バブル崩壊を発端とする平成不況に苛まれた90年代、日本の男たちは絶望し、完全に自信を喪失していた。その結果生じた「引きこもり/心理主義」的モードは、「デカい乳に優しく包まれ、完全に承認されたい/癒されたい」という退行願望を満たす「デカイ系」を生み出した。つまり巨乳ブームだ。

94年から開始された缶コーヒー「ジョージア」の「やすらぎキャンペーン」が巨乳モデルの飯島直子を起用することで社会現象化すると、優香や乙葉、青木裕子、黒田美礼といった巨乳が続々と登場。グラビア界に「デカイ系」という妄想力が広く共有されていく。雑誌のグラビアをビキニで飾り、知名度を高めることでバラエティ番組やCM、ドラマの仕事を獲得し、水着を卒業するという巨乳グラビアアイドルのサクセスモデルは、この1990年代後半に確立された。

しかしDカップやEカップが当たり前になるに従って巨乳インフレーションが発生し、「乳さえデカければ誰でもいい」という巨乳の粗製乱造を招く。やがて旧イエローキャブが「最終兵器」として投入したIカップで103cmの根本はるみが支持を得られなかったことで「デカイ系」の限界が明らかになる。

結局「デカイ系」とは90年代のひきこもり的感性のもっとも安易な形での産物であり、男たちの成熟忌避的な思考停止を招くものでしかなかった。90年代のグラビア界をリードした旧イエローキャブの野田社長は、そのデカイ系的方法論から脱却出来なかった結果、MEGUMI以降はグラビアアイドルのスターを生み出すことが出来ていない。

ゼロ年代になると、小泉純一郎によるネオリベラリズム的な構造改革路線、それにともなう格差社会意識の浸透などによって、引きこもっていては生き残れないという、ある種の「サヴァイヴ感」が社会に広く共有され始める。そこで台頭したのが、巨乳ではないが故に「デカイ系」を否定する形で現れた小倉優子と若槻千夏だった。

小倉優子が演じる「空想としてのお姫様キャラ」は、純潔/純粋という「アイドル幻想」が失われた状況を受け入れた上で、生き残るために敢えて選択されたベタなアイドル像であり、若槻千夏が演じる「ぶっちゃけキャラ」は、相手を傷つけることになっても対象にコミットしないと生き残れないという「サヴァイヴ感」に突き動かされたベタな反アイドル像である。

この両者は、それぞれ「アイドル」という「大きな物語」が喪失したポストモダン状況において、敢えて「小さな物語」としてのキャラを「決断主義」的に選択することで、グラビア界をサヴァイヴすることに成功したといえる。

小倉優子が開拓したベタなアイドル像の追求は、森下悠里の躍進によって2008年にその臨界点を迎えることになる。エロゲーの登場人物のような非現実的プロポーション、リアルドールのような表情、完璧なポージング、そして処女宣言。二次元キャラの処女性すら不確かになってしまった時代にあって、男がアイドルに望む願望を見事に全て纏ったその存在は、アイドルのアンドロイド=「アイドロイド」とでも言うべきフィクションの域に達している。

しかしリアルとバーチャルの境界を限りなく曖昧にする彼女の方法論は、グラビアアイドルたちに固有であったはずの「不完全性という魅力」を否定しかねない危険性を孕んでおり、グラビアの豊かな多様性を保証する妄想力とは言い難い。

一方で若槻千夏による反アイドル像の追求は、グラビアアイドルによる「ぶっちゃけバトルロワイアル」を巻き起こし、グラビアの品格をはからずも貶めることになった。このモードは小向美奈子によるグラビア界の内幕暴露という自爆テロ的な行為を誘発してしまう。実際のところ小向発言の真偽のほどは定かではなく、そもそも彼女自身の過去にこそ多くの疑惑がかけられていたものの、これによってグラビアアイドルに対して妄想する余地が大きく瓦解してしまったことは否めない。

それでは今後、グラビアはいかにしてアイドロイド化や言葉の暴力を回避しつつ、魅力的なスターを輩出することが出来るのだろうか。

いまや出版不況で雑誌の廃刊が相次ぎ、グラビアのページ数は減少する一方だ。バラエティ番組も、かつてグラビアアイドルが占めたポジションはおバカタレントやオカマタレントが奪取してしまい、グラビアアイドルが活躍出来る場は非常に限定的になっている。それどころか、MUTEKIという芸能人限定のAVメーカー(擬似という話もある)の登場、あるいは「おねがい!マスカット」(テレビ東京)のようにグラビアアイドルがAV女優と等価に扱われる深夜番組の登場によって、グラビアがAVへの通過点という「ディストピア」になりかねない状況だ。

グラビアアイドルを取り巻く環境はかつてないほどに厳しい。そうした中でもデカイ系や決断主義を乗り越える「新しい妄想力」を感じさせるグラビアアイドルたちが登場することを祈るばかりだ。


1位 原幹恵

hara

過去のグラビアアイドルたちの良いパーツばかりを合体させたような、キン肉マンでいうところの悪魔将軍的なボスキャラ。そんなゴージャスな肉体の持ち主が、オスカーという超一流事務所に所属しながら着エロ一歩手前のハードコアな水着ばかり着るという、まるで藤子F不二雄が『快楽天』にエロマンガを描くが如き奇跡に我々は立ち会っている。


2位 滝沢乃南

takizawa

2008年はコンビニ雑誌の表紙を幾度となく飾り、久しぶりに写真集も発売、遂には「Perfumeに対するグラビア界からの回答」と言うべきフルアルバムまで発表。活動歴6年目にして突然全盛期を迎えるという、グラビア史上類を見ない演歌的なブレイクを果たした。グラビアクイーンにならなくてもオリコン1位にならなくても「小さな成熟」に満ちた彼女の人生に教えられるものは多い。


3位 杉本有美

sugimoto

『炎神戦隊ゴーオンジャー』のゴーオンシルバーとして2008年に大躍進を遂げた正統派の健康美人。色気という点ではまだ物足りないが、太ももだけなら文句なくNo.1。彼女が及川奈央らと組んで番組中で結成したアイドルグループ「G3プリンセス」は反響が大きかったようで、次回の戦隊シリーズでも女性メンバーの歌手デビュー企画が継承されるという噂だ。


4位 スザンヌ 

suzannu

いまだに「巨乳はバカである」という都市伝説的な仮説を信じる輩は少なくないけれど、巨乳でないのにおバカであるスザンヌは「乳の大きさと知能に相関性は無い」ということを証明したといえる。巨乳のかわりに見事な巨尻を持つおバカな彼女は、終わりなき競争を強いられる成果主義社会に舞い降りた「癒し」として発見されたのだ。


5位 美人過ぎる市議

市議

いまや話題を後援会会長のほうにすっかり持っていかれた感があるけれど、ビジュアル的に「かたせ梨乃」の系譜を継ぐ彼女は確かに美人過ぎる。もともと女教師や婦人警官といった「権力側の美女」というのはさまざまな妄想の泉であり、その中でも市議というのは希少価値が高いというのに、そんな希少な存在である彼女が水着グラビアを披露するという奇跡に我々は立ち会っている。


6位 橘麗美

tachibana

いまや日本で生まれる赤ちゃんの30人に1人はハーフ、という空前の国際結婚時代。橘麗美の母親もスペイン人ということで、彼女にはラテン感覚の極小紐ビキニがよく似合う。オバマ新大統領が停滞したアメリカを「チェンジ」しようとしているように、グラビア界も彼女のようなハーフが救世主となって改革をもたらすに違いない。


7位 卯月麻衣

mai

まるでルノワールの絵画のような後期印象派ボディがインパクト大。「水沢アキの再来」という、ロスジェネ世代には全く理解できないであろう最大級の賛辞を篠山紀信も送っている。正統派アイドルとしてのポテンシャルを十分に秘めていながら、ブログで網タイツに対するフェティッシュな嗜好を隠さずにさらけ出す孤高の存在だ。


8位 西田麻衣

nishida

層が薄かったR15-U20世代に現れた久々の本格派。ニコニコ動画方面では「ラー油姫」「ラードル」として大人気を博している(その経緯は各自ネットで調べるように)。覚えにくい顔をしているのが弱点と言えば弱点。


9位 稲垣実花

inagaki

元新体操選手ということで、その柔軟性を大いにアピールするグラビアを得意としている。同じく新体操選手だった山崎真美や中村果生莉が活動の場を女優業にシフトしつつある今、彼女にしかできないグラビアを追及してみてほしい。

 
10位 紗綾

saaya

「Fカップ小学生」としてアジアを騒がせた彼女も、ジュニアタレントとしては珍しく劣化しないまま15歳を迎えた。完成されているようで完成されていないのが彼女の魅力なので、ここは敢えて10年後の彼女に期待したい。