インサイター

insight : the ability to understand and realize what people or situations are really like

2011年11月

【書評】『アラサーちゃん』(峰なゆか)を読んで仕事が上手くいった

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アラサーちゃん (ダ・ヴィンチブックス)
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3年ほど前、『テレビブロス』のブロガー紹介コーナー「ネット探偵団」に僕が紹介されたとき、編集部の人に「最近注目しているブログはありますか」と問われ、AV女優の峰なゆかさんのブログが滅法面白い、と答えたところ、次号で早速彼女が「ネット探偵団」で紹介されていた。

その後、驚くことに彼女からメールを頂いた。僕のことを編集部が伝えてくれたようで、お礼のメールだった。せっかく連絡が取れるのであれば、ぜひ一度インタビューをしてみたい。そう思って、勇気をだして彼女の(当時の)所属事務所に電話した。まだ彼女はバリバリの現役AV女優だったので、その事務所ということは、『新宿スワン』に出てくるような人ばかりに違いないと思い、ドキドキしながら電話で筋を通したのを覚えている。

そして実現したインタビューがコレだった。いま読み返しても面白い。お互い緊張してほとんどしゃべることが出来ず、かなりの部分が後のメール交換で補正されているということは誰にも内緒だ。

 峰なゆかインタビュー(2008年5月29日)
 

彼女が本気で文章を書いたら数年で芥川賞とか取っちゃうんじゃないのか、と思っていたけれど、インタビューを読み直すと、マンガを描きたいと最初から言っていたんだな。

というわけで、峰なゆかさんの最初の著作はマンガということになった。この作品は凡百の「あるあるネタ」でもなければ、奇をてらった「面白体験ネタ」でもない。これは優れてユニバーサルな人間洞察エンターテイメントだと思う。こうしてマンガに描かれて初めて発見できた女性心理がいくつもあったので、おもわず仕事の企画書で引用したら企画書の説得力が増した(実話)。マーケティングとかに携わっている人は読むといいと思うんだな。あと、色使いが素敵。

というわけで『アラサーちゃん』、おすすめです。今後はマンガやコラムだけでなく小説も書いてビッグになって欲しい。


いい大人の『ふぞろいの林檎たち』

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1980年代から1990年代にかけて放送された、日本テレビ史に残る傑作ドラマ『ふぞろいの林檎たち』。その主要キャストだった時任三郎と柳沢慎吾、そして中井貴一まで起用して、まるで「ふぞろい」後日談のようなストーリーを描いて話題になったCMシリーズ「いい大人の、モバゲー。」は、今年の春頃に放映された第13話「バッティングセンター篇」で終わってしまったんだろうか。

配送センターで相馬課長にイビられ続けていた仲手川(中井貴一)を国際的なエリート・ビジネスマンとして登場させたあたり、このCMの制作者たちは「ふぞろい」を真似たいのか真似たくないのか、リスペクトしているのかしていないのか、さっぱり分からなかった。それでも「ふぞろい」世代としては続きが気になってしまう。正確に言うと最重要キャラの石原真理子がいつ登場するのか気になっていた。

彼女が2006年に発表した暴露本『ふぞろいな秘密』では、中井貴一と時任三郎の双方と当時肉体関係があったことが明かされている(柳沢慎吾にはヤラせてあげなかったとのこと)。そんな彼女がモバゲーCMに登場すれば、PR効果は抜群だろう。

「ふぞろい」といえば、今年元旦の朝日新聞に興味深い記事があった。早稲田大学の岡室美奈子教授が「ふぞろい」を今の学生に見せたところ、「恋愛ばかりで全然共感出来ない」というような反応があったというのだ。学生たちにしてみたら、「いまは就職活動に追われて恋愛どころではない」ということなのだろうし、あるいは「ネットの普及によって今の若者は恋愛以外にも承認回路がある」ということなのかもしれない。

ただ、この学生たちの反応を鵜呑みにはしたくない。「ふぞろい」は「恋愛ばかりを描いたドラマ」なんかでは全然なかったからだ。

誰もが不完全(ふぞろい)なために100%の承認なんて得られなくて胸を痛める、そうした現実を受け入れた上で、いかにして胸を張って社会で生きていくか。そんな「ふぞろい」の普遍的なテーマを大学生が読み取れなかったのであれば、それは恋愛シーンだけを抜粋して見せられていたから、という可能性が高い。「ふぞろい」を偽装して恋愛ネタばかり描いているモバゲーCMの影響もあるだろう。

そんなこんなで正月早々憤っていたところ、偶然にも同じ時期にTBSで『ふぞろいの林檎たち掘戮再放送されていたので、1991年にリアルタイムで見て以来、久しぶりに鑑賞した。

「ふぞろい」シリーズは、登場人物たちの絆が強かった機奮慇源代)や供平憩社員時代)と比べて、皆が別々のコミュニティで生き始めるようになる中年時代の靴鉢犬蓮∧語に求心力が無くなるためか視聴率的に苦戦し、ファンからの評価も高くなかった。自分も靴諒映当時はかなりの違和感を抱いてしまい、どうにもハマれなかったのを覚えている。

当時感じた違和感は、柄本明が演じた門脇という人物の存在に尽きる。晴江(石原真理子)の嫌味な成金旦那として靴妨修譴震舅討蓮△修譴泙任離螢▲襪膿祐嵬あふれる繊細な「ふぞろい」登場人物たちとは全く異なる大げさでコミカルな演技で、極端に戯画化された悪役キャラクターとして描かれ、気鉢兇巴曚れていた「ふぞろい」の空気をぶち壊していた。

当時はそれが鬱陶しくて、靴麓最垪遒世鳩茲瓩弔韻討い拭糞嗚椶了嚇賃整譴皚靴留藹个砲鷲塰を感じているという噂だ)。でも、失われた20年を経た今見ると分かる。強欲な消費至上主義者の門脇は、バブル景気そのものの直喩であり、朴訥とした山田太一ワールドにとっての異物だからこそ、リアルな人格ではなく漫画チックなキャラクター人格として描かざるをえなかったのだ。実際、バブルというお祭り騒ぎは今思うと多分に漫画的だった。

物語のラストで、門脇は自分の際限ない支配欲を満たす象徴(晴江)に逃げられてプライドが決壊し、それぞれ挫折を抱えたレギュラー陣の輪の中にションボリと参加させてもらう。西寺(柳沢慎吾)の母が経営するさびれたラーメン屋で、疑似共同体のゆるい繋がりに皆が互いに希望を託す、このラストの静かな宴会にはグッときた。「ふぞろい」靴放映された1991年という年は、まさにバブルがピークから崩壊へと移行した年だった。この傷だらけのエンディングは、この後に訪れるしんどい時代の幕開けを、当時の他のどんなドラマよりも見事に示唆していたわけだ。当時よりも今見た方が、その価値が分かる作品だ。DVD化されていないのが惜しまれる。

石原真理子は2010年3月15日のブログで、晴江というキャラクターの言葉も行動も大嫌いで、自分と晴江を同一視する人が多いのが我慢できなかった、と告白している。続編を引き受ける意思はもうなさそうだ、その他もろもろ、「ふぞろい」関与者たちの人間関係や年齢を考えると、今後続編が作られることはまず無いだろう。

だからモバゲーCMの幻影などに惑わされず、もう感傷的に「ふぞろい」の思い出に浸るのはやめるべき時期にきているのだと思う。今の自分はもう「ふぞろい」靴虜△涼膽蠕遒箚篥帖併任三郎)よりも遥かにオッサンなのだから。

それでも、映画『ソーシャル・ネットワーク』を見ながらふと思った。会社の部下に教えられてフェースブックを始めた仲手川が、十年以上連絡が無く音信不通になっていた海外在住の晴江のアカウントを見つけ、逡巡の末に「友達になる」ボタンを静かにクリックする。そんなフェースブックのCMが見てみたい…。


ふぞろいの林檎たちII DVD-BOX 5巻セット
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真実一郎
心に茨を持つリーマン。吐き気がするほどロマンチスト。好きな言葉は「巨悪も美女も眠らせない!」。

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