2017年08月19日

海外旅行での映画館のススメ

先日ベトナム旅行をした時に、予定には入れていなかったがベトナム映画を2本観た。というのもフライトが早朝着で午後のホテルのチェックインまでの時間と、出発も深夜だったのでこちらもチェックアウト後に時間があまっていたからだ。

午前だとお店がしまっていることも多いし、散歩も何時間も、特に炎天下の中では疲れてしまう。エアコンが効き、軽い飲食、寝ることもでき、約2時間程度はいることができる。映画が面白ければなおOK。

私はインド映画を上映している国であれば、積極的に観るようにしている。日本での上映がほとんどないので、こういう機会でもなければスクリーンで観ることはできないからだ。だがインド映画を上映していない国でも、現地の映画を観るのは悪くないなと今回の旅行で思った。

訪れた国の雰囲気は観光名所だけで感じるものではない。ほんの2本の映画体験ではあったが、映画料金、発券システム、自国映画とハリウッド映画の割合、予告編の作り方、来ている客の雰囲気・・・観光地だけではわからない、現地の生の雰囲気が興味深かった。たまたま時間的にマッチして観た映画が面白いかそうでないかも一つの出会い。初日に映画を観た翌日に現地ガイド付きのツアーに行ったのだが「昨日こういう映画を観た。この俳優は良かった。」などと言えば、話題も広がる。

映画祭などで海外の映画を観る機会はあるが、比較的芸術映画に近い作品が多い。海外に出展するような作品はどうしてもメッセージ性が強いものが多くなり、単なる娯楽作品は国内マーケットのみになりがちだ。だからこそ、そういう娯楽作品を観てその国のカルチャーを味わうのも面白い。そういえばベトナム映画は予告編も含めてやたら男子のズボンを脱がすギャグがあった。これは日本だとイジメでアウトではなかろうか・・・などなどギャグを比較したり。

ただし映画館の多くは繁華街にあり人も多く暗闇になる。
家族連れなどが多い、ショッピングセンターなどに入っている昼間のきれいなシネコンなら概ね問題ないだろうとは思うが、そこは現地の治安や周りの雰囲気を十分把握した上で。

観光やショッピングの休憩はカフェでのお茶もいいけれど、映画館という手もなかなかいい。  


2017年08月05日

『Jab Harry met Sejal』

Imtiaz Ali監督は、男女をとても美しく撮る監督だと思う。人物のアップを、背景をぼかして浮き上がらせるようにして、どのシーンもまるでポートレートのようだ。

この作品について言えば、主演のシャールクとアヌシュカの魅力が最大限に表現されていると思う。シャールクは『Dear Zindagi』風の、酸いも甘いもわかったような大人の男の魅力がファンにはたまらなかったろう。やはりこの人はキワモノ的な役ではなく、こうした王道のラブストーリーでいけばいいのだと思う。ドキドキさせてくれるシャールクを久しぶりに観られて嬉しかった。ただ正直ターバン姿はあまり似合わないと思う(笑)

アヌシュカについては、まず一番最初に目がいったのは足の長さとスタイルの良さ。元気いっぱいの彼女がスクリーンからはみ出しそうで、映像をアヌシュカ色に染める。この二人と言えばアヌシュカのデビュー作でもある『Rab Ne Bana Di Jodi』だが、この時の彼女は婚約者の死からの強制的な結婚をしてふさぎ込んでいる・・・という役のせいもあって、演技自体は特段良くも悪くもないな、という感じだったが、今はどうだろう。まさかこんなに大化けする女優になるとは想像もつかなかった。

私はアヌシュカの最大の良さはどの俳優と合わせてもマッチするというところにあると思う。3カーンとはすでに共演済みだが、どの作品も違和感なくハマる。しかも彼女の魅力を出しながら俳優を引き立てる。

アヌシュカ演じるSejalが失くしたエンゲージリングをツアコンHarryと一緒にヨーロッパのあちらこちらに移動しながら探すというロードムービー的な要素を入れたという話だが、ストーリーそのものは65-70点で決して悪くはないのだが、やはりちょっと弱い。この二人が魅力的だったからこそもっとドラマティックなものを観客は期待してしまう。

同じImtiaz Ali監督の『Jab We Met 』はタイトルからもわかるとおり、強引な女の子に振り回されて一緒に旅をするというストーリーは似ている。こちらは後半家族の要素を入れた。同監督『Tamasha』もストーリーが弱かった。ただ主演の2人、ランビール・カプールとディーピカの映像はとてもマッチしていた。RBDJだと今回と同じ主演2人+友人だが、1人2役でストーリーをふくらませていた。もうひとひねり・・・例えばHarryの過去などについて掘り下げたらもっと面白かったのではないかと思う。それがちょっと惜しい。

今回は英語字幕で、しかも早口でまくりたてるシーンが多かったので細かいニュアンスはほとんどわからなかった。もしかしたら日本語字幕で台詞を理解すれば、もう少し評価は上がると思う。  


2017年07月09日

『裁き』

原題が『Court』というとおり、裁判の映画である。
映画冒頭でムンバイの下町かと思われる風景が映し出された。観に行った日の東京はとても暑く、インドのむせかえるような熱気を体感しているかのようだった。

普通裁判映画というと、ドラマティックな弁護人や被告人とのやりとりなどを連想する。有罪か、無罪か。しかしこの映画は違う。ただひたすら、インドのおそらくはリアルに近い裁判が淡々と刻まれていく。ドキュメンタリーのような進み方で、そこには私たちが想像するようなわかりやすいドラマはなく、お役所の流れ作業のようだ。ひと通りの形式が終われば、はい、また来月。いつ終わるかもわからないインドの裁判。そういえば有名俳優たちの事件もいったいどうなっているんだろう。

登場する人物たちも普通の人たち。何か大きな野望を描いているとか、担当する事件に思い入れがあるわけではない。親に結婚話を持ち出されて不機嫌になる若い男性弁護士、夕飯はきょうもあり合わせだわと主婦同士の会話をする女性検察官、息子の病気は石を身に着けるといい迷信を信じる裁判官。彼らにとっては刑事事件も仕事のひとつでしかない。

ところがこの映画、かなり社会性というか皮肉のようなものが込められている。
下水掃除をする男が自殺した。活動家の歌う社会性ある歌がその自殺をほう助したという、とんでもない理由によって逮捕された。まずこれが事件なのかそうででないのかという前提すら怪しい。そのよくわからない前提ありきで事件は進んで行く。そして下水掃除というインドでは最下層に属する男の死など、はっきり言ってみなどうでもいいと思っているに違いない。つまりはこの活動家がうっとおしいため適当な理由をつけているのだ。活動家は過去にも警察とトラブルを起こしており、冤罪の可能性が大いにある。

この下水掃除の男を弁護するのがかなり裕福な男性弁護士というのも面白い。普段は決して交わることのない人種が、この事件を担当することにより男の妻と接点を持つことになる。「お金よりも仕事をくれ」という妻の訴えは、生きていくのに必死の人たちの叫びだ。

この映画で一番印象深かったのは活動家の歌う強烈なメッセージが込められた歌だ。歌の持つ力は小さくない。例えばもしこの歌を毎日聞いていたら、思想が変わってしまうかもしれない。わかりやすいリズムにのせた言葉はただの演説よりも心に深く刻まれる。

起承転結がはっきりしたわかりやすい映画ではないので一般受けと言うよりもツウ受けするような作品。特にインド事情を知っている人が見ると、ニヤリとしてしまうかもしれない。いろいろなタイプのインドの人たちと、インド的物事の進み方がリアルが描かれている。  


2017年06月04日

『ヒンディー・ミディアム』

インドの下町でファンション店で成功した夫婦が娘を一流学校に入れるために奮闘するお受験狂想曲。

親が子供にいい教育を受けさせたいと願うのは世界共通。カネ、コネ、お受験予備校、あらゆる手段を使っても子供をいい学校に通わせたい。でもいつの間にか目的が「教育」ではなく学校に入ることそのものになってしまっている。階級社会やインド特有の貧しい人たちへの優先入学制度など、社会問題をコメディタッチで描いた。主演のイルファンは安定の演技。

日本でも受験戦争が問題になるが、インドのそれはもっと厳しいかもしれない。事業には成功したものの、公立学校出の夫婦はそのコンプレックスから娘にいい教育を受けさせたいと願う。また貧しい町の労働者階級の親は、息子を推薦枠でいい学校に入れて人生の成功を願っている。『マダム・イン・ニューヨーク』でも英語ができない主婦がコンプレックスを抱いていたが、「英語」ができることはステイタスであり、中上流階級のたしなみであり、成功への第一歩なのだ。代々引き継がれた貧しき連鎖は英語を使う私立学校に入学することで断ち切ることができると信じられている。

『きっと、うまくいく』は過酷な競争社会の中で友情の大切さと「学ぶこと」の本当の意味を教えてくれた。『ヒンディー・ミディアム』でも行き過ぎたお受験戦争という舞台で人間同士の結びつきや正しく生きることについて描かれていた。

私はこのような社会問題をコメディタッチでさりげなく問題提起する作品が好きだ。宗教ビジネスを扱った『pk』や母を探す少女が印パの緊張をやわらげる『Bajrangi Bhaijaan』などが代表的だと思うが、ストレートに怒りを前面に出す作品よりもやわらかく心にしみるのだ。そして笑いのフィルターをかけて社会問題を訴える作品は、とても緻密で高度な脚本が必要なのではないかと思っている。

この作品はデリーの街の雰囲気も良く出ていた。
蚊やネズミと同居する下町の家の様子、人をかき分けて乗るバス、配給の水。片や高級車が止まる落ち着いた住宅街、ピザとミネラルウォーターの生活。お受験予備校の面接想定問題「貧しき人へ」のマニュアル通りの答え「分かち合うこと」を、奇しくも自分たちが体験することによって親自身が学んだのだった。

親の必死さは時に滑稽だ。日本ならありとあらゆる神社に行って合格祈願という話もありがちだが、インド人がモスクやシク教寺院、教会にまで行って「どんな神様でもいいからお願い!」というのは強烈な切望感が伝わった。「娘が鬱になってドラッグに手を出したらどうするの!?」という母親の台詞からはインドも鬱やドラッグが問題になってるのかなあ、と。笑えるけれど笑えない話。

インド映画はこういうテーマをまとめようとするとどうしても説教っぽくなってしまうが、中流のイルファンの正論をスルーする上流階級の人たちの態度にリアルが感じられた。

英語、お受験、ママ友からの差別、クラス分けされた社会・・・など、日本でも受ける要素がたくさんある。
配給会社さん、買うならコレですよ。
  


2017年05月28日

タイガー・シュロフの予感!

「ランボー」がインドでリメイク、タイガー・シュロフが主演
あの「ランボー」がボリウッドでリメーク! 「まさか踊る?」と心配する声にスタローンが熱いエール

Yahoo!ニュースにタイガー・シュロフのことが載った
タイガーは私が注目している若手ボリウッド俳優の筆頭格である。
マーシャルアーツの心得があり、ダンスも抜群。まるで踊っているかのような軽やかでしなやかなアクションが目を引く。特に足先までピンと伸びた回しとび蹴りが美しい。日本でも上映された『A Flying Jatt』はIMDbなどでの評価は高くないが、彼の良さが発揮できていたと思う。

ここ最近ボリウッドでは本格派アクション俳優がいなかった。若い頃はアクション俳優として活躍していたアクシャイ・クマールも40をゆうに過ぎているし、他の俳優もそれなりにカメラワークやCGでどうにかなるものの、実際にアクションが出来る俳優の存在は大きい。ましてや今回『BANG BANG!』の監督ということで、アクション+ダンスのハイレベルなコラボが期待できる。演技力はこれからという感じだが、その他の資質で十分にカバーできると思われる。

で、相変わらず「インド映画、踊るんでしょwww」な意見が多いわけであるが、最近はほとんど気にならなくなってきた。むしろそれくらいインド映画とその特徴が認知されているのはかなりすごいことなのではないかと。他の国の映画の特徴と言ってもパッとは思い浮かばないではないか。間違った認識を持っている人に「いやボリウッドというのはヒンディー語の映画で踊らない映画もあるし、多言語で1年で1000本以上・・・」などといちいち説明するわけにはいかない。

星野源“恋ダンス”、欅坂46“サイマジョ” 振付師の地位向上の理由とは?
こんな記事や『ラ・ラ・ランド』の大ヒットなど、ダンスの認識も変わりつつあると思う。インド映画に挿入されているダンスシーンは振付の素晴らしさに加え、楽曲、ストーリーを暗示させる詩、風景、衣装やその色味、カメラワークがすべてが計算されている総合芸術と言っても過言ではないと思う。自信を持って「インド映画は踊らない作品もあるけど、踊るよ思いっきり」と言える。楽しく、美しく。

自分だって他のジャンルについて正しい認識を持っているかというと、かなりアブナイ。
ただ世界に発信するネットを使っている以上、自分なりになるべく正しい情報を発信していこうとは思っているが、何が正解かというのもなかなか難しい話だ。映画の感想などは100%主観になってしまうし。

邦画は好調であるし、さらに『バーフバリ』などを観て映画館で映画を観る楽しさを知る人が増えたら少しずつではあるが、インド映画の上映機会が増えていくかもしれない。Netflixで気軽に観られることは大きい意味を持つが、やはり大きなスクリーンで高画質高音質で観たいものだ。

断言してもいいが、タイガーのランボーには間違いなくダンスシーンが組み込まれるだろう。彼の美しいアクションとダンスを是非日本のスクリーンで観てみたい。  


2017年05月13日

南インド映画祭2017 総括

SIFFJが終わった。
まずは、この映画祭に関わったすべての人たちに感謝したい。お疲れ様でした。楽しい作品をたくさん、どうもありがとう
最近のボリウッドは比較的さらっと小じゃれた作品が多くなってきたが、南インドはまだまだどっしりとインドらしさを残していることを実感した。一概に日本料理といっても北海道と沖縄ではまったく違うように、同じインド映画というくくりでも個性が出ていて面白かった。

GWということで、他の予定も入っていたので今回は12本中9本を鑑賞。各作品の感想は忘れないようにツイッターに書き留めた。このブログでは印象に残った上位4作品と、その他の作品の感想を。

 愡件番号18/9』
インドのリアル・・・富めるものと貧しきものの覆ることのない絶対的な差、警官の悪行などが、純粋なラブストーリーと共に描かれる。彼の持つ夢は大金持ちになって虐げられてきた人たちを見返す事ではない。小さな家と店を持ち、好きな彼女と所帯を持つこと。その夢はい乃鵑欧拭悒襯轡◆戮砲眥未犬襦辛い作品の中にも正しき裁きの可能性と希望が見えたところがとても良かった。ひとひねりしたストーリーとも相まって、自分的に今回ダントツ1の作品。
◆24』
タイムマシン的な話はポピュラーなテーマではあるが、インド映画で取り入れられたことが新しい。1枚の鳥の羽のいたずらから生まれるハリーポッター的なファンタジックな世界観。それががっつりインド映画の世界に組み込まれていく。偶然が起こした奇跡が入るとはいえ、「神」の力が一切入らず、人間の力のみによって生み出された発明というのもインド映画としては割と画期的ではないか。
『帝王カバーリ』
前回のブログに書いた通りだが、作品ごとに当然いろいろな評価はあるものの、やはり今のタミル語映画界でラジニカーントの存在は唯一無二のものだ。
ぁ悒襯轡◆
これはもっと上の順位になったかもしれない。関西弁の字幕を読むという違和感を最後まで消せなかった。田舎出の彼のキャラは、いわゆるステレオタイプの関西人・・商売っ気があり要領よく立ち回る・・とは違う気がしたし、不思議ワールドに日本のリアルが感じられてしまった。もし取り入れるなら一人称を「ワシ」「オレ」くらいでよかった気がする。ただ世界観はとても面白かった。これも今後のインド映画の可能性を感じさせる作品。

ちなみに観なかったのは『テリ』『ウソは結婚のはじまり?!』『スブラマニアム買いませんか』。
他に観た5作品もそれぞれ面白かった。

『レモ』は安定のラブコメ。恋愛結婚は男女とも憧れとして描かれるテーマ1だが、女性の恋愛結婚は男性よりハードルがめちゃくちゃ高くなる。男性に背中を押されて押されてようやく決意する。例えばボリウッドのアーリアー・バットが演じるような役柄だと仕事も恋愛も自分でコントロールして決断していくキャラが増えている。南インド映画はあまり観ないのでよくわからないけど、そのあたりはどうなんだろう。

『誰だ!』『オッパム』は面白そうなエピソードは全部入れちゃえ的なにんにく野菜マシマシの足し算のスリルアクション。1つのテーマをじっくりと追っていくそぎ落としたストーリーは洗練されていて明快だが、もう何が本筋だかわからなくなっちゃいそうなてんこ盛りサスペンス系というジャンルを無意識に確立させている気がする。

『ジャスミンの花咲く家』や『人形の家』の家シリーズはインドの家族のいい面悪い面が体感できるような作品。日本人的に作品としてはインド家族色が強すぎて胸焼けしそうになったが、それはそれで彼らの考えがとてもよく表れていて面白かった。

このような映画祭で一番楽しいのは、同じ作品を同時期に感想を言い合えること。インド映画は一般公開が少なく、時々行われる上映会やDVDは英語字幕のみで理解がイマイチだったりで、こういう機会が少ない。ヒンディー語を学んでいるせいと昔からの馴染みで、どうしてもボリウッド作品の視聴が多くなるが、インド映画全般北も南も本当に面白いつまらなくても面白い

来年もやるような噂を聞いたので、是非また楽しい作品を上映してほしい。  


2017年05月07日

『帝王カバーリ』

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観た人の感想だと若干評価が分かれているような気がしてた。自分も「ギャング系はあまり得意じゃないんだよなー」と思いながら特に過大な期待をせずに観たのだが、とても面白かった

ラジニカーントは今回はギャングのボスという役柄もあり、年相応の貫禄があってとても格好よかった。元々この人は足が長くて動きにキレがあるので、無理に若作りするより堂々としている方が渋みが出ていいと思う。衰えを隠そうとCGや画像処理をしまくるより全然いい。

マレーシアが舞台のこの作品は、マレーシアのランドマークであるツインタワーが印象的に使われている。移民として代々差別を受けながら生きてきた不幸とタミル人の誇りがタミル人の象徴ともいうべきラジ二によって強烈なメッセージを残す。

ギャング映画でも家族ものとうまくシンクロさせるのはインド映画の得意技。この作品、今回の上映ではオリジナルより約10分程度カットされているようだが、ノーカット版を観た人に聞いたところ銃撃戦のシーンなどが減っているのではとのこと。そのためか、より家族に重点が置かれ、さらにテンポが良くなったのではないかと思う。

そもそもギャングはその集団がひとつの「家族」なのだから、インド映画、というか家族を描くのがうまいタミル映画の得意分野なのだ。生々しい銃撃戦のシーンがそれほど多くなかった分、移民達とラジニのギャング一団というタミル人ファミリーがギャングの敵・・という名の辛い歴史や横行する悪に立ち向かうという視点で観れたので、面白かったのだと思う。

ラジ二の奥さん役は、おお、まさかここで使われていたのか!のラーディカー。ボリウッドでもおなじみだ。彼女はなぜか不幸な役どころが多い。

そして脇を固める俳優陣も良かった。
ギャングものは「目」で会話しなければならない。目で受け答えをし、YESかNOかを台詞なしで表現する。誰が味方で誰が敵か、誰が本音を言い、誰が嘘をついているのか。私はタミル映画の俳優はほとんど知らないが、このあたりのやり取りがとてもよく表現されていた。

BGMの使い方も良かった。
ギャング映画らしい緊張感のあるBGMでシーンの雰囲気を盛り上げる一方で、銃撃戦とラップのコラボという現代風の音楽でメリハリをつけていた。

長年のラジニファンだと期待値が上がっていてそれほど高評価ではないのかもしれないが、久しぶりに観た私としては十分にお金と手間をかけて丁寧に作られた作品だと思った。  


2017年04月29日

GWは南インド映画三昧

まずはなんと言っても南インド映画祭。
4月30日〜5月11日 東京、4月29日〜5月12日 大阪で計12本上映される。SIFFJ
私自身、普段はほとんどボリウッドしか観ないので、とても楽しみ

連日満員だった『バーフバリ』は日本全国を駆け抜けているが、4月29日からは丸の内TOEIでも上映。さらに5月5日19時の回はアンコール絶叫上映SIFFJとのスケジュールで悩む人が多そう。

来月6月10日は東京外国語大学にて『わな おじいちゃんへの手紙』。

今月のNetflix情報。「インド映画」で検索してもなかなか引っかからないことから、インド映画カテゴリーにないものをピックアップしてみた。
シャールクの『Dear Zindagi』をはじめとして、『スタンリーのお弁当箱』『マルガリータで乾杯を!』の映画化された作品、ランビール・カプールとソナム・カプールデビュー作でバンサーリー監督の『Saawariya』など、話題作が追加されている。他にも『Gandhi』、『Chauthi Koot』は昨年アジアフォーカス福岡国際映画祭で『彷徨のゆくえ』のタイトルで上映された。
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2017年04月15日

『バーフバリ 絶叫上映』

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おそらく日本で初めてのインド映画の絶叫上映ということで、見学がてらに行ってきた。音響のいい大きなスクリーンでもう一度このスケール感あふれる作品を楽しみたかったのも理由。

映画が始まる前は、コスプレをしたスタッフが赤ちゃんの人形を片手で持ち上げるという映画の1シーンをまねて会場を盛り上げる。そして上映中の注意などの前説が入り、上映本番。

キメのシーンで拍手、映画の中で「バーフバリ」コールが起こるとみんなで一緒に拳を上げて叫んだりサイリウムを振ったり、お色気のシーンでヒューヒュー言ってはいたが、そこは礼儀正しい日本人。ところどころで大きな声でツッコミを入れる人は何人かいたが、他のところはおとなしく観入っていたのだった。絶叫することすら忘れるほど、引き込まれている感じにも伺えた。だがエンドロールの無音のところでは「バーフバリ」コールが鳴り響いた。作品の満足感と余韻と次作への期待感が入り混じっていたと思う。

今回の上映会でちょっと惜しかったのは指笛がなかったこと。セクシーシーンは「ひゅーひゅー」でなく、そこは指笛だ。ヒーローの活躍シーンも拍手というより指笛。そう言えばインドでは頻繁に聞く指笛も日本ではほとんど聞くことがない。これも文化の違いか。でももし次回もこのような上映会があるならできるひとを5人くらい仕込んでおいてほしい。

さて改めて観て、やはり新宿ピカデリーは音響がとても良かった。考えるにこの作品はBGMや効果音の使い方ががめちゃくちゃうまい。その良さを十二分に設備が引き出しているのだ。地響きのような重低音から耳をつんざくような金属音までがクリアに聞こえる。人の声なども入ったBGMは緩急を使い分け、否が応でも盛り上がる効果がてんこ盛りなのだ。

ストーリー的には歴史ものの跡目争いといった超王道でありながら、ここまで盛り上がりを見せたのは、これらのサウンドエフェクトがかなり重要な要因のひとつになっていると思う。もともとインド映画はtoo muchに効果音を入れたがるのだが、今回はそれが成功している。観客の心理状態とうまくシンクロしていた。

で、この音楽の人はヒンディー映画では『Baby』を担当しているとわかり納得。実はこの作品、私はそれほど好みではなかったのだが、追い詰めていくようなBGMがストーリー以上に印象に残っている。

人が半回転しながらばんばんぶっ飛んでいくシーンが山盛りだった。お約束のエロチックなダンスシーン、あるいはインド流の論理、母を侮辱されること、身分の違い、神話のモチーフ・・・シンプルな中にかなりいろいろなテイストが組み込まれている作品だと思う。

絶叫上映でありながら、私は微動だにせずじーっとスクリーンを見つめているだけだったのだが、こういうイベント的な上映会もありだなと思った。普段あまりインド映画に馴染みがない人が、「面白そう」と参加してその良さを知ってもらうのはいいと思う。

新宿はとりあえず上映終了となったが、1週間満員御礼のコンプリート。他の地方での上映の話もあるので、チャンスがあれば是非映画館で観て欲しいと思う。  


2017年04月08日

『バーフバリ 伝説誕生』

まず観終った感想は「なんじゃこりゃー

壮大なスケールの・・・という枕詞はこういう映画につきものだが、それをはるかに超えてきた。CGを武器にして、もういちいちやりたい放題。エンターテイメントの塊のような作品で、観客を楽しませるためだったら地球の重力だって人間の能力だって楽々くつがえしてくる。鯉だって滝を登れるんだから、人間だって愛の為なら登れるんだよ。しかも苦労した割には意外と普通に行ける場所であっても。そもそも映画に常識の枠をはめる必要ないよね、って改めて思わされた。

で、この常識の枠外ってのは要は神話「マハーバーラタ」なわけだ。私はマハーバーラタを読んだことはないし、解説書などで概略をかじった程度だが、それでもなんだかよくわからなかった。原作(といっていいのか)がとんでもないスケールなのは間違いなく、それをわかりやすく映像化したのが素晴らしい。監督が思い描く神話の世界を見せてもらっているような気がした。特に豪華すぎる神殿の雰囲気がセットかCGかわからないくらいだった。

合戦のシーンはこの映画のクライマックス。カッコよさを突き詰めるがあまり無茶過ぎてるところもいい。あと戦いに旗は大事。

本来ならNHK大河ドラマ枠で1年間かけてやるべき内容なのだ。気がつくとお父さんの物語になっていて、途中でストーリーの迷宮にはまりそうになるが、もうなんというか、その世界観を丸ごと楽しむのが正解なような気がした。

お約束のお色気シーンもエロチックでよかった。バーフバリに結っていた髪をほどかれお代官様のようにくるくる布をはぎとられ、女の顔になっていくヒロイン。水に濡れたラブシーンは最近ボリウッドではベタ過ぎて使われなくなってきているが、やっぱり艶めかしくていい。

そしてインドにとっては母の愛は最強。
この映画でも最も強いのはバーフバリ本人ではなく母だった。

カットのつなぎとか結構ぶったぎった感が出ているのだが、まあそんなこといいか、と思ってしまう。「それで何か問題があるのか?」「いえ、ありません。」のようなインド流の押せ押せ。日本やハリウッドができないような突き抜けたエンタメをドヤ顔で見せつけられた。

きょうは新宿ピカデリーで観たのだが、ここの映画館は初めてだったがとても良かった。席数に比してスクリーンは大きいし、音量が大きめでとてもクリア。最高の環境で鑑賞できた。この映画はDVDで観るのとスクリーンで観るのでは面白さが全然違うと断言できる。

絶叫上映会ではマッドマックスで「V8!V8!」と讃えたように「バーフバリ!」と讃えるのだろうか。
とにかく伝説の目撃者になるのは1週間しかない。急げ!