インサイター

insight : the ability to understand and realize what people or situations are really like

2014年09月

【サラリーマンガ四季報】 『愛ぬすびと』藤子不二雄A

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藤子不二雄Aファンの間で幻の名作と語り継がれていた本作。もともと1973年に「女性セブン」に連載されていたもので、単行本は長らく入手困難だったけれど、それが昨年ついに復刻。税込で3000円を超える衝撃プライスではあるものの、それだけの価値は確実にある、ズシンとくる抒情派ピカレスクだ。

旅行会社に勤めるサラリーマンの愛誠(あい まこと)は、サイドワークと称して結婚詐欺を重ねる若きイケメン。言葉巧みに女性に近づき、次々と金を巻き上げていく。しかしそれは心臓の重い病を抱える愛妻、優子の高額な入院費を稼ぐためだった。優子を思うあまり悪に手を染める誠の詐欺ライフは順調に見えたが……。一話完結のスタイルで進む本作は、ラストの数話で一気に物語が動き、誠は悲劇的な結末を迎えることになる。

この作品が発表された1973年は、第一次オイルショックが起きた年だった。戦後の輝かしい高度経済成長は完全に行き詰まり、サラリーマンたちは停滞した会社生活に息苦しさを感じていた。本作を時代の鏡として見たてるならば、病床の妻は、衰弱してしまった日本株式会社の比喩であり、その再生に奔走する誠は日本の企業戦士の象徴だ。終身雇用という固い純愛で結ばれた会社を延命させるため、まるで公害のように他者に犠牲を強いることも辞さないその姿勢は、皮肉にも会社=家族=妻の寿命を縮めてしまう。

70年代前半を覆う喪失感を見事に凝縮した、阿久悠の歌のような読後感が切ない。夢は砕けて夢と知り、愛は破れて愛と知り……。

2014夏のパチ怪獣まつり 「ウルトラサターン」

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1970年に発売されたマルサンのオリジナルヒーロー「ウルトラサターン」。同時期に発売された兄弟分的存在の「ウルトラエース」のほうが主役的な位置づけだけれど、当時のヘッダーイラストには何故かこのウルトラサターンのほうが描かれている。

エジプトのスフィンクスをモチーフにした顔立ち、真っ赤に血塗られた口元、そして腹に巻かれた四発のロケット弾……。ヒーローというよりアラブの自爆テロリスト。しかしテロリスト側の視点に立てばこれもまたヒーローだと解釈できる、という時代を我々は生きている。

今年はほとんど紹介できなかったけれど、また来年のパチ怪獣まつりにご期待ください。

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真実一郎
心に茨を持つリーマン。吐き気がするほどロマンチスト。好きな言葉は「巨悪も美女も眠らせない!」。

サラリーマン漫画の戦後史 (新書y 240)
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