近代麻雀漫画生活:「シノハユ」第100話［全中王者③］ブラボーな演出で王者決定！

2022年12月04日

「シノハユ」第100話［全中王者③］ブラボーな演出で王者決定！

2022年11月25日に月刊ビッグガンガン 2022 Vol.12が発売されています。「怜-Toki-」と「シノハユ」が続けて掲載されており、「怜-Toki-」の方ではかねてから咲-Saki-ファンの間で注目を集めていた話題の強キャラ・藤白七実の闘牌が描写されています。そっちはそっちで考察してみたいところですが、今回どうしても触れておきたいのは「シノハユ」の方なのです。

以下、最新話の内容を含むので、ともきーと同じくまだ読んでない人はご注意ください。

記念すべき第100話、そして全国中学生麻雀大会の個人戦決勝戦オーラスがとうとう決着！ということで、やっぱり慕ちゃんなんだよなぁ。

オーラスの白築慕さんの闘牌、他家の当たり牌を掴まされて掴まされて、それでも諦めずにどんどん手牌に吸収していきテンパり返す様はさながら「兎 -野性の闘牌-」の武田俊のようでした。そして、最後の和了牌は、得意の一索ではなく、カンチャンの「七萬」。

「白築ナナさんをこの手で取り戻す」という意味を込めて、ツモる直前に親子の思い出の見開きを挟むことで、

あえてツモった七萬は描かないという演出、あまりにも美し過ぎると思いませんか…？

私はそこそこ多くの麻雀漫画を読んできており、勝利を決める和了の演出というのもその数だけいろいろ見てきています。「リスキーエッジ」の最終決戦のように和了牌のみを見開き2ページに描いたものや、「ムダヅモ無き改革」ファイナルライジングサンのような見開き2ページ×13枚＝26ページという連載1話分を丸々使った究極の演出は麻雀漫画の演出のインフレの限界点として語り草になっています。「むこうぶち」は逆に「御無礼」を様々なシチュエーションで魅せるために、ノーテン御無礼とかそういう地味だったり特殊な状況でも見せ場を作る演出をいろいろやっています。

でも、「和了ったのに和了牌を見せない」という演出をしている作品はちょっとすぐには思い浮かばないですね。それくらい、「麻雀漫画の見せ場というのは和了牌（と手牌）によって構成されているもの」という大前提がこれまで無意識に共有されてきたものです。

「シノハユ」もその例に漏れず、それどころか一索という物語上でも関わるキー牌があることもあってむしろ既存の麻雀漫画以上に、時には嶺岸信明先生ばりにダイナミックな見開きの使い方をしたりして、勝利を決める和了牌を描いていた印象があります。

ナナさんとの見開きの直後にでも、バン！とツモった七萬を描くような普通の演出もできたのだろうけど、

「七萬（≒母親の白築ナナさん）は山には残り1枚（≒世界にたった1人）」ということで、ナナさんだけを描いてあえて七萬は描かなかったという小林立先生の麻雀漫画の演出への挑戦、私には伝わりましたよ……。

そういえば、「麻雀漫画の見せ場というのは和了牌（と手牌）によって構成されているもの」という常識を覆した演出は、皆さんもよく知るであろう「咲-Saki-阿知賀編」でもありましたね。第20局[軌跡]にて、山の深い所を支配するという高鴨穏乃の能力で大星淡のカン裏モロ乗りが阻害されたことにより、「和了ったライバルが勝利を確信してめくった裏ドラ表示牌」によって勝利が決まるという、麻雀漫画の中でも類を見ない非常に稀有な演出がされていました。

特徴的な打ち筋を表現するために非現実的とも思えるほど確率の低い事象を当然のように狙って起こすことのできる「能力」の存在や、やたらと露出が多いキャラも多いいわゆる「萌え」的な絵柄や、アニメなどから入った旧来の麻雀漫画ファンとは一線を画すライトなファンも多いことなどから、連載開始から17年経ってもいまだに軽んじられがちな「咲-Saki-」シリーズの闘牌や麻雀描写ですが、もう一度改めて言っておきたいです。小林立先生は、麻雀漫画家として超一流である！と。

アレ、言っていいですか？　小さいフォントで言うので。

ブラボー！！！！！！！

マジで小林立ブラボー！

【関連リンク】
・長友佑都のファットアダプト食事法　カラダを劇的に変える、28日間プログラム (幻冬舎単行本) Kindle版
・月刊ビッグガンガン 2022 Vol.12
・咲-Saki- 23巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)
・咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A(9) (ガンガンコミックス)
・シノハユ 15巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックスSUPER)
・怜-Toki- 9巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックス)
・染谷まこの雀荘メシ 3巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)