
(株)アセットビルドの猪俣です。
ブログはすっかりお休みしていて主にFBでいろいろ発信しているのですが、最近ご質問の多い「金利上昇が不動産投資に与える影響」についてのちょっと長めのレポートを書いたので・・・

2025年1月24日の日銀金融政策決定会合で政策金利を0.25%引き上げて0.5%とする決定がなされたことを受けて、「金利が上がるから不動産投資ムリなんじゃないか?」「金利が上がるから物件が安くなるのを待った方がいいんじゃないか?」といった動揺が投資家の皆さんの間に広がっているようです。
先日、ご参加の皆様から好評をいただいたセミナー「2025年の不動産投資」でも、この問題について「個人的にはこう考えています」という私見と市場ではどう受け入れられているのかという内容のお話しをさせていただきましたので、こちらでも簡単に解説しますね。
基本的には・・・
【金利は「お金のレンタル料」なので、融資期間中にお金の価値が下がるインフレ局面では当然金利をより多くもらわないとお金を貸す側にとって割が合わなくなる】というのが大前提です。
従って、金利上昇=インフレ局面ということであれば、
1.物価上昇→所得上昇→賃料上昇
2.賃料上昇に加えてキャップレート低下→価格上昇※
※価格V=NOI(賃料上昇に伴い増加します)÷(Rf長期国債利回り+Rp景況感や立地・物件・運営によるリスクプレミアム-gNOIの成長率)。NOIの上昇は同時にgも押し下げますのでRfの上昇を超える影響を与える価格決定要因になります。
3.建築コストを押し上げるので着工数が減少
4.着工数が減少すると在庫数が減少するのでさらに賃料上昇
・・・というスパイラルになります。ただし、ここで注意しないといけないのは“人口移動がプラスの地域かマイナスの地域か”ということによって大きな差がでるということです。
要は、着工数の減少を上回る人口流出がある地域ではインフレ局面にもかかわらず賃料上昇の恩恵を受けられないうえに空室や、維持管理コスト上昇の影響をモロに受ける可能性が高いということです。
東京都の単身世帯割合は51.6%(国立社会保障・人口問題研究所)で、30歳未満の単身世帯率は84.6%(令和5年度住宅・土地統計調査)。30歳未満の単身世帯持家率はわずか3.4%なので、このゾーンのみなさんが入居者需要のボリュームゾーンを占めると考えられます。21大都市の2022年から2024年の3年間における転入超過を住民基本台帳から、また賃貸住宅の着工数を国交省の住宅着工統計から拾うと以下のような数字になります。
2-30代の転入超過数 貸家の着工数
東京特別区 +22万7,138人 +17万8,633戸
札幌市 + 7,799人 + 2万 387戸
仙台市 + 610人 + 1万8,697戸
さいたま市 + 1万7,049人
千葉市 + 9,083人 + 1万1,259戸
横浜市 + 2万8,825人
+ 3万3,444戸
川崎市 + 2万8,408人
+ 1万7,224戸
相模原市 + 3,040人 + 5,533戸
新潟市 ▲ 2,488人 + 3,723戸
静岡市 ▲ 2,584人 + 5,161戸
浜松市 ▲ 691人 + 5,128戸
名古屋市 + 1万 853人
+ 3万2,597戸
京都市 ▲ 7,432人 + 1万5,257戸
大阪市 + 4万3,581人
+ 5万9,259戸
堺 市 ▲
854人 + 7,557戸
神戸市 ▲ 9,005人 + 8,598戸
岡山市 ▲ 6,367人 + 6,490戸
広島市 ▲ 4,830人 + 1万3,371戸
北九州市 ▲ 7,220人 + 8,891戸
福岡市 + 1万3,445人
+ 2万8,491戸
熊本市 + 192人 + 8,487戸
国立社会保障・人口問題研究所では2050年には我が国の全世帯の7分の1が東京都に居住という推計が出ていますが、人口と密接な関係にある雇用をみた場合、全国の上場企業の51.4%が集中し、会社数においても2位の大阪府(312,643社)を大きく引き離す843,109社を擁する東京都に一極集中するのは致し方ないかなと思うわけです。
「金利上昇で価格が下がるかもしれないから様子を見よう」というケースの試算もしてみました(東京オリンピックが終わったら物件が値下がりするからそれまで様子を見ようという人もいらっしゃいましたね)。
設定条件:物件1億円(フルローン1.0%35年返済)+諸費用750万円(自己資金)。表面利回り6.3%(年間賃料630万円)・税引前CF180万円(自己資本利回りCCR=24%)
ケース1(5年後に金利1.0%→2.0%)
当初の返済額28万2286円→5年目からの返済額32万4395円(+4万2109円/月なので10戸の場合は戸あたり約4,200円/月賃料UPすればOK)
また、借入残高は当初1億円→5年後8,780万円(-約1,220万円)、税引前キャッシュフローの累計は+900万円なので5年間の資本増加は+2,120万円ということになります。5年待てば1億円の物件が約2割下がって買えるのでは?ということであればいいかもしれませんね。
同様に、5年後ではなく10年後ということで計算すると
当初の返済額28万2286円→10年目からの返済額31万7467円(+3万5181円/月なので10戸の場合は戸あたり約3,500円/月賃料UPすればOK)
また、借入残高は当初1億円→10年後7,490万円(-約2,510万円)、税引前キャッシュフローの累計は+1,800万円なので10年間の資本増加は+4,320万円ということになります。
ちなみに、累計CFの1,800万円を繰上げ返済に充てると借入残高は7,490万円→5,690万円になって、返済額も31万7467円→24万1173円と、当初返済額よりも少なくなります。
ちなみに、WACC(加重平均資本コスト)※をキャップレートの設定に応用すると
※LTV×金利×(1-税率)=a (1-LTV)×期待するCCR=b a+b=WACC
CCRを10%としたときのキャップレートは金利1%でLTV80%の場合は2.56%、金利2%でLTV90%の場合は2.26%と金利だけではなくLTV(=融資額÷物件価格)の影響が大きいという事がわかります。金利ある世界は金融機関にとって融資姿勢を積極的にする世界でもありますので、この点も見ておく必要があります。
ところでファンドや機関投資家のみなさんはこの金利上昇局面をどう見ているのでしょう。
・突発的かつ急激な利上げが行われる可能性は低く、2025年の不動産投資市場はスローダウンすることなく取引が活発化し堅調に推移するだろう。(JLLジョン・ラング・ラサール)
・さらなる追加利上げ観測もあるなかで、「東京圏では金利の引き上げが受け入れられている」とする金融機関もある(帝国データバンク)
・「日本銀行が利上げを決めた際に購入を一時見合わせる雰囲気があったものの、(急速な金利上昇は考えづらいと)様子見はなくなった」(信義房屋不動産(台北))
・政策金利はアップテンポで駆け上がらず「今年9月の引き上げで0.75%にした後は26年末まで据え置く」(モルガンスタンレーMUFG証券)など引き続き変動型の住宅ローン金利は低水準が続くとし、日本経済の潜在成長率から判断すると、長期金利も2%を超えるような水準を予測する専門家は乏しく、日米金融政策の動向によっては、むしろ26年末には0.65%まで下がるとの指摘も見られ、世界的に最も低い金利環境が続く予想もある。(住宅新報)
・一連の金融政策の変更によって、不動産投資市場にどのような影響があったと思いますか。「不動産投資市場に影響はなく、変化は生じていない:67.8%」(JREI日本不動産研究所第51回不動産投資家調査)
・一連の金融政策の変更によって、御社の不動産投融資の姿勢にどのような変化が生じましたか。「不動産投資投融資に影響はなく、投資の姿勢に変化は生じていない:73.4%」(JREI日本不動産研究所第51回不動産投資家調査)
まずはご参考まで。
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