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2015年09月

アート見て歩き〜岡本光博 個展〜

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アート見て歩き
岡本光博 個展
LIFEjackets
KUNST ARZT


花田恵理さんの個展が中止になり、急遽同ギャラリーオーナーでアーチストの岡本光博さんの個展になった。

若く才能溢れた作家の卵を多数拾い上げ、世の中に発信しているKUNST ARZTのオーナーは、視野が広く、公正で、アーチストのために出来ることを常に考える人だと思う。

そんな岡本さんだが、アーチストとしての顔はまた別で、世の中の権力や不正、不条理を告発し、作品にその思いをぶつける姿勢は、さながら戦士のようでもある。

東日本大震災の後、岡本さんはLIFEjacketsを作り始めた。空前の被害の大きさに、保険会社がその機能を果たすことができない状況。(多額の保険金が支払われていない)。命の重さをお金に換算してしまう資本主義への皮肉と怒りを込めた作品群だ。

保険会社のロゴマークを全体に縫い付けた、(あるいは印刷した)ライフジャケットを作り、それを着て、原発のある敦賀湾で溺れる岡本さん。ギャラリーではそのビデオ映像が流れている。体当たりというか、シンプルかつ果敢な抗議の姿で、ひとりのアーチストが何をもって戦えるのかという姿を象徴的に表している。

また、保険会社が契約者などにプレゼントしているキャラクターグッズを縫い合わせて作ったライフジャケットは、物質主義によって彩られた社会と人の命との奇妙な共存、あるいは対立を直感的に感じさせる。


岡本さんの作品の特徴のひとつに、そのコンセプトが重層的に加算され、パワーアップするというものがある。彼の生来の霊感の強さが生んだ、スピリチュアルなものへの偏愛も、それに寄与している。アートこそが、目に見えず、触れることのできない人間のスピリチュアルな側面を表現できるものだという確信を持っている。そんな岡本さんらしいライフジャケットも、今回実物を見ることができる。


これは守護霊に守られた岡本さんのライフジャケットだ。その守護霊とは、小さな頃に飼っていたウサギと金魚と、イタコをしていたおじいちゃん、そして成仏できずに彷徨っていた遠いご先祖様である。企業のロゴに埋め尽くされたライフジャケットに対抗して、これこそが私のライフジャケットだと言わんばかりの作品である。

先に岡本さんは戦うアーチストだと言ったが、それはアーチストとしての特権意識や理論主義とは真逆の、もっと大衆的でヒューマンなアーチストとしての姿勢のことだ。その偏りのない明晰な知性が生み出すユーモアも、岡本作品らしさだと思う。コンテンポラリーアートと聞くと、思わず身構えてしまう人さえ、あっと驚かせ、笑わせ、作品に引き込んでゆく。
どんなに過激な作品にも、人を和ませる仕掛けを必ず用意してくれている。そんなサービス精神旺盛なところに、あるいは彼の素顔が垣間見えているのかもしれない。

アート見て歩き〜矢野洋輔 個展〜

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アート見て歩き
矢野洋輔 個展
落ちている宝石
Gallery Morning

昨年夏以来となる、ギャラリーモーニングの矢野洋輔さんの個展。京都市立芸術大学大学院で漆工を学びつつ、作品は素木の質感と模様などを活かしたオブジェが中心だ。

昨年興味を引かれた浅彫りのレリーフはなく、コンセプチュアルな思考も影を潜め、オブジェとしての嗜好性と、つくりのディテールにこだわりを強く感じる。

展示作品は、天然の木目が効果的に表情をつくる素朴で愛らしい鳥の作品と、フォルムが滑らかに仕上げられた少し抽象的な静物がある。
矢野さんは絵画も好きとのことで、それが二番目のものによくあらわれている。


こちらの作品は、静物を絵画に置き換えたものを彫刻しているそうだ。なるほど、物体をまるっと造形するのではなく、一度平面に置き換えたものを三次元に映しとってゆくので、他の類に見られない輪郭のまろやかさや陰影が見て取れる。

ミケランジェロは石の中に彫るべき姿を見ることができたという。彼の絵画はそれゆえに立体的で硬質だ。矢野さんの場合はその逆で、絵画的視点から木を彫ってゆく。矢野作品から漂ってくるみずみずしさ、柔らかさの秘密は、そんなところにあるのかも知れない。


http://gallerymorningkyoto.com


山内雅裕 「ATRIUM」

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山内雅裕 個展「ATRIUM」

植物をテーマにしつつ、目指してきたのは平面における独自の空間表現でした。

理想のフォルムを追求するための夥しいスケッチとドローイングによって、自ずと鍛錬され、研ぎ澄まされた線が、今回、平面の中にまったく新しい奥行きを作り上げました。

絵画の大きな要素である色彩を削ぎ落としてまで追い求めた独特の遠近感。ある時は透けて見えるような、またある時は空間にふっと突然生まれ出てきたかのような、そして広さと深さ双方に無限の領域を抱え込んだ山内パースペクティブ。

山内さんはこれをもって来年、さらなる大作に挑む意欲を示しています。
個展「ATRIUM」は、10年後にはきっと、彼の大きな飛躍のきっかけになった個展であったと語り継がれるでしょう。

画像はいずれも「Plants Drawing on Leaf Layers」より


いのくま亭 年内の予定

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現在山内雅裕の個展「ATRIUM」が好評のギャラリーですが、来月以降の企画も見逃せないものばかりです。


10月は井上裕葵 個展「アクセスワール」

10月3日(土)〜11月1日(日)まで開催します。平面と立体を響かせ記憶と視覚とを放射するかっこいい展示になると思います。




11月4日(水)〜29日(日)までは山原晶子の個展です。いのくま亭では1年前以来二度目の個展です。独特の空間造形と詩情に満ちた美しい世界が楽しみです。


そして今年最後の企画展、12月は繁田友香の個展。モノノカタチをストイックに追求し続ける彼女の、抽象と具象の間を自由に行き来するマルチな作品が楽しみです。

アート見て歩き 水野悠衣 個展

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アート見て歩き
水野悠衣 個展
〜Somewhere〜
KUNST ARZT

水野悠衣さんの今回の個展では、昨年一点だけ展示されていた、写真を使用した作品が発展したカタチで発表されています。

それは月を想起させる金色のコースターに、都会の夜景を撮影した写真をパンチして型抜きした小さな◯をコラージュしたものでした。


同じ夜のイメージとはいえ、コースターに、細かく分解された写真を盛り付けてしまうという大胆さは、水野さんが、その画業の中で追求して来た抽象化の先にあるものでしょうか?

水野さんは、絵画においてはギリギリまで対象の無駄を省いて行きますが、その禁欲的な外観は、見るものに様々なイメージを想起させる多様性を孕んでいます。

それはまた、対象を固定された時空から自在に移動させることが出来るということを、証明しているようにも感じられます。

夜景のイメージはバラバラにされることでほとんど原型をとどめず、その由来から引き離されています。一方で普通はただの金色のコースターというものが、水野さんにとっては月。その二つの結びつきは、ある意味必然であり、また、偶然でもあるのです。

つまり作品は動機としてはアーチストの中での必然性以外に何も持たないにもかかわらず、作者の意図をはるかに越えて、存在のトンネルをポコっとくぐり抜けてきたもののように唐突で、意外な結末をさらけ出しているのです。
トレーに、都会の景色をバラバラにしたものが貼り付けられた作品を眺めながら、これはなんだろう?としばしば考えさせられました。そして頭に浮かぶのは「アート」という言葉だけなのでした。

http://www.kunstarzt.com/top/top.htm

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