構ドキドキする作業です(笑)

4.隣接地所有者への説明、立会い
 だいたい満足いく調査結果になったら隣接地所有者に調査結果を説明し、必要があれば境界を現地で立会確認してもらったり、設置に立ち会ってもらいます。
 ここで隣接地所有者が行方不明だったり、立会い拒否などをされると作業がデスマーチ化します。
 これが最大の不確定要素です。

5.境界標の復元(筆界確認書の取りかわし)
 無事立会い、筆界の確認が完了すれば、境界標を復元設置します。
 必要があれば、筆界確認書を取り交わします。

◆ 筆界確認書の意義          
 ここで筆界確認書の取りかわしを「必要があれば」としました。
 これは筆界確認書を必要としない地域もあれば、近畿地区でも必要がない場合があるからです。
 それには筆界確認書の微妙な立ち位置が関係します。

1.法定添付書類ではない
 登記申請には添付すべき書面(オンラインの場合は情報)が定められていますが、登記の添付書類に筆界確認書はどこにも書かれていません。
 なので添付しなくても登記は却下されません(できません!)。

2.参考資料にすぎない
 筆界は「公法上の境界で土地所有者の合意によって動いたりしない」という建前ですから、筆界確認書があろうがなかろうが筆界には影響しないはずです。
 なのに法務局が筆界確認書を求めるのは責任逃れ当事者の意向を尊重するためです。
 いくら登記官が「ここが筆界」としても当人同士がもめてて、法務局に怒鳴り込まれると登記官が困ってしまうからです。
 なので筆界確認書を求めて予防線を張りたいのです。

3.実は筆界確認書では筆界を確認していない
 そもそも筆界は公法上の境界ですから、決めるのは行政です。
 なので筆界確認書は名称こそ筆界確認書と言ってますが、当事者が立会確認した時はまだ筆界ではありません。
 登記官が登記をして初めて筆界となるのです。
 なので厳密には「筆界であろう場所を確認した書面」ということになります(笑)
 または「当事者たちはここが筆界だと思ってる書面」とかwww

4.筆界確認書は有印私文書
 なので筆界確認書は単なる有印私文書。つまり私人の約束を取り交わした覚書のようなものです。
 ということは、そこで確認した「筆界(であろう場所)」は何らかの登記がなされない限りはいつまで経っても単なる有印私文書で取りかわした「筆界であろう場所」のままなのです。
 つまり、どちらかの相手方が変わってしまえば効力を発揮しない恐れがあるのです。

5.筆界確認書に実印は必要か?
 これもよく言われることですが、法定添付書類ではなく、単なる私文書なので押印する印鑑は実印である必要はありません
 ただし、実印+印鑑証明書がないと、確認した人が本当に名義人なのか?といった疑念が残ります。
 実印+印鑑証明書があっても誰かが勝手に実印を押して、勝手に印鑑証明書を取る、ということもなくはないですが、一定の関所を通っているので一般的には「真正が担保できている(=正しいことが証明されている)」と見ます。
 特に年月が経過したり、相続して代が変わったりすると「本当にウチのオヤジが押したのか?」ってことになることがあります。

◆ どこまで正確な復元が可能か?     
 では、どこまで正確な境界標復元が可能なのでしょうか?
 下の表は国土調査法施行令に示されている精度区分と誤差を表した表です。

(1) 国土調査法施行令別表第5(1筆地測量および地積測定の誤差の限度)

精度区分

筆界点の位置誤差

筆界点間の図上距離または

地積測定の公差


平均二乗誤差

公差

計算距離と直接測定による


距離との差異の公差


1

2

6

0.020m + 0.003 √Sm + a

(0.025 + 0.003 4F) √F



2

7

20

0.04m + 0.01 √Sm + a

(0.05 + 0.01 4F) √F



3

15

45

0.08m + 0.02 √Sm + a

(0.10 + 0.02 4F) √F



1

25

75

0.13m + 0.04 √Sm + a

(0.10 + 0.04 4F) √F



2

50

150

0.25m + 0.07 √Sm + a

(0.25 + 0.07 4F) √F



3

100

300

0.50m + 0.14 √Sm + a

(0.50 + 0.14 4F) √F



備考  1 精度区分とは,誤差の限度の区分をいい,その適用の基準は,国土庁長官が定める。
    2 筆界点の位置誤差とは,当該筆界点のこれを決定した与点に対する位置誤差をいう。
    3 Sは,筆界点間の距離をメートル単位で示した数とする。
    4 aは,図解法を用いる場合において,図解作業の級がA級であるときは,0.2に,その他である
      ときは0.3に当該地積測量図の縮尺の分母の数を乗じて得た級とする。図解作業のA級とは
      図解法による与点のプロット誤差が0.1ミリメートル以内である級をいう。

    5 Fは,1筆地の地積を平方メートル単位で示した数とする。

 ちなみに不動産登記法では市街地の制度区分は甲2とされています。
 つまり筆界点の位置誤差は平均二乗誤差で7cm、公差は20cmです。
 一般的なブロック塀が10cm厚なので意外と大きいと感じますよね。heibansokuryo
 ただこれは平板測量時代や座標が表されていない図面のことまで考慮した公差です。
 座標が組まれた資料ならもっと正確な復元が可能です。

 しかし、たとえ座標があってもミリ単位まで追い込んだ境界標復元はかなり困難です。
 復元箇所が1カ所だけならまだしも、複数点ある場合はぶっちゃけ不可能です。
 それは上でお話した3つの誤差(測量誤差、設置誤差、器械定数)がありますし、その後の経年変化もあります。
 私の住む神戸もそうですが、大きな地震があったところでは地盤や地面が動いてしまっている可能性もあります。

◆ GNSSを使えば正確な復元は可能か?     
 よく言われるのが
「GPS(GNSS)を使えばパパッと復元できるっしょ!」
※GNSSは衛星を使った測位システムの総称。GPSはその中の米国のシステムのことを指すのですが、衛星測位システムの総称のような使われ方をしている。
 これ、よくある誤解なのですが、GNSSを使ってもスパーンと1点が測位できるわけではありません
 何度も何度も測位して最大公約数的位置を割り出すのです。

・GNSS測位はバーチャル
 しかもGNSSで割り出される測位は理論値です。
 凸凹している地球を回転楕円体というバーチャル地球に引き直して測位値を出しています。
 さらに、公共座標は球体である地球を平面に置き換えた平面直角座標と呼ばれるものに変換されているのです。
 その解説は以前の記事を参照してください。


 なので、実際の現場において境界標復元をミリ単位まで追い込むことは実際不可能だと思います。
 もし、「お前は勉強が足らん!ミリ単位まで追い込めるぞ!」という専門家がいらっしゃいましたら、ぜひご教示願いたいです。

 さあ、これからこれを台本に動画を作るか…(´・ω・`)


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兵庫県神戸市中央区相生町二丁目3番13号
いもと登記測量事務所
土地家屋調査士・行政書士 井 本 秀 典
TEL 078-371-5000 FAX 078-371-0349
http://www.imoto-office.com/
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