今回のインタビューは、ドイツのチュービンゲンという町で、
27年間インプロの劇団「Harlekin Theater」を続けてきているVolker Quandt 氏です。
http://www.harlekintheater.de/index.htm

演出家でもあり、ヨーロッパをはじめ、世界各国で演劇の指導に当たっており、
以前には、日本にも演劇の指導に来たことがあるVolker氏。


そして、そのVolker氏が率いる「Harlekin Theater」が、
今回、創設27年を迎えるにあたり、企画したプロジェクトが
様々な国のプロのインプロヴァイザー達を呼び、
27時間/9公演を、それぞれが母国の言語で行うというもの。
しかも、各公演、その国々と中継を繋ぎ、パブリックビューイングを
するというインプロ界初の試みでした。


今回のビックイベントを終えたVolker氏に、お話を伺ってみました。
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IJ:
チュービンゲンでは、シアタースポーツ(インプロのショー形式の一つで、
チームに分かれ、ラウンドごとにジャッジされて競い合うスタイル)
が人気のエンターテイメントだそうですが、それはなぜだとお考えですか?


Volker:
まずは、即興だから、どのパフォーマンスもすべて違って、
一つとして同じ作品がないということでしょうね。


それから、誰も、何が起こるか分からないこと。観客も、俳優も・・
観客は驚かされることを好みます。

それが、皆さんが何度も何度もご友人やご家族と一緒に、足を運んでくれる理由でしょう。

実際、これまでに65万人ものお客様が、私達の即興パフォーマンスを観てくださいました。


IJ:
65万人?!
そういえば、お客様の中には、27年間、毎週のライブに、
ずっと通い続けてくださっている方達もいらっしゃると伺いました。
素晴らしいですね!!


動員数もどんどんと増えていき、今や毎ライブ、劇場が満席とのことですが、
その秘訣を教えてもらえますか?


Volker:
一つ確かなことは、クオリティの高い俳優やミュージシャン達です。

我々は、常により良いものをパフォーマンスできるよう、挑戦しています。
違う言葉で言うと、
かなりハイクオリティな失敗をするようにしています。


私達は、‟失敗をどう扱うか”ということを学んできました。
インプロにおいて‟失敗する”ことは、絶対に必要不可欠です。

より良い作品をつくる為に、より良い失敗をする為に、
‟間違い”を引き受けなくてはならないし、”失敗”をしなくてはいけません。


インプロで、何度も”失敗する”ことを体験をして、この原理が分かってしまえば、
”失敗”が好きになるでしょうし、間違えることが楽しくなります。
そうすれば、もはや間違えることなんて怖くなくなります。
というのも、それが、インプロの中で、活かされ物語の要素となるのですから。


それに、このことは、俳優達によりリスクを取らせることさえできます。
”失敗する”というのは、たくさんのポジティブな面があるのです。



我々のインプロショーのベースとなっているのは、「失敗する喜び」。
だから、いつもより良く失敗することに一生懸命挑んでいます。
それは、決して終わらないプロセスですね。


IJ:
そうですね。
失敗するからこそ、新しい作品が生まれていくし、
失敗を楽しむことで、より多くの挑戦に飛び込めますしね。


チュービンゲンの観客を魅了している「インプロ」の秘密は、そこにあるのですね!



さて、一旦、ショーのお話から離れ、
指導者としてのお話を聞かせてください。



Volkerさんは、大学で、学生達にもインプロを教えているそうですが、
彼らは、どんなことを学んでいるのですか?


Volker:
基礎的なインプロのルールを学んでいます。

授業項目は、「コミュニケーションと自己啓発」。
学ぶことによって、学生たちは大学の単位を取れるわけですが、
実際、受講してきた学生たちを見ていて、
自分自身のことや自分自身の振る舞いについて学ぶテーマを扱う方法について、
インプロのトレーニングほど、面白く、また良いものはないと思っています。


IJ:
ちなみに、プロの俳優ではない人達にインプロを教える際に、
大切にしていることは何ですか?


Volker:
基礎的なトレーニングメソッドを教える上においては、
プロの俳優に教える時とさほど違いはありません。

もちろん、プロの俳優に教える時は、更に上のこと教えます。
例えば、音楽の種類を増やしたり、古典から現代におけるドラマツルギーの知識
を教えたり、テレビシリーズやジャンルについて、研究させたり。。


IJ:
インプロでは、お客様が求める世界観を瞬時に演じ分けなくてはいけないですからね。


特に、欧米の観客は、作家や映画監督の作風をよく知っていて、
時に「シェイクスピア版」や「チェーホフ版」だったりを楽しみにしている方々もいらっしゃるとか。


確かに、今回、出演するにあたって、池上も日本を発つ前に、
村上春樹氏や黒澤明監督など、日本人の有名作家や監督の作品を見返したと言っていました。



さて、話はショーの方に戻り、
Volkerさんと「シアタースポーツ」のショーの関係について、伺いたいと思います。

まずは、何故、シアタースポーツのショーを始めようと思われたのですか?


Volker:
1981年、コペンハーゲンでキース・ジョンストン氏
(世界中でインプロの発展に多大な影響を与えた人物「International Theatresports Institute」創始者)
と出会って以来、私は「インプロのテクニック」魅せられました。


それから、そのテクニックを使って、「シアタースポーツ」を演出し、発展させてきました。
デンマークから母国のドイツに戻ったのも、
ドイツで「シアタースポーツ」を始めたいという理由からでした。


そして、1990年1月、ドイツで初めてシアタースポーツを開催しました。
現在も使っているチュービンゲンの劇場LTT(Landestheater)で、今に続いています。


IJ:
27年間、ずっと同じ劇場で、ほぼ毎週ライブをしてきたのですね。



これほどまでに長くショーを継続して興行してきたことで、
あなた自身に何か変化はありましたか?


Volker:
もちろんこの27年間のシアタースポーツ公演は私自身に様々な影響を与えてくれました。
より前向きに考えるようになりましたし、失敗の楽しみ方を学びましたし、
困難を好むようになりましたね、そこには必ず新しい道があるって分かっていますから。


IJ:
今回の「27時間・シアタースポーツイベント」について、お話を伺いましょう。


パブリックビューイングで、日本の我々もあなた方のショーを楽しませてもらいました。
様々な国のパフォーマー達が国や言葉の壁を越えて、
本当に素晴らしく最高のショーでしたね!


各国のパフォーマーが、観客の分かるドイツ語でショーをやるのではなく、
それぞれが、母国の言語でインプロをする。
結果、ドイツのお客様達は、もちろん、日本やアメリカ、他国の中継先でも、ショーを楽しむことができましたね。


なぜ、言語を越えたこのような企画が実現したのでしょうか?


Volker:
2年前、ブラジルとオーストラリアの俳優達と翌年に行われる
「インプロ・グローバル・プロジェクト」の準備をしていたのですが、
その時は、様々な言語を交えて即興でのショーを行うことが果たしてできるか、
全く確信がありませんでした。

ドイツ語、ポルトガル語、英語のすべてが分かる私が、各シーンを都度翻訳し、
観客にドイツ人とブラジル人の間で、何が起こったかを説明しなくてはならないとさえ思っていました。


がしかし、実際には、驚くことに、一度たりとも私がそんなことをする必要性がなかったのです!

何が起こったか。
それは、俳優達は、それぞれの言語がたとえ分からなくても、
物語の各シーンを全て分かりやすく演じていったのです。

そして、ドイツの俳優達は、ブラジルの俳優が言ったことを全て受け入れ、
ドイツ語でシーンを作っていったのです。

だから観客はどの瞬間においても、物語についていけたという訳です。


そのことが、今回の企画を考える発端となりました。


IJ:
今回、日本人のパフォーマーを招待して下さったのはなぜですか?
また、終わってみての感想を聞かせてください。


Volker:
今回のプロジェクトでは、更に次のステップを目指して、
ドイツ語・ポルトガル語・英語に加えて、もう一つ別の言語を加えたいと考えていて、
それは日本語が良いということになり、そこで、日本人プレイヤーのナオミ(池上奈生美)を招待しました。

結果、素晴らしいショーとなりました!
ナオミが入ってくれたおかげで、今回のシアタースポーツは、
まさに他言語シアタースポーツとなりました。


例えば、シーンの初めに、ナオミが明確なキャラクターで、日本語でシーンを作っていきます。
もちろんながら、ドイツの俳優達は何をしゃべっているか
具体的には理解できないのですが、ナオミの佇まいや伝え方で何を表明しているかを理解し、
それを活用したシーンをドイツ語で創っていきます。

ナオミももちろんドイツ語は分かりませんが、キャラクターの軸をしっかりと強く持ち続け演じ切るので、
それがまたドイツの俳優達が創るシーンの新しい物語の要素となって、使われていきます。

そのやり取りによって、観客はたとえ日本語が分からなくても、
出来上っていく物語の内容を楽しむことができたのです。


歌も素晴らしかった!


役者達が、自分の役を演じきり、活かし合うことで、言語を越えたショーは、
驚くほどスムーズで、信じられないほどの出来でした。


様々な異なった文化が一つのステージに存在するという忘れられない最高の経験となりましたね。


IJ:
Volkerさんが考えるインプロの魅力を教えてもらえますか?
また、次はどのようなことをやりたいですか?


Volker:
既に語っていることではありますが、
インプロのクオリティが高ければ、俳優達はお客様を驚かせ、衝撃を与えることができます。
それは、ギャクや安易な笑いではなく、質の高い物語の作品です。

そうすれば、観客は何度も何度も足を運び、やってきてくれます。
彼らは、作品のクオリティが高ければ、まさかそれがすべて即興だなんて、
最初は思わないでしょう。

それが、インプロの魅力に繋がるでしょう。


今後については、
今年は、私達ハリケーンシアターは、若いインプロヴァイザー達に注目をし、
来年、我々のチームと一緒にできるようになる為に、彼らをトレーニングしようと思っています。

それと、もちろん国際的な交流をさらに深めていきたいですね!
もちろん日本とも!