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2016年02月

アート見て歩き 『MOTEL』天牛美矢子&長谷川由貴

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アート見て歩き
『MOTEL』天牛美矢子&長谷川由貴
KUNST ARZT

天牛美矢子さんと長谷川由貴さんが昨年から制作している「MOTEL」という冊子。私は今回初めて手にしてみました。これまで3冊作られているそれらは、絵と短い物語によって構成された、興味深い世界でした。

今回のギャラリー展示では、本では別々に展開している二人の好奇心をシンクロさせて、共に空間を演出したとのこと。

テーマは旅。旅先、港町、簡素なモーテル…という設定。港や海を想起させる絵や写真、刺繍、網などが飾られ、ベッドやモーテルのネオン看板もあります。

バランス良く配置されたそれらは、見ているうちに、自ずと何かの物語を想起させます。そこには、無意識のうちにこちらの想像力のスイッチを入れてくれるような心地よさがあります。

在廊していた天牛さんにお話を伺ったところ、今回のインスタレーションは、彼女の表現のレイヤーの最上部なのだと言っていて、興味深かったです。
誰もが直感的に知り得るシンプルで具体的な情報によって、鑑賞者に旅先で抱く感覚を想起させ、自由な想像力を抱かせることに成功している、そんな肩の凝らないインスタレーション。

でも、そんなシンプルな外観のひとつひとつの裏側には、天牛さんと長谷川さんの、めくるめく想像力が蓄積されているのは明らかで、さらにその下には、神秘的で運命的なものが、たくさん眠っているのだろうと思うと、またひとつひとつの展示物をじっくりと眺めたくなります。展示の見えない隙間の中に、大きな秘密を託された何かが、ひっそりと忍ばされているのではないかと…。

そんな好奇心、あるいはまた冒険心について思いを巡らせているうちに、私はふと、言葉のひとつひとつのわかりやすさを超えて、超絶的な象徴世界を作り上げた、あのマラルメの詩を思い出しました。




や海を想起させる絵や写真、刺繍、網などが飾られ、ベッドやモーテルのネオン看板もあります。
意識のうちにこちらの想像力のスイッチを入れてくれるような心地よさ。
示の見えない隙間の中に、大きな暗示と運命的な何かが、ひっそりと忍ばされているのかも。

アート見て歩き 町田藻映子 個展

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町田藻映子 個展
ギャラリー知

町田藻映子さんは京都市立芸術大の日本画専攻を昨年卒業。今回が初の個展ということです。

卒業後、自分の作品に合った展示場所を探していて、ギャラリー知を選んだとのこと。まだキャリアの浅い作家がこのギャラリーの広大な空間を支配するのは、なかなか難しそうなのですが、見応えのある大作を中心にしっかりとまとめられており、充実した展示になっていました。

今回の個展の主なモチーフは、「鉱石」。積み重なり、内なる光によって輝くように見えるそれらは、堅固であるとともに、時として透明な生き物のような生命感も漂わせています。

画面はところどころゴツゴツと盛り上がり、視覚による触覚にも訴えてくる仕上がり。岩絵の具、墨、胡粉などの使用にもマンネリ感はなく、新しい表現への意欲が満ちています。一つの絵の中に様々な技法をふんだんに、そして丹念に盛り込んだ作りのよさ、金箔の使用にも工夫があって、魅力的でした。

正面のコーナーに吊るされた大作は、鍾乳洞の中のようにも、植物の根っ子のようにも見えます。作品としての物質性と、絵画ならではのイリュージョンが交錯することで、鑑賞者に思いがけない発見を促しているようで、見飽きなかったです。

ご案内の中に、「絵画制作の主題に体を通してアプローチするため、コンテンポラリーダンスと舞踏を学ぶ」とありますが、その辺りの身体性に、町田さんの絵画作品が持つ生命力の秘密があるのかもしれません。

20日(土)の18:00からはダンスパフォーマンスが行われます。町田さんがあの空間の中でどのような舞を見せるのか、とても楽しみです。

入口右手の作品、色数は少ないのに華やかで力強い

多彩な技法を織り交ぜ、枠にとらわれない新鮮な世界を作り上げている



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