若手医師の目線

若手医師の目線から見た医療業界についてを紹介します。 厳しい医療現場に身を置く医師の皆さん!!日頃感じている事等、語り合いませんか? これは言いたい!こう思う!!という方、コメントお待ちしています!!

若手医師の夜の仕事

 最近、若手の開業医の中に夜間の当直を副業とする医師がにわかに増えている模様で、正直なところ都心の中小病院でも時折そのような当直体制に依存するケースが散見される。開業はしてみたが、同じ地域に競争相手が多く、いってみれば「医師過剰」という壁に直面するらしい。ただし、深刻な医師不足という昨今のかしましい世情から言えば、地域の医師過剰のため経営的に四苦八苦というのも真に奇異な話とも思われる。
 ひるがえって日本の医師数が絶対的に不足していることはいまや完全に衆目一致するところである。これまで厚労省は「医師数は充足している。近い将来、むしろ医師過剰になる」と言い張って、現場の悲鳴に耳を傾けようとはしなかった。だが、まず高齢で働けなくなった医師(聖路加病院の日野原氏のような医師ばかりではない)数を含めて、他方、医師一世代の三割も占めるようになっている女性医師の実働不足(出産、育児などによる離職、休職)はまったく視野に入れず、医師免許所持者数をカウントするノー天気な試算が論理的な根拠になっている。そのような粗雑さを省みず、皮相にも米国の医師研修制度(マッチング制)を模倣する大改革を強行したため、予想外の「医師の大移動」が急速に進み、いまや医師不足に輪をかける要因となっている。最たる「移動」はいうところの「立ち去り型サポタージュ」で、主要都市の都心は中堅勤務医による開業ラッシュだといわれ、手軽なビル開業医への変身がトレンドとされる。だが、現今の開業医は果たしてそれほど魅力的な職種であろうか。
 数年前、開業医の平均年収は約2800万円(中医協)と発表された時期があったが、その際、収入の半分以上が多額の借入金返済、機器購入など設備投資に充当される点はほとんど言及されることはなかった。その後も診療報酬は包括制、逓減制等々相次ぐマイナス改定で、いまや開業医の実質的な平均年収は1000万円を割り込むような水準まで落ち込んできているのではなかろうか?
 それでも半世紀ぐらい以前のような開業医優遇型の診療報酬であれば、自分なりの診療スタイルが実現できる点で、マイペースの開業医業に自己満足を見出すこともありえた。だが、通常のサラリーマンとちがって土曜日も通常の勤務を強いられ、前述のように夜は病院当直というのでは、万一、過労で倒れた場合、一体、どうなるのであろうか。
 おそらく若手開業医の多くも早々の開業は隘路にはいる危険性があることに気づいているのではなかろうか。だが、心身共に疲弊している現状の勤務医を続けるよりはマシということで、目をつぶって跳んでしまうということのようである。
 ともあれ、開業年齢の極端な若年化は単に医師数という量的問題にとどまらず、地域全体の医療の質に大きく影響を及ぼすと考えられる。それまで重症患者や複雑な疾病の高度専門医療を担っていた中堅医師が、一転してプライマリー・ケアと専門領域の軽症患者に特化した仕事中心に変身を余儀なくされてしまっている。一概にプライマリー・ケアを軽視するような発言は避けるべきだが、かつての高い志(初心)、現在の秀でた臨床能力を考えれば、彼らの早期転進はおおむね社会的損失とみなしてよく、相応の年齢までしかるべき立場に踏みとどまってもらうのが日本の医療のためではなかろうか。

若手医師の将来

目下、全国各地の医療現場で、医療行為をめぐって医師が逮捕されるなど、過去に考えられなかった否定的な現象が相次いでいる。一口に言って医療の世界はいま大変な逆風、ゴルフでいえば猛烈なアゲンストで、真冬の暴風雨のさなかと喩える人もいる。
キーワードとして医療崩壊との表現も盛んで、中堅の働き盛りの医師が、過重労働、医療事故への脅え、患者関係の悪化等々、医療環境をめぐる不条理に非を鳴らし続々と職場を去って、いうところの「立ち去り型サポタージュ」なる社会現象が写しだされている。
ひるがえって、医師にとって生きがいのあふれる古き良き時代があった。一定の収入が確保されて、患者との関係においても満足度が高く、現在のような複雑な高度技術の適用に思い悩むことも少なく、当然、医療事故への恐れもまれであった。
医師は、現状と比較すればはるかに貴重な職種として位置づけられていたわけだが、純然たる労働条件で、ハードな日常を前提としていたことに今も昔もそれほど差異があるとは思われない。当時、徹夜の勤務など厳しい環境ではあっても知識や技術を向上させうる職場を求める気風が一般的で、若き日に刻苦勉励しておけばまず将来は報われるという期待感があった。大まかに言って前半は過酷な勤務医生活であっても、後半は地域でおおらかに開業医という典型的な歩みが約束されていたように思える。なによりも人のためにという利他主義に支えられて、あるいは生命への畏敬に対する知的好奇心に満たされる日々は、充実して快かったであろう。
 しかるに、平均的な医師が目指す「勤務医+開業医」というライフスタイル像が、現在は音をたてて崩壊しつつある。前述のように前半の勤務医生活が過酷に過ぎて医師たちが次々と職域を離脱している現実があり、後半の開業医の生活も年を追って経済的な減収をはじめ、状況はとみに厳しさを増している。
過去の医療政策のしわ寄せ、ツケがここに来て一気に噴出、複合的に社会問題化して、医療の全般が極端に劣化しているように思われる。いずれにせよわが世の春を楽しんだ旧世代の医師たちにあっては「身から出たさび」という一面もなくはない。だが、患者の権利がどんどん肥大化して、クレーマ的な要求も少なくない時代に彼らと対峙せねばならない若手医師の場合、前時代からの負の遺産はあまりにも気の毒な話というべきではなかろうか。若手医師にとってはそんな重苦しい時代で、前途は多難という他はないが、なんとかこの状況を打開する方策を模索せねばならないようである。
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