2007年11月26日

麻雀漫画としての「咲 -Saki-」その3

11/24に単行本第3巻が発売されました。

単行本第3巻

特典欲しさにあちこちで「咲 -Saki-」を買い求めました。
右下のブロマイドためだけにマグマニまで行きましたよ…。
交通費や往復の所要時間とかの事は絶対に考えてはいけません。

メロンブックス秋葉原店は凄い事になっていましたね。
自分の身長より遥か高くに漫画が積まれているのを初めて見ました…。
(関連:「アキバBlog」さん、「アキバOS」さん)

また、上記2サイトでもいろいろ紹介されていますが、ネット上でも各所で咲 -Saki-のレビューなどを見るようになって嬉しい限りです。
(関連:「MOON CHRONICLE」さん、「マダオの戯言」さん、などなど・・・)


さて、それでは単行本第3巻のレビューを。
とはいっても、うちでは毎回雑誌掲載時にレビューをしているため、今回は雑誌掲載時との変更点について注目してみましょう。
「咲 -Saki-」は単行本発売前には単行本作業のために休載するくらいですし、数多くの修正が見られます。
そこらへんについては、現在更新停止中ですが「バーチャルネット雀士のどっち15歳」さんの記事をご覧ください。

(関連:「咲-saki-1巻 雑誌掲載時と単行本収録時の変更点の比較」

第3巻でも細かく調べれば色々と微妙な修正があるのでしょう。
ここでは、私でも気付いた大きな修正点を一つ紹介しておきます。

単行本第3巻修正点

上が雑誌掲載時で、下が単行本第3巻188ページです。
ご覧の通り、雑誌では親の切った一筒を合わせ打ってオリていたのですが、単行本ではそれが六筒に変更されています。
次のコマ次のページも修正されていますね。細かいなぁ。

この修正は素晴らしい!

なぜなら、蒲原さんの手牌は下の通りなのです。
一筒一筒二筒二筒四筒六筒六筒七筒七筒八筒 ポン南南南横
蒲原さんはこの時南家なので、ダブ南混一は7700のイーシャンテン。
雑誌掲載時にも指摘しましたが、もし切られていたのが一筒だと蒲原さんはポンして四筒勝負でテンパイを取ることが出来るのです。
打っているのが私だったらたぶん鳴くでしょうね。
たしかに安牌が2枚出来たのは大きいですが、安牌がいつまでも続くとは限らないし、絶好の7700テンパイを見逃すのはさすがにヌルすぎると思いますから。

もっとも、一筒を鳴くのが絶対に正しい打ち筋というわけではありません。
点棒も平たいし確実にオリて失点を防ぐ方が大事、という人も居るかもしれません。
ただ、ここで大事なのは「今、論じるべきはそこではない」ということです。
「鎖子の親リーチに久が空テンリーチで追っ掛ける事により、親リーチだけなら蒲原さんが勝負してたろう七索を止めさせた」というのが本筋。
蒲原さんがポンテンを取れるというのは、この本筋に紛れ込むノイズなのです。
この一筒が六筒に修正されている事により、読者が「蒲原さんポンテン取れよ」というような余計な思考をすることが無くなり、「蒲原さんが七索を掴んでオリた」という行為が目立ってくるのです。

この闘牌へのこだわり。一般誌に掲載されている漫画とは思えませんね…。
いまだに同じ牌が5枚あるのは日常茶飯事の近代麻雀連載陣にも見習って欲しいくらいです。


このように麻雀漫画というのは、読み手に「麻雀」を伝えるのがとても難しいものです。
例えば野球漫画なら、誰がどんな事を考えて投げて誰がどう打ってどうなったか、というのは普通は読者に伝わります。
しかし、麻雀というのは知的ゲーム(しかも偶発性が異常に多い)であるために、キャラの思考や打ち筋、そして一番大事な「作者がその闘牌で何をしようとしているのか」が正しく伝わりづらかったりするのです。
中には、ちょっとしたミスのようなものがあると鬼の首を取ったように非難する人も。
しかし、上記の通り偶発性も多いゲームのため、「こう打つのが絶対に正しい」と言い切れる状況はけっこう少なかったりするから厄介です。

私が今までネット上などから散見してきた「咲 -Saki-」の闘牌への突っ込み・非難というのがいくつかあります。

1.単行本第2巻73ページ
予選での和の闘牌より。
一萬二萬二萬四萬五萬七萬八萬九萬三筒四筒五筒赤五筒六筒 ツモ五筒
ここで四-七筒が残り3枚しかないために一通目を残して六筒を切るのですが、会場の観衆と同じように「リードしてるんだから手広さを考えて一萬切りだろう」と言う人が居ました。
藤田さんがわざわざ解説してくれてるだろうに…。
まぁこういうことです。
自分なら大量リードしてるから一萬を切る、とかいう「お前の考え」なんてどーでもいいんですよ。


2.単行本第2巻82ページ
こちらも和の闘牌。
一萬一萬四萬六萬一筒三筒五筒五筒六筒七筒三索三索五索赤ドラ三筒 ツモ五萬
透華様が心の中で解説してくれてるのに、それでも「もしかしたら最後の二筒をツモるかもしれないので一筒を残した方が良い」とか。
えーと、これに関してはもう「ご愁傷様」としか言いようが無いかもw
三索を対子にしておけば、五六七索ツモの時に一萬対子落としでタンヤオへの渡りが打てますからね。
こんな所にまで突っ込みがあるのを見ると、「麻雀漫画ってのはたいへんだなぁ…」と思ってしまいますね。
最低限の雀力が無いと、正しい闘牌を読み解く事すら出来なかったりするのですから。


3.単行本第2巻39ページ
県大会予選の先鋒戦で、今宮女子のパイナップルみたいな髪型の門松さんが、「最速と呼ばれた私のスピードについてこれるかしら…!?」と言いながら第一打から親にダブ東を鳴かせるのはあり得ない、という指摘がありました。
えーと、ちょうど麻雀サイトの大御所「麻雀祭都」さんに、ちょうどいい記事があったので紹介しておきましょう。

(関連:「第1打に東を切ってみる」

「南家が第1打に東を切ったとき親が鳴くことができる確率は約1.03%」だそうです。
「最速」、つまり自分のテンパイ速度を最優先に考えると、門松さんが東を切るのはとても自然な事になりますね。
彼は、「自分なら第一打から東を切ったりしない」という主観によって上記のような指摘をしたようですが、斯様にそれが絶対に正しいわけではないのです。
そしてここでも「話の本筋」を持ち出しますが、この闘牌で見るべきはやはり「タコスが開局早々に4巡で18000を和了る」というタコスの東場での速さと強さでしょう。
門松さんは(顔からも分かるようにw)明らかな脇役なのです。
そんな脇役の闘牌の巧拙についていちいち気にする(しかもそれが確実な「正着」ではない)なんて、それこそ「漫画読み」としてどうなのよ?とかちょっとディスってみますw


4.単行本第2巻160ページ
京太郎が買ってきたタコスのおかげで元気を取り戻したタコスが2巡目で親リーチを掛ける場面です。
手牌はこう↓
一筒一筒五筒赤五筒八筒八筒二萬二萬九索九索北北發ドラ九索
これも1の指摘をした彼の弁ですが、「9600初牌發単騎リーチなんて見せられた日にゃ、どいつもこいつもロクに麻雀打ててない=闘牌描けてないと判断されてもしょうがない。」だそうです。
まぁそもそも9600ではなく12000なのですが、私だったら100回打ったら98回はリーチを掛けますねぇ。
目先の12000欲しさに2巡目という「対応しようがない早さ」で18000を確定させないなんて私には出来ないので。
そもそも、「2巡目から延々ツモ切りを続ける」ことと「リーチを隠れ蓑にどんな牌もツモ切りできる」+「6000点と裏ドラの上積み」−「リーチを掛けてテンパイを他家に教えるリスク」のどっちが優位かなんて誰にも分からないですよね。
アンケートをとってどちらが多数派かを調べたりはしません。そんなのはどうでもいいことなので。
ただ言えるのは、ここでも「話の本筋」はそこではありません。
見るべき部分は、「タコスが親ッパネ確定のリーチを掛けた事」ではなく、「ノッポが不可解な鳴きでタコスの親リーチを不発にした事」
タコスの掛けたリーチの是非(しかもこれまた明らかな「正解」は無い)を問うのはナンセンス。
こういう部分に「自分ならこう打つ」というのを持ち込んで突っ込んでいる人は、残念ながら麻雀漫画を読むのに向いていないと思います。
「ノーマーク爆牌党」だって「アカギ」だって「天」だって「むこうぶち」だって「哭きの竜」だって、麻雀漫画というのはヘンな闘牌だらけですからね。



みなさんは麻雀劇画の最高峰「天牌」は読んだ事があるでしょうか?
あそこでは常人には絶対に不可能な理外の闘牌が多数登場します。
麻雀漫画の闘牌に自分の打牌感覚を持ちこんで読む人は、第8巻の「そこに北はあるんだよ」という名言を名言と感じられないのではないかと心配です。
漫画っぽい言い方になってしまいますが、そこに北があるのが麻雀なのだと「理解する」のではなく「感じる」のが麻雀漫画を読むということだと思います。
麻雀という不確定要素の多いゲームに、「自分はこれが正しいと思う」という主観は持ち込まない方が「漫画を読む」上ではいいのではないでしょうか。
作者は貴方とは違った感覚で麻雀を捉えて描いているだろうし、そもそも貴方の感覚が正しくない場合もあるのだから。


(関連記事:麻雀漫画としての「咲 -Saki-」その2

いのけん at 00:00│はてなブックマーク - 麻雀漫画としての「咲 -Saki-」その3このエントリーをはてなブックマークに追加twitterでつぶやく麻雀漫画(咲-Saki-) 

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1. 麻雀ライターから見た「咲」3巻  [ 狐汁 ]   2007年11月26日 14:47
 このblogではアニメ・ゲーム関係を中心に取り上げてますが、実は麻雀関係でも幾らか物を書かせてもらってまして。「咲」に関して、「けしからん、ちちももももけしからん!」という言説は界隈にあふれていると思うので、麻雀、そして麻雀漫画としての「咲」について書きた...
2. 咲 -saki- 第3巻 発売祭の結果〜  [ おかるとのヲタク日記 ]   2007年11月28日 20:20
咲、恒例のアレ。 今回も、コンプリート者、いっぱいいらっしゃるようですね。 いのけんさんのコンプリート結果。 木本さんのコンプリート結果。 やはり、のどっちの下乳に眼が行ってしまいますねぇ(笑) アキバOSさんの記事などでも、3巻になって、いよいよ咲祭って...

この記事へのコメント

1. Posted by ませ   2007年11月25日 22:15
萌え話から一気に麻雀漫画の読み方になりましたねw
どうでもいいかもしれませんが、私は発タンキでリーチかけます
2. Posted by おかると   2007年11月25日 22:17
特典コンプリート、お疲れ様でした。しかも今回はマグマニが直前で情報公開という困ったちゃんなことをしてくれた中でですから。

さて、

>一筒を合わせ打ってオリていたのですが、単行本ではそれが六筒に変更されています

うひょー、さすがいのけんさん。チェック厳しい。実は私は見過ごしてました・・・未熟者です。
たぶん、この捨牌の変更に気がついている人は、日本全国でも極わずかでしょうね。そして、しっかり直しを入れてくる小林先生にも脱帽です。
3. Posted by キャプテン   2007年11月26日 00:53
3巻の10ぺージ目の、福路美穂子の頬にゴミ(?)のようなものがついていたけど、他の人は大丈夫?・・・・初版だけ?
4. Posted by     2007年11月26日 04:04
天鳳で安定R2000もない方が「最低限の雀力」とか言っちゃまずくないですか
5. Posted by 一般人   2007年11月26日 09:44
確かに、天牌レベルの闘牌を一般の人がどれだけ理解できるかというのは
むずかしい問題ですね。
6. Posted by     2007年11月26日 11:43
「俺ならこう打つ」と思いながら読むのは、麻雀漫画の読み方の一つと言えるのではないかと思うんですが。それとも読み方には「正解」があるのかな?
7. Posted by    2007年11月26日 12:04
>天鳳で安定R2000もない方が「最低限の雀力」とか言っちゃまずくないですか

本日最高のギャグ
8. Posted by カナブン   2007年11月26日 12:09
「俺ならこう打つ」って思いながら読むのはなんの問題もないんじゃないか

それを人に押し付けるなってことでしょ
9. Posted by     2007年11月26日 12:26
4は私だったら100回打ったら90回はリーチを掛けませんね。
6000点欲しさに1万2千点を捨てるようなマネは相当調子に乗ってないと…
あ、漫画ではなく麻雀の話です。
10. Posted by いのけん   2007年11月26日 12:41
全レスはめんどゲフンゲフン…たいへんなのでちょこちょこと。

>3巻の10ぺージ目
私のにもありました。ネット上の各所でも聞きましたし、たぶん初版全てにおこったミスではないかと…。

>安定R2000
絶望した!さりげに安定Rを自慢されたことに絶望した!
私が思う「最低限文化的な雀力」とは、上記のような一筒切りがおかしいと思わないくらい、という「ロンブー亮の歌唱力」くらいのものだと思ってくださいw

>カナブンさん
そうそう、そういうことですね。
そして、その「俺ならこう打つ」にばかり気をとられて話の本筋を見失ってちゃ本末転倒。
まずは漫画に描かれている闘牌を受け入れてしまった方が気が楽ですよ、ってのが私の意見かな。
11. Posted by とおりすがり   2007年11月26日 16:41
そういえば「和とキャッキャウフフ〜」の2頁後、スコアボードがきちんと「次鋒戦終了」に修正されていますね。

それにしても第16局以外では一言(しかも寝言)しか発しない主人公ってwww
12. Posted by キャプテン   2007年11月26日 20:01
↓初版でも、2chの掲示板では大丈夫な人とそうでない人がいるようです。
【小林立】咲-Saki-11巡目【ヤングガンガン】

とりあえず、不具合箇所と購入店を明記して郵便で出版社に送りました。
13. Posted by もののふ   2007年11月26日 20:59
むしろ3巻96Pの配牌5シャンテンの方が気になった人がここに。
話の流れには関わりないので、別に問題はないのですがw
14. Posted by キャプテン   2007年11月26日 21:35
池田のセリフが「2枚」になっているところは、「2校」の誤植でしょうか?
15. Posted by 平社員   2007年11月27日 16:01
>3巻の10ぺージ目
これに関しては自分もかなりがっかりしました。
おそらく、まわし始めのインキカスだと思うのですが、
現場の人間はこれにきずいても、所詮マンガだとして
製品として市場に出まわってしまう事がかなりあります。
黒ベタが紙粉で真っ白になって、さすがにこれはと意見しても
上司が「マンガならOKだ」と言われたときにはさすがに
へこみました。
16. Posted by ハルナ   2007年11月27日 19:55
得点、じゃなかった、特典と聞いてry
修正箇所、単なる読み専の自分には目からうろこでした…!すげえ!!
17. Posted by いのけん   2007年11月29日 22:25
>とおりすがりさん
麻雀漫画にはもっとひどい主人公がおってじゃな、大阪に向かったきりほとんど音沙汰の無いダメ主人公とかうわなにをするやめrftgyふじこ

>キャプテンさん
発行した地域とかなんでしょうかね?
私のは全部ほほになんか付いてました。あきらめました。
平社員さんの上司の方の命令は絶対ですw
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