23日、『Der Spiegel』は、ドイツ連邦情報局(BND)がアメリカ国家安全保障局(NSA)の要求に応じて、ヨーロッパの企業を標的とした情報収集活動を行ない、その情報をNSAに提供していたと報じた。
同誌の記事によると、NSAは、調べてほしい人物や組織に関わる携帯電話の番号やIPアドレスなどをBNDに提示し、それを受けて、BNDが通信上のデータから検索し、情報を集めていたという。標的となった企業には、ヨーロッパの航空宇宙大手、エアバス・グループ(European Aeronautic Defense and Space)も含まれており、検索の照会は、4万件以上にも上るとのことである。
以前からアメリカは、通信上のデータ収集について、テロ対策上、必要であると説明してきた。だが、実態として、その目的から逸脱した監視活動が行なわれていたことは、すでに多くのメディアによって報じられてきたところである。今回の件もまた、報道された内容が事実であるとすれば、本来、テロ対策を目的として行なわれるべき、通信上のデータ収集が、経済的な関心にもとづいたものになっていたという点で、明らかな逸脱行為と言わざるを得ないだろう。
また、ドイツ国内では、『Der Spiegel』の報道を受けて、BNDがNSAに協力し、ドイツも含めた、ヨーロッパの企業に関する情報を収集していたことについて、野党を中心として大きな反発が広がっている。
たとえば、左翼党のグレゴール・ギジ(Gregor Gysi)議員団長は、BNDとNSAの協力関係について、「アメリカに合わせていればいいという考え方」をやめるべきだと訴えているほか、同党のベルント・リークシンガー(Bernd Riexinger)代表は、BNDのゲルハルト・シンドラー(Gerhard Schindler)長官に対して、責任をとって辞任すべきだと主張している。
さらに、「緑の党」のコンスタンチン・フォン・ノッツ(Konstantin von Notz)副議長は、BNDとNSAの協力関係について、まったく知らないはずがないとし、アンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相に対して、事情を説明するように要求している。
一方、ドイツ首相府のシュテファン・ザイバート(Steffen Seibert)報道官は、「今回の問題について徹底的に解明する」ように、BNDに対して指示したことを明らかにした。また、同時に、ドイツ政府が「ドイツやヨーロッパの市民に対して大規模な盗聴を行なった」という証拠は見られないという声明も発表しており、現時点において、『Der Spiegel』が報じた記事の内容を全面的に認めているわけではないようだ。
【関連記事】
"Spying Close to Home: German Intelligence Under Fire for NSA Cooperation"
Der Spiegel, April 23, 2015.
"BND helped NSA spy on German, European interests"
Deutsche Welle, April 23, 2015.
"German spy chief faces calls to resign following NSA revelations"
Deutsche Welle, April 24, 2015.
"The BND affair: "No better partner than the USA""
Deutsche Welle, April 24, 2015.
「独情報機関、規定違反スパイ=米国のため防衛企業など対象-地元誌報道」
『時事ドットコム』(2015年4月24日)
Ys-K
同誌の記事によると、NSAは、調べてほしい人物や組織に関わる携帯電話の番号やIPアドレスなどをBNDに提示し、それを受けて、BNDが通信上のデータから検索し、情報を集めていたという。標的となった企業には、ヨーロッパの航空宇宙大手、エアバス・グループ(European Aeronautic Defense and Space)も含まれており、検索の照会は、4万件以上にも上るとのことである。
以前からアメリカは、通信上のデータ収集について、テロ対策上、必要であると説明してきた。だが、実態として、その目的から逸脱した監視活動が行なわれていたことは、すでに多くのメディアによって報じられてきたところである。今回の件もまた、報道された内容が事実であるとすれば、本来、テロ対策を目的として行なわれるべき、通信上のデータ収集が、経済的な関心にもとづいたものになっていたという点で、明らかな逸脱行為と言わざるを得ないだろう。
また、ドイツ国内では、『Der Spiegel』の報道を受けて、BNDがNSAに協力し、ドイツも含めた、ヨーロッパの企業に関する情報を収集していたことについて、野党を中心として大きな反発が広がっている。
たとえば、左翼党のグレゴール・ギジ(Gregor Gysi)議員団長は、BNDとNSAの協力関係について、「アメリカに合わせていればいいという考え方」をやめるべきだと訴えているほか、同党のベルント・リークシンガー(Bernd Riexinger)代表は、BNDのゲルハルト・シンドラー(Gerhard Schindler)長官に対して、責任をとって辞任すべきだと主張している。
さらに、「緑の党」のコンスタンチン・フォン・ノッツ(Konstantin von Notz)副議長は、BNDとNSAの協力関係について、まったく知らないはずがないとし、アンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相に対して、事情を説明するように要求している。
一方、ドイツ首相府のシュテファン・ザイバート(Steffen Seibert)報道官は、「今回の問題について徹底的に解明する」ように、BNDに対して指示したことを明らかにした。また、同時に、ドイツ政府が「ドイツやヨーロッパの市民に対して大規模な盗聴を行なった」という証拠は見られないという声明も発表しており、現時点において、『Der Spiegel』が報じた記事の内容を全面的に認めているわけではないようだ。
【関連記事】
"Spying Close to Home: German Intelligence Under Fire for NSA Cooperation"
Der Spiegel, April 23, 2015.
"BND helped NSA spy on German, European interests"
Deutsche Welle, April 23, 2015.
"German spy chief faces calls to resign following NSA revelations"
Deutsche Welle, April 24, 2015.
"The BND affair: "No better partner than the USA""
Deutsche Welle, April 24, 2015.
「独情報機関、規定違反スパイ=米国のため防衛企業など対象-地元誌報道」
『時事ドットコム』(2015年4月24日)
Ys-K