全身に冷気をまとい、凍てつくような氷結の刀身を持つ剣。「D&D」ではおなじみの“Frost Brand”が帰ってきました。アイテム集『MORDENKAINEN'S MAGNIFICENT EMPORIUM』では、このほかにも炎の剣“Flame Tongue”、対巨人兵器“Giantslayer”、幸運をもたらす“Greater Luck Blade”など、懐かしい武器がズラリと並んでいます。武器に限ったことではなく、防具でもアイテムでも、ファンならば「おお!」と思うようなラインナップが顔をそろえているのです。
今回は、そうした武器の中から冒頭の“Frost Brand”について触れていきたいと思います。『MORDENKAINEN'S MAGNIFICENT EMPORIUM』では、マジックアイテムを「データ」ではなく「より物語的な対象」としてとらえることがテーマだとしています。武器というと、「振るってなんぼ」という固定観念があり、命中率やダメージなどのデータ以外でどのくらいの個性を表現することができるのか、なかなかイメージがわかない部分もあります。ですので、今回は「D&D」世界でもかなり有名な“Frost Brand”の描かれ方を見ながら、攻撃時以外の武器の存在感について考えていきたいと思います。
またぞろ登場となりますがドリッズトです。彼は2本のシミターを操りますが、そのうちの1本が“Frost Brand”です。銘は“Icingdeath”(アイシングデス)。最新の「Neverwinter Saga」の第1巻『Gauntlgrym』では、物語の展開上“Frost Brand”がいつも以上に存在感を示します。以下、人によっては「ネタバレ」と感じる方もいるかもしれません。少しも情報も得たくないという場合は、回避したほうがいいかもしれません。
さてさて、『Gauntlgrym』(ゴーントルグリム)ですが、失われたドワーフの都です。かつてフェイルーンに栄えたドワーフ文明の頂点、それが“Delzoun”(デルズーン)で、その「王」が君臨する都こそがGauntlgrymだったのです。フェイルーン北方の地下世界のいずこかにあると伝えられるGauntlgrymですが、その所在は長らく謎とされ、正確な位置は誰にも知られることなく長きにわたる年月が過ぎ去りました。この小説では、そんな伝説の都Gauntlgrymを探し求めるクエストが描かれ、やがて物語の舞台はGauntlgrymそのものへと移っていきます。
ところでドワーフは名匠として知られています。武器や防具などの金属加工の分野で名宝を作り上げ、そして優れた石工として壮麗な建築物を数多く築いてきました。そんなドワーフたちの中にあっても、とりわけDelzounの残した武具の品質は群を抜いて優れているとされています。それはなぜか。職人たちの鋳造技術もさることながら、もう1つ、決定的な「秘密」がその製法に秘められていました。それが原初の存在“Primordial”の力です。この世界を生み出す原動力となり、神々にも匹敵する力を持つという圧倒的な存在。Gauntlgrymは、そんなPrimordialを閉じ込め、その「火」の力を用いて壮大な“Forge”を動かしていたのです。人為的に起こす火力では到底及ばない、純粋かつ根源的な「火」の力。それが伝説的なマジックアイテムを数多く残してきたGauntlgrymの秘密だったのです。物語の後半は、灼熱の“Great Forge”と、Primordialが繋がれた溶岩たぎる封印のエリアが舞台となります。登場する敵も炎のクリーチャーが多数いて、まさに“Frost Brand”がこれほど活躍できるシチュエーションはほかにない、というぐらいの絶好の場面が続きます。
この物語で「うまい」と思うポイントはドリッズトの操る“Frost Brand”である“Icingdeath”を、たんなる攻撃手段としてはあまり描いていない点にあります。ドリッズトが武器を自在に操って縦横無尽に暴れまわるのはいつものこと。彼が敵を鮮やかに切り裂くのもいつものことです。それが「火のクリーチャーに強い氷の剣」だからといって、あまり演出が新鮮になることはたしかにないかもしれません。本書で“Icingdeath”がうまく描かれているなと感じるのは「戦闘以外」でその存在感を出している点にあります。
たとえば次のシーン。仲間の“Dahlia Sin'felle”がドリッズトの剣の異常に気付いて指摘してきます。
“Icingdeath”の本来の性質を描きつつも、「究極の火のクリーチャー」であるPrimordialの存在感をうまく漂わせています。“Icingdeath”が激しく輝けば輝くほど、核心となるPrimordialへと近づいていっているわけですから。
さて、もう1つ“Icingdeath”の描写から。ふつう、武器というものは攻撃のためにあるものなのですが、“Frost Brand”には防御性能もあります。『MORDENKAINEN'S MAGNIFICENT EMPORIUM』のデータでは、「3+enhancement bonusの2倍」に相当するFire resistanceが得られます。ですから、+3の“Frost Brand”だとすると9ポイントぶんの火のダメージに耐えられることになります。ちょっと火に炙られた程度ではダメージになりません。
そういう火への耐性が直接描かれている部分もあります。物語の最終局面で、溶岩のほとりのワンシーン。彼がなにを「見たくない」と思っているかなど、重度のネタバレですのでこの1文のみ引用します。
炎で吹き飛ばされても余裕のドリッズト。「奴らドラゴンを連れている」
なお、この小説『Gauntlgrym』では、もう1本のシミターである“Twinkle”はほとんど出てきません。キャッティ・ブリーから受け継いだ“Taulmaril”は強力な飛び道具として頻繁に使われているのですが。
今回は、そうした武器の中から冒頭の“Frost Brand”について触れていきたいと思います。『MORDENKAINEN'S MAGNIFICENT EMPORIUM』では、マジックアイテムを「データ」ではなく「より物語的な対象」としてとらえることがテーマだとしています。武器というと、「振るってなんぼ」という固定観念があり、命中率やダメージなどのデータ以外でどのくらいの個性を表現することができるのか、なかなかイメージがわかない部分もあります。ですので、今回は「D&D」世界でもかなり有名な“Frost Brand”の描かれ方を見ながら、攻撃時以外の武器の存在感について考えていきたいと思います。
またぞろ登場となりますがドリッズトです。彼は2本のシミターを操りますが、そのうちの1本が“Frost Brand”です。銘は“Icingdeath”(アイシングデス)。最新の「Neverwinter Saga」の第1巻『Gauntlgrym』では、物語の展開上“Frost Brand”がいつも以上に存在感を示します。以下、人によっては「ネタバレ」と感じる方もいるかもしれません。少しも情報も得たくないという場合は、回避したほうがいいかもしれません。
さてさて、『Gauntlgrym』(ゴーントルグリム)ですが、失われたドワーフの都です。かつてフェイルーンに栄えたドワーフ文明の頂点、それが“Delzoun”(デルズーン)で、その「王」が君臨する都こそがGauntlgrymだったのです。フェイルーン北方の地下世界のいずこかにあると伝えられるGauntlgrymですが、その所在は長らく謎とされ、正確な位置は誰にも知られることなく長きにわたる年月が過ぎ去りました。この小説では、そんな伝説の都Gauntlgrymを探し求めるクエストが描かれ、やがて物語の舞台はGauntlgrymそのものへと移っていきます。
ところでドワーフは名匠として知られています。武器や防具などの金属加工の分野で名宝を作り上げ、そして優れた石工として壮麗な建築物を数多く築いてきました。そんなドワーフたちの中にあっても、とりわけDelzounの残した武具の品質は群を抜いて優れているとされています。それはなぜか。職人たちの鋳造技術もさることながら、もう1つ、決定的な「秘密」がその製法に秘められていました。それが原初の存在“Primordial”の力です。この世界を生み出す原動力となり、神々にも匹敵する力を持つという圧倒的な存在。Gauntlgrymは、そんなPrimordialを閉じ込め、その「火」の力を用いて壮大な“Forge”を動かしていたのです。人為的に起こす火力では到底及ばない、純粋かつ根源的な「火」の力。それが伝説的なマジックアイテムを数多く残してきたGauntlgrymの秘密だったのです。物語の後半は、灼熱の“Great Forge”と、Primordialが繋がれた溶岩たぎる封印のエリアが舞台となります。登場する敵も炎のクリーチャーが多数いて、まさに“Frost Brand”がこれほど活躍できるシチュエーションはほかにない、というぐらいの絶好の場面が続きます。
この物語で「うまい」と思うポイントはドリッズトの操る“Frost Brand”である“Icingdeath”を、たんなる攻撃手段としてはあまり描いていない点にあります。ドリッズトが武器を自在に操って縦横無尽に暴れまわるのはいつものこと。彼が敵を鮮やかに切り裂くのもいつものことです。それが「火のクリーチャーに強い氷の剣」だからといって、あまり演出が新鮮になることはたしかにないかもしれません。本書で“Icingdeath”がうまく描かれているなと感じるのは「戦闘以外」でその存在感を出している点にあります。
たとえば次のシーン。仲間の“Dahlia Sin'felle”がドリッズトの剣の異常に気付いて指摘してきます。
Your sword
Drizzt looked down as his belted scimitar, lcingdeath, and discerned at once the cause of her concern. At the crease where the blade's hilt sat on the scabbard, a line of blue light glowed. Icingdeath always had a bluish tint to it, and often glowed more powerfully, particularly when facing a creature of fire. The scimitar was one of the ancient frostbrands, after all, a weapon built to battle creatures of fire, a weapon hungry for fire elemental blood.
But Drizzt had never seen it glow while in its scabbard. He grasped the hilt and brought it forth just a bit, and his alcove was bathed in blue light.
He slid it back into the scabbard and took a deep breath, and told himself that it was just because of the nearness of the ultimate of fire creatures, the primordial.
“Icingdeath”の本来の性質を描きつつも、「究極の火のクリーチャー」であるPrimordialの存在感をうまく漂わせています。“Icingdeath”が激しく輝けば輝くほど、核心となるPrimordialへと近づいていっているわけですから。
さて、もう1つ“Icingdeath”の描写から。ふつう、武器というものは攻撃のためにあるものなのですが、“Frost Brand”には防御性能もあります。『MORDENKAINEN'S MAGNIFICENT EMPORIUM』のデータでは、「3+enhancement bonusの2倍」に相当するFire resistanceが得られます。ですから、+3の“Frost Brand”だとすると9ポイントぶんの火のダメージに耐えられることになります。ちょっと火に炙られた程度ではダメージになりません。
そういう火への耐性が直接描かれている部分もあります。物語の最終局面で、溶岩のほとりのワンシーン。彼がなにを「見たくない」と思っているかなど、重度のネタバレですのでこの1文のみ引用します。
Without the protection of lcingdeath, the heat proved too intense, but he couldn't help but look down, though he feared what he might see.
炎で吹き飛ばされても余裕のドリッズト。「奴らドラゴンを連れている」
"What-?" was all Bruenor managed to say before a great rush of flames poured through the door with a dark form, Drizzt, within them, being carried along by the sheer force of the blast.
The drow landed in a short run as the flames dissipated, and looked to his friends, wisps of smoke rising from his cloak, Taulmaril in one hand, Icingdeath in the other, glowing fiercely.
"Oh, joy," Drizzt deadpanned. "They have a dragon."
なお、この小説『Gauntlgrym』では、もう1本のシミターである“Twinkle”はほとんど出てきません。キャッティ・ブリーから受け継いだ“Taulmaril”は強力な飛び道具として頻繁に使われているのですが。





