浮気や不倫というのは、発覚した時のリスクがあまりにも大きい。とくに社会的な地位が高ければ高いほど、そのリスクは大きくなる。ハニートラップがこうしたリスクを利用したものであることは有名だろう。それゆえに、相応の地位にある人は、身の回りをきれいにしておくことが求められるし、色恋沙汰の誘惑に負けない自制心を持っていなければならない。隠し通せる、騙し通せると思うのは、多くの場合、本人の勝手な思い上がりでしかない。

2012年11月、アメリカ中央情報局(CIA)長官のポストを突如、辞任した、デービッド・ペトレイアス(David H. Petraeus)氏もまた、不倫問題の発覚によって足元をすくわれた人物の一人である。しかも、その問題は、捜査当局が知るところとなり、不倫相手の女性に機密資料を渡していたのではないかという疑惑を生んだ。女性が所有していたパソコンに、アメリカ政府の機密資料がデータとして残されていたからである。当然、流出元としてペトレイアス氏が疑われた。だが、ペトレイアス氏は、断固として関与を否定し、機密資料を女性に渡していないと訴えた。

ところが、その後、捜査当局は、ペトレイアス氏の自宅を捜索し、机の引き出しから機密情報が含まれる8冊のノートを発見した。そのなかには、イラク戦争での軍事戦略や情報活動、外交交渉などに関する記録があったほか、工作員の氏名や国家安全保障会議(NSC)会合の内容なども、ノートに記載されていた。ペトレイアス氏が機密情報を不正に扱ったことは明白で、不倫相手の女性が保存していた機密資料の出所が分かった瞬間であった。

ここに至って、ペトレイアス氏は観念し、2015年3月、司法取引に応じることに同意した。アメリカでは、捜査当局に虚偽の証言を行なった場合、5年以下の懲役刑が科されることになるが、今回、ペトレイアス氏が機密資料を不正に扱ったことを認めれば、執行猶予2年、罰金4万ドル(約487万円)で手打ちにするという内容である。

今月23日、その正式な決定が裁判所から発表された。それによると、ペトレイアス氏は、機密資料を不正に扱ったことで有罪となり、執行猶予2年という判決が下された。罰金に関しては、事件の重大性を鑑み、大幅に増額されて、10万ドル(約1200万円)が科されることになった。

これにて、おそらくこの問題は一件落着と思われるが、ペトレイアス氏自身は、輝かしいキャリアを重ねながらも、そのキャリアを台無しにするような代償を払わなければならなくなった。CIA長官を務めるような人物であっても、結局、不倫がもたらすリスクの大きさから免れることはできなかったのである。

【関連記事】
"Timeline: The David Petraeus scandal"
USA Today, April 23, 2015.

"David Petraeus Is Sentenced to Probation in Leak Investigation"
New York Times, April 23, 2015.

"David Petraeus Sentenced: 2 Years Probation, $100K Fine For Ex-CIA Director After Plea Agreement With Justice Department"
International Business Times, April 23, 2015.

前CIA長官に罰金1200万円=不倫相手に情報漏えい-米
『時事ドットコム』(2015年4月24日)


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