2019年06月08日

『クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅』

この作品はもうタイトルだけで半分くらい“勝ち”という感じ。
インド関係なくても絶対観に行きたくなるような、何が起きるのだろうとワクワクするタイトル。

インドのスラム生まれのアジャが父親を探しにパリへ行き、いろいろなハプニングでイギリス、スペイン、リビアへと旅をしていく中で、人と出会い、見聞を広める。エッフェル塔やトレビの泉など、誰もが知る有名観光スポットにも訪れ、旅気分が上がってくるこういう映画は観ているだけで本当に楽しい。

イギリスの警官が国家関係無視してたり、大ピンチになるまでペンに連絡先が書かれていたことに気づかなかったり、偶然すぎる再会があったりで「え、なんだその展開?!」と観ているこちらのほうがストーリー運びがあまりにも「奇想天外」で困惑した。なんだかとてもアラがあるように感じたのだ。

だからここまでだったら私はこの作品をそれほど評価しなかっただろう。よくあるロードムービー。しかしハチャメチャ過ぎるアジャの旅に、私はある疑念がよぎった。もしかしたら狙いは違うところにあるのでは?


(以下、ネタバレというか私の想像なのだが・・・一応ご注意)
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その疑念が確信に変わったのはラストの3分ほどだろうか。
もっと言えば最後のアジャのひと言かもしれない。


これ、旅映画を装った教育映画だ。

ストーリーは少年院送りの3人の少年たちにアジャの旅を聴かせる形式で始まる。アジャはおそらく彼らにこのことを伝えたかった。

教育さえあれば無限の可能性が広がる

世界共通語の英語を話し、文字が書けるようになり、世界は広いということを知る。アジャが少年時代に学んだように。少年たちは映画の進行上多少の英語は使っていたが、基本的にヒンディー語で話していた。
知恵をつけ、夢を持つんだ。時には多少の嘘も必要。だが夢だけでは食べていけない、お金だって必要。そうすれば世界中どこにでも行けるし、金髪の彼女ができるかもしれない。世界にはいろいろな人種がいる。

夢だけじゃ食べて行けないよ、という私のようなねじまがった性格の人間にもわかるような「お金も大事」というところがなかなかいい。

クローゼットという小さな世界を開けてみよう。
その先へ進むチャンスは多くはないかもしれない。けれど扉が開く瞬間を逃すな。自分の手で何度でも開けようとするんだ。運は自分で掴むもの。そして自分が成功したら困った人にも手を差し伸べよう。

アジャは悪ガキたちに「勉強しろ」と言っても聞かないであろう代わりに、アジャの体験を話して興味を持たせたのだ。

こう考えると奇想天外なハチャメチャな旅物語は、なんてウィットに富んだ素敵な話だったのだろう。私の評価はひっくり返された。

この作品で出てくるイギリスの警官は法律無視するような悪い奴。で、とても素晴らしい曲やダンスシーンがあるのに、この警官の音楽シーンだけはださださ。制作がインド、フランス、(ベルギー)なので共通の敵を皮肉交じりに組み入れたのかな、なんて思ったりして。