2006年05月

2006年05月30日

後藤正治著。新潮社。
以前『咬ませ犬』(これも以前紹介した。バックナンバーを参照)で山本一夫氏を書いたことのある、いぶし銀の人物を書くのが得意な人が、あの山野井泰史氏を書いた話。他の4編の短編で村田瓦、森安敏明、井村雅代、谷川浩司と、逆境から這い上がった人物を書いているが、それと同様手短に彼の生涯が書かれている。どちらかといえば若い頃からの登山の目覚めから一流になる歩みがあっさりしすぎている気がするが、登山の主流をきちんと把握していることは確か。集めたネタもきちんと有効に使っている。
今まであまり伝えられていなかった話は少ないが、言葉の端端に見える山に対する山野井さんの考えは面白いし、山をやっていない人が「こういう人が本物なんだ」と思ってもらうことは非常に有意義。そういう人を対象に書かれたもの(元々は「アエラ」で書かれた)としてはいい作品。
他の人物伝も非常に面白い。理不尽がまかり通り、心ならずも敗北を味わう人が多い世の中だけに、この5人の逆境から這い上がった不屈者の生き方は勇気づけられる。さあ皆さん、我々も下を向かず、顔を上げて生きていこう。

(21:33)