2017年01月16日

宝塚 『オーム・シャンティ・オーム〜恋する輪廻〜』

まずはよくぞこの映画を宝塚で舞台化してくれたことに感謝したい

私が宝塚の舞台を観るのはこれで2回目だ。
1回目は十数年前のことで、実はほとんど覚えていない。
それ以降2回目につながらなかったということは、自分の中ではその時、特に何かを感じなかったのだろう。しかし今回は観終ってすぐにもう一度観たいと思った。それは大好きなOSOであるし、インド映画を題材にした宝塚の舞台なんて今後いつあるかわからないし、何よりも楽しかったからだ。そうでなければ正規料金で1回目観た後に、割高な売買サイトから購入してまで2回目には行かない。

1回目は3階、2回目は2階でそれほど舞台に近いわけではなかったが、全体を見渡すことができた。野球観戦用の双眼鏡も持参したので表情もばっちり

ストーリーと歌は思った以上に原作に忠実だった。
キャラクターの仕草、オームとシャンティの出会いを本当にスローモーションで表現したり、「ナヒーン」と叫ぶお母さん、有名なインド映画の台詞「No sorry No thank you」など、どのように取り入れアレンジしているか観ていてとても楽しかった。

フィルムフェアや様々な苗字などの固有名詞も多く取り入れられていた。
果たして宝塚ファンにどの程度通じたのかわからないが、例えばフィルムフェア“マガジン”という一言を入れて説明したり、「マッキーではハエの名前」と説明する横でお母さんがハエたたきを持っていたり、ちょっとした台詞に説明や工夫がされていた。「ゴーヴィンダ・バッチャンにすればいい」の“バッチャン”という日本人の耳にはちょっと面白く聞こえる苗字が実はインドの国民的大スターから取っているということは、インド映画好きだけわかったのではないか。逆にお父さんの遺影が宝塚スターの人だったらしく、ちょっとした遊び心が散りばめられていた。

衣装も原作にかなり近いものだった。インドの、特にファラー監督の色使いの鮮やかさがとてもよく再現されていたと思う。これは他の舞台ではまねできない、宝塚だからこそできたと思う。トップスターをテーマにした題材といい、まさに宝塚とボリウッドがコラボした夢の世界だった

オーム役の紅ゆずるさんはスラッとした立ち姿が美しく(これは他の男役の方すべてに言えることだが)、マキージャー役の時はちょっとおどけてニッコリマーク(⌒∇⌒)みたいに目を細めた笑顔がとてもキュート。一方、後半のカプールになると一転、キリッとした眼光鋭い眼差しを見せる。シャールクにも言えるけど、このギャップがファンにはたまらないのだろう。

綺咲愛里さんは、ディーピカが綺麗美人だとするとカワイくて可憐な美人。これまた前半のしっとり女優役から後半の現代的お茶目な役と、別のキャラで楽しませてくれた。インドの派手な衣装に負けることもなかった。

ムケーシュ役の礼真琴さんはもう一人の主役。原作になかった成り上がりというキャラ付もなかなか面白かった。ニヒルな悪役がとても素敵だった。そして歌が上手い彼のためにオリジナルソングが1曲加わって、スーツ姿の男役の人たちのダンスシーンは一つの見どころだった。

一番の盛り上がり『Deewangi deewangi』の曲の時には出演者が観客席まで下りてきて一緒に盛り上がり、一体感が感じられた。1回目の時に元星組トップスターの柚希礼音さんが観劇にいらしていたのだが、紅さんに促されて立ち上がって振りをしたり、劇中でも急に話を振られてキメポーズをとってくれたりと、サービス精神旺盛でファンは大喜びだった。

そして役者さんと同じくらい感心したのはいわゆる裏方さんたちの仕事だ。
宝塚の長い歴史はファンを楽しませるというノウハウを試行錯誤しながら十分に蓄積してきたのだろう。特に驚いたのはシーンの変換。劇中で何の違和感もなくくるくると場面が変わる。それをセットだけでなく、照明や小道具でも表現する。赤い布で舞台を覆いつくしスモークをたいて火事のイメージを幻想的に表現したり、ラストの演出はここで言うのは控えるが、うまいな〜と思わずうなってしまった。
ヒンディー語学習者のヤラシイ癖でデーヴァナーガリーの綴り間違えを見つけちゃったりしたのはご愛嬌だが、壁に貼ってあったメモもヒンディー語になってたりして、こだわりの姿勢が感じられた。

映画の方のOSOは振付師出身の女性監督だ。映画のラストにはエンドクレジットと共に製作スタッフが大勢登場する。彼女は裏方を知っているからこそ、それらの仕事の大切さをわかっている。こうした出演者とスタッフの強力なタッグがあってこそ、素晴らしい作品が生まれる。

ほぼ始めてに近い宝塚の舞台の印象はエンターテイメントの舞台のプロフェッショナル集団だということだった。正真正銘のプロだからこそ原作を大事にしてくれているのだと思った。原作のイメージを壊さずに、別のものとしてさらに完成させている宝塚はさすがだった。

宝塚に限らずお金をもらって舞台に立っているプロのみなさんは各々プライドや技量を持って演じていると思うが、宝塚の場合は個人の看板だけでなく、属している組、そして歴史ある宝塚そのものをしょって立つという重責と、その中での競争や仲間意識のようなものが凛とした心地いい緊張感になっていると思った。

4月にはDVDが発売される。
7月22日(土)〜8月7日(月)大阪梅田芸術劇場メインホールでの公演も決定した。チケットの入手は今回も激戦が予想されるが、できれば是非生の舞台を観てもらいたい。

興奮して買ったグッズ。パンフレットにはインドの事も出ていた。バッグがお気に入り。
image
  


2017年01月07日

『君の名は。』

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

2017年1本目の映画の感想はインド映画ではなく社会現象ともなっている『君の名は。』最後の「。」に「モーニング娘。」を思い出さずにはいられない。ということは置いといて、実はこの作品は2回観たのだが、1回目はビールとお寿司で満腹だったため、速攻で眠りに落ち9割以上寝てしまった。こんなに大ブームとなっている作品を観に行ったのにこれではクヤシイ。ということでリベンジした2回目は100%観れたが、眠りに落ちた理由はわかった。つまらないからではなく、環境ビデオのように心地いい映像がふわふわ流れていくからだ。

『アナ雪』を観た時も美しい映像だと思った。立体的でツルツルとかプリプリと表現できるような質感が美しかった。一方『君の名は。』は繊細な描写が良かった。したたり落ちる汗、服のしわ、光の加減や影の落とし方など普段何気なく目に入っているものが丁寧に描かれている。彗星のシーンなどは軽い感動を覚えた。アニメは間違いなく芸術だなと思った。

映像は綺麗だし、ストーリーも設定自体は目新しいさはなかったがよく作られているし、音楽もいい。でも決定的に何かが足りない。その足りない1かけらは作品ではなく自分にあるのかもと思った。それは年齢と共になくしてしまったものなのか、もともと持ち合わせていないものなのか。

話はちょっとそれるが、私は映画のランキングなどを見るのは好きなのに自分が点数をつけるのはとても苦手だ。作品自体は素晴らしいと思っても自分がノリきれないもの、逆に残念な作品でも自分はかなり好きというものをどう扱っていいかわからないからだ。
『PK』や『Bajrangi Bhaijaan』は質と好みがマッチするので自信を持って勧められるが、下ネタ系やドタバタはそれを好きな自分の人格まで疑われそうで面白いと思ってもランキング上位にはしづらい。

もちろん映画の好みは人それぞれだから周りに合わせる必要などまったくない。自分には合わないつまらないと言ってしまうのは簡単だが、なぜそう感じたのか。そしてみんながいいと言っているものの理由をちょっと立ち止まって考えると、もしかしたら違う見方を知る、映画を感じ取るヒントになるような気がした。(マスコミ主導でいいと思わされている作品も中にはありそうだが。)なぜ自分がその良さを感じられないのか、何か自分に欠けている感情があるのでは?と不安になることもあるしね。

『君の名は。』について言えば作品自体は5点満点中4.5、自分の好みでは3.2〜3.5といったところ。例えて言えば『君の名は。』は埃ひとつ落ちてないモデルルームの部屋のようだ。きれいなのに何となく落ち着かないというか、無味無臭の味気無さを感じてしまった。もっと人間臭さが感じられるすきま風吹く雑多な部屋の方が落ち着くし、いっそのこと超豪華なホテルできゃあきゃあ言うとか。

私がインド映画を好きな理由はいろいろあるが、そのひとつは濃すぎるくらいの人間関係の面白さがある。『君の名は。』で身体が入れ替わった主人公たちは見たことのない相手と携帯メールのやりとりで何となく心を通わせることになる。家族、友達、バイトの先輩は誰もが基本的にいい人で、皆必要以上に相手のテリトリーに踏み込まない。サラリとした人間関係。主人公の2人が求めていたのは運命の人?それとももう一人の自分?何を失い何が得られたのか。無駄な主義主張なんていらないけど、歴史を変えるには愛のパワーが希薄すぎる気がした。

でも自分が高校生くらいだったら間違いなく好きな人とデートで一緒に観たいなと思う。そしてもしかしたら彼こそが運命の人かも・・・とドキドキしながら肘掛にのせた触れそうな腕に映画よりも神経を集中させたことと思う。そして何年かたって、「ああ、私の初デートはこの作品だったな。彼は今頃元気かな」なんて思い出させる作品になるのだろう。

人間のいいところ、汚いところ、世の中の不条理、そんなのが詰まった映画はまた別の機会に観ればいい。若い年代しか聞き取れないモスキート音のような、若い感性でしか味わえないものはあるはずだ。そしておそらくこの作品はそういった種類なのだろう。逆に言えば、若い頃に楽しめなかったであろう作品を今面白く観ることができているのかもしれない。

最近は綺麗な映画館が増え、4DXなどのアトラクション的要素が盛り込まれた作品が多く上映されている。綺麗な映像の良質な作品は家のTVではなく、スクリーンで観たいという人がこの作品のおかげで増えると思う。そういう意味でも画期的な作品となった。岸恵子のやつと間違えて、あるいはそのタイトルに魅かれて観にいく年配の方も多い気がする。あと絶対今年生まれてくる女の子に「みつは」とつける親が出てくると思う。  


2016年12月25日

2016年を振り返り

このところ更新が少なくなってしまっているが、インド映画熱が冷めたのかと言うとまったくその逆で、むしろ充実していてこちらに手が回らない状態だ。

このブログを始めた頃は年に1〜2度の映画祭で日本語字幕付きインド映画をスクリーンで観るか、インド旅行などでDVDを買って観るくらいしか方法がなかった。

今年一般公開されたインド映画は本数こそ多くなかったものの、『PK』などインド映画ファン以外にも十二分に受け入れられる作品が公開され、多くの人に感動を与えた。ラージクマール・ヒラニ監督の来日もあった。

東京国際映画祭、アジアフォーカス福岡国際映画祭などインド映画に優しい映画祭では今年も上映されARラフマーン、マーダヴァンが来日した。

インド映画ファンにはすっかりおなじみになったIFFJは5回目を迎え、体調を崩しながらも全作品を完走した。

この他には各インド人主催による上映会が行なわれており、英語字幕のみではあるが、最新作が観られる機会が増えた。

以上がスクリーンでの鑑賞。これに自宅での鑑賞機会を加えるとさらに充実したものになる。
10年前に比べると海外でのネット通販は手軽なものになっているし、むしろこれからは益々ストリーミングでの視聴が一般的になっていくと思う。次から次へと公開される映画のDVDを買っていたのではキリがないし、収納場所も処分も困るので、これはいい傾向だと思っている。you tube、itune、海外ではerosなど。最近はNetflixで日本語字幕付きインド映画が観られる。約30本と数こそ多くはないものの、比較的シリアスなタイプの作品は私自身あまり手を出してこなかったので、興味深く観ている。これに加え、私はネット回線を使ってのインドTVの視聴契約をしているので、いつでもインドに囲まれている状態だ。

このブログを立ち上げたきっかけはインド映画の面白さをわかってほしい、数少ない情報の共有をしたいという思いだった。でも今では情報も視聴機会も当時では考えられないくらいに増えた。映画の感想や情報を発信するブログやSNSなどの手段も多い。自分が頑張らなくてももう大丈夫という安堵にも似た気持ちは多少ある。

ヒンディー語の講座はいったん終わりにしたが、英語と共にゆっくりとマイペースで勉強は継続している。英語字幕付きでの視聴はヒンディー語耳と英語読解力が必要とされる。せっかくの機会なのだから少しでも理解しながら観たい。今までブログを書いていた時間がこうした学習や視聴時間になった。・・というのはちょっと言い訳かな。まあトシと共に行動力の減退は否めないかも。

とは言え10年以上も続けてきたブログなので、ゆっくりとでも継続していこうと思っている。
そして来年もこれまでとかわらずにインド映画を応援していきたいと思っている。  


2016年11月30日

パリのインド事情

久々の更新になります。
今回はパリ在住の私のインド仲間(日本人)、の友人(インド人)からの情報。
ヨーロッパではイギリスやドイツがインド率高めというのは知っていたが、フランスについてはまったく知らなかった。パリのインド情報というのはなかなかレア。私も興味深く読んだ。

以下、私のブログのスペースで紹介させて頂きたい。

*・゜゚・*:.。..。.:*・゜*・゜゚・*:.。..。.:*・゜*・゜゚・*:.。..。.:*・゜

 インドなパリ – その1:インド映画のDVDショップが充実

パリ北駅周辺(Gare du Nord)はインドエリア。南インドの都市、ポンディチェリー(タミル・ナードゥ州)がフランスの植民地だった影響か、フランスにいるインド人は南インドの人が多い。そのためこのインドエリアで軒を連ねるスーパーやレイストランの表記で目に入る文字もタミル文字が多い。
そして、インド野菜(ドラムスティックや調理用バナナ)や日用雑貨を扱うインドスーパーに混ざり、DVDショップも何軒か立派に店舗を構えている。
小ぎれいそうな一軒のDVD 屋に入ってみる。店のサイズはさほど大きなく6人ほど客が入るとかなり窮屈になる感じだが、品揃えは豊富でとてもきれいに整理されている。店舗に入って右側はボリウッドなど北インド系映画、そして左側は南インドの映画とぴっちり、きれいにわけられていて面白い。
店員さんもインド人ながら、パリ歴が長いためか大人しく、積極的には話しかけてこない。自分から積極的に探している映画を言って探してもらう必要があるが、やはり種類は豊富。

インド好きならインドにいってDVDを購入するのが普通だと思うが、やむ得ない事情でインドに行けない場合(?)は、パリにいけば北インド映画から南インド映画まで探しているDVDを必ず見つけることができるはず。
1


 インドなパリ – その2:インド好きなパリジェンヌも!

日本にもいくつかのインド舞踊・ボリウッドダンスのスクールがあるが、なんとパリにもいくつか存在する。ある程度の規模のあるスクールだけでも2件はあり生徒数もかなりいるようである。
一つはTriwat Ecole de Dance でボリウッドとカタックダンスの教室がもうけられている。ホームページをみると、ボリウッドダンスを踊るパリジェンヌ(というかマダム)が見ることができる。もう1つのスクールはBolly Deewani。こちらはバングラ専門コースなどあり同じく結構本格的。青空ボリウッドダンス教室をパリ市内の公園で開催したり、ボランティア活動などにも積極的。こちらもホームページの写真をみれば、生徒がすべていわゆる白人のフランス人ということが分かる。

パリといえば、中村江里子だったり、マカロンだったり、こ洒落たものを想像しがちだが、いるのだ、パリにもインド好きのフランス人が。
インド好きということで少し肩身の狭い思いをしている日本のインドファンは遠くパリにも同志がいることをたまには思い出し、インド道をこれからも歩んでほしいと思う。
2


 インドなパリ – その3:インドなパサージュを歩いてみよう

プラージュとは日本でいうところのアケードのようなもの。だいたい18世紀頃からパリで作られ始めらたようである。かなり歴史は古いので、パリ市内にはたくさんの味のある素敵なパッサージュがある。パリのガイドブックを見れば、ほぼ必ずと言っていいほど「パリのパサージュ訪問」を観光の一つとしておすすめしているほど。

そんなパサージュにもインド系の店で占められたパサージュが存在する。その名もパサージュ・ブラディ(Passage Brady)。ここの通りを入ればあるのはインド料理屋とインド雑貨屋さんばかり。パリでの外食は日本に比べるとかなり高いことで有名だが、パサージュ・ブラディのインドレストランは料金設定もパリのスタンダードと比べれば安めに設定されており財布にも優しい。

ちなみにこのパサージュ・ブラディはパリのアフリカンエリアと隣接している。このためパサージュ・ブラディ―を出てぶらぶら歩き始めると、黒人専門の美容院や美容用品店などかなり“アフロ”な雰囲気になる。
パリにいながらかなりエスニックな雰囲気が楽しめるのでこのエリアは訪問の価値あり。
3


情報提供:サンジャイ
電気料金比較サイトを運営するフランス企業で働く)  


2016年10月22日

2016年IFFJ総括

2週間にわたるIFFJが終了した。
今年もバラエティ豊かなインド映画を鑑賞することができて、本当に楽しい日々を過ごした。この開催に至るまでのスタッフのご苦労は大変なものだったと思う。が、IFFJのおかげで確実にインド映画ファン人口は増えていると実感している。私は休日や平日の夜の回での参加になったが、満席を含めて人の入りはとても良かった。

今年は初日から最終日まで足を運び、全作品を鑑賞し、全作品の感想をざっくりと短くではあるがツイートした。謎の使命感である。というよりも、もともと記憶力が非常に悪いので、観たてほやほやのうちに印象などを書き留めておかないとすぐ忘れてしまう。情けないことに観たことすら忘れてしまうほど脳のハードディスクの容量が小さい。

そして開催中は極力ネガティブなことはツイートしないようにしていた。「面白い」という感想が多ければ、もしかしたら足を運ぶ人が増えるかもしれないということを期待して。観てもいない人に「つまらない」とはあまり言いたくないしね。

けれども開催が終わったので、来年以降より充実させたものにしていただくために、今回気になったことをいくつか書いておこうと思う。

★日本語字幕について
登場人物が二人称に「君」という代名詞を多用したことによるいわゆる“「君」の名は”問題。私は字幕作成者のご苦労などを考えると、あまり強く批判はしたくない。一流の字幕作成者ですらミスや違和感のある字幕になることはよくある。けれどもそれなりの料金をとって一般の劇場で上映する以上はやはりある程度のレベルが要求される。特にインド映画は独特の固有名詞や文化的背景があるので、英語字幕からだけ訳すと難しいところが多いと思う。IFFJの字幕が最終決定になるまでどういう過程をたどっているかわからないが、インド、インド映画、ヒンディー語などに詳しい人の監修やチェックは是非入れてほしいところだ。

★字幕位置
ヒューマントラスト渋谷に限っては、座席の段差があまりなく、運が悪いと前の人の頭で字幕がほとんど見えないことがある。来年もここでやるのであれば、縦字幕にしてもいいのではないかと思う。

★画質
私などはインドの古い映画館でも観ているので画質はいいに越したことはない程度だが、技術が進んで画質がどんどん良くなっている現在、Blu-rayがギリでDVD画質では不満に思う人もいると思う。よりいい画質での上映を望むが、とはいっても運営上止むを得ないのであれば、パンフレットに記載しておけばあとは観る側の判断になる。

★チケット
今回メンバーズカードが使えず、また前売り券では座席指定がネットからできなかった。事前に会場へ引き換えに行くことができず、上映日当日しか行くことができないのに既に満席・・・という人もいたと思う。このあたりは次回の課題になるかも。経費の問題ということであれば、例えば今回のようにゲストを呼ばないとか、上映作品数を12→10程度にしても、2週間という期間であれば十分だと思う。

★オープニングイベント
高倉さんとアンジェラさんのイベントは大変面白かった。けれどこれから短編と1本上映が控えている状況で1時間は長い。高倉さんのジャンル分けなどは良かったが、これから映画祭が始まろうとしているのに個別作品解説は不要では?ネタバレはなかったものの、話を聴いて観に行きたくなった人はいたかもしれないが、何の情報を入れたくない人もいたと思う。

★言語
今回テルグがなくなり、ベンガルが1本で残りがすべてヒンディーだった。テルグ、ベンガル、タミルあたりが1本ずつ入ると理想的だと思う。

★新作とジャンル
新作が多いのは本当に嬉しい。一方で今年のボリウッドは実話ベースのシリアスな作品が多かった。今年のIFFJはそんな中でも様々なジャンルの作品を入れてきていたが、これからも2年内くらいに枠を広げてもより広範な言語、ジャンルを入れてきてほしい。例えば「ハウスフル3」などは絶対にIFFJでなければ流せない作品だし、この流れで1本バカ映画枠を入れるのはアリだと思う。

★宣伝
インドファンが集まるナマステ・インディアのブースの出店はいい宣伝効果になると思う。逆に今回気がついたのはインド人が少なかった。またインド映画ファンでない人がどの程度来場していたかはわからないが、従来のファンを大切にしつつも、新たな宣伝方法で新規ファンの獲得にも頑張ってほしい。

★人気作を休日を中心にもってくるなど、プログラムの構成はとても良かったと思う。スーパースター、シャールクの『ファン』とサルマンの『プレーム兄貴、お城へ行く』が上映されたのはGGGGGGoood job今回のIFFJ最高のお仕事でした。


季節の変わり目でもあり、普段引きこもりなので毎日のような外出に実は開催1週間目頃にダウンしかけた。そう思うと昨年も10月は体調を崩していたことを思い出した。結局観る方も体力勝負ということで、来年は自分自身の体調管理に気をつけたいと思う。

いろいろ書いたけど、本当に楽しかった。スタッフのみなさん、お疲れ様でした。ありがとう。
普段インド映画は同じ作品の感想を共有することが少ないので、他の人の感想を知る貴重な機会でもあった。自分が気がつかなかった作品の印象や受け取り方、視点があって、とても楽しかった。
来年も是非お会いしましょう  


2016年09月20日

A.R.ラフマーン

A.R.ラフマーンの名前を知らなくても『ムトゥ』の音楽を聞けば「ああ、インド映画ね」と思い出す人は多いのではないか。TVなどでインドが特集される時は断トツで彼の曲が流れる。さらに米アカデミー賞作品賞を受賞した『スラムドッグ$ミリオネア』で作曲賞、さらにゴールデングローブ賞でも受賞したと言えば、どれくらい凄い人かのイメージがわくかもしれない。

そのラフマーンが来日と聞いて福岡に行ってきた。
ラフマーンが参加したのは初日の福岡アジア文化賞大賞の授賞式と翌日音楽を担当したイラン映画「預言者ムハンマド」上映前10分程度のサラーム海上氏とのトーク、そして同日夕方の市民フォーラム。
このうちメインとなった市民フォーラムについては「アジア映画巡礼」さんのブログが詳しいのでそちらをご参照頂きたい。

ラフマーンはどの場面でも静かに、言葉を選ぶように話していた。
はにかんだような笑顔と決して大きくはない身体や身振り。
しかし彼の中には無限の音楽の宇宙が広がっている。それまでのインド音楽の常識を覆すかのようなメロディーは、現代的であると同時にインドの古典の良さを取り入れている。
市民フォーラムのパフォーマンスでは私の席から演奏している指先が見えたのだが、口数が多くない彼の指先はとても饒舌でしなやかだ。ひとつひとつの音が人間の情念を表しているかのようにも思える。明るさの中にも悲しみがあり、絶望の中にも希望が見えるような音楽。

授賞式では最初に福岡の高校生のオーケストラが彼の曲を2曲演奏し、その後ラフマーンのピアノとシタール奏者で1曲、そして最後に高校生とボーカルが加わりラフマーンもコーラスしてのJai Ho

特筆すべきはラフマーン監督の映画が作られようとしているらしい。
タイトルも決まっていて(99 Songs)、ラブストーリーとのこと。自分の音楽学校と映画のことを話す時は少しだけ言葉数が多くなり、夢を持ち続ける少年のような表情だった。

インド映画ファンであれば、みな彼の音楽と共に映画を楽しんできたことだろう。そして今ではインドのみならず、世界のラフマーンとなっている。
ザキール・フセインの翌日がラフマーンという夢のような日が続いたが、ごく限られた人数であったので今度は是非ツアーとして来て頂き、一人でも多くの人がライブを体験できればればいいなと思う。当たり前の話だが、やっぱりライブはいい

映画のために実際ロケ地にも訪れたそうだが、もしかしたら日本にインスピレーションを得て、そのうち和テイストのラフマーン音楽が聴けるかもしれない。
2016-09-17-10-31-20

市民フォーラムの後に九州のインド好きの方々が中心となったオフ会にお誘い頂き参加したのだが、106サウスインディアン福岡天神店は前日ラフマーンが来られたとのことで直筆サインを見せてもらった。お店にきっと飾られると思うので、博多に遊びに来られた方は是非実物を見て頂きたい。
ラフマーンが座った席も教えてもらえる。
2016-09-17-22-10-59
  


2016年09月17日

ザキール・フセイン ライブ

ザキール・フセイン のライブに行ってきた。これまでタブラの演奏はイベントなどでその心地良い音色は耳にしていたものの、演奏会として聴くのは初めて。
渋谷のライブハウスなんて私には場違いではなかろうかと心配したが、なんとOSOやムトゥでお馴染みのあのシネマライズ跡だった。

会場は超満員。
舞台は高めにセッティングしてあり、どこからでも見やすい配慮がされていたのが嬉しい。期待でワクワクする熱気に包まれていた。

私は音楽の専門的な事はわからない。しかしタブラとはなんと複雑で繊細で豊かな音色を奏でるのだろうか。息をするのも忘れて聴き入った。

そして次第にタブラの音は心臓の鼓動に似ているような気がした。トン、トン、とリズミカルに、ゆったりと穏やかに、時に激しく駆り立てるように。
タブラの音と自分の鼓動が徐々にシンクロしていく。そしてそれが重なり合った時、異次元へといざなわれる。間違いなくあの時の私は違う世界にいた。

静かで深みのある音もさることながら、超高速テクニックは私たちと同じ2本の手から編み出されているとはとても思えない。きっと彼には凡人の目には見えない千手観音のような手があって、その神の手がタブラを支配しているのではないか?いや、もしかしたら逆にタブラに宿った神がザキール氏の身体を借りて観客に語りかけているのかもしれない。

ザキール氏は表情豊かな人だった。サーランギー奏者のサビール氏とアイコンタクトをしながら、天を仰ぎ、観客に語りかけるように、時々いたずらっ子のような笑顔を浮かべ「でぃ!」とキメを打ったりして、とても楽しそうに彼の世界を作り出していた。それはムンバイの街であり宇宙であった。

ライブの良さは空気の響きを直接肌で感じられることにある。これはどんな高性能の再生機材でもかなわない。大き過ぎない会場は皆で同じ空気を感じる事ができた。そしていつまでもこの心地良さに身を委ねていたいとすべての人が感じていたいないに違いない。目の前5メートルから発せられる音の波動砲。

ノンストップ1時間40分+アンコールで約2時間のステージはあっという間だった。また是非日本であなたの世界に連れて行って下さい。来てくれてありがとう。  


2016年08月27日

インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン(IFFJ)2016

今年もIFFJの季節が迫ってきた。
オフィシャルHPはまだ更新されていないみたいだけど一応こちら
Facebookで確認する方が早そう。こちら

東京 10/7(金)〜10/21(金)渋谷ヒューマントラストシネマ
大阪 10/8(土)〜10/21(金)シネ・リーブル梅田

計14本のラインナップは以下のとおり。
ボリウッドに関しては興行収入順に並べてみた(単位:カロール、koimoi.com)。興行収入は大きな参考の1つにはなるものの、それが必ずしも自分の好みと合うわけではないので、あくまでも参考程度で。

【ヒンディ】
Prem Ratan Dhan Payo 207.4
Airlift 127.80
housefull3 107.70
Gabbar is Back 86
Fan 85.00
Neerja 75.61
Kapoor & sons 73.03
Ki & Ka 51.62
Bombay Velvet 23.67
Phobia 02.50
Aligarh 02.00

【ベンガリ】
Monchora

【テルグ】
Size Zero

【短編作品】
Muftiya

゜゚*☆*☆*゚ ゜゚*☆゜゚*☆*☆*゚ ゜゚*☆゜゚*☆*☆*゚ ゜゚*☆

いやいや素晴らしい
ざ〜っくりと昨年から今年前半にかけて、一部の大作を除いて話題作は概ね網羅されているのではないだろうか。私はこのうち半分を観たものの大体が英語字幕であったため、日本語字幕でじっくりと観たら感想がガラっとかわるかもしれない。例えばKapoor & sonsのような感情が軸になる作品はちゃんと理解して観たかったのでよかった。

まずはおそらく一番人気になるであろうFan。
興業的には決していい数字ではないが、シャールク"Fan"は必見である。

今年のボリウッドの傾向としては実話ものがヒットしたということ。ラインナップにはないがアイシュのSarbjitもそのひとつ。Airliftの戦火の街の様子、Neerjaのハイジャック、いずれも観ていて自分が本当にその場にいるような恐怖感をおぼえるほど、リアルな描き方が素晴らしい。特にNeerjaのハイジャック犯が片言の英語を話す様子がとても臨場感があった。ソナムは今のところ主演女優賞イチオシ。

いわゆる歌と踊りと華やかなボリウッドならPRDP。サルマンは本当に作品に恵まれているなあ。こちらはサルマン×ソナム。

個人的に好きなのはKi & Ka。昨年上映されたBang Bang!ではカトリーナが目覚めると無人島の青い空の下、砂浜で上半身裸のリティックが料理を作っているという光景に萌えたものだが、こちらはアルジュンKが料理男子に。料理男子萌えというジャンルがあるかわからないが、私はかなり萌えたがたいのいい男の子がいじいじしたりしてすごくかわいいの

別の意味で注目はHouseful3。私はこれだけは日本で日本語字幕で公開されないと思っていた。いわゆる「ピー」音、字幕的に×××になってしまう台詞ばかり。いったいこれをどう処理するのかとても興味ある。つきつめるとインドと日本の禁忌、笑いの質という話にもなるが、まあ肩ひじ張らずに観るのが吉。

IFFJはコアなインド映画ファンが多いが、それでも初めてインド映画を観るような人たちが「面白い」と思ってくれて、そのあと10/29(土)から公開のPKになだれ込むという展開を激しく希望している。  


2016年08月07日

ラージクマール・ヒラニ監督

プレミアム試写会の翌日、公式ツイッターで「監督が恵比寿の映画館に訪れます。」との告知が。月末で自分の仕事が立て込んでいたのだが、このチャンスを逃すわけにはいかない。ダッシュ&恵比寿ガーデンプレイス内で半分迷子になりながらも、どうにか間に合った。

監督は訪れたファン一人ひとりの握手やサイン、写真に快く応じてくれていた。取材でお疲れのところ、終始笑顔で優しく接してくれた。この日はラフな服装であったが、とても上品で優しさにあふれていた。

そろそろ会場を立ち去るという時まで、遠巻きに見守る私たちの方を向いてニコニコ手を振ってくれていた。急な告知ではあったが、十数名が集まったであろうか。大人数というわけではないかもしれないが、それでも監督作品を愛するファンが日本にもいるのだということはわかってくれたのではないかと思う。

ちなみに傍には監督志望?の息子さんがいらっしゃったのだが、俳優になってもいいくらいのイケメンお父さん譲りの人当りの良さで、快く撮影に応じてくれた。愛にあふれたファミリーなんだなということが伺えた。

ヒラニ監督作品はまだ4作品しかない。『Munna Bhai MBBS』『Lage Raho Munna Bhai』『きっと、うまくいく』そして『PK』。ムンナバイシリースも大ヒットした。監督の笑顔の向こうには鋭い人物観察眼がある気がする。ヒラニ監督のフィルターを通した時、それぞれのキャラクターがどのように描かれているのか、更に注目して作品を観て行きたいと思う。

日本が気に入られたということなので、日本ロケもありえない話ではないかも?短い滞在だったけど、「日本」がきっといつかどこかで何かの形で監督作品にお目見えすることをゆるやかに期待している。2日間の感謝の気持ちに変えて、今後すべてのヒラニ監督作品を鑑賞することを誓います

10月29日の一般公開まで待てない!という人は9月18日(日)「第9回したまちコメディ映画祭in台東」で。

image
  


2016年08月06日

ラージクマール・ヒラニ監督

先週のことになってしまうが、ちょっとしたご縁があり、ラージクマール・ヒラニ監督がゲストの『PK』プレミアム試写会に参加することができた。この感激は言葉で言い表すことができない。会場のインド大使館へは待ちきれずに早目に着いた。中央部はマスコミ関係者席でその他の人たちは両脇や後方だったのだが、そのおかげで脇ブロックの最前列に座ることができた。

おこぼれの身なので出過ぎたことはしないつもりだったが、念のためと思ってサイン用の「きっと、うまくいく」のDVDを持って行った。30分間のイベントが終了しマスコミが引きあげる中、監督は会場内で周りの関係者と談笑をしていた。私は勇気を出し、監督のそばにいた日本人スタッフの方に「監督のサインをいただけますか?」と尋ねたところ監督は快く応じてくれた。

私は「あなたの作品が大好きです。お会いできてとても嬉しいです!」と拙いヒンディー語で伝えたところ「Ohヒンディー!どこで覚えたの?」と聞かれたので「あなたの作品からです」。どこまで通じたかはわからないが、何やらヒンディー語らしきものを必死で話そうとしている私にハグをし、握手をしてくれた。感激過ぎて腰砕けになりそうだった。

監督は上品さにあふれ、ずっとニコニコ笑顔だった。そして声がとても素敵。
もしTVなどで監督の声を聴くことができたら、是非笑顔と声に注目してほしい。

ゲストの山崎監督は監督目線で「きっと、うまくいく」と共に「PK」を大絶賛し、壇れいさんはご自分が話されている途中でうっすら感激で声を震わせていた。それを聞いて私も我がことのようにとてもうれしくなってしまった。

ヒラニ監督は黒澤監督作品をリスペクトし、ほぼ全部観たと言っていた。そして山崎監督を日本を代表する監督と評価し、山崎監督が退場される際はぽんと彼の背中を押して「お互い頑張ろうな」と思われるようなメッセージを送っていた。また壇れいさんへは美貌を称え、是非映画にとラブコールを送った。さらに日活をはじめとする各関係者の名前を挙げ、感謝の意を表された。

もちろんこれにはリップサービスも含まれていると思うが、それでもその気持ちが嬉しいではないか。そして実際の監督にお会いして今まで思っていたことを確信した。ヒラニ監督は登場人物ひとりひとりのキャラクターを描くのが本当にうまい。どの人物もいわゆる「キャラが立っている」。そしてかなり深くまで人物像を掘り下げている。スピーチにあったように、人の良いところ、優れたところにフォーカスを当て、肯定的に受け止めようとしている姿勢が感じられた

作品を作るうえでは、もちろん悪役や敵役なども必要になる。
でもそんな役どころですらどこか憎めない、人間味あふれたキャラクターになっている。
脇役や端役も優しさと愛情をもって、とても丁寧にいきいきと描かれている。いらない人間なんていないんだよと言っているようだ。作品全体から「どんな人間だって頑張って生きてるんだ、前を向いて生きていこうよ」というポジティブなメッセージにあふれている。だから監督作品を見ているととても心地よいのだ。元気になれる。

そしてそのお人柄に翌日さらに触れることになった。(続く)
image