前回は冒頭部分しかご紹介できませんでしたので、昨年末の冬コミ新刊『D&Dに出る英単語』から超基本単語を1つ抜粋でお伝えしていきます。

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当日会場に来ることができなかった方、本を買えなかったという方へのフォローでありつつ、本を手に取ってくれた方々に向けても、末尾に追加の補足を添えてあります。ぜひご覧ください。


 ところで、D&D 第5 版の『Player's Handbook』で、もっとも登場頻度の高い動詞はなんでしょう? 答えは非常にありきたりで、じつにつまらないのですが「make」です。英語の習い始めで教わる「初級単語の代表格」みたいなオーソドックスな単語ではあります。

 こういう基本単語というのは、シンプルなだけに用途が広く、その全貌を把握することが困難です。ためしに「make」を辞書で調べてみると、約30 ほどの意味が列挙されています。序盤で習う単語だというのに、あとあとになっても厄介な「簡単に見えて難単語」の代表格と言えるんじゃないでしょうか。


【make】
 D&D における「make」は、おもに以下の3 つの単語とセットになって使われます。この用途だけで「make」の過半数を占めますので、これらを押さえておけば「make」を目にするたびに憂鬱な気分にならずに済みます。知っておくと「D&D」のルール読みが大いにはかどること請け合い。

 make an attack (roll)
 攻撃する(攻撃ロールを振る)

 make a check
 判定を行う

 make a saving throw
 セーヴィング・スローを行う

 いずれも後に続く語とセットにして覚えてしまいましょう。「make a check」でひとカタマリとして認識するようにしてしまうのです。

 ルールブック内では、次ページに挙げているように「make a ranged attack =遠隔攻撃を行う」「make a wisdom save =ウィズダムのセーヴを行う」といった装飾が加わることがありますが、基本は「attack」「roll」「check」「saving throw」と結びついていることがわかるかと思います。言葉というものは実用的なフレーズを覚えてしまうことが近道であり、ラクができる最短ルートとなります。D&D で始まる趣味英語も、まずは「攻撃する」といった基本的な「make」から始めてみるとよいのではないでしょうか。



 ではもう少し「make」を使った例文を見ていきましょう。ここでの例文は「tier=ティアー」の説明から抜粋しました。ティアーとは、過去の版では「級」とも訳されていて、キャラクターの「レベル」よりも大きな成長段階の枠組みを指します。ここでは第二のティアーであり、レベル5 ~ 10 の範囲にあたる「second tier =セカンド・ティアー」の説明を見ていきましょう。このティアーでは、ウィザードはついに「Fireball」を手にします。その一方でファイターたちはどんなことができるようになるのか? という一文。


At this tier, many weapon-using classes gain the ability to make multipleattacks in one round.(『Player's Handbook』P.16 /「TIERS OF PLAY」より)

このティアーでは、武器を使うクラスの多くが、1 ラウンドに複数回の攻撃ができる能力を獲得する。



 tier
  ティアー、級(レベルよりも大きな成長段階の枠組み)
 weapon
  武器
 class
  クラス
 gain
  (レベルや能力などを)獲得する
 ability
  能力
 multiple
  複数の
 round
  ラウンド


 英語の文章は極限まで切り詰めてみると、非常にシンプルな構造をしています。この文章の場合、次のようなところまで短くできます。

classes gain the ability =いくつかのクラスは能力を獲得する

 「classes」は複数形の「s」が付いているので、たんに「クラス」ではなくて、「いくつかのクラス」であることがわかります。それが「ability =能力」を獲得するのですね。どんな能力かというと、

to make multiple attacks =マルチプルな攻撃をする

in one round = 1 ラウンドの中で

 ここまで分解すると文法が苦手だったり、英語があんまり好きではない人でも、なんとなく構造が理解できるんじゃないでしょうか。


少しだけ、元の本に書いていないことも補足しておきますと、ここの「make」は不定詞として使われています。いわゆる「to make」というように「to 動詞」となる形のことです。さらに言うと、「ability」は語法として「ability to do」というように不定詞が後に続く使い方をします。

こういうふうに文法や語法からアプローチすると、難しいというか、却ってわかりにくくなってしまうんじゃないかと思います。昨日の元旦のエントリで引用した「はじめに」でも書いたように、コンピュータに習熟しようとしてプログラム言語やコンピュータ・アーキテクチャから学んでいこうとすると、逆にハードルが高くなってしまうのと同様、語学も理論を最優先で進めると、なにやらムズカシク感じられてしまいます。

「じゃあ、どうすればいいのさ」と思うかもしれませんが、できるだけ多くの文章に触れて、一定数のサンプルを蓄えていくと、文章を「単語1つずつ」で読むのではなく、「いくつかの単語のカタマリ」で追っていけるようになります。そうなると、テンポよく文章構造が把握できるようになり、読むスピードも格段に上がっていきます。

逆に、遅いペースで単語を追っていると、「次の単語」に目が移る頃には、脳内から「前の単語」が消えていってしまうのでペースが向上しません。

上記の「to make」の不定詞も、「ability」の語法も、いずれも辞書を引かなくても自然と読めるようになっていくのですが、これらはルールブックを読んでいるうちに何度も似たようなケースに遭遇することで「なんとなく慣れてしまう」からなのだと思います。つまるところ「サンプルの蓄積=慣れ」です。

とはいえ、「体系的な理解も大事だ」と思う理論派の方々もいるかもしれません。そういう方は、いったん「慣れ」た後から文法書などを参照してみるといったように、「実践のあとから理論を磨く」アプローチもよいんじゃないでしょうか。あるいは、その都度、文法書を参照するけれども、例文として「D&Dに出てきた該当箇所を実践的例文としてメモっておく」というのは有効な気がします。メモとして蓄積される例文は、D&Dのルールブックからのものですので、趣味性も高く、読み返しても楽しめるはず。

またぞろ長くなりましたので、本日はここまで。







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