2017年12月30日

『バーフバリ 〜王の凱旋〜』

インド神話のエピソードを聞くと、日本人には「え?」と理解出来ないものが結構ある。例えば息子の頭を落としておいて、次に通ったのが象だから象の頭をつけてガネーシャの出来上がりとか、ハヌマーンは薬草の生えた山ごと運んだとか、ぶっとび過ぎていてちょっと想像がしづらい。

インド人はこうした神話に子供の頃から馴染んでいる。『バーフバリ』は「マハーバーラタ」が下敷きになっているが、インド人の頭の中に描いている神話の世界をCGという武器を使って具現化したのがこの作品だと思った。どんな常識にもしばられない自由な発想と、それに反するかのように家族の確執や絆は時代を超えてもつながり続ける。そこに自由さや妥協はない。まさにインドを象徴するかのような作品だ。

もちろんストーリーは悪くないが、3世代に渡る国の威信と王位の座をかけた権力争いというストーリーは特に目新しさはない。では何が観客を引きつけるのかと言ったら、私は映像と音楽だと思う。これが抜群にいい。

まずCGの完成度と色彩豊かな映像の美しさに目を奪われる。冒頭で述べた、監督が思い描く神話の世界を再現している。鮮やかな原色を使い、天空の神々たちの物語のようである。さらに音がとても効果的な演出をしている。重厚で印象的なのに、決してでしゃばり過ぎず、作品を盛り上げこそすれ邪魔をしない。作品にのめり込んでしまうとBGMがかかっているかさえわからなくなるが、かなりの部分で効果音を含め、何かしらの音(音楽)が流れていたと思う。観客は無意識の中で高揚感を増していく。

そしてその音楽や効果音と映像がコンマ何秒違うことなく、ピタっと合わさるバシっと決まる。それらが時にスローモーションなどを用いて見事にキまると観ていて気持ちいい。その気持ちよさが最初から最後まで続くのだ。

私は時々インド映画のダンスシーンをフィギュアスケートのペアやアイスダンスに例えてみたりするのだが、どちらも音楽に合わせてと相手との呼吸、テクニックで観るものをひきつける。この作品はダンスシーンだけでなく、戦いのシーンですらも美しい。特にバーフバリがデーヴァ・セーナと共に3本の矢で戦うシーンは戦いながら恋に落ち、相手と心を通じ合わせるという流れはとても印象的だった。

映像と音に力を入れている作品なのだから、やはりそれなりの設備がある映画館で観たい。新宿ピカデリーはどちらも大変良かった。

絶叫上映についても一言。ツイッターでも書いたが、普段インドや映画にそれほど興味があるわけでもないけど、とりあえず絶叫上映というイベントが面白そうだから来てみた、という人もいたと思う。実際、私の隣に座った若い男性も最初は「インド映画だから踊ってるんだよな」のようなことを言っていたが、上映後は「最高!」を連発して興奮気味に友人と話していた。

とりあえずインド映画を観て欲しい!とは思っていても、興味ない人を劇場まで足を運ばせるのはかなり難しい。それをこのようなイベントで人を集めるという企画はとても良かったと思う。そしてそんな人達を面白がらせるには絶好の作品だった。無茶でしょ、あり得ないでしょ、なんじゃこりゃーでしょ。でも女優さんはきれいだし、戦いのシーンはかっこいいし、何より面白かったよね?みんなで騒ぎながら観たけど、もう1回じっくり観たくなった人も多いはず。

正直、日本でインド映画の前後編はキツイかなと思っていたが、配給のツインさんのおかげでとても楽しいイベントになったと思う。「インド・オブ・ザ・デッド」の時もそうだったが、作品愛と熱意があれば、ファンにもその熱が伝わり応援しようと思う。

ということで年末年始は『バーフバリ』。これは絶対に劇場で観るべき作品。最近は上映のサイクルが早いので、是非お早めに映画館でご覧ください。  

Posted by indoeigatushin at 02:56 |この記事のコメント(0)