三橋貴明の設備投資とデフレに関する論理矛盾

三橋貴明という人が、供給が増えたらデフレになる、と言っているとの記事を見かけたが、一方では、デフレ脱却するためには、設備投資を増やすことが必要、とも言っているらしい。

この三橋という人は、企業が設備投資をする目的には、生産性の向上、供給能力の向上がある、ということを理解してないのだろう。

製造業であれば、生産性の向上、供給能力の向上は、モノが多く生産される能力を持つということであり、これはデフレ要因でもある。

つまりは、三橋が必要だと言う設備投資の増大は、デフレ要因なのだが、この三橋という人はこの程度の論理矛盾にも気がつかないということは、上念司級の本物の馬鹿なのだろう。

設備投資が増えると、機械受注などの需要が増えるが、機械受注などの需要が増えても、消費者の需要が増えるわけではないので、消費者物価指数が上がる事に直結せず、デフレ脱却するわけではない。

安倍首相の円安インフレ政策では雇用を増やせない

Twitterで安倍首相が出演したテレビ番組のYoutubeを教えてもらったが、そこで評論家の宮崎哲弥氏が、かつて日本の失業率は1~2%だったので、それを目指すべき、そのために円安、デフレ脱却が必要だ、という趣旨の発言をして、安倍首相も同意している。

かつの日本で、円安、インフレ、失業率1~2%という条件が揃った時代は、1960~1970年代である。

1945年の第二次大戦の敗戦により、世界の最貧国に落ちた日本は、海外から見て(ドル建てで見て)激安の労働力が生み出す安価な製品を世界に輸出することで経済的な復活を遂げた。

   1960(昭和35年)  1965(昭和40年)  1970(昭和45年)   1975(昭和50年) 
 日本人の平均月収 2万5000円 4万2250円  7万8330円  16万9166円 
 為替レート  1ドル360円 1ドル360円  1ドル360円  1ドル300円 
 ドル建ての日本人の平均月収 69ドル 117ドル  217ドル  563ドル 
  国税庁の「民間給与実態統計調査結果」の「長期時系列データ」の「総括表」の「平均給与」を12ヶ月で除したものを平均月収としている。

しかし、1989年のベルリンの壁崩壊に象徴される歴史的転換により、ソ連などの共産主義国家が崩壊し、同じく共産主義国家の中国も改革解放路線に転換し、グローバルな市場に参加しはじめ、それらの国の安価な労働力を求めて、先進国の製造業が旧共産圏に進出しはじめた。

1989年から23年経過した2012年時点での、アジア各国の賃金は以下のようになっている。1945年の敗戦から25年後の1970年頃の日本と似たような賃金水準となっている。

■2012年1月のアジア各国の賃金

三菱東京UFJ銀行の「アジア各国の賃金比較(2012年1月)」によると、 2012年度の中国などのアジアのドル建ての賃金は以下のようになっている。中国では月給が251ドル~538ドルとなっており、1970年代の前後の日本の賃金と同程度になっている。

2013-01-11


■円安によって雇用を増やすならば、1ドル800円が必要

上記の表にあるように、中国やアジア各国とは10倍の賃金格差が存在するため、円安により雇用を増やすのであれば、ドル建てで中国やアジア各国と同等の賃金に切り下げる必要がある。

上記の表で名古屋は月額賃金が3804ドルとなっているが、1ドル80円で計算すると、30万4320円となる。
アジアとの賃金格差10倍を円安で埋めるとすると、1ドル800円が必要となり、そうなれば30万4320円=380ドルとなって、中国やアジア各国と同等の賃金水準まで日本の賃金を切り下げることが出来る。

 円建ての月額賃金  為替レート ドル建ての月額賃金 
 30万4320円  1ドル  80円  3804ドル 
 30万4320円 1ドル800円  380ドル 

円建ての月額賃金が同じでも、ドル建てでは10分の1になっているので購買力が低下し、例えば、iPhoneの価格は500ドルなので、1ヶ月分の賃金380ドルを全額はたいても買えない。

 円建てのiPhone  為替レート ドル建てのiPhone 
 4万0000円  1ドル  80円  500ドル 
 40万0000円  1ドル800円  500ドル 

iPhoneが円建てで40万円になるが、これがインフレである。

円安、インフレによって雇用を増やす、ということはこういう事なのだが、安倍首相は理解しないまま、メシを食うのに必死な三流評論家や、時代遅れの学説を唱え学会では相手にされなくなった哀れな経済学者の珍説を受け売りで話をしているのだろう。

例えば、安倍首相のブレーンである、内閣府参与の浜田宏一氏は、1ドル95~100円は心配ないが、1ドル110円だと心配、と発言しているが、この程度の円安では、中国やアジアとの賃金格差は埋まらず、日本に製造業の雇用が戻ってくることは無い。

結果としては、日本の富を減少させることにしかならない。日本の家計の金融資産は1500兆円あるが、1ドル80円から1ドル100円の円安になることによって、3.7兆ドル=300~370兆円分の日本の富が失われるだけである。

  日本の家計の金融資産    為替レート    ドル換算
  1500兆円  1ドル80円  18.75兆ドル  
  1500兆円  1ドル100円  15.05兆ドル  
  差額  -3.7.兆ドル  

■ついでに、最低賃金の話

中国やアジアの低賃金国に製造業が移っているため、日本国内の製造業の雇用が減っているが、その原因の一旦として、日本の最低賃金が上がり続けている、ということがある。

例えば、厚生労働省が発表している東京都の過去の最低賃金のPDFによると、1975年の最低賃金の時給は258円、2011年は837円となっている。それをドル建てで換算すると下記のようになる。

    1975(昭和50年)   2011年(平成23年) 
 最低賃金(時給)  258円  837円 
 為替レート   1ドル300円  1ドル80円 
 ドル建ての最低賃金  0.86ドル  10.46ドル 
 1ヶ月(200時間=25日x1日8時間)  172ドル  2092ドル 

東京都の最低賃金の時給を月額賃金に換算すると2092ドルとなるが、これは上記で述べたアジア各国の月額賃金よりも数倍高い。

最低賃金を高くしてしまうことで、日本から雇用を追い出してしまう、という側面があることにも理解が必要である。

安倍首相の円安政策は日本の富を減少させる

安倍政権が立ち上げた「経済再生本部」では「成長と富の創出の好循環」を目指すというが、安倍首相の円安政策は「富の創出」どころか、「日本の富を減らす政策」にほかならない。

■円安で日本の富が減る

現在、日本の家計の金融資産は1500兆円になっているが、1ドル80円から1ドル88円の円安になることで、-1.7兆ドル=149.6兆円分の「日本の富」が減少している。

 日本の家計の金融資産  為替レート  ドル換算
 1500兆円 1ドル80円 18.75兆ドル 
 1500兆円  1ドル88円 17.05兆ドル 
  差額-1.7.兆ドル 

日本の年間の国家予算が91兆円なので、80円から88円の円安によって国家予算を超える富が減少したことになる。

円安は円の価値が下がる、つまり、円による購買力が下がる、ということなのだが、購買力が下がる、という言葉の意味が理解出来ない人が意外に多いので、以下簡単な説明を試みる。

■円安で海外への支払いが増える

日本は昨年1年間で約70兆円の輸入を行っているが、1ドル80円で計算すると、8750億ドルとなる。今年も同じ分量の8750億ドル分の輸入を行うとすると、1ドル88円で77兆円の支払いが必要となる。

 日本の年間の輸入金額  為替レート 
 8750億ドル 1ドル80円  70兆円 
 8750億ドル 1ドル88円 77兆円 
  差額 +7.兆円 
 
1ドル80円から88円の円安になることで、海外への支払いが7兆円増えてしまう。

金額が大きいのでピンと来ないかもしれないので、身近な金額の例で考えてみる。現在、原油価格は1バレル=約159リットル、90ドル前後となっている。

 原油価格 為替レート 
 1バレル=159リットル、90ドル  1ドル80円  7200円 
 1バレル=159リットル、90ドル 1ドル88円 7920円 
  差額 +720円 
 
同じ1バレルの原油を購入するために、支払う金額が1割高くなっている。輸入品の価格が1割高くなることで、国内の物価も高くなり、インフレになる可能性が出てくる、というわけである。

■現在の程度の円安では雇用は増えない

リフレ派の円安インフレ政策の正体」で紹介した記事によると、中国の深センの19歳の工場従業員の賃金は「スマホの価格=2か月分の給料」だった。スマホの価格を500ドルとすると、中国の工場従業員の月給は250ドルとなる。1ドル80円で計算すると月給2万円、1ドル88円で計算すると月給2万2千円となる。日本の10代の工場従業員の月給16万円程度とすると、中国との格差は8倍ある。

三菱東京UFJ銀行の「アジア各国の賃金比較(2012年1月)」(PDF)という資料 によると、深センの月額賃金が317ドル、名古屋が3804ドルとなっており、賃金格差は12倍となっている。

2013-01-11


現在、中国に製造業が集まっている理由は、中国人の賃金が安いからである。日本との賃金格差が10倍あるということは、

 日本人1人分の賃金で、中国人10人が雇える、ということ。

よって、1ドル80円から88円と10%の円安になって日本人のドル建ての賃金が10%安くなったところで、10倍の格差は埋まらない。よって、10%程度の円安によって、日本の製造業の雇用が増えることはありえない。

■円安は日本の賃金の切り下げ

月給20万円をドル換算すると、1ドル80円から88円の円安になることで、月給はマイナス228ドルとなる。

 日本人の給与  為替レート  ドル建ての給与 
 20万円 1ドル80円 2500ドル 
 20万円 1ドル88円 2272ドル 
  差額-228ドル 

円安で、月給が2272ドルに切り下がったとしても、上記のグラフの中国各地の賃金よりも数倍高い。80円から88円程度のわずかな円安で、中国などの賃金の安い国から、日本国内に雇用が戻ってくることは無い。

■日本に製造業を取り戻すなら、10倍の円安が必要??

中国と日本の賃金格差が10倍とすると、この格差を為替レートで埋めるなら10倍の円安が必要となる。

 日本人の給与  為替レート  ドル建ての給与 
 20万円 1ドル  80円 2500ドル 
 20万円 1ドル800円 250ドル 
  差額-2250ドル 

1ドル80円から800円の10倍の円安になると、月給20万円=250ドルになった。ここまで日本人の賃金を切り下げたら、工場を作る製造業から見て、中国と比べても日本の賃金も安くなるので、日本に工場が戻ってくるかもしれない。

円安による雇用回復とは、日本人の労働力を安売りすることによって、雇用の量を獲得するということである。

国内の物価が下がるデフレは忌避するのに、円安によって日本人の賃金の切り下げ、海外に安売りすることを歓迎する、というのが安倍政権の円安インフレ政策である。

1ドル80円から800円の10倍の円安になれば、1960年代の日本のように失業率が1~2%台になる可能性はあるかもしれないが、ただし、スマホが1台500ドルなので、スマホが月給の2か月分になる。1960年代のようにテレビを買うためにローンを組むようになるであろう。さらには、輸入物価が10倍になるので、食料品も10倍に値上がりするであろう。マクドナルドのチーズバーガーが2000円を超え、牛丼も1000円~2000円になるであろう。

つまり、円安=円の価値が下がると、生活水準が低下する、ということであり、豊かではなくなる、ということである。そのかわりに、海外から見たら日本人の労働力が安く買えるので、工場が日本に戻ってきて、低賃金の労働者が増え、失業率は下がるかもしれない。

安倍首相が「取り戻す」といっているのは、1960年代、三丁目の夕日の時代の「日本」かもしれない。

■10倍の円安、1ドル800円になったら、、、

1ドル800円になったときの1500兆円の家計の金融資産は、10分の1に激減する。

 日本の家計の金融資産   為替レート  ドル換算
 1500兆円 1ドル  80円  18.75兆ドル 
 1500兆円 1ドル800円1.87兆ドル 

1ドル800円のときの輸入金額は激増、700兆円となり、家計の金融資産1500兆円の半分が1年間の輸入で消えてしまう。

 日本の年間の輸入金額  為替レート
 8750億ドル 1ドル  80円 70兆円 
 8750億ドル 1ドル800円 700兆円 
 
さらに、原油価格は、高騰する。

 原油価格 為替レート
 1バレル=159リットル、90ドル  1ドル  80円  7200円 
 1バレル=159リットル、90ドル 1ドル800円  72000円 
 

■円安を歓迎する理由

上記では、円安により日本の金融資産の価値が減少し、海外からの輸入に対して支払う金額が増え、日本人の賃金も下がることを示したが、あきらかにデメリットである。

では、なぜ円安を歓迎する人がいるのかというと、円安によって、日本国内製造の製品のドル建て価格が下がり、日本の株がドル建てで下がり、日本人の賃金がドル建て下がるため、海外からの需要が増えるから、つまり、日本を海外に安売りすることが出来るからである。円安により価格競争力が増す、と良く言われるのはこのことである。


 為替レート ドル建て価格 
 1000円の株  1ドル  80円 12.50ドル 
 1000円の株 1ドル  88円 11.36ドル 


 為替レート ドル建て価格 
 300万円の自動車  1ドル  80円 3万7500ドル 
 300万円の自動車 1ドル  88円 3万4090ドル 

日本では物価が下がる=デフレを悪とみなす論調が定着しているが、円安は海外に対しての安売り戦略なのである。

日本と比較して賃金が数倍安い中国、韓国や東南アジアで製造する安い製品に対抗するために、円安によって価格を下げたい、ということが円安を歓迎する理由である。

■円安による安売り戦略は、インフレが起こると相殺されてしまう

300万円の国内生産の自動車の価格が10%のインフレにより330万円になったとする。

為替レートが同じ80円ならば、インフレによって国内価格が高くなると、ドル建て価格も高くなってしまう。つまり、インフレは輸出価格を上昇させるため、価格競争力が下がる。


 為替レート ドル建て価格 
 300万円の自動車  1ドル  80円 3万7500ドル 
 330万円の自動車 1ドル  80円 4万1250ドル 

為替レートが80円から88円に10%上昇し、さらに10%のインフレが起こり自動車の国内価格300万円から330万円になると、ドル建て価格は変わらない。


 為替レート ドル建て価格 
 300万円の自動車  1ドル  80円 3万7500ドル 
 330万円の自動車 1ドル  88円 3万7500ドル 

円安によって、海外に対して日本製品を安売りしようと思っても、日本国内にインフレが起きて物価が上がってしまうと、相殺されてしまい輸出価格が下がらなくなる。

インフレによって輸出価格が下がらなければ、輸出は増えずに、国内のインフレだけが残ってしまう、という悪循環に入る。さらに、1500兆円のドル建ての価値が目減りしてしまい、日本の富を減少させる。

安倍首相やリフレ派の滑稽なところは、円安とデフレ脱却=インフレを同時に主張しているところであるが、彼らは上記のような実務的なことは一度も考えたことが無いのであろう。

1万円札の印刷代が20円なので、1万円札を日銀が発行したら9980円が政府に入る、という無知な発言を人前で平気で語れる安倍首相ならば、上記の円安とインフレが相殺しあうことを理解していないことは十分考えられる。

近々はじまる通常国会で、このあたりのことを安倍首相に質問してみて欲しい。

 

自民党安倍総裁のトンデモ紙幣論

自民党の総裁・安倍晋三氏は、ここ最近デタラメな金融関連の発言を連発しているが、特に紙幣に関する発言は、極めつけの無知を晒すものとなっている。
  • 1万円1枚が20円で印刷出来るので、9980円が利益となって、政府に納付される。(ニコニコ動画
  • 輪転機をぐるぐる回して、日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう(11月20日朝日新聞)
これらは選挙後に誕生するであろう自らの政権を短命に導く地雷を自らばら撒いているようなもので、2013年の国会で追求され、前政権時代に続き、またもや安倍氏は自爆、自沈するだろう。

金本位制の時代は、金(ゴールド)を銀行に預けることで、その引き換えの預り証として紙幣が発行された。

しかし現在では、金本位制は廃止され、金(ゴールド)に変わって、銀行の帳簿上に存在する「預金」と引き換えに紙幣が発行される制度になった。安倍氏はここを理解していない。

つまり、紙幣を手に入れるには、銀行に預金が無ければならない。民間銀行のATMを思い出して欲しい。当たり前だが、預金がある人が、紙幣を引き出せるのである。

さらに、民間銀行は、紙幣を手に入れるために、日本銀行に「預金(当座預金)」を預け、その預金を紙幣に引き換えることになる。このようにして中央銀行から紙幣が発行される。日本銀行のHPにもそう明記してあり、これは世界中の国家で同じ仕組みである。

安倍氏は、日銀が紙幣を輪転機で回したら、無制限に紙幣が発行出来ると思い込んでいるが、上記のように、あくまで預金を持っているものが、引き出そうとしないかぎり、紙幣は発行されない。安倍氏はここも理解していない。

安倍氏の言うような、紙幣を1枚20円で印刷して、それを紙幣の表面に書かれている1万円で発行し、その差額の9980円が政府に納付される、という事実も存在しない。

紙幣の製造原価と額面金額の差額を政府の収入にしている国家など存在せず、存在するとしたら未開の独裁国家くらいであろう。安倍氏の頭脳は未開の独裁国家の元首並みと言える。

それにしても、このようなレベルのことを国会議員を20年近く務め、首相を経験した人が、まるで理解していない、というのはあまりにもヒドイ。

前回、安倍氏が早期退陣に追い込まれた原因もこのあたりにありそうで、また今回も繰り返すことにもなるかもしれない。


【補足1】
「FRBは大量にドルを刷っている」という人を見かけるが、実際の数字を見ると、日本とアメリカで、紙幣の発行残高は大差は無い。

FRBのサイトによると、
http://www.federalreserve.gov/faqs/currency_12773.htm
How much U.S. currency is in circulation?
---------------------------------------------------------------------------------------------------- 
There was approximately $1.15 trillion in circulation as of November 28, 2012, of which $1.11 trillion was in Federal Reserve notes.
2012年11月28日時点で、1.11兆ドルと公表されている。1ドル80円とすると、88.8兆円になる。

一方、日銀のHP『営業毎旬報告(平成24年11月30日現在)』 では、81兆円となっている。
発行銀行券 81,730,036,330  (単位:千円)
アメリカのGDPは、日本のGDPの約2倍大きいが、紙幣の発行残高は日本と変わらない。経済の規模からすると、日本のほうが紙幣の発行枚数は多い。

【補足2】
FRBの年別の紙幣の印刷枚数の推移のページを見ても、FRBが巨額の紙幣を刷っているという事実は無い。

ここ数年間は、1200億ドル~2240億ドル(約9600億円~1.7兆円)の間で推移していて、2011年には前年比で減っている。


【補足3】
日本の紙幣の印刷枚数は、日銀ではなく、財務省が決めている。

財務省のHPでも『平成24年度の貨幣の製造枚数を改定しました』と公表されている。平成24年度に印刷、製造する紙幣、硬貨の総額は1794億円となっている。

ちなみに、安倍氏は、日本銀行に無制限にお札を刷ってもらうと言っているが、紙幣を印刷するのは、日銀ではなく、財務省の外郭団体である独立行政法人国立印刷局である。ここにも安倍氏の無知、不勉強が現れている。

紙幣残高は、日米ともに80兆円台だが、年間の紙幣印刷枚数に差があるのは、ドル紙幣は痛みやすい紙であるため頻繁に旧札と新札の入れ替えが行われ、それに対して、日本銀行券は丈夫だから、と言われている。 





自民党安倍総裁と東京新聞の建設国債に関する誤解

■「建設国債」という国債は市場では売っていない

安倍晋三も東京新聞も勘違いしているが、「建設国債」と明記されたものは、国債の市場では売っていない。

国債市場では、償還期限(2年債、10年債など)や利率が表示されており、その情報を元に売買を行うが、「建設国債」という形では売っていない。よって、東京新聞の言う「普通の手段」である「買いオペ」で、建設国債を買うことは出来ない。

国債についての基礎知識がある人ならば、この実務は理解しているため、「日銀に建設国債を買ってもらう」という事は、すなわち、政府が発行する建設のための国債を日銀に直接買わせる、という事と理解せざるを得ない。

しかし、安倍氏も東京新聞も、この実務を知らないために、デタラメな発言、記事になっている。

より専門的、かつ、正確な説明は、債券に関する国内随一のプロによる解説「日銀が建設国債だけを市場からは買えない理由」を読むと良い。

「建設国債」という呼び名は、政府が作成する建設のための資金を調達するための法律に基づいて発行される国債、という通称であって、実際に市場に発行される時には、金額、利率、償還年限しかわからない。発行回数を辿れば、根拠の法律が分かるが、複数の法律が列挙されており、そのときの調達額のどの部分が建設国債によるものかは分からないようになっている。

例えるなら、今、手元にある紙幣を見て欲しいが、その紙幣に「建設のために発行されました」とは書かれていないはずだが、国債もそれと同様である。

この程度の初歩的なレクチャーを行う人材が、安倍自民党総裁の周りにはいないということが明確になったが、この程度の人間が首相になってしまう可能性が高いとは、なんとも情けない限りである。

リフレ派の円安インフレ政策の正体

次の報道によると、中国では最新のスマートフォンは月給の2か月分。

 「人気のスマートフォンが欲しいけれど、給料の2か月分近くが消えちゃう」
2012年8月22日 
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20120822-OYT1T00246.htm

今、世界中の製造業が中国に工場を作っているが、その理由は、中国が圧倒的な超低賃金だから。

スマホ1台分で、中国人は2ヶ月働いてくれる。
他国からみると、超低賃金でも、ちゃんと生活出来るのだから、中国の物価は圧倒的に低い。

ところが、中国人自身からすると、2ヶ月働かないと、スマホは買えないのだから、
中国人自身からみると、中国国内の物価は高く、インフレ。

日本のリフレ派は、円高を悪とし、円安を熱望しており、円安によって製造業の工場を日本国内に回帰させ、雇用を増やす、という事を主張している。 

スマホ1台が月給2ヶ月分の中国の労働者から雇用を奪うのであれば、日本の労働者の給与も、中国の労働者と同等にしなければ、世界の製造業は日本に工場を移転してくれないであろう。

スマホを1台5万円とすると、日本の労働者の月給を2万5千円にしたら、中国と同等の賃金水準になる。
もしくは、月給の名目金額を下げたくないのであれば、日本での月給を20万円とすると、スマホの価格が40万円になるようなインフレが起きなければいけないことになる。
(外国からみると、中国の労働者と同様に、日本の労働者はスマホ1台分で、2ヶ月働いてくれる、ようになるわけだ。)

ちなみに、スマホが40万円になるようなインフレが起きても、月給が上がってしまうと、日本人の賃金は中国の労働者より割高になってしまうので、中国から日本に工場を持って来れなくなる。

リフレ派は、インフレを望んでいるので、スマホの価格が40万円になるほうを選択しているのであろう。
スマホが1台40万円になるような、円安を起こせば、製造業を中国から取り戻せて、雇用が増える、という政策がリフレ派の円安政策の正体である。

 
リフレ派は世界の国でデフレは日本だけだから、日本の経済は最悪である、と毎日連呼しているが、現在の日本では、スマホは月給の数分の一を出せば買える。
一般常識では、日本のほうが経済的に豊か、というのだが、リフレ派は物事が真逆に見えているようである。
 
■物価と生産性、付加価値について
例えば、1時間あたりの賃金で、1食分買える社会と、3食分買える社会だと、3食分買える社会のほうが豊か、である。1食分買える社会と3食分買える社会を比較すると、3食分買える社会は、物価が安い、という。

1時間働いて3食分買える社会は、1人が1時間働いたら、3人を食べさせられる社会でもある。家族に病人がいたり、まだ働けない子どもが2人いても、1人が1時間働けば食べさせられる。 

生産性や付加価値が上がり、1時間働いて、6食分買える社会になったとしたら、さらに3人分多く食べさせられることが出来るようになり、6人食べさせることが出来る。そうすると、自分の家族以外で困っている社会的弱者の他人を3人食べさせることが出来る。生産性や付加価値を上げる必要がある理由は、ここにある。

1時間働いて1食分買える社会は、自分だけが生きていくのに精一杯の社会であり、他人を食べさせることは出来ない社会である。 

再度書くが、1時間働いて1食分買える社会は物価が高く、3食分買える社会は物価が安い。物価が安いことは悪いことでは無く、社会的弱者まで食べさせることを考えると、物価は安いほうが望ましい。

物価高を熱望するリフレ派は、1時間働いて1食分しか買えない社会を目指していることになるが、それは社会的弱者を切り捨て、自分だけが生きていくのに精一杯の社会を目指していることになる。

中国のような発展途上国でインフレが起こりやす理由は、道路、電気、水道、鉄道、通信などの社会的基盤(インフラ)が未整備で脆弱であり、生産性が悪く、供給能力が弱いため、商品やサービスの供給が不足し、品薄だから、物価が上がりやすく、インフレになりやすい。決して中央銀行による金融政策によりインフレが起こっているのではない。生産性が悪く供給不足だから、インフレが起こっているのである。さらに、これらの国は、超低賃金でもあるため、インフレにより物価が高いと、満足に商品やサービスが買えない状態になるから、需要は衰えないのである。

リフレ派には、生産性が向上すると物価が下がりデフレが進む、デフレは悪だから、生産性を向上させるべきでないとまで主張する人がいるが、このような主張する人はキチガイ認定して構わない。先にも述べたように、社会的弱者が食べていけるようにするには、生産性の向上が不可欠なのである。

生産性向上を否定するリフレ政策は、社会的弱者切り捨て政策にほかならない。

■経済学の教科書から
八田達夫『ミクロ経済学 1』の3ページ「序章 」
2012-08-31 22:39:13 写真1
「市場では、他人が最も必要としている財やサービスを、より安く供給する個人や企業が成功します。このことを通じて、市場は国民の生活水準を改善します。」

[サル以下のリフレ派でも分かる]超低金利とインフレ

関連記事:リフレ派の円安インフレ政策の正体

リフレ派は当たり前のことを知らないので改めて書いておくと、銀行は預金者から預かった金を貸し出して、その際の金利を主な収入源としています。近頃は国債の運用益が増えたとはいえ、収入の比率からいえば金利収入が大半を占めます。しかし、ここ10年以上、日銀の金融緩和政策により金利が下がり、金利収入が減っています。これは全国銀行協会の報告でも示されています。

2011年 全国銀行財務諸表分析 

国内業務部門をみると、収益は、有価証券利息配当金が増加したものの、日銀の金融緩和政策を受けて貸出金利が低下し、貸出金利息が減少したこと等から、全体では減少した。
 

http://www.zenginkyo.or.jp/stats/year2_02/details/account2011_terminal/summary.html

つまり、超低金利ということは、銀行は貸し出しを実施しても、儲からない、という状況です。

リフレ派は、金利が低ければ企業はお金を借りやすい、という借り手側の事しか言いませんが、貸し手側にとっては貸し出しても儲からない状況であるため、無理して貸し出しを増やそうとはしない状況になっています。

それどころか、リフレ派には、実質金利を下げろ、さらに、マイナス金利にしろ、という輩もいますが、マイナス金利になれば、貸し手側は、貸したらマイナスになって返ってくることになり、損失が発生する、という事に気が付いていません。銀行が貸し出す資金は、元々預金者から集めた資金であり、それを簡単に損失させるわけにはいきません。

銀行としては、超低金利だと貸し出しても儲からないので、他の手段で儲けなければいけませんが、この銀行(だけなく金融機関)に対して儲ける状況を発生させているのが、金融緩和です。

ここ10年以上は日銀が金融緩和のための実務として、国債を市場から断続的に買っている事もあり、国債価格が高騰(=金利低下)していています。、銀行としては、財務省から新規国債を購入し、その後高値で日銀に国債を売却する、という取引で儲けを出しています。これに関しては『[サル以下のリフレ派でも分かる]バランスシートで理解する金融緩和入門』も一読ください。

日経「国債の売却益」
 国内の銀行は本業である貸し出しの収益力が低下しているため、国債の売買益に頼る傾向を強めている。長期金利が低下(債券価格は上昇)している局面で保有している国債を売却すれば利益が発生する。2012年3月期の3メガ銀行の国債売買益は合計で約5700億円、5大銀行合計では約6800億円に達した。
 金融機関が保有する日本国債は600兆円を超え、国債発行額の66%にまで膨らんでいる。もし長期金利が上昇に転じれば、一転して大きな含み損が発生する可能性もある。[2012年5月20日]
http://www.nikkei.com/money/investment/toushiyougo.aspx?g=DGXNASFZ1802C_18052012K16300  

■インフレは、金利が高く、銀行が貸し出せば儲かる状況

何かのきっかけで企業の借入が増えだしたら、市場金利は上昇しだしますが、この金利の上昇は、貸出側の銀行にとり、貸出を増やせば金利収入が増えるチャンスとなるため、積極的に貸出をしようと動きます。

しかし、リフレ派のような金利は低いほうが良いとだけ思い込んでいる単純バカな人たちは、金利が上がりだすと、日銀に金利を下げることを要求します。金利が下がってしまえば、銀行にとっては貸し出して儲からなくなる、という状況が再度発生してしまうため、貸出を減らす方向に働くので、リフレ派は、日銀に金利を下げる要求をすることによって、銀行による貸出を抑制しようとしていることになります。

銀行は積極的な貸出を行う状況になっているからこそ、インフレも発生しうるのですが、それは金利が高く貸し出せば儲かるから状況にあるからです。当たり前ですが、過去のインフレ時には金利は高くなっていました。
 
インフレにしたいのであれば、貸出が増えだしたら、市場金利の上昇を抑えていはいけません。ところが、リフレ派は市場金利を下げろ、と要求します。

彼らリフレ派は、インフレを望んでいるはずなのに、インフレにならないように日銀に要請しているのです。無知のなせる業ですね。


[サル以下のリフレ派でも分かる]紙幣発行時の銀行のバランスシート

関連記事:リフレ派の円安インフレ政策の正体

リフレ派はほんとに複式簿記の初歩さえ理解していない。リフレを唱える人は、バランスシートガー、バランスシートガー、と日々連呼しているが、もしかしたら、リフレ派はバランスシートと複式簿記は別の話だと思っているのではないか。

■田中さんが10億円を他の銀行からA銀行に振り込んだ

 01

銀行の間の預金の移動、つまり振込みは、各銀行が日銀に開設している日銀当座預金口座の中で行われる。したがって、他の銀行からA銀行に振り込まれた場合の、A銀行のバランスシートは上記のようになる。

■田中さんが5億円分を紙幣で引き出したいと要求してきた

A銀行は、預金者である田中さんの要求に無条件で対応しなければならないため、銀行は紙幣を手に入れなければならない。

A銀行が紙幣を手に入れるには、A銀行が日銀に預けている当座預金を紙幣に引き換えることになる。

日銀のホームページ:「銀行券・貨幣の発行・管理の概要」

銀行券の発行

....そして、日本銀行の取引先金融機関が日本銀行に保有している当座預金を引き出し、銀行券を受け取ることによって、世の中に送り出されます。この時点で、銀行券が発行されたことになります。
https://www.boj.or.jp/note_tfjgs/note/outline/index.htm/ 
  

そこで、A銀行は、日銀に対し、A銀行の当座預金の残高10億円のうち、5億円分を紙幣に引き換えたい(つまり両替)、と依頼すると、しばらくしたら、日銀から現金輸送車で5億円の札束が到着する。その時の、バランスシートは以下のようになる。

03

その次に、田中さんに対して5億円分の紙幣を渡すことになる。田中さんに、渡した後の銀行のバランスシートは以下のようになる。

A銀行のバランスシート全体は5億円に縮小する。しかし、田中さんの資産は「A銀行の預金残高5億円」と「手元の5億円分の紙幣」の合計10億円で変化はない。

 02

簿記の初歩中の初歩だが、リフレ派はこのような複式簿記の仕訳が理解できていないため、トンチンカンなありえない主張を繰り返しているに過ぎない。

こちらの記事[サル以下のリフレ派でも分かる]銀行のバランスシート入門』と合わせ読むと、より理解が深まるはず。

[サル以下のリフレ派でも分かる]バランスシートで理解する金融緩和入門

関連記事:リフレ派の円安インフレ政策の正体

リフレ派は、日銀に金融緩和をせよ、国債を買え、と主張し続けているが、具体的にどんな取引が行われているかを理解している人は見当たりません。というか、理解していないからこそ、金融緩和を連呼しているのでしょう。

金融緩和は、おおまかに説明すると、金融機関が財務省から入札で購入した国債を、入札価格以上で日銀が買い取ること、を指します。つまり、金融緩和は、金融機関への利益供与といえます。

以下、バランスシートを使ってその取引を説明します。

■田中さんがA銀行に5億円を預けた 

01

■銀行は資金運用のために、財務省から国債を3億円分購入

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 ■金融緩和:銀行は国債を日銀に売却

現在は、超低金利=国債価格高騰なので、財務省から入札で購入した国債は、確実に高値で売れる、という状況。しかも、日銀は○○兆円を買い入れる、と公表しているので、金融機関から見ると、ただのカモです。

上記のバランスシート上にある国債3億円分を、日銀に売却したら4億円で売れた、とします。この時のバランスシートは以下の通り。

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3億円で購入した国債が、4億円で売れたので、銀行のバランスシートは1億円分、大きくなります。

左側の資産の部の「現預金」の合計が6億円になるので、それに合わせて右側の純資産の部に利益1億円が増えます。

これが、日銀による金融機関への利益供与だ、と述べた理由です。これがリフレ派が望む金融緩和です。


金融機関が日銀に国債を売った代金は、金融機関が日銀に開設している日銀当座預金口座に振り込まれます。日銀当座預金はマネタリーベースの一部ですので、この取引でマネタリーベースは増えます。

当然ですが、一番最初に5億円を預金した田中さんの口座残高は5億円のままです。

本来の金融緩和の意図は、金融機関に利益を供与したら、金融機関は民間への貸出を増やす、ということを期待してのことです。

しかし、現在は超低金利であるため、貸出をして得られる金利収入は減る状況になっています。つまり、貸出を増やしても銀行は儲けが増えるわけではない、という状況です。

金利収入も低く、貸し倒れのリスクもある民間企業に貸し出すよりは、後日に日銀が確実に高値で買ってくれる国債を、財務省から入札して購入したほうが、確実に利益が確保出来るため、金融機関の資金(=預金者の預金)はどんどん国債に向かっています。

政府は、徴税権を持っているため増税さえすれば、国債の返済をすることが確実なため、金融機関は民間に貸し出すよりも、政府に貸し出すことを選択します。

政府が国債を発行しなければ、銀行は現在のような国債の売却益を得られなくなるので、銀行は利益をあげる為に、なんとかして民間の貸出先を作る必要が出てくるはずです。

しかし、現在の政府は毎年大量の国債を発行しているため、銀行はリスクが低く、楽して儲けられる国債の購入を選択している、という状況です。

上記のバランスシートでいうと、国債を売って得た利益1億円分の現預金を使って、再度また国債を買う、ということを行っているのが、現在の金融機関の状況です。

以上が、金融緩和で実際に行われている取引です。

金融機関が金融緩和を求めるのは、上記のようにリスクなく利益が得られるからにほかなりません。

上記では、国債で説明しましたが、他の金融商品(REIT)なども購入しています。

■金融緩和と為替の関係

リフレ派は、金融緩和をしたら、円安になる、と思い込んいますが、上記の通り、金融緩和は日銀と金融機関の間の取引で完結しており、外国為替市場での取引は全く発生しません。

円安になる為には、外国為替市場で円が売られなけばなりません。金融機関が金融緩和で得た利益を外国為替市場で売れば円安に動くかもしれませんが、金融機関、特に銀行が運用目的で円を売って外貨を買うという事はありません。

日銀当座預金(マネタリーベースの一部)が増えたら、円安になる、と主張するリフレ派がいますが、日銀当座預金は、日銀の口座の中の話なので、外国為替市場とは全く関係ありません。

■FRBのQE3について

昨晩(2012/09/13)に、米国のFRBが、雇用情勢の悪化を受けて、QE3を発表しましたが、これは国債ではなく、住宅ローン債権を証券化したMBSの購入を行うようです。

サブプライム危機の原因である住宅ローン債権は、危機により価格が著しく下落し、買い手も乏しい為、それをFRBが買取って、対価を金融機関の口座に振込む、という取引になります。

これで喜ぶのは塩漬けになっていたMBSを売却出来た金融機関だけです。

QE(2008年)、QE2(2010年)と金融緩和を実施したアメリカの現状は次の通り。

 朝日新聞:2012年9月13日

アメリカ米国の世帯年収、4年連続の減少 所得格差は最大に (朝日新聞)
http://www.asahi.com/business/update/0913/TKY201209130398.html
NHK: 2012年9月13日
 
米 「貧困層」が15%台続く (NHK): 
アメリカで、景気回復の遅れを反映して、年収が一定の水準に満たない「貧困層」と分類される国民の数が、2年連続で人口全体の15%に達したまま高止まりしていることが分かりました 
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120913/k10014985881000.html  
アゴラ: 2012年9月13日
 
「アメリカの労働参加率は63.5%で、1981年以来の低水準に落ち込んだ」→ アゴラ FRBの量的緩和(QE)とは金融機関への補助金である 藤沢数希 
http://agora-web.jp/archives/1486420.html
QE,QE2と効果が無く、さらに状況が悪化しているためQE3を実施に踏み切ったのでしょう。FRBとしては、対策を実施した、というアリバイ作り、演技をした(上品に言えば「期待」に働きかけた)、ということに過ぎません。

上述の金融緩和による取引が理解出来たならば、金融緩和が雇用を生み出すようなメカニズムは皆無であることが理解できるはずです。繰り返しになりますが、金融緩和は中央銀行と金融機関の間だけの話だからです。 

■インフレになったら、国債を大量保有している銀行は経営危機になる

上記で、超低金利=国債価格高騰の場合は、財務省から買った国債は、確実に価格が上がるため、日銀に国債を売却すれば、金融機関は利益を得られることを説明しました。

これがインフレになると、金利上昇=国債価格は下落、となります。となると、金融機関は国債を購入した時を下回る価格で売却しなければならい場面が出てきます。なぜ、こういう場面が出てくるのかは、『[サル以下のリフレ派でも分かる]銀行のバランスシート入門』を読んでください。

02 

上記のバランスシートの状態で、預金者が5億円を引き出したい(or他行に振り込みたい)と要請があった場合は、銀行は預金者の要請に無条件に応じなくてはならないため、5億円を用意しなければなりませんが、3億円分は国債になっています。インフレだと、購入時に3億円だった国債が、2億円でしか売れない、という状況が発生します。

3億円の国債を売却し、2億円が振り込まれた場合のバランスシートは以下の通りになります。
 04

左側の資産の部の現預金は4億円になってしまいます。バランスシートですので、左右はぴったり一致しなければなりません。よって、純資産の部に損失マイナス1億円を計上します。

しかし、預金者が引き出したい(or振り込みたい)額は、5億円です。銀行の資産の部には、4億円しかありません。預金者が預けた5億円が、全額返ってこない、という状況です。この時点で銀行はデフォルトとなり、破綻となります。

このような危険性があるため、銀行は国債価格が下がり始めると(金利が上がり始めると)、国債の売却損を最小限にとどめるために、早めに国債の保有額を減らそうと、売却を開始します。現在の銀行は大量に国債を保有してしまっており、売却量も大量になるため、国債の価格が急落する可能性は否定できません。

■ハイパーインフレは起こるか

国債の価格が急落すると、前述のバランスシートの例のように、預金者の預金が全額返ってこないような事態が発生し、銀行が倒産しうる状況が発生します。

銀行が倒産すると、上限1000万円以上の預金は消失するため、倒産する前に預金を紙幣に両替して引き出したり、他行へ振り込もうとする、という預金者が現れます。そうなると、銀行は、現預金を手に入れるために、さらに保有国債を売る、という連鎖が発生します。

この連鎖において、預金を紙幣として引き出そうという流れが急増すると、現在では民間の預金額は1000兆円以上あるので、この1000兆円の預金が、紙幣として引き出される(発行される)かもしれない、という状況になります。

現在、紙幣は80兆円分発行されている状況ですので、その10倍以上の紙幣が出回る、かもしれないことになります。 (紙幣もマネタリベースの一部として集計されているため、マネタリーベースも10倍近くに急増します。)

当然、政府や日銀は、このような大量な預金が紙幣として引き出される(紙幣が発行される)状況になる前に、手を打つはずですが、ここでリフレ派のように、金融引き締めすると景気が悪くなる、紙幣を回収するのではなく、どんどん紙幣を刷れ、という人物が政権側にいて日銀に圧力を掛けると、ハイパーインフレが発生する可能性が出てきます。

このような不測の事態が起こった時に、政治側からの圧力に屈しないために、中央銀行は政府から独立して設立されるようになりました。

過去の歴史において、政治の圧力に屈して、ハイパーインフレ=物価の安定性が損なわれる状況が幾度となく発生したことを踏まえた人類の知恵として、現在のような中央銀行制度が確立されるようになりました。

[サル以下のリフレ派でも分かる]バランスシートで理解する通貨の発行入門

関連記事:リフレ派の円安インフレ政策の正体

全世界が不換紙幣制度を採っている現在、通貨は基本的に帳簿上に記録される預金(債権)のことを指す。

よって、金融や経済学、会計では、「預金通貨」という言葉を使う。

この記事を読む前に、『サル以下のリフレ派でも分かる銀行のバランスシート入門』をご一読願います。

その預金通貨をATM(つまり銀行)から引き出すことで、紙幣が手に入る。あくまでも通貨の主役は預金通貨であり、紙幣はその預金通貨を両替して、携帯して持ち運び出来る様にするためのものでしかない。

なので、日銀が紙幣を刷れば云々と日々連呼しているリフレ派は、この現在身近に行われている単純な取引のルールさえ理解していない。

電子マネーでも、預金口座からチャージすると、電子マネーのカード内の残高が増えることも同様で、やはり預金通貨が主体である。

中央銀行の歴史は新しく、現在の形の中央銀行の歴史はたかだか百数十年しかない。よって、通貨を考える際に、中央銀行を前提(ア・プリオリ)に考えることは間違いである。

帳簿上に債権・債務の関係を記し、その数字が通貨として機能する、という取引は、古くは古代メソポタミアから行われていたらしく、そのことを記した粘土板も大量に発見されている。(『投資家のための金融史 板谷敏彦

中世に入り、複式簿記が発明されてからは、バランスシートにより、債権・債務の記録されるようになった。

■物々交換による預金通貨の発生


田中さんはリンゴを採った。佐藤さんはそのリンゴを欲しいが、代わりに交換に渡すスイカは、半年後にしか取れないという。ここではリンゴ1個とスイカ1個が等価であるとする。

そこで、A銀行は、佐藤さんはちゃんと半年後にスイカを返して来れそうか、という審査をし、どうやら佐藤さんは「信用」出来そうだ、と判断し、佐藤さんにリンゴを貸出すことにした。

この取引をバランスシートで表してみるが、丁寧に説明するために、細かく取引を分けて、順に説明してみる。

まず、田中さんはA銀行に、リンゴを預ける(=銀行に対して貸出す)。
01

田中さんの預金通帳にはリンゴ1個分の数字が記載される。
田中さんは、この数字を使って、他のものを買う権利を得たことになる。

つぎに、A銀行は、佐藤さんにリンゴを買うための貸出を実施した。
02

負債の部には、すでに田中さんの預金口座にはリンゴ1個分の数字が記載されているが、貸出を受けた佐藤さんの銀行口座にもリンゴ1個分の数字が記載され、この瞬間にはリンゴ2個分の預金が記録される。

当然、資産の部の貸付金には、佐藤さんに貸し付けた、という記録も残る。

佐藤さんは、さっそくその預金の数字と引き換えにリンゴを引き出した。すると、バランスシートは下記のように変化する。

03

資産の部の貸付金は、佐藤さんへ貸し付けた残高(佐藤さんの債務記録)であり、負債の部の預金はリンゴを貸出した田中さんの残高(田中さんの債権記録)である。

繰り返すが、リンゴを貸出した田中さんは、この数字を使って他の買い物が出来るわけである。

このように、信用を審査し、複式簿記に記録する、という存在の銀行業が存在すれば、中央銀行が無くとも、通貨は発行出来るのである。

■決済の利便性向上のための媒体としての紙幣

上記では、田中さん、佐藤さんしか登場しなかったが、これが不特定多数のやり取りになると、物を交換するためにイチイチ銀行に行き、帳簿を確認しなければならないため、不便である。そこで、イチイチ帳簿を確認せずとも決済(交換)が出来るように、銀行が紙に数字を書いた「銀行券」なるものを発行することになった。
(歴史的にも、中央銀行が誕生する前には、政府直営の銀行や、民間銀行が紙幣を発行していた。)

その後、田中さんは、新たにリンゴ1個を銀行に預けた、とすると、バランスシートは以下のように変化する。

04

この時点で、田中さんの預金口座にはリンゴ2個分の数字が記載される。

田中さんは、預金のうち、リンゴ1個分を「銀行券」として、引き出した。その時のバランスシートは、以下のようになる。
05

この時点では、田中さんの預金口座の数字はリンゴ1個分の数字に減り、手元にリンゴ1個分の数字が記載された紙幣が残る。

田中さんは、この銀行券を持って市場(イチバ)に行けば、銀行券と交換にモノを手に入れることが出来る。田中さんは、イチバの鈴木さんとに銀行券を渡し、ブドウを手に入れた。銀行券の信用さえあれば、イチイチ銀行に帳簿を調べに行かなくても、その場で決済が完了してしまうのである。紙幣とはあくまで決済の利便性のために存在するのである。

その後、鈴木さんが、A銀行に行き、その銀行券を差し出し、銀行からリンゴを受け取った。

このときのバランスシートは以下のようになる。

06

資産の部の貸付金は、佐藤さんへの貸出であり、負債の部は田中さんの預金である。

以上のように、通貨とは、債権・債務関係を記した複式簿記上の数字=預金のことであり、紙幣はその預金を持ち運びしやすいように両替したものにすぎない。

複式簿記により記帳していけば、中央銀行が存在せずとも、通貨が発生(発行)出来るし、実際の現実世界では、そのようになっている。

サル以下のリフレ派は通貨の発行は中央銀行しか出来ない、と思い込んでいる人がほとんである。中央銀行は通貨の発行量を金利を調節することにより変化させようとするのみであり、紙幣の発行については、単なる預金との両替の結果として発行しているに過ぎない。

ここでもう一度、 『サル以下のリフレ派でも分かる銀行のバランスシート入門』に目を通していただきたい。より理解が深まるはずである。


(追記、余談)
■金本位制

上記では、リンゴで説明したが、実は、このリンゴの部分を「金(ゴールド)」に置き換えたら、そっくりそのまま、金本位制の説明としても使える。

■金利について

説明をシンプルにするために、上記では銀行の収入源である金利収入を省略した。この例だと、佐藤さんが時間的に先にリンゴを得て、返済は半年後なので、銀行に対して金利を支払うべきである。


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