インサイター

insight : the ability to understand and realize what people or situations are really like

2009年03月

社長戦隊モリシゲンジャー 〜『続・社長忍法帖』

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シブがき隊の久々の新曲が売れているのかと思ったら侍戦隊シンケンジャーの主題歌だった。

侍とくれば忍者でしょう、ということで森繁の社長シリーズ『社長忍法帖』を紹介したいんだけど、いかんせん資料がほとんどないしもっと言うと見たこともない。とりあえず続編のプレスシートを入手したので貼っておく。忍法ウルトラC調とか忍法逆手十字懸垂とか忍法逆転レシーブとか忍法値上がり封じとか忍法無芸大食とかが繰り広げられるらしい。ベ平連みたいな市民運動が盛り上がる中で、普通のサラリーマンは忍者ごっこを楽しんでいた。1965年の作品。

続社長忍法帖

『モテキ』って面白いね

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『イブニング』で連載されている久保ミツロウの『モテキ』って面白いね。

(前夜に泥酔しながらカラオケで岡村康幸の「どぉなっちゃってんだよ」とザ・ブームの「中央線」を絶唱した眼鏡主人公に対して元ヤンの元同級生女性が)「そもそもなんだ?昨日のあの態度。三十過ぎた男がいつまでも声に出して自己否定垂れ流してる場合か?何も面白くねーよ。お前そのままじゃメディアで言われてる"草食系男子”とかいう型にハメられて去勢されたオス犬扱いされ続けるぞ?踊らされたいか?メディアダンサーか?ダンサーインザダークか?女から言い寄られなきゃ好きになれないのか?何じゃそりゃ。モテ期だって浮かれる前に本気で好きな女さがせよ。そんで本気でぶつかれって。」

『銭ゲバ』テレビドラマ版とは何だったのか

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『銭ゲバ』の原作漫画で貧困そのものがテーマとなるのは初期の頃だけで、風太郎はとんとん拍子で大企業の社長の座を獲得し、極貧生活から解放される。しかし金と権力を得た後も心の平安を得ることが出来ず、無理目の美女を金で落としたり政治家を目指したりする。

原作の終盤で、風太郎は「人間の幸福について」というお題で原稿を依頼された際、自分が築けたかもしれなかった「平凡なサラリーマン家庭」を思い浮かべてしまい、愕然とする。赤ちょうちんで飲んだり、愛する妻と子供を連れてマイカーに乗ってピクニックに出かける、そんなささいなことが幸福だとは、いまさら信じたくはなかったのだ。

だからそんな自分に耐えられなくなり自殺する。自決シーンの表情は明らかに絶望の顔だ。読者に対する捨てぜりふ的な、遺書めいたメッセージも残されるけれど、読者としてはモヤモヤしつつも「悪事の限りを尽くした銭の亡者が、最後は後悔して自決してよかった。平凡な自分のサラリーマン生活のほうが幸せなんだ」と思える構造になっている。

テレビドラマ版は、派遣切り問題とシンクロさせようとした等の設定の違いは多々あれど、基本的な物語構造は原作を踏襲していた。だから最終回で「もしも風太郎がサラリーマンだったら」が延々と描かれる場面は想定の範囲内だった。風太郎は幸福なサラリーマン生活を妄想した後に自らの人生を後悔し、見苦しく泣き叫びながら爆死する。

でもその後、最後の数分間が想定外だった。突如爆発シーンが逆回転して場面が巻き戻されると、泣き喚いていたそれまでとは一変して、ダイナマイトの爆発を冷静に待つ風太郎がそこにいる。そして原作の捨てぜりふを淡々とつぶやきながら死を待っている。ぜんぜん後悔していない!むしろ勝ち誇っている!なにこの上から目線!

つまり、「平凡で幸福なサラリーマン生活という妄想シーン」は視聴者による自己満足的な願望であり、風太郎はそんなことは少しも幸福だとは思っていなかった、ということになってしまったのだ。これだと原作とは全く違う読後感になる。池田小学校事件の宅間被告が反省しないまま死刑を執行された、あの後味の悪い感じを思い出した。

個人的には、希望の見えない時代にわずかでも光を与えるような展開を期待したんだけれど、あのラスト。幸せのモデルケースが妄想ですら描けなくなってしまった時代の始まり、ということでなければいいんだけど。


銭ゲバ 上 (1) (幻冬舎文庫 し 20-4)銭ゲバ 上 (1) (幻冬舎文庫 し 20-4)
著者:ジョージ秋山
販売元:幻冬舎
発売日:2007-10
おすすめ度:4.5
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銭ゲバ 下 (2) (幻冬舎文庫 し 20-5)銭ゲバ 下 (2) (幻冬舎文庫 し 20-5)
著者:ジョージ秋山
販売元:幻冬舎
発売日:2007-10
おすすめ度:4.5
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只野仁とは何だったのか

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結局『特命係長 只野仁』シーズン4の視聴率は低調のまま終わった。最終回も9.7%と振るわない。これは明らかにマーケティングの失敗だろう。このまま只野を終わらせてはいけない。そう思って携帯サイト「モバイルブロス」に只野仁論を強引に書いた。

モバイルブロス

今週のガセネタ

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■3月14日の日経新聞のコラム「春秋」が面白かった。大藪春彦の「蘇る金狼」とユニコーンの「蘇る勤労」を比較した現代社会論。あれを書いたのは石鍋仁美タンに違いない。

■昨日代々木公園を歩いていたら、某新人グラビアアイドルの撮影会に遭遇。すれ違うときに「よく雑誌で見てます」と声をかけたら感激され、向こうから握手を求められる。

失恋サラリーマン 〜『正社員が没落する』 堤未果・湯浅誠

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正社員が没落する  ――「貧困スパイラル」を止めろ! (角川oneテーマ21)正社員が没落する ――「貧困スパイラル」を止めろ! (角川oneテーマ21)
著者:湯浅 誠
販売元:角川グループパブリッシング
発売日:2009-03-10
おすすめ度:4.0
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「私は会社と恋愛をしたい」と言ったのはサラリーマン金太郎だったっけ。

湯浅 新しい恋に向かわないといけないと私は言っているんですけど(笑)。日本のサラリーマンは企業と長いあいだ、恋愛関係にあったんです。永遠に楽しい時間が続くことを疑いもしなかった。企業とそんな恋愛関係にあったのが、あるとき、企業が去っちゃったわけです。もう社員の生活の面倒は見ないという話になってしまったのに、サラリーマンのほうは、まだつきあっているつもりでいる。

 それ、悲しい妄想ですよね。

湯浅 妄想なんですよ。現実を受け入れて新しい恋に目覚めないといけないんです。

これは実感としてなんか分かるなあ。

ポップでパンクなサラリーマン映画の傑作 〜『江分利満氏の優雅な生活』

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出演:小林桂樹
販売元:東宝
発売日:2006-02-24
おすすめ度:5.0
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森繁のサラリーマン喜劇と同時代に作られたのに、主人公も森繁映画でおなじみの小林桂樹なのに、同じ東宝なのに、もう全然別モノ。もうフランク・シナトラとシド・ビシャスくらい違う。こんなポップでパンクなサラリーマン映画が45年以上前に作られていたなんて、今まで誰も教えてくれなかった。とにかく面白い。

「才能がある人間が生きるのは何でもないことなんだよ。宮本武蔵なんてちっとも偉くないよ。アイツは強かったんだから。ほんとに偉いのは一生懸命生きている奴だよ。江分利みたいな奴だよ」という独白からも分かるように、これは最大公約数の平均的なサラリーマンを称える「平凡万歳」系の物語だ。それなのにその表現手法が全然平凡じゃない。アニメあり、合成あり、舞台演出あり、シュールあり。多彩で非凡な演出で各場面が手際よくポンポンと繋がっていくので、隣人と普通に歩いているだけのシーンでも全く退屈することがない。

もっとも、この小気味良いリズムは物語の終盤で突然断ち切られる。主人公が酔っ払いながら戦争トークを延々と続けるからだ。こういう場面を見ると、戦中派サラリーマンがモーレツに働いたのは「戦争で生き延びたことへの負い目」があったからなのではないかと思えてしまうんだけど、どうなんだろう。じゃあ今の時代に我々がモーレツに働く動機はいったいどこまであるんだろう、とか。

経済白書に「もはや戦後ではない」と書かれたのは1956年なのに、この映画が公開された1963年、サラリーマンの戦後はまだ本当は終わってなんかいなかったのだ。

昭和サラリーマンのモニュメント 〜『わたしの人生案内』 源氏鶏太

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わたしの人生案内 (中公文庫)わたしの人生案内 (中公文庫)
著者:源氏 鶏太
販売元:中央公論新社
発売日:2004-11
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戦後のサラリーマン系エンターテイメントは全てこの人から始まった。いわばサラリーマン界の手塚治虫。源氏鶏太がいなければ東宝のサラリーマン喜劇も課長島耕作も存在しなかったかもしれない。

にもかかわらず、現在入手できる源氏鶏太作品の数はメタルスライム並に少ない。amazonで見ても絶版のオンパレード。つい最近まで大御所扱いされていたような気がするのに、もはや消滅寸前。同時代性が強すぎたが故に、時代とともに変容した平成サラリーマンにとっては「賞味期限切れ」にみえてしまったということなのか。

この『わたしの人生案内』は、1975年〜1982年というキャリアの末期に書かれた自叙伝的なエッセイを再編集した文庫本で、いま読むことができる数少ない源氏本のひとつだ。特に鋭いことが書いてあるわけではないけれど、この本に書かれている高度経済成長時代の、多くの不満を抱えつつ仕事に生きたサラリーマンの姿は、なんだかとっても愛おしい。先輩、お疲れ様でした、と言いたくなる。出世競争という名の実力主義は昔だって存在したし、最大のストレスが「人間関係」だったというのは今も昔も変わらない。

社員旅行先の温泉で部下が上司の背中を流すなんて、そんな漫画みたいな話が昔は本当にあったんだな。

THE SHOW MUST GO ON 〜『中春こまわり君』山上たつひこ

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中春こまわり君 (ビッグコミックススペシャル)
著者:山上 たつひこ
販売元:小学館
発売日:2009-01
おすすめ度:5.0
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1970年代に一世を風靡した人気ギャグ漫画の後日譚。小学生だったこまわり君は妻子持ちの中年サラリーマンとなり、ツッコミ役だった西城君は無表情で淡々とした大人になり、ジュンはダメンズウォーカーになり、あべ先生は痛風になっているけれど、哀愁漂う枯れた作品というわけではなく、華やかで詩的で十分に面白い。こまわり君にさほど思い入れがない自分でもかなり笑えた。

中年になったこまわり君は、動物変化を頻繁に繰り返したり息子に山田家伝統猫式算数を教えたりして、「遊び続ける子供」としての変態的キャラクターを色濃く残してはいるものの、子供時代の定番ギャグは意識的に封印し、上司から与えられた仕事をこなし、仕事帰りには同僚としんみり酒を飲む。

子供のまま大人になるということ。ギャグの合間に見え隠れするその微妙なバランスは、いくつかの死のイメージを経由して、最終的に平凡な大人の日常に回収されていく。これもひとつのサラリーマン賛歌なのかもしれないけれど、子供時代を知っているだけに、何だかずいぶんと遠くまで来てしまったような気にさせられる。

あの頃サラリーマンは兵隊さんだった 〜『社長太平記』

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社長太平記 [DVD]社長太平記 [DVD]
出演:森繁久弥
販売元:東宝ビデオ
発売日:2005-02-25
おすすめ度:4.5
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1950年代から1960年代にかけて大量に制作された東宝のサラリーマン喜劇=「社長」シリーズのひとつ。これは1959年の作品で、海軍時代の上官と部下が会社で立場を逆転させて働いている、という設定。冒頭からいきなり太平洋戦争の記録映像なのでビックリさせられる。

軍事用語がたびたび使われたり、海軍コスプレ居酒屋が出てきたりするあたり、高度経済成長を支えた企業戦士たちが文字通りもともと戦士だった、という事実を改めて思い知らされる。戦後まだ14年しか経っていなかったというのに、日本はこんなに明るく、日本人はこんなに無邪気で、戦争をギャグに出来るくらいに立ち直っていた。そして森繁久弥はアドリブでセクハラしまくっていた。
Profile
真実一郎
心に茨を持つリーマン。吐き気がするほどロマンチスト。好きな言葉は「巨悪も美女も眠らせない!」。

サラリーマン漫画の戦後史 (新書y 240)
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