2019年06月16日

『SANJU/サンジュ』

人間は弱いものだ。だからこそ愛すべき存在だ。

ラージクマール・ヒラーニー監督作品を観るといつもそう思う。
この映画も様々な人間愛にあふれていた。

私がサンジャイ・ダット作品を初めて観たのはいつかよく覚えていないが、おそらくマードゥリーと共演した『Khal Nayak』あたりではなかったかと思う。有名俳優と女優の間に生まれた二世ということで、スター街道まっしぐらな人かと思っていたが、映画の中ではかなりエグい内容が含まれていた。

つまり、ドラッグ中毒であったり反社会的勢力とのつながりであったり、銃の所持だったり・・・。これ、今の日本だったら完全にアウトだ。いや、日本じゃなくてもダメだろう。前半などはほぼ薬物中毒患者の更生の話になっていた。

もちろん映画自体はフィクションなので、事実がどの程度反映されているかはわからない。しかもあくまでもサンジュ側からの視点なので、都合よく解釈されている部分もあるのではないかと思っている。

が、もちろん主題はそこではなく、偉大なる父を持つ二世俳優の苦悩と親子愛にスポットがあたっている。サンジュは父に反抗はしない。大人になっても父の前では子犬のようになってしまう。むしろ自分への不甲斐なさと父に認めてほしい強い承認欲求から自滅していく。

サンジュを演じたランビール・カプールも映画一族の出身。生まれたときからすべてを手に入れているという似たような境遇を持つ二人だが、同じようなボンボンでも破滅型のサンジュをモラトリアム型のランビールが演じた。2つがミックスされて、甘ったれた性格ゆえにハードな人生になってしまった、といい具合に仕上がっていた。なんと言ってもちょっとした身のこなしや仕草が本人そっくり。若い時から年配になるまでの年齢別の演じ方もさすがだったし、その上ふけメイクや体型の映像処理?も違和感なく見事な仕事がされていた。

ランビールは日本人からみるとちょっとクセが強い印象を受けるが、演技は本当に素晴らしい。「演技」が見たいために私は彼の作品を観る。『Ae Dil Hai Mushkil』など、孤独と不安を抱えつつもどこか世の中舐めているような役柄はぴったり。

あとは現在赤マル急上昇中のジム・サルブ。『パドマーワト』でランヴィール・シンの「奴隷」を怪しげに演じた彼だ。今回の胡散臭い役も非常によかった。マニーシャは気丈だがどこかはかなげな雰囲気が今回のナルギスの役柄によく合っていた。

親子愛と共に、音信不通になっている友人との友情も描かれており、『きっと、うまくいく』を思い出す。基本的にサンジュの告白で話は進んでいくが、視点はむしろその友人から見た親子になっている。つまりそれはインドで彼らを見てきた一般聴衆、あるいはヒラーニー監督自身であるかもしれない。「みんなおまえのいいところも悪いところも見てきた。これからも見守ってるぞ」そんなメッセージにも思える。

もう一つはライターであるアヌシュカの視点。サンジャイ・ダットって何者?というのは今回の上映で観る日本人の感覚に近いものかもしれない。彼の作品を観たことがない人が、彼を魅力的に思えるかどうかは過去の犯罪歴を見ると手放しでは応援できないかもしれないが、それでもインドでは彼の人気は根強い。イメージ的に私はショーケンこと萩原健一に近いと思っているのだが。女性にモテることを含めて。

実際のサンジャイ・ダットは年齢を重ねて役者としての存在感がさらに増している気がする。悪いニュースでなく、今後は役者としての良いニュースで世間を賑わせてほしい。

この記事へのコメント
サンジェイ・ダット・・・
私は風貌からして「勝新太郎」と思ってました。

ジム・サルブは、
映画上映の前に流れる電気屋のCMがあるのですが、
もうしつこいくらいに流れてました。
Posted by サントーシー at 2019年06月16日 02:22
確かにw勝新ぽいキャラでもありますね。
ジム・サルブはそんなCMやるくらい人気あるんですね。顔立ちやしゃべり方がエキゾチックな感じがします。印象に残る。
Posted by ソニア at 2019年06月16日 02:28