2017年09月14日

池上奈生美コラム 〜「必要のない人はいない」〜 

「◯◯がいてよかった〜!」
これは、どのクラスでもよく聞かれる言葉です。
キッズクラスでも大人のクラスでも、です。

先日のクラスで、シーンの中、
一言も発しなかったメンバーがいました。
登場したのも一瞬です。
でも、その一瞬でシーンが大きく動きました。
終わってから、皆がそのメンバーに、
「すごいよかった!」「ありがとう」と言っていました。
あとで聞くと、そのメンバーは、
はじめ
「シーンが上手くいっているので、
自分がいなくてもいいのではないか。
無理矢理入ったらかえって邪魔になるのではないか。」
と、思っていたそうです。
でも、少しでも自分も皆と一緒に何かをやりたいという気持ちと、
なぜ、今、ここにいるのかという想いが、   
一瞬の衝動を起こしました。

もし、その瞬間が見逃され、彼の動きに誰も関わらなければ、
彼は、「余計なことをしなければよかった。」と思ったかもしれません。
でも、一緒にやっていたメンバー達は、皆、
彼の勇気ある行動を、最大限に受け止め、反応したのです。
皆の彼へのイエスアンドの関わりが、彼の存在を確固たるものにしました。

インプロの世界は、お互いに影響し合い、イエスアンドされて、
つくられていきます。
「誰かの言葉」
「誰かの行動」
「誰かの存在」
すべてが、次の何かに影響していきます。

ですから、どんな物語になったとしても、出来上がった時、
そこにいるすべての人がいてくれたおかげだと、自然と私たちは思います。
「その人がいなければ、」
「その言葉がなければ、」
「その行動がなかったら、」
生まれなかった世界。

インプロをやるたびに、「必要のない人はいない」ということを
身をもって知らされます。

夏も終わり、秋の到来。
夏休み明けの9月1日は、子どもたちの自殺が最も多い日だそうですね。
今年は、ニュースやSNSでも、いろいろなメッセージが流れていました。

私も子供の頃、死にたくなる気持ちになったことはあります。
でも、そんな時、自分を元気づけてくれたのは、周囲の人達に必要とされている・
影響を与えているんだという気持ちです。
特別に何かができるわけでもない、平凡な子どもでした。
そんな私でもそこに存在するだけで、みんなは喜んでくれている。
そのことを、周りとの関わりで、自然と実感できていました。

今は、電子機器、インターネットなどの進化により、
1人で何でもできてしまう時代であり、
人と人が必要とし、関わりあっていることを実感するのは難しいかもしれません。
だからこそ、「人とのつながり」の中で、お互いの存在を感じ、
「◯◯がいてよかった〜!」と、
影響を与えあいたいと思います。

インプロはまさにその大切さをどんな瞬間にも感じさせてくれます。

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2017年08月02日

池上奈生美コラム 〜インプロで引き出されていく個性〜 

おかげさまで、先月、「IMPROJAPAN PROJECT 2017」は
無事終了しました。

観に来てくださった皆様、応援してくださった皆様、
本当にありがとうございました!

今回の出演者は、インプロジャパン発足時のメンバーや、現メンバーたち。
さながら、交流会のようで、メンバーたちにとっても、
相互に刺激しあい良い経験になったようです。
私自身も、稽古をする度に「あ〜、15年が立ったんだなぁ」と
感慨深いものがありました。

そんなメンバーたちを見ながら、つくづく感じたのは、
インプロにおける一番の魅力は、「個性」だということです。
どの公演を観ても、心に残るのはストーリーの質や小粋なアイデア、演技力ではなく、
(もちろんそれらも大切であり、それらが土台となってこそのショーではありますが)
一人ひとりが放っている輝きや印象、つまり独特の存在感でした。

ただ、その「個性」というのは、自分には分かりにくいものですよね。
ついつい「人と違うもの」を個性だと思ったり、
誰かに、「◯◯らしいね」と言われると、それが個性のような気がしてしまいます。

でも、個性とは、もっともっと内側にあるものではないでしょうか。
簡単でわかりやすく表に出てくるものではなく、
普段の生活の中で何を思い、何を感じ、何を大切にしているのか、
そういった心の奥にあるものが、ふとした瞬間に溢れてくる。
それが個性だと思います。
そして、個性は1面ではなく、どこまでも自分の内側から
引き出し続けいく「超多面的」なものなのだと思うのです。
それは、人と関わるから、イエスアンドするから、
引き出されていくんですよね。

インプロは、その「ふとした瞬間」でいっぱいです。
つまり、やるたびに「自分」を知ることが出来るのです。
そして、その心の奥にあるオリジナリティが、
ショーでは、お客様に感動していただくための大切な礎となるのです。

日常生活では、その場に求められる自分を私たちは時に演じています。
感情を出さないように、抑えることも少なくありません。
社会の中に溶け込み生きることも、もちろん大切なことですが、
自分を自由に開放し、表現できる場を持つことは、
大切なことなんだと、改めて感じた公演でした。

今年の「Impro Mini Festival」は
12月15日〜17日 を予定しています。
また、どんなドラマが生まれるか今から楽しみです!

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2017年07月15日

池上奈生美コラム 〜イエスアンドすることで、それまで気づかなかった自分 と出会える〜 


演劇は、言うまでもなく自分とは違う人物を演じます。
しかし、たとえ違う人物を演じても、それを演じるのは「自分」でしかないので、
自分の中にある感覚や感情を使って表現していきます。
そのことによって、普段なかなか表に出てこない感覚や感情が引き出されていき ます。

たとえば、子どもを産んだことがなくても、母親役を演ると母性が引き出された り、
人見知りの人が、交友関係が広い役を演じることで、積極性が引き出されたりします。
つまり、違い人物を演じることによって自分の中ににある気づかなかった自分が表に出てくるのです。

しかも、インプロで演じる場合、当たり前ながら、あらかじめ役は決まっていません。
その為、その役のための資料を集めたり、研究することはできません。
その場、その瞬間に求められる役を、その時の「自分の中にあるもの」だけで演じ、
その役は共演者との関わりの中で成長していきます。

その経験を通じて、自分自身が思っている「私はこういう人間」がどんどんと変化していきます。
その変化というのは、「変わっていく」変化ではなく、「広がっていく」変化です。
そして、それは、イエスアンドのおかげだと、私自身の体験から感じることがで きます。

クラスでも、おとなしいメンバーが元気で快活な役をやってから、
表情が豊かになったり、消極的なメンバーが、積極的な役を演じたことで、
何事にも前向きになったりすることはよくあります。
「立場が人をつくる」とはよく言いますが、
自分らしからぬ役を演じ、周りの人にそのように扱われることで、
新たな一面が引き出されることはよくあることなのです。

逆をかえせば、私達はいかに「自分とはこういう人間だ。」と思い込んでいるのだろうと思います。
よく、自己紹介で、「私は消極的なんです。」とか「私は発想力がないんで す。」というお声を聞きます。
しかし、私がこれまで出会った受講生の方達でその通りであることはほとんどありません(笑)
しかしながら、本人がそう思い込んでしまっている自分を壊すのは簡単なことで はありません。
自分は消極的な人間だと思うと、物事が消極的な目で見えてしまいますし、
周囲も自分は消極的な人間だと思っていると感じ、それに応えようとしてしまい ます。

そんな時、違う役を演じていただくことで、
「こんな役ができた!」
「こんな行動ができた!」
「こんな感情になった!」
と、今までの自分とは違う感覚を楽しんでもらいます。
そのことで、消極的なのは自分の一部に過ぎなかった、と気づかれる方はたくさんいます。

インプロは、まず受け入れることから始まります。

「自分はこういう人間だから、こういうことは受け入れられない。」
ではなく、
「まず受け入れよう。そのことで、自分の新しい面に出会えた!」
と気づいていきます。

つまり、
イエスアンドすることで、気づかなかった自分と出会える。 のです。

どの企業様の研修でも、
みなさん「仲間の新しい一面を見た。」という声を聞きます。

それは、仲間だけではなく、自分にも当てはまることなのです。

私は、インプロを初めて20年以上になりますが、
まだまだやる度に、それまで気づかなかった自分と出会えます。
ですから、「私はこういう人です。」とは、言い切れません(笑)
これからも、イエスアンドをして新しい自分を発見していきたいと思います。

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2017年06月22日

池上奈生美コラム 〜「受け入れたくない自分、受け入れたい自分を理解する」〜 

メンバー達を見ていると、経験を重ねることによってインプロへの
関わり方が変わっていくのを感じます。

特に大きいのは、
「インプロを理解しようとしなくなる」ことです。
その代わり、
「インプロをすることで、自分を理解しよう」
としています。
そのことが、インプロの成長にも確実につながっています。

先日のクラスの後に
「なぜ、受け入れなきゃいけないのか?と疑問に思う時がある。」
と言うふうに言ってくれたメンバーがいました。

この疑問は、私を含め多くのインプロヴァイザーたちが抱いたことがあるはずです。
それも一度や二度ではなく。

そこで、私は「みんなならどうしているのか?」と、
他のメンバーたちに聞いてみました。
その答えの多くは、「受け入れたくない」という気持ちになることも正直あるが、
それより仲間と共感すること、仲間と同じ世界を創ること、仲間が求めている世界に足を踏む入れること、
を選択したい気持ちが上回っている。
といったものでした。

「受け入れたくない理由」「受け入れたい理由」それぞれ千差万別で、
それは個性なのでしょう。
ただ、「受け入れたくない理由」は、日々変化していきますが、
「受け入れたい理由」は、インプロを重ねるごとに深まっているのでなないかと、
メンバーそれぞれの声を聞いていて、思いました。

自分の気持ちを”自分自身”で理解した上で、
もしかしたら、今、この世界に飛び込んだら、自分でも知らなかった自分の喜びに繋がるかもしれない。
また、もしかしたら、今、それを受け入れたら、視野が広がるかもしれない。

といった境地と出会えるのかもしれません。

つまり、それは、「受け入れたくない気持ち」と同時に存在する「受け入れたい気持ち」の発見に繋がっていくのでしょう。

このように自分を理解していくことが、
目先のこだわりを捨て、自分の意志、願いにつながり、
演じる上でも、振れない軸をもった堂々とした表現につながっています。


そして、我々がやっているインプロは即興劇であり、お芝居です。
自分なら嫌だけど、自分が演じている人物(役)なら、
それを楽しめるだろうと、役の判断に委ねることも大切です。
そう言った意味でも、客観的に、自分を知るチャンスに恵まれていると言えるでしょう。

「自分の心に正直になること」と「他者を受け入れること」は、相反することに思えますが、
このように別のことではなく、関わりがあることなのです。
「えー、これは私が苦手な展開だ。」
「あ〜、これはなかなか受け入れたくない流れだ。」
それを十分自分の中で理解した上で、一歩踏み出してみるチャレンジしてみたら、
意外とその展開を好きになれるかもしれません。
「こういうこともありなんだ。」と発見があるはずなんです。

これは、我々、インプロのパフォーマンスだけに言えることではなく、
日常生活や仕事上でも、言えることでしょう。
「嫌だな」と思っている自分の気持ちを理解した上で、
そのことに対して、関わり、受け入れ、「アンド」してみる。
そうすることで、自分が何に対して苦手意識があるのか、
また、やってみると自分にはこんなこともできたんだ。
という発見と出会うこともできるのではないでしょうか。


2週間後、新宿で、3日間にわたるインプロ公演が行われます。

私たち役者は、自分そのものが楽器です。
その楽器という自分を理解することは、美しい音色を奏でることにつながります。
そんなチャレンジをしている私たちを、是非劇場に観にいらしてください。
お待ちしております!

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2017年05月17日

池上奈生美コラム 〜「コミュニケーションを好きになる秘訣」〜

1月号に、インプロシンキングのコースを受講する方の多くが、
「コミュニケーションがうまくできない」方ではなく、
「コミュニケーションが好き」な方ばかり、ということを書かせて頂きました。
今日はその続きを書かせていただきます。
(1月の記事はこちら → 
http://blog.livedoor.jp/improjapan/archives/2016-01.html )

私自身、今までに、インプロとは違う分野のコミュニケーション研修を
幾つか受講してきました。
その多くは、傾聴力、質問力、話し方など、具体的な他者への関わり方で、
とても大切で勉強になることばかりでした。
そして、やはりその経験を通して私自身が得た一番大切なことは、
「もっといろんな人と関わりたい。」と、思えたことです。

とはいえ、その思いで色んな人に出会っても、当然ながら人は千差万別で、
コミュニケーションの仕方も、変わってきます。
自分が良かれと思った行動も、相手の方にとっては、
鬱陶しい、重い、とか、また逆にそっけなく冷たいと思われてしまうこともあります。
コミュニケーションとは、常に1体1の関係の中で、
学び続けること、自分自身を変化させ続けることが大切ですよね。
その中で、自分の普段のやり方、考えが相手と合わず、疲れてしまう。
また、それ以上関わることを諦めてしまう・・・
といったことも少なくないかもしれません。

ここで、インプロにおけるコミュニケーションについて、
お話したいと思います。

インプロは、そんなことを考える間もなく、まさにその瞬間に意思の伝達をしあい、
コミュニケーションをしています。
もちろん、意思疎通ができないこともたくさんありますが、
それも含め、なんだかとっても楽しいのです。
なぜなら、意志が伝わらないことがあっても、すれ違うことがあっても、
その人の「存在を否定する関わり方はしない」からです。
そこにいる全員がいるからこそ、そこで関わるからこそ、
生まれる世界を常に感じること・味わうことができるのです。

だからでしょうか。
例え、初めて会った者同士であっても、クラスが終わると、
「今日、初めて出会った人とは思えない」という声をたくさん聞きます。
お互いを認め合い、その場を共有するコミュニケーションが、
人と人との距離をあっという間に、縮めてくれるのです。
また、その後、長い友人関係が始まり大切な親友となったり、
また、中にはご結婚されたカップルもいらっしゃいます。

そして、インプロには、もう一つ、
コミュニケーションにおいて、とても大事な要素があります。
それは、「思い出の共有」です。
しかも、その思い出というのは、ポジティブなものばかり。

インプロのクラスでは、たくさんの楽しい思い出が生まれていきます。
何年たっても、「あのクラスで生まれた、あのシーン面白かったね〜」と
話している声をよく耳にします。
その楽しかったシーンの思い出には、大好きな仲間の姿が必ず一緒に浮かんできているはずです。

コミュニケーションが苦手という方は、
「うまくいかなかった経験」を記憶してしまっているのではないでしょうか?
その逆に、コミュニケーションが好きという方は。
「楽しかった思い出」を沢山持っています。

「色んな人と、楽しい思い出をたくさん作る。」
それは、
コミュニケーションが好きになる秘訣であり、
コミュニケーションが上手になるもっとも重要なスキルだと思います。

インプロのクラスは、楽しい思い出ばかりが生まれる場所です。
是非、一緒にその思い出を作ってみませんか?

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2017年04月07日

インプロゲームの紹介(59)〜「名作メイン&サイド」〜

*これは、インプロジャパンのワークショップで生まれたゲームです。

誰もが知っている有名なお話のメインストーリー(オリジナル)と、
サイドストーリー(創作)を交互に演じていくゲームです。

たとえば、「桃太郎」では、
はじめに、おじいさんが山へ芝刈りに行き、おばあさんが川へ洗濯に行き、
大きな桃を発見する、、、
といったように、本来の作品に沿って、物語の序盤を演じます。

次に、場面変わって、そこまでのストーリーの中のスピンオフのような
サイドストーリーをインプロで演じます。
たとえば、桃太郎がなぜ桃の中にいたのか?とか、おじいさんの若い頃や、
山に住む動物たちのお話など、、、
本来の物語の裏にあるかもしれないお話を自由に想像し、演じるのです。

そして、再び、先ほどのメインストーリーの続きに戻り、
おばあさんがモモを家に持って帰り、桃太郎を育て上げ、
鬼退治に行く場面を演じます。

次に、また、そこまでのサイドストーリー、
たとえば、桃太郎の学校での生活、初めてPTAの役員になるおばあさんなどなど、、、
このように、本来のメインストーリーと語られていないサイドストーリーを
本編と交互に、演じていくゲームです。

観ている側からすると、サイドストーリーがあることで、
もともと知っている「桃太郎」のお話の印象が変わっていくのが、
面白いところです。

過去のクラスでは、
キジの家族愛の話や、実は桃太郎を憎み倒したかった犬の話や、鬼の恋愛話など
が生まれました。

一つの物語からいろんな世界が生まれてくる楽しいゲームです。

池上奈生美コラム 「型が心を動かし、心が型を創る」 〜月刊インプロ4月号より〜 

私は、インプロの役者でもありますが、
台本を使ったお芝居を演じることもあります。
一つの劇団に所属しているわけではないので、
今までいろんな演出家に出会いました。

役づくりのプロセスは、大きく分けて2つあると思います。
それは、
「型から役を創るか」
「心から役を創るか」

演出家によっては、台詞の言い方、動き、全て決められることがあります。
時には、息を吸うタイミング、吐くタイミングもです。
また、逆にどんな動きをするかは自由だけど、
「こういう感情になって欲しい」そのためには、多少台詞が違ってもかまわないという演出家もいます。

しかし、演じる役者は、
"型"だけ"できればいい、わけでも、
"心"だけ"動けばいい、わけでもありません。
型、心は、その入口であるだけで、最終的には、
その動き(型)から生まれてくる感情、
その感情(心)から生まれてくる動き、
に矛盾がない1人の架空の人物を生きることが目的なのです。

「型が心を動かし、心が型を創る」のです。

しかし、時に型にだけ集中し、心を動かす余裕がなくなったり、
感情を動かすことが気持ちよくなり、その役ではなく自分の楽な動きに
とどまってしまうことがあります。

これは、インプロを教える上でも意識していることです。
例えば、「アイコンタクトをしてください。」ということがあります。
それは、相手の目を見ることで感じること、伝わることを、
受発信してほしいからです。
でも、時にアイコンタクトすることだけに集中し、
そこから何も受け取っていない、伝わっていないことがあります。

逆に、相手に伝えよう、相手から受け取ろうと強く思えば、
自然とアイコンタクトしていることも、もちろんあります。

これは、日常生活もビジネスでも同じですね。
お辞儀の仕方、名刺を渡し方、身だしなみ、、、
型はあっても、相手を敬う心がなければ意味がありませんし、
気持ちはあっても、態度が伴わなければ伝わりません。

4月になり、新しい学校や新しい職場になった方もたくさんいらっしゃると
思います。
そこでは、今までと違う新しい型との出会いがあることでしょう。
是非、その型を吸収し、その場の心を育んでいってください。

私も目的に向かって「型と心」が相互作用していくことを、
これからも大切にしていきます。

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2017年03月08日

月刊インプロ3月号より〜池上奈生美コラム 「ドイツの27時間インプロショーに出演して」 

1月19日〜2月1日にドイツのチュービンゲンに行ってまいりました。
Harlekin Theaterというインプロ劇団の27周年のインターナショナル公演に
出演するためです。

今回、この劇団が企画したフェスティバル・・それは、27周年ということで、
27時間インプロ公演でした。
しかも、世界的にも人気のあるインプロのショースタイル「シアタースポーツ」
の?9”連続上演です。

私は、そのうちの2公演に出演させていただきましたが、
1つは、日本とネットで繋がり、パブリックビューイング形式で行われました。
日本の客席の様子が、ドイツのステージ上に映し出され、
日本からタイトルをもらったり、審査をしてもらったりと、
数年前には考えられなかった、はるか遠い地を身近に感じられる世界を繋ぐライヴでした。

そして、もう1つの公演は、今回のフェスティバルの為に、
様々な国から集まったパフォーマー達、ほぼ全員が出演しました。
ドイツ人、アメリカ人、ブラジル人、オーストラリア人、そして、私日本人。
ショーのルール、それは、基本的に全員が母国語で話すというものでした。
日本語を完璧に分かるプレイヤーはいませんし、
私自身も、ドイツ語、ポルトガル語は全くわかりませんし、
そもそも、どのプレイヤーがどれだけ理解して、シーンを演じているのかも
わかりませんでした。

なにしろ、時にタイトルだって理解できないままシーンが始まるのですから。
もし、すべての言語が分かる観客がいたなら、
かなりチグハグな会話になっていたと思います。

しかし、さずが各国から選ばれたパフォーマーたち、
何が起きても、全員がお互いを受け入れ合い、
どんな流れになろうと、それに対応してシーンは進んでいきました。
というのも、たとえ言語が分からずとも、彼らは皆、
今、その瞬間に生まれている芝居の世界観を掴む能力が非常に高かったのです。

ですので、言葉による細かいニュアンスがわからなくても、
大まかなストーリーはみんな理解し、様々な役割を演じたり、
時に、ダンスや音楽でその場を盛り上げていました。
私もかなり必死だったのですが、たった一つのジェスチャーで、
一瞬にしてみんながサポートしてくれるので、
どの瞬間も、心地よく安心して演じることができました。

心地よい理由は、受け入れ合うだけではありません。
どのパフォーマーも、他者に対して「敬意を払う」という姿勢を崩しません。
ですから、お互いの「長所」「美点」しか見えてこないのです。
彼らと関わるだけで、自然と自分の「長所」「美点」が
引き出されていきました。

それぞれを尊重し合い、言葉の壁、文化の壁、国境の壁を、
一瞬にして越えていったパフォーマーたち。
サッカーの選手たちが言う
「サッカーボール1つあれば、世界中の誰とでも仲良くなれる・・・」
この言葉に、憧れていましたが、
「イエスアンドがあれば、世界中の誰とでも仲良くなれる」
そう、感じることができたショーでした。

Harlekin Theaterは、週に数回インプロの公演をし、
毎回満員で立ち見も出るほどです。
27年間の歳月をかけ、ドイツ・チュービンゲンに
インプロの文化を根付かせた、ディレクターのVolker氏に
心から敬意を表したいと思います。
そして、日本にも同じように、「受け入れ、励まし合う文化」を
創っていきたいと、心を新たにした2週間でした。

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2017年01月16日

月刊インプロ新年号〜「新年のご挨拶」〜池上奈生美

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。


インプロジャパンのインプロシンキングコースは、
日常生活の中でインプロ的思考を活かしていくためのコースで、
ベーシッククラスを終えると、
・人前で話す方向け
・伝える力
・発想力強化
・ピンチをチャンスにする力
・想像する力
など、テーマを絞ってトレーニングするクラスに進みます。

ご受講の方々は、それぞれ様々な目的をお持ちですが、
多くの方が「コミュニケーション力の習得」を求めていらっしゃいます。
と言っても、「コミュニケーションがうまくできない」方ではなく、
「コミュニケーションが好き」な方ばかりです。
好きだからこそ、もっと上手になりたい。
と、足を運ばれています。

そもそもコミュニケーションに必要な能力とは何でしょう?
・意思を伝える力、受け取る力
・感情を理解する力
・コンテクトの理解力
・協調性
・自己表現能力
しかし、いちばん大切な能力は、
「コミュニケーションが好き」という気持ちだと思います。
もっと言えば、その気持を自覚することでしょう。

メディア・コミュニケーションが活性化されている現在、
ついつい一方通行な発信、受信になりがちです。
しかしながら、コミュニケーションとは、
決して、一方通行なものではなく、
相互作用であり、意思疎通を求めるもの、です。
自分からの発信、他者からの受信を繰り返すことで、
得られることは、信頼、共感、共有、自信、気づき、学び、安心、、、
など、無限に存在しています。

2017年も、様々な情報や意見が飛び交い、
時に憶測や思い込みだけで進んでいく状況もあるかと思います。
それらに対して、個の理解、意見だけを持つのではなく、
周囲の方々とコミュニケーションを取ることによって、
より深い理解、共感を広げていきたいと思います。

「コミュニケーションが上手な人」ではなく、
「コミュニケーションが好きな人」になって、
一つ一つイエスアンドし、その相互作用で、様々な課題を
少しずつでもより良い方向へ導く社会づくりに貢献していきたいと思います。


2017年が、皆様にとって素晴らしい出会いに包まれる1年となりますことを
心よりお祈り申し上げます。

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2016年12月12日

月刊インプロ12月号より〜「正解は自分の中にある」〜 池上奈生美

ここ最近、ありがたいことに、
高校、大学でクラスを受け持つことが増えています。
インプロを使った授業では、目の前で起こっていること、
目の前にいる相手を受け入れることで作られるコミュニケーションを学びます。
学生たちが、インプロでのコミュニケ―ションを学び、
仲良くなっていく姿を観ることは、とても幸せな時間です。

まずクラスの初回で、「行うすべてのワークに正解はない」ということを
伝えています。
しかし、普段受けている授業の多くに正解があるわけですから、
当然戸惑う生徒もいます。
いくら言葉で、「自由にやってみて!」と言っても、
どこまでが自由なのか探ったり、正しいやり方を知りたがったり、
ルールややり方に縛られ、
「これでよかったんですか?」と
尋ねる生徒は必ずいます。
もちろん、これは学生に限ったことではありませんが。

そのたびに、「今ここで生まれたことは全部正解です。」と伝えています。
インプロはその場に生まれたことがすべて正解。
そして、その正解はいつも上書きされていき、新しいナニカが
そこに生まれた次の瞬間、それは過去のものとなり、正解ではなくなります。

先日、ある高校で名前を呼びあうゲームをしました。
生徒たちは、ただ呼び合うという行動が楽しくなっていき、
いつの間にか、呼ぶたび、違う名前を付け合っていくようになりました。
自分の名前ではない名前で呼ばれるわけですが、
アイコンタクトや身振り手振りを使って、
相手に自分を呼ばれているということが分かるコミュニケーションを
自然と取っていくようになっていたのです。

実は、私が当初予定していたゲームでは、その次の段階を用意しており、
その為には、名前がコロコロ変わってしまうことを想定していなかったのですが、
用意していたゲームのルールに固執するのではなく、
ひとまず、彼らが楽しみだしたやり方に寄り添ってみました。
彼らは自らゲームのやり方を発展させ、それをやっていく中で、
仲間同士共有し、自然とルールが生まれ、結果、
そこに新しいゲームが誕生したのです。

自然に生まれるルールを尊重した結果、学生たちは自分たちの発想を楽しみ、
それ以降の授業では、
「これでよかったんですか?」と聞く生徒はいなくなりました。

そして、興味深いことに、「正解はない」と分かり、
答えに捉われなくなった時、学生たちは、自然とより深く仲間を受け入れはじめました。
正解が、自分たち以外の何かではなく、自分たち自身から生まれることで、
目の前の仲間をより強く意識するようになり、今までとは違ったコミュニケーションが始まりました。

正解はいつも学生たちの中にある。
私たちがすることは、それをサポートするだけなのでしょう。

そのためにも、学生たちの中にある答えを、瞬間瞬間敏感に、
一緒に観る目を持ちたいと、常に思っています。

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月刊インプロ12月号より〜〜「今」を感じる力〜  秋山桃里

クリスマスを目前にして、オペラの伴奏をやっています。
もちろん即興ではありません。
クラシックはふだんはあまりやらないので、
リハーサルを録音して自分の演奏をチェックするようにしているのですが、
その中で気づいたことがあります。

それは、「良く知らない曲、はじめての曲は、テンポが速くなる!」。
「わからないのだから止まらないまでもゆっくりなるだろう」と思いがちですが、実際にはテンポが速くなります。

これは、次の展開を先読みしてしまったり、譜面を追うことに夢中で歌を聞いていない、
つまり「今」を感じていないことが原因ですが、日常のコミュニケーションでわたしたちが
「早口になってしまう」のと似ているように感じます。

・自分がしゃべることに夢中になっていて相手の言葉を聞いていない。
・次の展開に気をとられて、「伝える」ことがおろそかになる。

といったことです。
はじめてのことをやるときや、焦ったときほど、回りの音、相手の言葉に耳を
すませ、きちんと「今」を感じながら行動したり表現したりすることが欠かせません。
せわしい師走ですが、「今」をしっかり感じて、
瞬間の音、言葉をきちんと相手に伝えられているかを意識する用意したいものです。

2016年10月01日

月刊インプロ10月号〜「ご挨拶」〜  秋山桃里(インプロジャパン取締役)

毎年この日を迎えるたびに、
インプロジャパンは世界中のインプロヴァイザーによって
支えられているのだと改めて思います。

インプロの精神さえ共有していれば、
私達はどこにいても、どんなに離れていても繋がっていられるのだと
信じています。

インプロを通じてこれからもより良い世界を作っていければと思います。

これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。

月刊インプロ10月号より〜「ご挨拶」〜池上奈生美(インプロジャパン代表取締役)

おかげ様で、株式会社インプロジャパンは本日15周年を迎えます。
いつもお力添えをいただいている皆様方には、心より感謝申し上げます。
2001年に生まれた子どもたちが、今では中学生です。
インプロジャパンのキッズクラスを受けていた小学生たちも高校生になりました。

1998年、インプロジャパンができる前
私が初めてアメリカ・シカゴにインプロを習いに行った時、
プロの団体の入門編のクラスに、50歳の演劇素人の方が受けていました。
失礼ながら私は違和感を感じ、何故受講しているのかと聞きました。
すると、「スターになりたいからさ」と笑顔で返してくれました。
その時の私は正直驚きました。
私の中では、「夢を見るのは若いうちだけ」
という、固定概念があったのです。

2001年設立当初のインプロジャパンは、20代がほとんどでした。
しかし、今年のインプロジャパンの公演には、68歳のパフォーマーがデビューします。
仲間とのチーム練習に、なんと60時間以上を設定し、演出家である私に、
申し出てきました。
先日、彼のチームは、朝9時〜夜21時までインプロ漬けだったのですが、
終了後も疲れひとつ見せず笑顔でいらして、誰よりもお元気です。

インプロのクラスでは、全く年齢は関係ありません。
10代と60代が同じクラスで、すべて平等にトレーニングが進んでいきます。
長幼の序とはいいますが、
年齢に関係なく、誰に対しても、
人として敬い、人として慈しむことができるのも、
インプロの魅力だと思います。

むしろ年功者のほうが、若者を敬う姿勢があるのです。
クラスの間は、いろんな視点から一つでも多く学ぼうという貪欲さが、
自然と若者の良さを見つめ、認め、敬う姿勢になっているのだと思います。
成長したいという思い、限りない自己への探求心は、
他者に対して自然と尊敬の念を生み出すものなのですね。

これからも、いろんな年代の方の魅力をさらに引き出す場、
そして、人が人から学ぶ場を創っていきたいと思います。

今後ともよろしくお願いいたします。

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2016年09月15日

月刊インプロ9月号より〜「不確実性」に飛び込んでみませんか?」〜 秋山桃里

ホフステッドという学者が、異文化を理解するフレーウワークのひとつとして
「不確実性の回避」を挙げています。

これは、ある文化を構成する人々が、不確実な状況に対して不安を感じ、
それを避けようとする傾向の強弱を表したもので、
不確実性を回避しようとする傾向が高い国としては、
日本、フランス、ドイツなどが挙げられています。

一方、「わからないけれどまずはやってみよう!」というのが
不確実性を回避しようとする傾向が低い文化で、
アングロサクソン諸国や、北欧の国々に強い傾向だそうです。

この研究のことを知り、日本人の中で、どちらかというと即興的な考え方が
苦手と考える人が多い理由のひとつは、
ここにあるのかもしれないと思わされました。

確実であることや間違いを過度に恐れると、不確実性を回避し、
安全な道、マニュアルに沿ったやり方に頼るようになりがちです。
しかし、変化が激しく、先の読めない今の時代には、
確実なものなどほとんどないといっても過言ではありません。
その場、その瞬間の変化を読み取って、たとえ不確実であっても
進めて行くしかない場合が数多くあります。

あなたは不確実性を回避しようとする方ですか?それとも?

インプロで、不確実性に飛び込んでみませんか?

月刊インプロ9月号より〜「ネガティブな思考に気づく」〜 池上奈生美

先日、一人の受講生が、
「昨日、新しい職場の人と飲み会に言ったら、みんなず〜と愚痴を
言っていてびっくりした。」と言っていました。
インプロの中では、愚痴が飛びだすことのほうが少ないので、
ちょっと違和感を感じたんですね。

でも、確かに、飲み会ではよく愚痴が出ますよね。
私もついついしゃべっています。

しかし、インプロを始めてから、ネガティブな言葉に敏感になるようになりました。
愚痴、不平不満、妬み、嫉み、、、、
「あ、私今ネガティブなことを言っている。」と気づけるようになりました。

以前は、自分がネガティブな言葉を発しているという自覚すらなかったんです。
飲み会などでの愚痴も、愚痴という認識ではなく正論を言っているつもりでした。
つまり、誰かを否定しているという意識はなく、自分が正しいことを言っていると思っていたのです。
でも正義は、人の数ほどあり、
正論というのは、1つのものを一面でしか捉えていない可能性があります。

私は、インプロによって、一見間違ったと思えることも、違った角度から見れば
それは大きな可能性を秘めていることを知りました。
そのことで何かが起きた時、「間違ってる。」と思うのではなく
「私は新しい視点を手に入れようとしているのだ。」と思えるようになりました。
そして、愚痴を言った時も、愚痴と気づいたその瞬間に、
「これは違う可能性と出会える時なんだ。」と思えるようになってきたのです。


クラスでは、時々こんな振り返りがあります。
「なんでもイエスアンドしたら、正しいことを伝えられない。」
この方の言う「正しいこと」とはなんでしょうか?
それは一つの正論にすぎません。
もちろん、それが必要な時もあります。
でも、それすらを捨てて、相手を受け入れたとき、
自分が思ってもいない新しい「正しいこと」に出会えます。

とはいえ、私は今も毎日のようにネガティブなことを言っています。
でも、自分がネガティブなことを言っているとと気づけるようになったおかげで、
そこで立ち止まりポジティブな可能性を探せるようになったのです。
それは私にとって、とても大きなことです。
気づくようになってから、自分の思考を変化させるチャレンジができるようになってきたのです。

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