2009年11月12日

ニュータイプ・サラリーマンの誕生 〜『私をスキーに連れてって』

私をスキーに連れてって [DVD]私をスキーに連れてって [DVD]
出演:原田知世
販売元:ポニーキャニオン
発売日:2003-11-19
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


以下のアマゾンレビューを読めば、『私をスキーに連れてって』(1987)の歴史的価値が分かる。

実際、その時の場内の観客たちの受けようは凄まじく、エンドロールが始まったら、拍手が巻き起こった程だったのだ。

若い方たちには及びもつかない事だと思うが、その当時の日本映画は、まだ70年代の"政治&運動"のイデオロギーを引きずって、反社会、反体制的で暗い、重い、激しいテーマの作品が主流だった。それだけに、明朗健全で能天気な今作は、硬派な映画ジャーナリズムからは叩かれたが、時代の流れに乗って、観客からは大喝采を浴びた。その後、この映画の影響で、フジテレビはトレンディ・ドラマでブームを作り、映画界に於いても、明るいエンターテイメントの時代が到来した。

ただの楽しい娯楽映画にとどまらず、日本映画界にとって、大きな転換となったエポック・メーキングな作品なのだ。


この映画の評価をストーリーの完成度という視点で論じても、たぶんあまり意味は無い。煎じ詰めれば単なるボーイ・ミーツ・ガールなラブコメであり、記憶に残るのはスキーシーンとユーミン(松任谷由美)の曲ばかり。軽い。骨と骨の間の柔らかい肉を刺すような会話は一切交わされない。でもそれは、監督の馬場康夫自身が自覚していることだ。彼はなにか意味のあることをこの映画で伝えたいわけではなかったんだと思う。

かつて実験アニメーションの巨匠、ノーマン・マクラレンは「私にとって、すべての映画は一種のダンスである。」と語った。彼が創造した、ストーリーはなにも残らないけれど面白い映像群。それは、たとえば無数の人が踊り続けるダンスホール、色とりどりの熱帯魚がゆらゆらと泳ぐ水槽、そういった風景を眺めるのと同様の快楽を提供してくれる。『私をスキーに連れてって』も、そういう<ダンス>のような映画だった。

スキーが大好きな主人公(三上博史)は、商社の軽金属部に配属されているにもかかわらず、仕事はいつも上の空のダメ社員。そのかわり隣のスポーツ部で扱っているスキー・ブランドの仕事に勝手に顔を突っ込み、イベントを企画し、趣味と仕事を一本化しようとする。あとはひたすら社外の仲間とスキー三昧。つまりこの主人公は、組織の壁から軽やかに躍り出てゲレンデで舞うという、二重の意味でダンスを披露したわけだ。あとはもうユーミンの曲が流れればそれでいい。
 
1970年代以降、サラリーマンを描くコンテンツは自虐的な社畜エンターテイメントが主流となり、「理想のサラリーマン像」は失われた。あの課長島耕作ですら、1980年代半ばまではションボリ冴えない中年管理職として描かれた。『私をスキーに連れてって』の主人公は、そうした70年代的サラリーマン像に新しい理想像を上書きしたサラリーマンのニュータイプ(=新人類)となった。会社よりも仲間、仕事よりも遊び、そしてブランド消費。踊らされるより踊りたい。劇中でそんな主人公に反感を抱く一部のスポーツ部社員(竹中直人)が、縦割りの組織に縛られて踊れないオールドタイプとして対照的に配置され、ニュータイプは強烈なコントラストで浮かび上がる。

あの頃、確かにサラリーマンは輝いていた。しかし結局、バブルの崩壊とともに再びションボリ冴えない存在に戻り、この映画も下の世代に語り継がれないまま、トレンディドラマと共に風化していった。もしあのままバブルが続いていたら、サラリーマンは踊り続けたんだろうか。


insighter at 02:38|PermalinkComments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ!サラリーマン | 映画

2009年11月07日

今週のガセネタ

■coccoはユタ(沖縄のシャーマン)の家系の生まれらしい。

■沖縄の方言は台湾でも通じるものが多いらしい。

■石原伸晃はフラダンスが好きらしい。


insighter at 22:23|PermalinkComments(1)TrackBack(0)この記事をクリップ!ガセネタ 

2009年10月26日

1970年代のサラリーマン・ディストピア(5) 〜『団塊の世代』 堺屋太一

団塊の世代 (文春文庫)団塊の世代 (文春文庫)
著者:堺屋 太一
販売元:文藝春秋
発売日:2005-04
おすすめ度:3.5
クチコミを見る


1975-76年に『現代』誌に連載された、ご存じ堺屋太一の出世作。超有名な本なんだけど恥ずかしながら初めて読んだ。

戦後生まれのロンゲの若者たちがスクラム組んでフォークソング歌いながら日本を変えていく、みたいな暑苦しい話なのかなと勝手に想像していたら全然違って、統計データをもとに日本終了を予言した鬱展開の未来予測小説だった。

物語は4部構成で、それぞれ舞台は80年代前半、80年代後半、90年代半ば、そして2000年。各話の主人公たちは皆1947年から1949年に生まれた「団塊の世代」。4つの物語は完全に独立していて、主人公たちは全く別の会社や組織に所属する人物で、全く別の人生を生きている。それでも人口のボリュームゾーンであるがゆえに、時代が変わっても直面する悩みの根っこは共通している。4部を通して浮かび上がるのは少子高齢化による日本民族の黄昏だ。

堺屋太一なんて過去の人だと思っていたので、これまで興味が持てなかった。でもこの小説は、なんでこれが直木賞を取れなかったんだろうというくらい面白い。特にグッときたのが第3話の「ミドル・バーゲンセール」。

46歳という働き盛りの中間管理職の主人公(銀行員)が、若くて美人で賢い部下の女性銀行員の脚を眺めながら「一緒に出張にいきたいなー」みたいな微笑ましい妄想を膨らませているうちに、その女性が考案した画期的なリストラ案にいつのまにか巻き込まれている、という中年エレジー。

終身雇用や年功序列はいずれ崩壊するという予測のもとに、飽和する管理職、企業の人員整理、働きがいの喪失といったサラリーマンの諸問題が今読んでも全く違和感なく描かれている。他人事とは思えない。島耕作でいえば『部長 島耕作』あたりの時代の話なんだろうけど、部長島耕作よりもずっとリアリティがある。

これだけ団塊世代に欝な未来を見せておきながら、2005年に発売されたこの文庫版では「団塊世代の老後は明るい!」と鼓舞するデータ・パートが書き加えられているけれど、どうにも空虚に感じられてしまう。まるでリアリティがない。どうせなら、子供世代に明るい未来を残せなかった団塊世代の悲惨な最期を描いて第5部として加えたほうが、小説として完結したように思う。

1977年に発売された『出世って何だ』(毎日新聞社編)という本によると、当時のニューファミリー(ほぼイコール団塊世代)にとってのサラリーマンの理想像は、松下幸之助でも本田宗一郎でもなく、堺屋太一と深田祐介だったらしい。暗い時代の若いサラリーマンたちは、希望を「企業人」ではなく「企業に所属しながら自分ブランドを確立する個人」に託していた。今はサラリーマンの理想像って誰だろう。サラリーマンを辞めて(あるいはドロップアウトして)日本の企業を恨みがましく批判する、そんな人ばかりが名を成しているように見える現状はなにかさみしい。

insighter at 08:53|PermalinkComments(2)TrackBack(0)この記事をクリップ!サラリーマン 

2009年10月16日

1970年代のサラリーマン・ディストピア(4) 〜『商社の赤い花』 諸星大二郎


夢みる機械 (ジャンプスーパーコミックス)夢みる機械 (ジャンプスーパーコミックス)
著者:諸星 大二郎
販売元:集英社
発売日:1993-08
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


近未来、なにもない荒涼とした惑星の駐在員となった若きエリート商社マン。会社の期待にこたえようと資源開発や農地開拓を試みるも、ことごとく失敗する。何も無い土地に、何故会社は自分を派遣したのか。自分の使命はいったい何なのか。なにも分からないままにモクモクと働き続ける彼に、ゆっくりと破滅が訪れる。

1979年にヤングジャンプで発表された、悲しくも美しい短編。不毛地帯で身を粉にして働く商社マンという設定は、山崎豊子の『不毛地帯』からヒントを得たのかもしれない。会社のために働き、会社に忠誠を尽くせば幸せになれる、そう信じて疑わない極端な会社家族主義が文字通り遺伝子レベルにまで組み込まれてしまったサラリーマンが荒野に倒れるとき、その顔がわずかに微笑んでいるのが印象的だ。



insighter at 01:39|PermalinkComments(0)TrackBack(1)この記事をクリップ!サラリーマン 

2009年10月12日

今週のガセネタ

■弘兼憲史は『黄昏流星群』のラブシーンを描く際に熟女クラブを参考にしているらしい。

■メルマガ「週刊ビジスタニュース」に「グラビアアイドルの明日はどっちだ?」という駄文を寄稿しました。

■マイコミジャーナルのコラム「アイドル☆ベンチマーク」を更新しました。今回のアイドルはラブプラスの姉ヶ崎寧々。




insighter at 12:34|PermalinkComments(1)TrackBack(0)この記事をクリップ!ガセネタ 

2009年10月06日

メトリック来日公演

10月7日(水)はメトリックの来日公演に行く。超楽しみ。









insighter at 03:09|PermalinkComments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ!音楽 

2009年10月05日

アルゼンチンのコカ・コーラゼロのCM

アルゼンチンのコカ・コーラゼロのCMに、ハリーハウゼン映画で有名なサイクロプスのパチものが出てた。



insighter at 08:37|PermalinkComments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ!広告 

2009年10月04日

1970年代のサラリーマン・ディストピア(3) 〜『会社の幽霊』 諸星大二郎


不安の立像 (ジャンプスーパーコミックス)不安の立像 (ジャンプスーパーコミックス)
著者:諸星 大二郎
販売元:集英社
発売日:1993-05
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


諸星大二郎はそのキャリアの初期、1970年代〜1980年代にサラリーマンを主人公とした短編漫画をいくつも描いていた。そのどれもが藤子・F・不二雄の短編SFを発酵させたような濃厚な味わいがあって面白い。中でも1982年のビジネスジャンプで発表された『会社の幽霊』は、恐ろしくも笑える秀逸な社会風刺作品だ。

営業部門の移転によってほとんど人がいなくなった巨大な本社ビルに書類を届けに来た若いサラリーマン。迷宮のようなオフィスを彷徨った末に社長室に辿りつき、社長から「開かずの会長室」への言付けを頼まれる。会長室に行くと、そこでは死んだはずの代々の会長や社長があることを企んでいた・・・。

高度経済成長が終わっても高度経済成長という夢しか見られないバブル景気前の日本企業を、「会社は生き物であり、社員はその生き物の一部である」というメタファーを通して巧みに喜劇化。生き物だから会社も幽霊化する、という発想もダイナミックで、1970年代に源氏鶏太が書いた幽霊サラリーマン小説の良質なバージョンアップになっている。上場企業は拡大する夢しか見られないので、いまでも十分に通用するコンテンツだと思う。



insighter at 11:43|PermalinkComments(3)TrackBack(0)この記事をクリップ!サラリーマン 

2009年09月30日

2009夏のパチ怪獣まつり 9

ウルトラマンに登場したアボラスを三つ目にしたパチ怪獣、その名もミボラ。ガーガメル製。マルサン/ブルマァク製のアボラス人形を模した塗装なので、パッと見は1970年代の玩具に見えるけれど、実は今年作られたものだ。ボディにガーガメルのザゴランを流用したお遊び的な作品ながら、このカラーリングに惚れた。ガーガメルにはもっとこうしたスタンダードサイズのパチ怪獣をじゃんじゃん作ってほしい。

夏も終わってしまったので、今年のパチ怪獣祭りもこれにて終了。また来年。

mibora

insighter at 00:41|PermalinkComments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ!パチもの 

今週のガセネタ

■「ライバル」の語源はラテン語でいうところの「リバー」。つまり川の水源確保を競う相手のことだったらしい。

■『釣りバカ日誌20ファイナル』には800人のサラリーマンがエキストラ参加しているらしい。

■マイコミジャーナルのアイドルコラムを更新。今回は「ももいろクローバー」について書きました。

insighter at 00:04|PermalinkComments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ!ガセネタ