2024年10月01日

「創立23周年」〜ご挨拶〜 池上奈生美(インプロジャパン代表取締役)

本日インプロジャパンは23周年を迎えることになりました。
これもひとえに皆様方の厚いご支援と温かいYESANDの賜でございます。
心よりの感謝を申し上げます。

インプロジャパンでは、経験者別にクラスを設定しておりますが、
すでに受講したクラスを受けるメンバーも少なくありません。

先日のクラスでも、
始めて1年のメンバーと18年の経験歴があるメンバーが
全10回のレギュラークラスを一緒にクラスを受けました。
これだけ経験差があるのに、同じラインに立って学べるものは少ないのではないか?
と思われるかもしれません。
しかも経験者だからと言って、後輩たちの面倒を見ることはありません。
むしろ、経験者の方が多くを学んでいます。
先輩方が後輩たちを賞賛し、
「一緒にやれて勉強になった。ありがとうございます。」という言葉をよく耳にします。

それはなぜかというと、経験すればするほど視野が広くなり、気づくことが多いからだと思います。

インプロの根幹であるYESANDをお伝えするときに、
「YES」だけで相手に従うだけでもなく
「NO」だけで相手を否定するのでもなく
「YESAND」で、共に受け入れあい、アイデアを出しあう
と、お伝えしています。

そのためには、まず「YESなのかNOなのか」という
〇か×か、良いか悪いかという判断する思考を外さなければいけます。
YESかNOなのかのどちらかの判断をしようとすると、
どうしても視野が狭くなります。
つまり、「YESAND」の「YES」は、
ジャッジをする『否定』か『肯定』の『肯定』ではありません。
目の前にあるものを一面から見て判断するのではなく、
まるごと、そのまま深く広く受け入れる『YES』です。
そして、その上で、『AND』で関わることで、
新たな何かを創り出します。

たとえば、
「夏に富士山に行かない?」
と聞かれたとします。

NOの場合は、
山登り大変そうとか、夏は忙しいとか
行かない理由だけを見ています。
YESだけの場合も、
山登り楽しそう、その日は空いている
と、その瞬間に自分の視点(経験則)でイメージしたことだけになります。

両方とも、視野が狭く1つのことしか考えていません。

夏に富士山に行くには、山登りだけではなく、
富士山でピクニック
富士山で絵を描く
富士山に行くドライブ
など、いろんな可能性があります。
しかも、それぞれその先にも多くの選択肢があるでしょう。

1つ1つの出来事、提案には無限の可能性がありますが、
YESかNOか判断しようとすると、「〇〇ならYES」「〇〇だからNO」と
1つの可能性だけを見がちになります。

でも、YESANDをすると、常に「こんな方法もある。」
「こういう可能性もある。」「こんな考え方もある、」とどんどん世界が広がっていきます。

先日のクラスでも、先輩が後輩に対して、
「こちらが想像していなかったアイディアや勢いに驚きつつも、それもありだな!と毎回勉強させてもらってました。」
と言っていました。

インプロジャパンも23年になり、少しずつですが、視野が広がってきているように思います。
それも全て、私たちをYESANDしてくださった皆様のおかげです。
24周年に向けて、もっともっと視野を広くし、
YESとNOの周りにあるもの全てに目を向けていきたいと思います。

今後ともよろしくお願いいたします。

インプロジャパン代表 池上奈生美

2024年09月20日

池上奈生美コラム〜 「YESとANDの間」 〜

「何もしていなくて良かった。」
と、演劇を始めた頃、先生に言われたことを今でも覚えています。
滅多に褒めない先生だったので、とても嬉しかったのですが、
不思議に感じました。
なぜなら、私自身は自分の演技に全く手ごたえがなかったのです。
その頃の私は、「台詞をどう言おうか」「どう演じようか」
に必死になり、「何をするか」ということばかり考えていました。


先日、都内の小学校で、公演とワークショップを行いました。
事前の打ち合わせで、先生から、
「学芸会に向けて、演劇の楽しさを伝えて欲しい。
中でも、子ども達がみんな”台詞にばかり意識がいき、しゃべっている人しか見ない”という点について、
学びになれば。」というお話がありました。

その話を聞き、自分が演劇を始めたあの頃のことと、
同時に、インプロを始めて、
「何かを受信したつもりでも、すぐに発信のことを考えてしまう自分」
に気づいたことも思い出しました。

それは、相手のことを受信したつもりで、実際は、次に自分が「すること」の為に、受信していたとも言えます。
それでは、相手の方の想いを本当に受信したことになりません。
なぜなら、ずっと「自分が何を言おう。」「自分が何しよう。」と
自分にフォーカスがあるからです。

YESANDは、YESが先にあります。
AND YESではない。
まず、YESと受信する、そして初めてANDが生まれる。
そこで大切なのは、YESとANDの「間」なんです。
次にすることのためのYESではなく、
YESをしっかり味わう、理解するための「間」です。
そう、YESとANDには、
体験、ひらめき、発見、感動、気づきなど、無限の創造があります。

インプロも経験者になるほど、YESを深く味わい、
影響され、自分自身のそれまでの思考をも変化させています。
そうして、自然とANDが生まれてくるのです。

はじめに話した演劇を始めた頃の私は、「どう演じるか」に集中していた表れだったのでしょう。
常に「自分の行動」にフォーカスがあったのです。
しかし、あの日先生が「何もしてなくてよかったわ」と言ってくれたのは、
きっと何もしないからこそ、心の中に変化が起き、自然な発信ができていたのだと思います。

ちなみに、前述の小学校からは、実施後に、
「役になりきることを学んだ。」
「言葉だけではなく、顔、体、動きで表すことが大切なんだと思った。」
「様々な感情を体全体から感じることができた。」
などのうれしい感想をいただきました。

これからも日々YESとANDの「間」をしっかり味わうことで、
自分自身をどんどん変化、成長させていきたいと思います。

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2024年08月18日

池上奈生美コラム〜 「インプロをはじめてから緊張しなくなった」 〜

皆さん、オリンピックご覧になりましたか?
スポーツ好きの私は、毎晩眠れない夜を過ごしていました。
今度はパラリンピックが楽しみです。

どの試合もドキドキしますが、メダルがかかっている試合になるほど、
観ているだけでも緊張しますよね。
実際に戦っている選手たちはどのような精神状態なのでしょう、、、
あのような状況で緊張せずに0.1秒の戦い、
かすかな感覚の違いを感じ取るなんて、私には想像すらできません。


実は、私はとても緊張しやすい人間でした。
インプロを始める以前は、公演の本番前はずっと楽屋で台本を見ていました。
公演が始まると、出番はずっと後なのに、
袖(舞台の横)にいて、無言で固まって役作りをしていました。
異様な雰囲気で誰も話しかけられない状態だったと思います(汗)

先月、5年ぶりにインプロ以外の公演(台本があります)に出演しました。
楽屋は女性ばかりで、当然おしゃべりが止まりません。
昔の私でしたら、集中できないので、
そっと楽屋を出て、静かな場所を探し1人緊張と戦っていたと思います。

でも、インプロをはじめてから、「緊張」することがなくなったんです。

それはなぜかというと、常に「今」に集中しているからです。

それまでの私は、どこかで「うまくやらなくては」
「稽古通りのことができなくてはいけない」と
先の未来に自分がするべきことを確認し、シミュレーションし
失敗しない様に頭の中で準備をしていました。
インプロではそんな準備は全くできません。
そのおかげで、「頭の中で準備をしない」ことに慣れ、
緊張しなくなったんです。

実は、その公演で共演者が少し台詞を間違えました。
でも、私は間違えたことも気づかないほど、
「今」だけに集中し、その瞬間に生まれた言葉に反応していました。

「今」に集中することは、過度な緊張から解き放たれたり、
想定外になっても慌てることなく対応できる、だけではありません。
「今」この瞬間だけに興味がわき、新たな創造を生み出す。
そう、自然と「イエスアンド」していくのです。

先日、私の担当外のクラスの様子をこっそりのぞき見しました。
その時は、フリーズタックという、体の形から次のシーンを作るゲームをしていたのですが、
2人のメンバーが地面に親指をあてていました。
何をするかな?と思っていたら、1人が「よし、気合い入れて地球にツボ押しするぞ!」と言いました。
私は思わず吹き出しましたが、パートナーは真面目な顔で「わかりました!師匠、こうですね」と間髪入れず答えていました。
まさに、今を生きている、今を受け入れているからできることです。
ちょっとでも思考が動いたら、「え?地球にツボ押し、この人誰?」「私は何をするのが正解?」と頭の中はパニックです。
そんなジャッジも思考もなく、瞬時に体全部で受け入れ行動していて、まさにイエスアンドの見本だと思いました。

とはいえ、日常では「今」を生きているようでも、頭は未来や過去にあることは少なくありません。
むしろ、そればかりだと思います。
「前回はこれで失敗したんだよなぁ(過去を思い出す)」
「こう答えたら、どんな返事が来るだろう?(未来を考える)」
このように私たちの頭の中は、つねにタイムトラベルしています。
それが、想像力であり、人間が持っている素晴らしい能力ではあるのですが、
時にその想像力が、妄想、不安、を生み出し、結果「緊張」につながります。
その頭のタイムトラベルを止めて目の前に全集中する。
そうすれば、「緊張」なんて起こりません。、

オリンピック選手は、きっと私の何倍も細かい変化、
つまり、瞬間の「今」を生きているのだと思います。

緊張する間もないほど、今を生きる
そんな時を繋げていきたいと思います。

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2024年07月20日

池上奈生美コラム〜「ずれ」を楽しむ 〜

先日のクラスで、あるメンバーが、
「最近インプロで、仲間とずれることが面白くなって、
あ〜、ずれるのって当たり前なんだと思ったら、
普段の生活でも伝えるために人に優しくなれたんです。」
と言っていました。

インプロのパフォーマンスを観ていると、どのチームも
通じ合っている、分かりあっているように見えると思います。
でも、実は、、、
すれ違っていることも少なくないのです。
あとから振り返って、
「え?そういうことだったの?」
「あ〜、そうしたかったのか」
と、かなり、ずれていることがあります。
でも、それはあって「当たり前」なんですよね。
自分の中で、こう言ったら、私の意図は伝わるだろうと100%の自信があっても
絶対「ずれ」るんです。
でもその「ずれ」を否定したり、正そうとする必要はありません。
その「ずれ」を、イエスアンドで活かすのです。

だからこそ、誰もが想像しない、奇跡的な世界が生まれていくのであり、
インプロのパフォーマーたちは、
その「ずれ」に感謝し、その「ずれ」を面白がり、愛してもいます。

その「ずれ」こそが、個性であり、多様性です。
この「ずれ」というハプニングがあるから、
1人では絶対生み出せない芸術が生まれるのです。

でも、日常生活ではなかなか「ずれ」に気づかないんですよね。
日常の中では、ついつい自分の目的を意識してしまいます。

先日、とあるカフェに入り「コーヒー」を注文しました。
しばらくして出てきたのは、「アイスコーヒー」でした。
私の中の常識では、
コーヒー=ホットコーヒー
アイスコーヒー=アイスコーヒー
だったので、びっくりしました。
しかし、その日はものすごく暑かったので、
ほとんどのお客さんは「アイスコーヒー」なので、
「コーヒー」だけでは、伝わらないのは当たり前のことでした。

昔の私だったら、
「アイスって言えばよかった。」と後悔したり、
「アイスかホットか確認してくれればいいのに」と
愚痴っていたと思います。

でも、インプロをはじめてから、
すれ違うことで起こるハプニングが楽しくてしょうがないので、
「そうだよね!こんな日はアイスコーヒーだ!」と、
美味しく味わえました。

「ずれるのが当たり前」
「伝わらないのが当たり前」
なので、相手の方に合わせて丁寧に伝えることはもちろんですが、
ずれてしまったら、そこから生まれるハプニングを、楽しんでいきたいと思います。
むしろ、思いがけないハプニングと出会えるのも、
その方がいるおかげなので、感謝の思いとともにイエスアンドしていきます。

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2024年06月14日

池上奈生美コラム〜「インプロで理想の自分を疑似体験」〜

先日、インプロを、ずっと続けているIJメンバー(受講生)から
「今まで苦手だったことが、楽にできていることに最近気づいたんです。
むしろ楽しみになったんです。」と聞きました。

また、以前には、
「インプロやる前は、女性と話すことすら苦手な自分でしたが、
ついに、プロポーズすることができました!
これも、インプロのシーンの中で何度も恋人役をやったおかげだと思います。」
と嬉しい結婚報告を受けたこともあります。


こんな風に、自分を変えたいと思うことは誰でもあると思います。
例えば、

「目上の人にもはっきり意見を言いたい。」
「もっと素直に行動していきたい。」
「仲間の気持ちを汲み取りたい。」

そのために、何をすればいいでしょうか?

・何を言うか準備をする
・周囲の人に応援ししてもらい自信を持つ
・鏡の前で練習する
・上手な人を見てイメトレする
・コミュニケーションの本を読む

など、いろいろあるかもしれません。
でも、一番いいのは、理想の自分を実践し、成功体験を身につけることだと思います。
とはいえ、なかなかそのような現場は訪れないし、
人の目も気になる、そしてチャンスは数少ない、、、でしょう。

そう、人生の中で、「ここぞ!」というチャンスは少ないものです。
しかも、それを逃したり、失敗してしまうとトラウマになってしまい、
次のチャンスに身構えてしまうものです。

インプロなら、何回でも挑戦できますし、
失敗することもありません。
楽しく、自然に理想の自分を疑似体験で重ねることで、
成功体験を増やすことができるのです。

「私は、目上の人にもはっきり意見が言える人」
「私は、いつでも素直に行動している人」
「私は、どんな仲間の気持ちを汲み取れる人」
と、自分(役)を設定し、アクションを起こすことができます。

しかも、自分が変わることで動き出す人生(物語)も味わえるのです。

そのことで、
理想の自分が身につきますし、想像を超えた現実を味わえます。

私は、元々は台本がある芝居の役者です。
インプロと出会う前は、台詞を覚えること、
台詞を間違えなくちゃんと言うことに意識を向けがちでした。
他者への関わりも、消極的。
しかし、インプロを続けているうちに
台詞は心の添え物であることを感じました。
その場に存在することを続けてきたおかげで、、
身構えない、理想の自分が身についてきました。

VUCAの時代、予測不能な様々な変化が日々訪れていますし、、
この先も思いがけないことが起きるでしょう。
その変化に動じず、チャンスをつかめる理想の自分磨きをしていきたいと思います。

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2024年05月15日

池上奈生美コラム〜「ピンチこそ自分の真の力が発揮できる」〜

今更ですが、私「ワンピース」にはまっております。
そう、あのアニメの「ワンピース」です。
ご存じの方が多いと思いますが、
主役ルフィの目的は「海賊王」になることです。
「海賊王に俺はなる!」が名台詞ですので、
お読みになったことがない方でもご存じかと思います。

でも、この海賊王は、いわゆるステータスが高い王様という意味ではありません。
ルフィいわく、世界で一番「自由な人」です。
物語の中では、ルフィはいつでも自由。
お金や権力では一切動かず、自分の今の興味関心で動いています。

(ワンピースファンの方には怒られるかもしれませんが、)
まさに、インプロだなっと思って見ています。

「ワンピースという宝を見つける」という、大目的を仲間と共有しつつ
どの道を行くかは、今の直感に従う。
仲間それぞれの個性を生かし、尊重しあう。
どんな冒険も楽しみながら進み、よりリスクが高い方を選んで行きます。
「行くな!」と言われても、「よし、分かった、進め!」
と進んでいく姿は、痛快です。

そして、私はボクシングファンでもあり、
先日の井上尚弥vsネリ戦は東京ドームで観戦しました。
圧倒的に、井上有利と言われている中、1ラウンド目に初めてのダウン。
応援席では悲鳴が上がり、私も背筋が凍る思いでした。
しかし、なんと井上選手は嬉しそうに微笑んでいました。
そして、その後ずっと楽しそうに戦い、3度のダウンを奪い6回にTKO勝ちです。

「ピンチはチャンス」と言いますが、
彼らにとっては、
ピンチこそ喜び、むしろ「生きる意味」くらいの宝物であり
それは、自分の真の力を発揮できるかもしれません。

臆病者の私は、現実ではなかなか想像すらできない域ですが、
インプロでは、何度も体験しています。

インプロをしていると、
「え〜〜これどうなるの?」という展開こそ、ご褒美であり喜びです。
思いがけない出来事こそ、
自分がどんどん開かれていき、唯一無二の物語につながっていきます。
「私、こんなこともできるんだ!」と自分の感性に自分で驚くことすら少なくないです。
それは、まさに「今を生きている」と実感できます。

「ピンチこそ自分の真の力が発揮できる」時!
現実でも飛び込んでいく勇気を育み、
本当の自分を引き出していきたいと思います。

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2024年04月19日

池上奈生美コラム〜「『なんでもあり』は難しい 」〜

4月のお仕事はほとんどが新入社員研修です。
毎年、フレッシュで夢にあふれている若者と出会うと、
私まで若返る気がします。

しかも、年々発想も新鮮で、
その豊かさに驚かされるばかりです。

でも、時々気になるのは、やる前に「むずかしい」という声が聞こえること。
インプロは正解がないし、どうやればいいかわからない、
自由であるほど難しい、のかもしれません。

しかしながら、実際にやってみると、どの参加者も素晴らしい表現力、発想力を発揮してくれます。
それをその都度お伝えするのですが、それでもどこか正解を探してしまい、
素直に発信したいと思ったこと、直感で感じたことではなく、
どこかで聞いたようなアイデア、当たり前の発想になってしまいます。

社内での研修ですので、どこまで弾けていいのか考えるのも当然でもあり、
「なんでもあり」ということを実感するのは、実は難しい、ですよね。

だからこそ「なんでもあり」を実感してもらうこと、
それを伝えることが、講師にとって一番必要なことだと思います。
そして、我々講師は、
受講者の皆さんから時折現われてくるひらめきのかけらを見逃さない事に、全集中しています。
それは、時に本人さえ気づかないこともあります。
それくらい、直感は繊細で一瞬に現れます。

その直感を全肯定していくうちに、自信につながっていき、
どんどん深いところからあふれてくる感覚に気づいていきます。
そのためには、講師の言葉以上に、仲間たちの賞賛、笑顔が何よりの力になります。
それは、研修の中で変化していく様子から明らかで、
研修が進むごとに、笑い声があふれ、お一人おひとりの心がどんどん開いていくのを感じます。

私たちは、自分で自覚している以上に「人の目」を気にします。
なので、「なんでもあり」のその前にある「人の目」が
まず「YESAND」であることが、大切だと思うのです。

先日の研修では、最後に発表会がありました。
最初は、アイコンタクトも難しかった参加者も最後は仲間と一緒に大きな声で弾けていました。
そして、その仲間の一挙手一投足に「お〜〜!!」「さすが!!」と拍手をしている方々がいて、
会場は大盛り上がりでした。

はじめは、「今年の新入社員はみんなおとなしいので、やりにくいかもしれません」と、
おっしゃっていた人事の方も驚くほどでした。

仲間が賞賛しあう、みんなで盛り上げる。
このことの大切さは、インプロだけではありません。
そんな社会を広げていきたいと思います。

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2024年03月19日

池上奈生美コラム〜「分からないのが当たり前」〜

インプロは何が起こるかわかりません。
ですので、
「分からないのが当たり前」なんです。
ストーリーの先はもちろん分かりませんが、
パートナーが言った言葉がどういう意味なのか、
分からないことはよくあります。
しかしながら、劇の物語は進んでいくので、
「どういう意味ですか?」と聞くことはありません。

たとえば、
家族のシーンで、父が娘に、ここまでの文脈は何もなく、
「今日もあそこに行くのか?」と言ったとします。
これだけでは、
娘役のプレイヤーは、父役が「どこ」を示しているか分かりません。
しかし、
その役自身、つまり娘は父が「どこ」を示しているか分かっています。
また、台本のある劇ならば、事前に確認することもできます。

インプロだから分からないとはいえ、
娘役が素に戻って、「あそこってどこのこと?」とは聞きません。

では、どうするか?

インプロでは、娘役が「どこ」を決めていいのです。
「そうよ、お父さん、私は今日も港に行ってお母さんの帰りを待つの。」
とか。

もしかすると、父親役は「恋人の部屋」だと思って言っていたかもしれません。

でも、娘役が「港」と言ったのなら、物語は「港」として進んでいきます。

父親役が「恋人の部屋」と思って「あそこ」と言ってたとしても、
それは「分からないのが当たり前」なのですから、
違っていることが間違いではなく、大事なことは、セリフを通して、
(自分はあそこを港と解釈してるよ)ということを伝えることで、
父親役も(そう捉えたのね)と、そこにイエスアンドして、話を進めていきます。

ただ、日常生活では「分からないのが当たり前」ではなく、
その場の空気の中で「分かっていないといけない」と勝手に感じてしまうことがあります。

そういう時は往々にして、
つい「分かっていないこと」を悟られずにするため、
「分かったつもり」で返答してしまうことや、
無意識に、「これって、普通こうでしょう。」
と自分の偏った解釈で思い込み、確認をせずそのまま進めてしまい、
ミスコミュニケーションに繋がることがあります。

多様性の時代、違いが尊重される時代だからこそ、
「分からないのがあたり前」であり、
「分かったつもり」で流さずに、
「私はこう思う」と伝え合うこと、確かめ合うことを
大切にしたいと思います。

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2024年02月18日

池上奈生美コラム〜「本当にあなたは今にいますか?」〜

最近つくづく「今」にいるって、とても難しいなぁと思っています。

たとえば、目的なく街をブラブラ歩き、その場の空気を感じているとします。
空気を感じているその瞬間は、「今」にいますが、
ふと、カレーの香りがして
「あ、今晩カレーにしよう」と思った瞬間、
それはすでに次の行動を考え、「未来」に意識がいって「今」にはいません。

会話もそうですよね。
例えば、相手がどこかのお店のお話をしていて、それを聞きながら、
(あ、そこ、私も行ったことある!)と思った瞬間、
(そういえば、あの店は〜)と、自分の中の記憶という「過去」に意識がいき、「今」にいません。

それはとても当たり前のことですし、
そうでなければ、未来を思い描き計画を立てることはできません。
また、自分の経験則を使わずに、会話を成立させることは難しいでしょう。

その瞬間に自分が「今」にいるのか、いないのかを知ること、
そして、すぐに「今」に戻ることが大切だと思うのです。

だって、「今」にいないときでも、時は流れていて、
カレーのことを考えている時に、きれいな花を見過ごすかもしれませんし、
あの店のことを考えている時に、友人が大切なことをつぶやいているかもしれません、のですから。

インプロをしていると、自分がこの「今」にいるのか、いないのかがよくわかります。
インプロは、エチュードのようなトレーニングとは違い、
ストーリーを創っているので、ずっと「今」にいるわけではありません。
そして、ストーリーを創っている、といっても、論理的に考えているわけではなりません。
自分達が創り続けているストーリーの経過の中で、生きています。
それは、「今」を感じ、その「今」が秘めているストーリーの無限の可能性を眺め、
その中から1つを選ぶ、そして、また「今」に戻る、という感じです。

普段の生活では、判断すること、思考することが多いので、
左脳が優位になり、それを右脳が補っていますが、
インプロでは、感じること、想像すること多いので、
右脳が優位になり、それを左脳が補っている、のかもしれません。

なので、私は時々、インプロのパフォーマンスの後「文字」が読めなくなります。
「文字」が1つの「図形」や「絵」としてのみ認識し、
ただ「あ〜こういう形をしているな」と感じるだけで、
その図形の意味を理解しようとしないのです。
インプロで「今」を感じている時もこのような感覚になっています。

これもあくまで私の体験談であり、科学的根拠はありません。
でも、「今」に全集中することで、その場に無限の道が開け、
1ミリの不安もなくただ心がワクワクしていきます。
そして、その場にある無限の世界に身をゆだねることで、
自分がしたいことが見えてくるのです。

それが、いわゆる「あるがままに受け入れ、新たな道をいく=YESAND」なのだと思います

AIの技術がどんどん進化していく時代ですので、
AIができる左脳的なことはどんどんAIにお任せして、
右脳的「今」を感じ、無限の可能性の中にいる時間をどんどん増やしていきたいと思います。

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2024年01月19日

池上奈生美コラム〜「正しいこと」の壁の向こう〜

昨年は嬉しいことに、3歳の幼児から大人まで、
たくさんの方々とインプロをすることができました。
それぞれの年代によって生まれてくる世界も違い、
刺激的で、より新しい創造を求められる1年でした。

「子どもたちとインプロをした」というと、
ほとんどの方が
「子どもは自由な発想をするでしょう?」
と言われます。
もちろん、子どもならではの、
大人には発想しづらいアイデアもたくさんあります。
しかし、「自由」であるかの度合いは、年齢は関係なく個人によって違います。
ほとんどの大人も子どもも、自由な発想の前に同じ壁を持っています。
それは、「正しいこと」の壁です。

先日の3歳とのワークショップでも、最初は
「海の中に熊なんかいないよ!そんなのおかしい。」という声が聞こえました。
私たちのインプロは特に非日常的で、
不思議な世界になりやすいので、より「正しくない」と思いやすいのでしょう。

しかし、それは自分の常識の世界の中に劇を引き寄せているからです。
そうではなく、この壁を外し、目の前の劇の世界の中に自分を飛び込ませると、
もう、そこは「なんでもあり」になります。

子どもたちの前で演じる時、この壁が消える瞬間がすごくよくわかります。
観ている目つきが変わるというか、感情が舞台にまで伝わってくるのです。
一度舞台の世界の中に入ると、離れることはありません。
そして、この「正しいこと」の壁が消える鍵は、「好奇心」にあると思います。
先ほどの「海の中に熊なんかいないよ!」と言ってた子も、
気づくと、海の中の動物になって遊んでいました。


また、昨年ある島の小学校でインプロ公演を行った時のことです。
島ですので、インプロだけではなく演劇も観たことがない子どもたちがたくさんいました。
最初は、きょとんとした表情もたくさんあったのですが、
次第にどんどん壁がなくなり、一つひとつの世界の中に入っていくのを感じました。
そして、途中で「舞台で一緒に演じたい人、上がってください!」と私が言うと、
90%の生徒が舞台に上がったのです。
公演前には、先生から
「うちの子たちは、恥ずかしがり屋が多いから誰も上がらないかも」とうかがっていたので、
私たちも数名だと思っていたのですが、うれしい驚きでした。
しかも、上がらなかった児童の皆さんにも理由はあり、
聞くと、「僕は隣の村の人だから、ここで生活しているの」と自分で役を決め、
舞台に上がらないという選択をしていたのです。

もう、ここには「正しいこと」の壁はありません。
体育館は一つになり、世界でたった一つの即興物語の中で、同じ時間を体験することができました。


世界中には「正しいこと」の壁はたくさんあります。
しかし、その壁の中にいては見えないもの、体験できないものは無限にあります。
「そんなのおかしい。」と思う時こそ、その壁の向こうに行く選択をしたいものです。

2024年も、私たちインプロジャパンは、この壁を超える好奇心をお届けしたいと思います。
本年もよろしくお願いします。

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2023年12月26日

池上奈生美コラム〜「年末のご挨拶」〜

もうすぐ2023年が終わろうとしています。
皆様には本年も大変お世話になり、感謝申し上げます。

今年は、ようやくマスクも解禁になり、
長くスタジオに置かれていたシートも片づけることができました。

それに伴い、ありがたいことに学校での授業も増えてきました。
その多くの目的は「自由な表現、発想」でした。
特に小学4年生は、入学以来、小学校生活は、これまでずっと制限のある毎日です。
なかなか「自由」になることは難しいようです。

だからこそ、「演劇」の力は重要だと思いました。
現実を自分に引き寄せて考えると制限が頭をよぎります。
しかし、「演劇」の世界に身をゆだねることで、
自然とその制限を忘れ、自分が今したいことに飛び込み、
気づくと、自由な表現を楽しむことができます。

少し、ドキドキしていた生徒たちも、
演劇の世界、無人島での冒険を楽しみ、
自分たちの挑戦によって生まれた物語を誇らしげに楽しんでいました。
その姿を見ていた先生方も、とても嬉しそうに微笑んでくださっていました。

現実には難しいことも、演劇の世界なら挑戦できる。
そして、
演劇の世界でできたのであれば、現実の世界でもできる。

さらに、自分の行動を自分で選択していけるインプロは
1人ひとりの眠ってた力を引き出すことができると実感した1年でした。

2024年も、お1人ひとりの力が輝く、そのお手伝いができることを心より願っております。

どうぞよいお年をお迎えください。

2023年11月20日

池上奈生美コラム〜「今を感じる」〜

「今を感じる」って本当に大切ですよね。
でも、「今を感じる」ことって難しいんだなぁと、つくづく思います。
例えば何かを買いにお店に向かって歩いていたとします。
自然と、「お店に行ったら何を買おうかなぁ」とか
「これを買ったら何を作ろうかなぁ」とか考えながら歩いています。
ですので、気づくと自分が通った道に何があったのか、目の前にどんな人がいたのか、
どんな変化があったのか、どんな匂いがしたのか、と言うことに気づいていません。
でも「今を感じる」ということは、目の前に今誰がいるのか、
何を自分が見てるのか、何を聞いているのか、どんな匂いを嗅いでいるのか、それを味わうことですよね。

同じことは、コミュニケーションの中でもよくあります。
目の前の人と会話をしながら、
「この方はきっとこれを言いたいんだ、だから先月の出来事のことを話そう。」
など、目の前で会話をしつつも、頭の中でその先のシミュレーションや昔のことを思い出したりしてしまう。
その結果、、相手が伝えたいことを受け取り切れない、、

インプロのパフォーマーたちは、その「今」にとても敏感です。
タイトルを言われたその瞬間から、「今」が始まるので、
それまで先のことを考え不安を感じたり、こんなタイトルだったらどうしようとか、
こんな話をすればいいのかなぁと、自分の中で勝手にストーリーを作ってしまうことはありません。

来月の15日〜17日にインプロミニフェスティバルがあります。
現在インプロジャパンのYouTubeチャンネルでは、
出演者全員が「1分インプロ」にチャレンジしています。
是非、ご覧になってください。

裏話を言いますと、全員、その場で
「1分間インプロをしてください。残り30秒と10秒になったら合図をします。
では、タイトルは〇〇です。3、2、1スタート」で始まっています。
これ以上の打ち合わせは一切していません。
当然、撮り直しも、編集もしていません。
当たり前のことではありますが、
「何をやればいいんですか?」と聞く人はいません。

ほとんどのメンバーが、1人でカメラの前でインプロをするのは初めてですし、
芸人やタレントでもありません。

目の前のことに素直に飛び込み、「今を感じる」。
ただ、それだけです。

とはいえ、インプロはじめた頃は、みんな自己紹介ですら緊張していました。
声が小さくて聞こえなかったり、下を向いていたり、
とても人前で演じる人には見えないメンバーばかりです。
でも、インプロと出会い、その魅力に取りつかれていくうちに
「恥ずかしい」とか「失敗したくない」という思いがどんどんなくなってきたようです。
ただただインプロが楽しい。
つまり「今」を感じる、生きることの快感を味わいたいので、
「あんな思いはしたくない」という過去への後悔も
「失敗したらどうしよう?」という未来への不安もありません。

そう、インプロのパフォーマーは「今を生きる達人」です。
過去にとらわれあり、未来に不安を感じたりする無駄なことはしません。
そのエネルギーをすべて「今」に注ぎ、
「今」に託された可能性を探求し続けています。

舞台の上で、目の前の人を見て、聞いて、「今を感じる」。
だからこそ生まれる、「今を積み重ねていく創造」
是非、その姿を劇場でご覧になってみてください。

*池上奈生美のTwitter、Instagramへのフォローもよろしくお願い します。
アカウントは、すべて、@naomiikegamiです。
improjapan at 15:09|この記事のURL

2023年10月01日

〜創立22周年・ご挨拶〜 池上奈生美(インプロジャパン代表取締役)

本日インプロジャパンは22周年を迎えることになりました。
これもひとえに皆様方の厚いご支援と温かいYESANDの賜でございます。
心よりの感謝を申し上げます。

22歳、大学を卒業する年になりました。
ようやく社会人です。
これからも、気を引き締めて精進いたします。

9月2学期に入り、小学校での授業も増えてきました。
小学生との時間は、インプロジャパンのスタッフもみんな子どもに戻ります。
むしろ、子ども以上に楽しみます。
私たち自身が楽しいのももちろんですが、
想像すること、表現すること、楽しむこと、その見本になりたいからです。
「想像したい」「表現したい」「楽しみたい」
それを引き出すためには、
まず大人の私たちが、殻を破って「こんなことしてみたい!」を
実践することが大事だと思います。

バーチャルな世界、ゲームがどんどん進化していき、
それはとても素晴らしく、今後も発展し、より私たちの生活が豊かになることでしょう。
ただ、その中にある「想像する」「表現する」「楽しむ」はすべて受け身の世界であり、
用意された数多い選択肢から選び、物語も準備されています。

インプロは、この3つが全て自発的に行われていき、選択肢は無限で自由、
物語はいつもオンリーワンです。
常に「自分がしたいこと」の選択であり、結果になります。

先日の小学校で授業では、オリジナルのモンスターカードを配り、
そのモンスターと一緒に架空の島を探検しました。

探検をするたびに、モンスターには様々な能力がついていきます。
探検のあとは、その能力がついたモンスターと、即興のお芝居です。
お芝居の中には、おばけ、妖精、海、熊、洞窟、城など、いろいろ出現しました。
場所は体育館ですので、何もありません。
しかし、子どもたちにはそれが見えているのです。

「モンスターと冒険」は、ゲームでもよくある設定で、
子どもたちにとっては慣れている世界です。
しかし、それをバーチャルではなく、想像を働かせながら、リアルに存在する。
そう、受け身ではなく、自分たちが見たい世界を自ら見て、心を動かし、更に想像していくのです。

すると、自然と
「自分がしたいことに気づく」
「自分でどうしたらいいか考える」
「自分から友達に働きかける」
「自分から挑戦する」
と、自発的に行動していきます。
たった2時間の中で変化していく姿にいつも私たちが感動しています。

これからも、子どもたちのそんな力を引き出すお手伝いをし、
私たち自身も、その世界を生み出していきます。

フランスの小説家ジュール・ヴェルヌが言うように
「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」
のであれば、想像こそ、私たちの純粋で自発的な願いでありたいと思うのです。

また1年どんな世界が生まれるかわかりませんが、
まずは、「こんな世界にしたい!」を発信し、
「想像する」「表現する」「楽しむ」のプロフェッショナルでいたいと思います。

今後ともよろしくお願いいたします。

インプロジャパン代表 池上奈生美

2023年09月21日

池上奈生美コラム〜「マニラインプロフェスティバルに出演しました」〜

4年ぶりの海外公演でした。
しかも、私にとっては、初のフィリピンでのアジアフェスティバル。
実は、2年前にオンラインで参加していたのですが、
その時に、画面越しからもみなさんの雰囲気の良さが伝わり、
いつか直接お会いしたいと思っていたので、本当に楽しみにしていました。
*その様子はこちらでご覧になれます。
https://youtu.be/GNLaALXRi7g

そして、実際に観てみるとアジアのインプロのレベルの高さに驚きました。
欧米に比べて歴史は浅いですが、確かな演技、チーム力、センスの良さ、
どれも感動しました。

私は、20年以上定期的に海外公演をしており、
最初の頃は、観客に伝わることを優先に英語で演じていました。
しかし、いつしか
「自分たちのインプロをそのまま伝えたい」と思うようになり、
チームで出演するときは、できる限り日本語で演じるようになり、
今回も初めから日本語で演じると伝えました。

逆に考えると、海外のチームが日本にきて、
オリジナルのスタイルを上演するのであれば、
わざわざ日本語で演じてもらうより、母国語でのパフォーマンスを見たいと、
私自身も思っています。
事実、事前に「日本語でのインプロを楽しみにしています」と
韓国の観客からメールもいただきました。

とはいえ、初めてのアジアフェス。
どれくらいの方が理解してくださるのか、不安はありましたので、
最小限の英語を使い、フォーマットやだいたいの流れは伝わるように工夫しました。

しかし、そんな不安はステージに立ったら一瞬も感じませんでした。
私の一言ひと言に観客の皆さんが反応してくれていることを肌で感じたのです。
内容は「女の一生」
私が、消防士の役の女性の生まれてから死ぬまでを演じました。
父親が消防士で、彼女にとっては父親はヒーロー、友達にもいつも自慢しているほど大好きな存在でした。
しかし、ある日火事の現場で亡くなってしまうのでした。
それから、彼女は「父親のようになりたい」と、消防士の道を進み、
勲章をもらうほどになったのですが、彼女の中ではずっと父親は越えられい存在であり、
いつか、父親に褒めてもらいたいという思いでした。
ついに命が果てるとき、私は客席に向かって「お父さんが呼んでいる」と言いました。
その瞬間、「あ〜〜、、」という、悲しみの声が聞こえたのです。
観客の皆さんが、「すべて理解してくれている。」ことを感じ、
舞台を降りると、多くのすすり泣く声が聞こえました。

終わってからは、
「映画みたいだった」
「全部理解できた」
「気づいたら泣いていた」
と、うれしいお声をいただきました。
中には、日本語がわかる友人に通訳しもらっていたけど、
途中からもう通訳なくてもわかるので、いらないと言ったんだ」と
いうお声も。

長年の友人である、アメリカのシカゴインプロフェスティバルのプロデューサー、ジョナサンピット氏も観てくれて、
一緒に私たちのショーを観てくれた彼の生徒さんに、
「ほら、分かるだろ、言葉じゃないんだ、心、感情なんだよ」と言っていました。

私たちのパフォーマンスが素晴らしかったとは思っていません。
むしろ、理解しようとする観客の皆さんの感受性、
演じている私たちに寄り添い続けた感性のすばらしさに胸を打たれました。

そのおかげで、私たちらしいインプロ、
私たちが長年創り上げてきたフォーマットをそのままお届けすることができたのです。

あらためて、インプロは
「その瞬間に生まれる人間ドラマ」であると感じました。

今回のおかげで、ありがたくも
シンガポール、韓国、香港など多くのアジアのチームから
「是非、来てほしい」とお声をいただきました。

不安な世界情勢が続いていますが、
インプロでつながれる幸せ、国境を越えたイエスアンドに感動を覚えたフェスティバルでした。

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2023年08月18日

池上奈生美コラム〜 インプロで「みんなで分かりあう」 〜

インプロのいいところを数えだしたらキリがないのですが、
その1つに、何が生まれるのか「みんなが分からない」があると思います。

「分からない」って、時に恥ずかしかったりしませんか?
「いまさら聞けない」とか、
「知ってて当たり前」とか、
そして、なんとなく知っている振りをしちゃうこと、、、、
私はよくあります。

でも、勇気を持って聞いてみると、
意外と同じように分かっていない人は多かったりします。

インプロは、「みんなが分からない」が大前提なので、
「分かって当たり前」という関わり方がなく、
お互いに「分かる」「分からない」に繊細になります。
「分からない」→「関わらない」
「分かったつもり」→「ごまかす」
ではなく、
「分からない」→「分かろうとする」「分かってもらおうとする」
→「分かりあう」につながっていくのです。

だって、分からなくて関わらなかったり、分かったつもりでごまかしていたら、
その後のシーンを壊してしまうかもしれませんし、
何より、自分がずっと不安なままになってしまいます。

また、そんなメンバーがいないように伝え合うことも大切で、
自然とチームで「分かる」を共有し、足並みをそろえています。

私は、外国人とインプロをする機会がよくあります。
もうほとんどが「分からない」の世界です。
ドイツでの公演では、タイトルすらわからず、言語も様々だったので、
分かっていることのほうが少なかったです。
でも、だからこそお互いに伝えあう思いやりにあふれていました。
そして、「分かってること」をつなげていきます。
ある意味、みんなで「誰かが分からない状況を作らない」のです。

どんなに仲が良くても、どんな人も絶対に同じ考え方になるはずもなく、
だからこそ生まれる無限の物語があるのに、どこかで、
仲間も私と同じことを考えていると、錯覚してしまうことがありますが、
その錯覚に気づき、「違いを分かりあう」楽しさをインプロは教えてくれます。

来月、メンバーと一緒にフィリピンのフェスティバルに参加してきます。
また、「分からない」から始まる世界を楽しんできます。

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