先日、特別支援学級担当の先生達に、
「インプロ・ワークショップ」を行ってきました。
今回、このお話を持ち掛けて下さったのは、
都内にある小学校で教員をされている石田明人さん。
ご自身がお勤めの学校で、同僚達にインプロを体験してもらいたいと
お声掛けくださいました。
実は、石田さんはインプロジャパンのパフォーマンスクラスに、
4年以上も通ってくださり、インプロジャパン主催の公演にも何度か
出演し、舞台経験もあるインプロパフォーマーでもあります。
実施を終えて、石田さんに今回の実施について、
また学校現場でのインプロの活用について、
お話を伺ってみました。
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インプロジャパン:
今回同僚の先生方にインプロを体験してもらいたいと思った経緯と
その目的を教えてください。
石田さん:
私は今、小学校の情緒障害等通級指導学級という、主に発達障害をもつ
子ども達が週に1、2回通ってくる学級の担任をしています。
私達の学級に通ってくる子ども達の多くが困っているのは、
友達とのコミュニケーションが上手くとれないことです。
私は子ども達のコミュニケーションスキルを伸ばすために、
インプロを使ったワークをすることがあり、
同僚の先生方も真似をしてやってくださることがあります。
しかし、先生方は私が行うインプロを使ったワークしか見たことがないので、
是非、本物のインプロに触れて、子どもとの関わり・指導に役立てて欲しいと
思いました。
また、そもそも、私も含め教員自身がコミュニケーションに自信がなかったり、
自分のコミュニケーションの癖に気が付いていなかったりすることも多いので
す。ですから、自分自身でインプロを体験することで、自分のコミュニケーショ
ンの仕方と向き合って欲しいと思いました。
インプロジャパン:
実際に実施されてみて、いかがでしたか?
石田さん:
子どものコミュニケーションスキルは、コミュニケーションを体験することでし
か獲得できませんが、教員の指導のスキルも同じです。
今回、即興で関わり創造する「インプロ」を実際に体験したことで、
教員の指導スキルも向上したと思います。
同時に、1回の体験では、まだまだ経験不足であるということも感じました。
是非、継続的にワークショップを受けたいと思いました。
インプロジャパン:
石田さんは、何年間もインプロジャパンのワークショップに通ってくださり、
またステージに立つパフォーマンスも経験されていますが、
その経験は子ども達とインプロをする上で、どのように活かされていると
お考えですか?
石田さん:
人間、本当に追い込まれないと変われませんよね。
台本も打ち合わせもない状態で、ステージに立つ。
目の前のお客さんを楽しませなければいけない。
そういった状態に追い込まれて、初めて
「人が楽しいと思うのはどのようなことか。」
「自分は他者とどのようなコミュニケーションをとっているのか。」
「心地よいコミュニケーションとはどのようなものか。」
といったことを考えることができました。
目に見えない、しかし今目の前で行なわれているコミュニケーションについて、
それまでよりも客観的に捉えることができるようになったと思います。
そのことで、子ども達とのコミュニケーションの取り方で、
どこを変えればより良いコミュニケーションが生まれるか、
を考えることができるようになったと思います。
インプロジャパン:
まさに、石田さんがインプロパフォーマーだからこそできる子ども達とのコミュニケーション、
授業がそこにあるのですね。
ちなみに、子ども達とインプロを活用してどのようなワークを行われていますか?
また、実際にやってみて、どのような発見がありましたか?
具体的な事例があれば教えて下さい。
石田さん:
「連想ゲーム」は、ウォーミングアップとして、
「ワンワード」や「はい、そうしよう(Yes,Let’s)」は、他の人のアイディア
を受け入れ、肯定的なアイディアをつなげていく練習として行います。
その他に「チャンスゲーム」なども行っています。
発見としては、例えば、「はい、そうしよう(Yes,Let’s)」では、
相手の提案を受け入れ、同じ動作をします。自分がやっている時には、
当たり前のこととしてやっていましたが、ある先輩から、これはミラーリングと
して相手に好印象を与え、円滑なコミュニケーションに繋がると言われました。
そういう意味でも、インプロのゲームは、よくできているなあと思いました。
インプロジャパン:
今後、学校現場で、インプロをどのように広げていきたいですか?
また、もし夢や目標があれば是非聞かせて下さい。
石田さん:
私の経験上ですが、少し前の子ども達はコミュニケーション能力が高い子が
多かったように思います。子ども達は自分達で人間関係を作っていけるので、
担任はトラブルが起きた時などに少し調整をしてあげれば良かった。
しかし、今は、すぐに攻撃的なやりとりになったり、修復の難しい関係になって
しまったりすることがあります。それは、遊びの中でコミュニケーションを学ぶ
機会が圧倒的に少なくなってしまったからです。
発達障害のあるなしに関わらず、今の子ども達は、どの子もコミュニケーション
のスキルを学ぶ機会を新たに作ってあげる必要があると思っています。
その中に、インプロを使った活動を取り入れていきたいと考えています。
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今回、石田さんからの一番のご要望は、
先生方に、「インプロ」の感覚を肌で感じ、
その感覚を身につけて欲しいとのことでした。
「インプロ」は答えがなく、「今」あることを受け入れて、
そこに『ナニカ』を創造していきます。
石田さんの熱い想いを受け、
目の前の子ども達の発想、佇まい、しぐさ、反応を活かして、
関係、場づくりのみならず、子ども達の可能性を創造する
「インプロ」的思考を、先生方に身につけていただきたいと、
ワークショップを行ってきました。
実施を通して、ツールであるインプロのゲームのやり方に捉われず、
まずはインプロでパフォーマンスすることを楽しみ、
その中で、ご自身のコミュニケーションの癖や関わりについて発見をしてくださっている姿に、
とても感心しました。
そして、また、だからこそ、ご参加の先生方と一緒に、このワークショップを
創造していたと言っても過言ではありません。
「インプロ」はいつだって台本がありません。
是非、「インプロ」の創造する感覚で、目の前の子ども達と先生方との世界・
物語を創造していって欲しいと思ったワークショップでした。
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