本の現場―本はどう生まれ、だれに読まれているか本の現場―本はどう生まれ、だれに読まれているか
著者:永江 朗
販売元:ポット出版
発売日:2009-07-14
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読みました。

<目次>(版元ドットコムより)
◎本はどう生まれているか
01●新刊洪水
02●本を出したい
03●ネット発の本
04●ライターの事情
05●編プロのいま
06●情報の無料化

◎本はどう読まれているか
07●アサドクとドクソン
08●「読書ばなれ」の根拠
09●新書ブーム
10●書店をディレクションする
11●本屋大賞と読ませ大賞
12●ベストセラーは誰が読んでいるのか?

◎付録・インタビュー
本棚が町へ出て行く─幅允孝(聞き手●永江朗)
再販制度はもういらない─永江朗(聞き手●沢辺均)
 
東京国際ブックフェアにて買った本。
買う時に値段を見たら珍しいことに「非再販」の文字が。
「定価」ではなく「希望小売価格」

再販にするかしないかっていうのは選べるのですね。全く知りませんでした。 
再販については本書でも議論されているのでまた後ほど。

出版業界についての本。
ターゲットは出版業界関係者及び、出版業界に関わろうとしている人、特に学生。
その簡単な内容は目次を見ていただければ理解できる。

著者の永江さんはフリーライターの方。
多くの雑誌で連載をお持ちだ。

本書は3部構成になっている。
まず第一部は「本はどう生まれているか」
本の生産という点について、様々な切り口から迫っている。

第二部は「本はどう読まれているか」
そのまんま。第一部とは違い、読み手側に焦点が当てられている。

第三部はインタビュー。
幅允孝氏との話はブックディレクターとしての幅さんの経験が主に語られます。
沢辺均氏との話(これは対談というべきだが)は、「委託再販制」であったり、「ICチップ」であったり、出版界の構造的問題について議論を交わしている。

ちなみに沢辺均氏というのはポット出版の社長である。
 

まずこの機会に出版業界について本書でわかることをまとめておく。

新刊の点数は60年代以降ほぼ一貫して増え続けている。
書籍の販売部数については88年をピークに下落傾向であったが、直近では80年と同水準である。
返品率に関しては、増加傾向がみられる。
若者による読書離れは起こっていないと考えられる。むしろ、高齢になればなるほど本を読んでいない。
出版不況の問題は出版社など企業側の問題である可能性が高い。 

数多くの問題を抱えた業界なのは周知のとおりである。
インタビューで永江さんは「問題がないよりあるところのほうがおもしろいじゃないですか。」 と語る。

確かにそうだ。問題がなく、順調にいっている産業なり企業は今が頂点なのだ。
みんなが「出版落ちている」と問題意識を持てば持つほど、新しい動きが出てくる。
返品率の問題に関しては「35ブックス」という新しい流れが出てきている。 
新しい流れは、出版界にとっても、読者側にとっても大歓迎である。
さらに問題に対しての認識が高まるし、より深い議論が可能になる。
それが成功するにせよ、失敗するにせよ。

もうひとつ、議論すべき問題としては「再販制」の問題がある。
「再販」「非再販」というのはそれぞれにメリット、デメリットがある。
これは多くの議論が必要だと思う。
「再販」というのはいわば権力によってその産業を守っているのだ。
「非再販」というのは自由競争にするということ。守らない。好きに売るのだ。

永江さんは議論すべき再販の問題について「どんどん硬直化している印象を受けます。」 と語る。
再販というのは長い出版の歴史上のホンの50年程度の歴史のものにすぎないのに、変えようとした議論をすると、その権力に守られた日書連が反対してくるらしい。
いわば閉塞感がある。
「ICチップ」についても永江さんは「議論をオープンにしろ」 という。
一面的な議論をせず、様々な立場の人が、この制度を導入したらこういうメリットがあるけど、こういうデメリット、問題があるよねという議論を生き交わし、その過程をオープンにしろという。

その通りだ。
こう考えてみると、出版業界というのは業界全体として、いまだしっかりと統率がとれていない未熟な産業なのではないかと思えてくる。
業界全体としての、議論不足、対話不足が見えてくる。

現状で問題があるのだから、それをどう解決すべきなのか、みんなで議論する必要があるのだ。 


本書のことをあまり語らず来てしまったが、業界の現状認識なり、本の現状認識を深められる、著者の思いを感じるいい本だと思う。

出版関係者はもちろん、出版業界に関わりたい学生などは必携の書になるはずだ。 
これを契機に自分の中で、友達でも巻き込んで議論してみるのも面白い。
問題を共有し、解決策を考える。その過程が大切だ。 
読者も巻き込んだオープンな議論が今後展開されることを願う。