インプロジャパンでは、主催ワークショップや企業研修の他、
小学校~大学まで、様々な教育機関で、授業や講座として、
「インプロ・シンキング・ワークショップ」を実施しています。

いつもと違う子ども達や学生たちの様子や、
また回数を重ねるごとに変化を遂げる姿に、先生方もとても喜んでくださり、
有難いことに、一度ご実施いただくと、継続してお声をかけていただくことが
多くあります。

本日は、その中から、2014年以降、年に一度、大学の授業として、
教職志望の学生向けの特別講座として、我々のプログラムを導入くださっている、
木下まゆみ先生にお話を伺いました。

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インプロジャパン(IJ):
「インプロ」を授業への導入理由と実施ねらいを教えてください。

木下先生(K):
大学で教職科目を教えていますが、教師を志望する学生にとって、
他者と関わる力や、そのためのワークショップが必要だと考えてきました。

彼らが志望する「教師」が関わるのは教師と生徒という、
縦の関係だけではなく、保護者や、同僚の他の教師たちとの横の関係も含まれます。
対等な立場同士で、自分の考えや気持ちを伝え、
また他者のそれを受け取ることが重要であることを認識してもらうのがねらいです。

IJ:
2014年以降、毎年実施いただいていますが、毎回、どのようなことをお感じですか?  
学生達の受講の様子と合わせて聞かせてください。

K:
学生一人ひとりで見ると、みな良い学生なのですが、集団になると、そこにある種の「リーダー」がいる時と
いない時で、パフォーマンスが大きく変わるように感じています。
リーダーといっても、みんなを鼓舞するのではなく、楽しんで取り組んでいるのがわかる人、という意味ですが、そうすると、他の学生も少しずつ遠慮がなくなっていくようです。
その為、ワークの中でも、普段付き合いのない学生同士で組んでリーダータイプがいないと、
そういった傾向が見え隠れしますが、そこをうまく講師のナオミさんやカヨさんに突いてもらってるなと
感謝しています。
また、その学生への働きかけ方を観察するのも、教職を目指す彼らににとって良い勉強になります。

IJ:
学生の皆さんからの実施後に聞いた印象的な言葉や出来事があれば、聞かせてください。

K:
インプロを受けた後、他の場面でも積極的に発言するようになったという学生や、
コミュニケーションにおいて、今まで受信ばかりだったけれども、発信を意識するようになったという話を
聞きました。

また、以前、学生が講師のお二人の即興劇について、どういう気持ちで臨んでいるかと質問したことが
あるのですが、「未来に責任を持つ」とお答えいただきました。
その答えが当の学生には印象的だったようで、「未来の自分を意識して、今の自分のことを考えてみる」
と話していたのを覚えています。

その他にも、この講座に参加していた私のゼミ生が、実際にインプロで身に付けた力を活用している場面もありました。
私のゼミでは集団討論をよく行いますが、インプロを経験した学生が司会進行をしていた時に、
その彼が「フォーカス」がどこにあるかを他の学生に頻繁にフィードバックしており、
かなり複雑な議論にも関わらず、大きな混乱もなく良い議論が出来ていました。
コミュニケーションというと、センスや才能と繋げがちですが、
知識や経験があるだけでも全然変わってくるなと実感しています。

IJ:
先生から見た「インプロ」の魅力を教えてください。
また、教職志望の学生達に、「インプロ」を通じて、何を伝えたいですか?

K:
インプロの魅力は、人と一緒に作業をするのが「楽しい」ことであり、
でも、「楽しくなる」ためには、自分も進んで動くことが必要だと体験できるということ、でしょうか。

今の学生たちは、非常に繊細な社会的空間の中に生きていて、
できるだけ面倒を避けて省エネモードで無難に乗り切るのが良いという、
暗黙のルールに従っているように見えます。
人間関係は難しいから、それも仕方ないです。

教職志望であれば、人と関わりたいから教師を志望しているはずですが、
実際は、固定化された教師―生徒の縦の関係という、人と関わる難しさのない、
自分の立場が保証された安全な環境を求めている印象です。
もちろん実際にはそんなことは全くなく、一般企業と同じように、
多様な価値観のある人たちの中で苦労していく仕事です。

そのなかで四苦八苦してなんとか通じ合えるから、それが嬉しくて楽しくなるはずで、
教師は率先してその大変さを引き受ける人であり、インプロを通じて、その見返りは十分ありますよと
わかってほしいと願っています。

IJ:
教育機関で「インプロ」講座を行う実施意義を聞かせてください。

K:
大学であれば特に、授業で「体」を使うことがありません。
小学校の頃は図工や音楽など体を使って学ぶ時間がたくさんありました。
しかし、年齢が高くなると抽象的な学習内容になり、頭の中だけで完結するのが勉強、
それが賢いと受け取られるようになります。

でも、それだけが勉強ではないはずです。
体験するのも大切な勉強ですが、残念ながら、現在の大学ではまずありません。
かといって、学生が体をつかって豊かにコミュニケーションできているかというとそうではなく、
かつてより体の使い方が平板で乏しくなっている気がします。

しかしながら、想像以上にコミュニケーションにおける身体の役割は大きくて、
それが苦手になっているために、学生が過度に対人関係に気を遣うことにもつながっているのではないか。

そういう状況で、インプロのような授業は、実社会に出た後の大きなプラスになるはずです。
豊かなコミュニケーションができる人は、豊かな体の言葉(?)を持っている人だと気づくことができるのは、
インプロならではの魅力です。