アート見て歩き〜ディズニー美術〜
今日は東山のKUNST ARZT で、同ギャラリー主宰で現代美術家の岡本光博さんの企画による「ディズニー美術」を見てきました。
出展作家は入江早耶、岡本光博、ピルビ・タカラ、高須健市、福田美蘭。テキストは作田知樹。
展示のコンセプトは、世界的な大企業であり、ミッキーマウスをはじめとする多くのデザインキャラクターの著作権を保有するウォルト・ディズニー社のイメージを使用したアートを通じて、私たちに著作権とアートの問題、そしてアートの存在意義を提示するものです。
現代アートが時代を映し出す鏡だとすれば、世に氾濫するイメージを作品の中に取り入れるのはごく自然な成り行きではあります。が、果たしてそれはどこまで許されるものなのでしょうか? アーチストによる商標イメージの使用問題は、昨今では非常に大きなテーマですが、その線引きは未だ明確ではありません。
アーチスト側からすれば、作品は巷に氾濫しているようなコピー商品とは別の真摯な芸術表現、自由な表現として認められるべきである、という考えがあります。一方、そのイメージから生まれる利益を守る側からすれば、相手がアーチストであろうが芸術だろうが、そんなことは関係なく、著作権への侵害に当たるという考え方があります。
その辺りの問題については、同ギャラリーのホームページに家本真実さんが具体例を挙げて分かりやすく解説されているので、私がここで浅薄な見解を述べるのは差し控えますが、作品を見ていて思ったのは、ディズニーを単なる消費対象として見るのではなく、そのイメージの始原を探ったり、そこから新たな着想を得て、創意工夫を凝らしてみせてくれる、アーティストの仕事の奥深さでした。
一方的に、当たり前のように洗脳され、知らぬ間にこびりついたイメージに、アートは新しい光を与え、発見を促し、固定観念に囚われた脳を活性化してくれます。
私たちの生活を支配していく大企業の戦略の一方に、こうしたアーチストたちの自由で創造的な営みがあるというのは、とても健全で、幸せなことなのではないでしょうか?
夢と希望と正義を世界中に売ってきたディズニーワールドの、圧倒的なイメージに向き合うアーチストたち。その切り口の巧みさ、愛憎半ばした思い、機知に富んだ遊び心、さらにそこからこだましている現代社会への警告…、鋭利な感性と創意に満ちた意欲的な企画だと思いました。
(会期は5月10日(日)まで)
http://www.kunstarzt.com/top/top.htm
福田美蘭 誰ヶ袖図…ディズニーの衣装を日本画に挿入した…だけではない、風刺を超えて戦慄する世界。
岡本光博 Mickey humanoid(手前)とSUHAMA / Recycling kills the copyright(奥)…ミッキーマウスのぬいぐるみの首を切断してがま口に。
Pilvi Takara(ピルビ・タカラ) Real Snow White…白雪姫になってディズニーランドの前で子供たちの人気者になっていたら職員に連行される。
高須健一 ミッキーマウス (商標登録に関する書類付)… 購入すると延々と更新する登録料の支払いもついてくるかも?
入江早耶 ディズニーダスト…ディズニー絵本のキャラクターを消しゴムで消して、なんとその消しカスで立体化。