大阪府立大学の人員削減は、おおよそ10年前から行われています。特に影響が大きかったのは、重点化。重点化は、研究活動をより活性化させる大学にすることで、続には「大学院大学化」と称されて、教員に大学院所属の教員がいて、学部教育の負担を避け,研究活動に専念できる時間や予算の環境を整えることでした。この間、当時の国立大学は法人化に備えて特に理系分野で多くが重点化を行い、施設改善や人員の再配置、予算の拡大が行われました。
 ところが大阪府立大学では、大学院大学化に伴い大学院定員の充当が義務化されて大学院生の数が倍増しました。一方、総予算に留保をかけていた大阪府は、留保を恒常化させ実質予算削減を行いながら、研究費を微増させるために教員の削減をさせました。国公立大学の質の高い教育を支えていた大きな特徴であった小人数教育を打ち捨てたのです。
 従来、一研究室教員構成教授1、助教授1、講師0.33、助手2、学生構成4回生5-7、院生2学年で4-6人で計12程度を、教授1、助教授1、講師0.33、助手1に減じ、学部生とほぼ同等の院生を各学年で持つこと、すなわち15-20人程度もつことになりました。
 このため、教員は演習などの負担が増え、特に出張の多い教授に変わって研究室で学生の面倒を見ていた助手の拘束時間が急増、学生との接触時間はてきめんに減少しました。さらに、その後も管理部門での人員削減を継続するだけではなく、生え抜きの大学事務職員を3年でローテンションの原則拡大によって府庁に引き上げたため、管理業務の実務が教員にたくさん回ってきました。IT化で発生した管理実務はほとんど教員が担うことになりました。これらは人員削減とあいまって教員の時間を拘束、重点化の研究環境整備とは相反する状況を生みました。
 結果、学部生だけではなく大学院生も教員が多忙なため、研究方針や研究に対する考え方をじっくり議論、租借理解する時間が激減、25%教員削減を行いながら今日に至っています。
 民間的センスで、各業務の工数計算を行い、積算すれば何が起こっているかは簡単に分析できます。講義の見直し、準備時間すら勤務時間中に確保できない環境で、更なる賃金削減では、教員の士気が低下しているのは明らか。学力低下、という表現は適切ではありませんが、理系志望学生の実経験不足で教育に負担が激増している中、学生サービスがずたずたになっているのが大阪府立大学です。
 まじめに分析し、必要な経費を申請すらしない総務担当理事は、役員報酬泥棒、法人に対する背任行為ともいえそうな仕業ではないでしょうか?