「いのちの家づくりを、天職にして生きる」
(いのちびと2016年7月号より)

Aさんは、建築業を営む家に長男として生まれた。
小学生になると、仕事を手伝わされた。
汗と埃で真っ黒な姿を同級生に見られることが、みじめで恥ずかった。
「建築屋だけには絶対やりたくない」

高校卒業後、家を出て働く直前、突然、父が急病で寝込んでしまった。
「家に残ってほしい」と母が懇願した。
「どうしようもない…」、建築屋の道を歩むことになった。

建築士の資格を取得して、まず地場の工務店で修行した。
数年後、大手ハウメーカーで全国トップのセールスマンになった。
父の会社に戻り、30歳で社長になった。

宮大工だった父は、国産材を中心にほぼ天然素材だけで、手間をかけて家造りをしていた。
気に入らない仕事は、代金を返して建築中の家を壊したこともあった。
借金は二億円を超えていた。

大手ハウスメーカの方法で家造りをした。
合板やビニールクロスを使い、『安く、早く、見た目が良い』ものにした。
営業力は抜群、業績は劇的に改善した。
しかし、家が売れるほど心が満たされなくなっていった。
何のために建築屋になったのか? 自分が目指す建築とは? 

ある日、父と自分は真逆なことに気づいた。
「生きた人間が住む家は、生きた材料で造らなければ身体に良いはずがない」が父の口癖だった。
「本ものは、時代が追いついてくる。自然素材で経営できる仕組みをつくればいい。自然素材の家づくりをする!」
それは、自分の天職を拓いた瞬間だった。

自然素材で安心安全を実現するための工法・素材・設計力を探求。
国産材と輸入材のベスト選択、海外等からの直接購入、手を抜かない職人の再編…。
モデルもなく試行錯誤、必死に働いた毎日だった。
とにかく家さえ作れば、どんどん売れる時代。
同業者には「あんた、何をやっているの?」と何度も言われた。

時代が変わり始めた。
シックハウス症候群が大問題になり、健康=自然素材の家が求められるようになった。
社長就任から十年後、無借金になった。
心から安堵した矢先、工場が火災となり、高級木材とともに全焼。新たに七千万円の借金を背負った。 

何かが足りない…。
ある日、スーパー建築家がつくった建物に入った瞬間、異次元の世界を感じた。
いのちが癒される―。
素材、構造、設計、人の思いなど、全てが自然融合した一つの宇宙を感じた。
「こうあるべきと捉われていた。心も身体も癒される、住む人が“幸せ”を感じてもらえる。
いのちの家づくりをさせてもらおう」

今、「Aさんの家に住みたい」と多くのお客さんが口コミで訪れる。
「衣食住、家族、家庭。人が生きる原点には、必ず『家』があるんですね。
私の家が、みんなをつなぐ場になれれば嬉しいです」

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