測量系の勉強・仕事を始めると最初にぶつかるのが数学系座標と測量系座標。
数学では横軸がX軸、縦軸がY軸ですよね。
でもなぜか測量では縦軸がX軸、横軸がY軸となるんですよ。
これがね、最初はけっこうアタマに入りづらい。
なんてったって、小学校でグラフを習って以来、ずっと横軸がX、縦軸がYで刷り込まれてますからね。
今回はその数学とは逆の測量系座標や公共座標として利用されている平面直角座標。
あとそれに絡むGNSS(GPSの一般名)について軽くお話します。

【2020.10.08追記】今回の記事のYOUTUBE動画をアップしました。


◆ X軸とY軸が数学系とは逆の測量系座標


平面直角座標は原点をX=0、Y=0とし、原点で縮尺係数が0.9999、原点から130km地点で1.0001となるようになっています。

細かい説明はややこしいので割愛しますが、カーナビやスマホは数個の衛星(基本的に4個以上)から受け取った情報(主に距離、方向)を元にその交差する点を割り出し、それを内蔵している地図情報と照らし合わせて補正をかけ、アクティブに測位し続けます。
カーナビなどの測位は単独測位といい、ポイントはスピードです。 動き続けるクルマなどに搭載する機器の測位に何十分もかけるわけにはいきませんから、大まかな測位をしたらあとはアプリケーションなどを駆使して補正をかけるんです。

一方、測量で使う測位方法は技術的には同様のものを使いますが、電子基準点と測量ポイント複数個を一緒に測位して、その位置関係を測位します。これを相対測位といいます。
様々な方法があり、それぞれで測位にかかる時間・精度は違いますが、現在基準点測量などで利用されているスタティック法、RTK法では100万分の1(10kmで1cm)といった精度が期待できます。
ただし測位に時間がかかり(20分〜数時間)、カーナビのような動き続けるものの測位には不向きです。
◆ GNSS測量はバーチャル?
引用:Wikipedia
これは地球の凹凸を1万倍に引き伸ばして強調したモデル図ですが、地球はこんなにも凸凹なのです。
でゎでゎ
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いもと登記測量事務所
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測量系と数学系が逆なので、過去に何度か依頼人から「納品された図面の座標がおかしい気がする」と連絡をいただくことがある。
最初はちょっとびっくりするんやけど、話を聴いていくと測量系と数学系の取り違えだったりします。
で、その後決まって「なんでそんなことになってるの?」って訊かれるんですよね。
◆ 数学系座標
数学系は横がX軸、殺陣がY軸です。
こんな感じですね。
基準にしている方をX軸、それに対応する数値をY軸にする、ってことです。
グラフを表す方程式も
y=2x-3
と表されます。グラフにするとこうなります。
これはxに数値を入れれば(代入すれば)yの値が出る、という意味です。
これの場合はXが1の場合は2+3でYが5となり、Xが2の場合は2×2+3でYは7となるというグラフです。
なので横軸をX軸、縦軸をY軸にしているんだと思います。
◆ 測量系座標
これが測量系は逆になります。
グラフはこうです。
数学系は数値の変化を表すことが多いですが、座標系は場所を表すのに使います。
で、ここが一番のポイントだと思うのですが、測量では真上が北になる、ということです。
図に表すとこんな感じです。

なので、南北をX軸、東西をY軸とする方が何かと都合が良かったんだと思います。
これはあくまでボクの私見で、試しにググってみましたが、あまり明快な解答には行き当たりませんでした。
◆ 平面直角座標とメルカトル法
みなさんはメルカトル法というのをご存知でしょうか?
丸い地球を平面地図にする方法の一つなのですが、これは球体の地球を一度円筒にした後、切り開いて展開する、という方法で図化する方法です。
この方法は上のように両極部分を引き延ばすように展開するので、緯度が上がるほど図上面積が拡大してしまいます。
なのでグリーンランドがオーストラリア大陸よりも大きくなってしまったりするのが欠点です。
で、測量の時に公共座標として使われる平面直角座標なのですが、その名の通り球体である地面を平面にして座標化しています。
これにはメルカトル法が使われています。
で、このメルカトル法には面積・方位などに歪み(ひずみ)が生じるので、その弊害を小さくするために日本の国土を19に区分して、それぞれで座標系を作ることにしました。
ちなみに私の事務所がある兵庫県はⅤ系を使います。
◆ 平面直角座標とは

平面直角座標は原点をX=0、Y=0とし、原点で縮尺係数が0.9999、原点から130km地点で1.0001となるようになっています。
縮尺係数とは、例えば一部を切り取ったボールの皮をグチャッとつぶした時に、中心付近の縮み方が0.9999倍、端っこの方が1.0001倍になる、ということです。
ちょうどこれがバランスするのは原点から約90㎞の地点です。
ちょうどこれがバランスするのは原点から約90㎞の地点です。
◆ 平面直角座標とGNSS
よく「こんな筆界、携帯なんかのGPSでチョチョイのチョイやろ?」とか、「スマホのGPSアプリで正しいかどうかが出せますか?」なんてことを言われることがあります。
二十ン年位前までなら米国の戦略的理由からスクランブラーをかけられていることから数十メートル単位で誤差が発生するのでそんな話にもならんかった。
でも最近はそのスクランブルもなく、日本の準天頂衛星システムも稼働していることから、そういう話が出るんよね。
でも、カーナビやスマホのGPS(GNSS)は根本的に測位する方法が違います。
・単独測位

細かい説明はややこしいので割愛しますが、カーナビやスマホは数個の衛星(基本的に4個以上)から受け取った情報(主に距離、方向)を元にその交差する点を割り出し、それを内蔵している地図情報と照らし合わせて補正をかけ、アクティブに測位し続けます。
カーナビなどの測位は単独測位といい、ポイントはスピードです。
・相対測位

一方、測量で使う測位方法は技術的には同様のものを使いますが、電子基準点と測量ポイント複数個を一緒に測位して、その位置関係を測位します。これを相対測位といいます。
様々な方法があり、それぞれで測位にかかる時間・精度は違いますが、現在基準点測量などで利用されているスタティック法、RTK法では100万分の1(10kmで1cm)といった精度が期待できます。
ただし測位に時間がかかり(20分〜数時間)、カーナビのような動き続けるものの測位には不向きです。
◆ GNSS測量はバーチャル?
GNSSで観測するのは距離と方向です。
そのデータを地球上の点として計算するのですが、地球には凹凸があります。
地表面の山や谷、海面の干満などで高さが違うことは誰もが見てわかりますが、実はそれ以外にも凹凸が存在します。

これは地球の凹凸を1万倍に引き伸ばして強調したモデル図ですが、地球はこんなにも凸凹なのです。
これは地球の重力のムラ(重力加速度)のせいです。
地中に埋まっている物質の重量により、場所によって重力(加速度)が違うです。
万有引力の法則により、物質は互いに引き合うことがわかっています。
地球の場合は地球の引力によりほとんどの重力が作られていますが、赤道付近では遠心力によりその引力がちょっとだけ相殺されています。
つまり、北極付近より赤道付近の方が体重が軽くなるんです(笑)
それ以外にも地面にすごく重いものが埋まっていれば、それが引力を発生させます。
遠心力と違い地中に埋まっているそのものは引力を加算するので、そこだけ重力が強くなるのです。
また、重いものが海底に埋まっているとそこに海水が集まるので海面が盛り上がります。
それらを計測すると場所により凹んだところ、盛り上がったところが発生し、キレイな球体(楕円体)にならないんです。
それを極端に書いたのが上の絵です。
・地球楕円体を仮想
場所によってその凹凸を考えると計算がめちゃくちゃ大変なので、ある程度きれいな地球表面を仮想しました。
それが地球楕円体、と呼ばれるもので、元となった理論、データによりいくつかの地球楕円体があります。
- ベッセル楕円体 ユーラシア大陸のジオイド曲率とよく一致する。日本測地系にて採用されていた。
- GRS80楕円体 準拠楕円体の一つ。世界の測地系で最も広く使われている。
日本では2002年4月1日から世界測地系として採用。 - WGS84楕円体 海域測地系の多く用いられる。GRS80に近似。
他にもありますが、日本に関連深いのはこの3つぐらいでしょうか。
日本では従来はベッセル楕円体を準拠楕円体とした日本測地系により座標が組まれていましたが、このベッセル楕円体はユーラシア大陸の曲率とよく一致する一方、日本近辺にはあまり一致していなかったのです。
でも、もともとの理論や機材が欧州から入ってきた関係上、ずっとその座標を使っていたのですが、いよいよ不都合が増えてきたので、2002年4月1日からGRS80楕円体を準拠楕円体とし、それに基づく座標に変更しました。
これを世界測地系と呼んでいます。
この日本測地系から世界測地系になったことにより、東京付近では400m(場所によって違う)も変化しました。
また、GNSSは3Dデータなので当然高さも求めます。
そして凸凹の地球表面(ジオポテンシャル面)と準拠楕円体都は当然ずれ(誤差)があります。
これをジオイド高というのですが、これにより高さもどこを基準にするのか?ということがあります。
こういったことを考えると、GNSS(GPS)で測量するのもけっこう難しい問題があるのです。
◆ まとめ
話がちょっと面倒なところに行ったのでざっくりまとめます。
- 測量系座標:数学系座標と違い縦軸がX軸、横軸がY軸になっている
測量系座標は真上(12時方向)が北であるため、縦軸をX軸とした方が使いやすい - 平面直角座標:球体の地面を図面で使いやすくするために、登記ではメルカトル法による平面直角座標を使っている
- GNSS(GPS)の地球はバーチャルなもの:これはちょっと正確ではありませんが、計算の量や速度の関係でバーチャルな地球を想定して運用されている
- 地球は場所によって重力が違う:地球は場所によって重力が違います。正確には重力加速度ですが、面倒なので一般的には重力と覚えても間違いじゃないでしょう。
極付近と赤道付近で0.5%程度違うそうです。60㎏で300g相当です。けっこう違いますね。赤道ダイエット?
今回は地学のさわり部分が入っててちょっと面倒でしたが、まとめを憶えれば概ね合ってるんじゃないかな?
平面直角座標の話としてはかなり以前ブログ記事にしているので、よかったらそちらも参考にしてください。
でゎでゎ
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