花宴の台所便り

北米在住20年、世界の家庭料理を取り混ぜながらのうちの食卓です。 現在はカナダのトロント在住。

3月17日はSt. Patrick's Dayでアメリカとかカナダですと、賑やかなパレードが開催されます。 バグパイプを抱えてタータン・チェックのキルト(プリーツを入れたスカート)姿の皆様が街中の目貫通りを行進、まだまだ寒い時期ですがセント・パトリックと一緒に春がやって来る!
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当日に頂くのがアイリッシュ・シチュー! これはいわゆるフランスのポトフで宗教戦争時代にフランスからアイルランドに移り住んだ移民の伝統とか。 塩漬けの牛肉(ブリスケットが一般的)を煮込んでキャベツとじゃがいもを加えたシンプルですが美味しい料理です。 
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牛肉は煮込みますから安い部位で。 手に入ればブリスケットが一般的です。 今年は丁度良いのがなかったのでシチュー用で。 
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色々やり方はあるのですが、私は肉をプラスチック・バックに入れて塩を多めに塗して(大さじ1くらい)冷蔵庫で寝かせます。 3−4日くらい。 一緒にハーブ類を加えても。  
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漬けた肉は一度湯引きしてから、水をたっぷりと加えて、沸をつけたらアクを引きます。 ローリエと黒粒胡椒を10粒くらい丸ごと加えて、後は蓋をかけて弱火でコトコト。
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加える野菜ですが、アイリッシュ・シチューにはじゃがいもとキャベツが定番ですが、その他にニンジン、セロリ、今日はポロネギも! 香り付けにローリエとパセリ。 
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キャベツは芯をつけたまま6等分か8等分に切って加えます。
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肉と胡椒、ローリエだけで2時間くらい煮込んだところ。 ここに野菜を加えて30分くらい、野菜が好みの硬さになるまで煮込みます。
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じゃがいもだけは崩したくないので注意して下さい。 鍋で一緒に煮る場合、じゃがいもだけは串が通ったら鍋から外しておきます。 別に茹でて最後に加えても。
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頂く直前にパセリの茎とローリエもう一枚、じゃがいもを戻して10分温めて出来上がりです。
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今日はグレビッシュ・ソースも添えて。 アイリッシュ・シチューはそのまま頂くか、ポトフのようにマスタードを添えるのですが、これは”プップおばさんの料理帖”より。 茹でた肉と相性の良いソースです。
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卵は固茹で、黄身とマスタード、塩、ビネガー少々とオイルで混ぜておきます。
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白身はみじん切り、パセリやハーブ類もみじん切り。
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ピクルスもみじん切りにして黄身のソースと合わせ、胡椒を加えます。
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タルタル・ソースより軽くてさっぱりの美味しいソースです。
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こういう料理はお皿を温めておくと美味しさが持続します。 シンクにお皿を並べて熱湯をかけるとか、オーブンで温めておくなどやりやすい方法で。 一般的にポトフですと肉を塩漬けにしないで煮込み始めますが、塩漬けにする事で臭みが和らぎ、美味しいスープが取れます。 冷蔵庫がない時代の塩漬けの保存食の食し方ですが、賢いものです。

セント・パトリックの日はアイリッシュ・バーは大盛況。 酒豪の皆様が緑色のTシャツでテンション・マックス、バーに押しかけ大酒騒ぎになる日です。 この日の為に作られたグリーン・ビール(着色されたもの)なんていうのもあります。  面白い光景ですが、アジア人と違って欧米人はアルコールの摂取量が無甚大、彼らは顔に出難いですが酔ってトラブルも多い夜ですので注意して下さい。 シカゴなど懐かしい、私が住んでいた頃は街を横切るシカゴ川に自然着色剤が撒かれて川まで緑色でした。

クレソンはスーパーなら一年中ありますが、綺麗な緑とすっきりした苦味はやはり春に頂くと身体に良さそう。 ユタ州だと春先に山へドライブすると雪解け水の冷たい小川のほとりに自生していたり。 シンガポールではスーパーで束が手に入りますが、サラダとして美味しいのは葉先から3分の2くらいで茎や傷んだ葉など結構無駄が出ますので、スープに! 
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クレソンはしっかり水洗いして柔らかい葉と茎はサラダ用に、残りはザクザクと刻んでおきます。
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ポロネギか玉ねぎの薄切り。 
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小さめのじゃがいもひとつ。 最初に少々のオリーブオイルとネギを鍋に加えて弱火で蓋をして蒸し炒め、柔らかくなってきたらじゃがいもを加えて、蒸し炒めを続け7割くらい火を通します。
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 クレソンを加えてざっくりと混ぜたら鶏のストックか水を加えてジャガイモが柔らかくなるまで軽く煮込んでバー・ブレンダーで滑らかに!
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塩気を整えて出来上がりです。 栄養価を考えると鶏のストックが良いですが、水だけで作ると材料の味が際立って美味しい。 
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今日のは材料も茎が殆どで、ざっくりした作り方ですが、本気で美味しいクレソン・スープを作るならば、辰巳芳子先生の調理法が一番だと思います。 茎と葉を分けて葉だけはさっと湯通しして別に撹拌し、最後に加えるというもの。 出来上がりの色彩もですが、ヴィタミンの効能を考えると理に適う作り方です。  一手間掛かりますが、頑張りたい日はこちらで。 

昨年末、家族で行ったランカウイ島のThe Datai Hotelには小さい図書館というか読書ルームがあって、日本語書籍も何冊か置いてありました。 マレーシアのリゾート島に日本語書籍、ビーチのお伴に旅行鞄に詰められて、旅先で寄贈されたのか、それとも日本語の出来るどなたかがホテル用に厳選したものなのか。 ふとタイトルが目に留まった文庫が”ロベルトからの手紙”で著者は内田洋子さん。 いつだったかずっと以前に女性誌の書評で絶賛されていたので、このタイトルは記憶にありました。 見つけたのはチェックアウトの直前で読む時間は残っておらず、これもご縁かとシンガポールに戻ってから何冊かの著書を購入、これが凄かった・・・!
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代表作の”ジーノの家”など、一気に読んでしまいたいけれど、読み終わるのが惜しくて前の章に戻りたいような作品で、著者のイタリア生活のいわゆる随筆ですが短編小説のようです。 オー・ヘンリーなんか思い出します。 

これは著作の中の”皿の中に、イタリア”から。 著作の中では金目鯛とニンニク、オリーブにプチトマトの煮付け、ここへじゃがいもを加えたのが登場します。 エレガントなものではなくてがっつり豪快なお料理。 同じものは出来ませんので、これは私の思いついたもの。
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著作では丸ごとの金目鯛ですが、シンガポールでは輸入の最高級魚$$ですので代わりに切り身で。 塩とレモン汁少々を振って冷蔵庫で20分くらい置いておきます。 多めのオリーブオイルでニンニクを軽く炒めて香りが上がったら水気を拭った切り身の表面を焼き付けます。
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ここへ種を抜いたオリーブ、トマトを加えて炒めたら白ワインをたっぷりと。
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ハーブも加えて、ソースを魚にかけながら少々煮詰めて仕上げます。 
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味をみて、酸味が強すぎたらお砂糖か蜂蜜を少々。
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仕上げにオリーブオイル。 さっぱりした美味しい魚料理で、調理時間も短く済みます。 

内田さんの著作は短編映画を見るようで、様々な登場人物達が生き生きと動き出して短い寸劇を繰り広げては、狂言回しが現れてスッと幕を引き、”お次はまたいつか・・・!”とニヤリと微笑んで消えていく感じ。 この辺、イタリア的かも知れませんね。 本との出会いって不思議なものです。 シンガポールには紀伊國屋書店があって、そこの限りある文庫コーナーを眺め歩きますが、最近はどれをどう選んで良いのか解らず、手に取るのは知ったような古典ばかりですが、今回は読むべき本が飛び込んで来てくれた感じです。  

  

白いアスパラガスが出回り始めました! これが出て来ると春、フランス人も好きですが、有名なのはやはりドイツ。 特に食事に拘るとは思えないドイツ人ですが、ビール、ソーセージ、白アスパラガスには勢いテンションが上がるお国柄です。
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不思議な育て方で、春先に盛り土をして遮光、白く柔らかく育てるそうで、技術も手間も掛かる野菜のプリンセス。 貴婦人の指に喩えられたりしますね。 切り口を少々切り落として頭から5センチくらい下から皮を剥きます。 この作業ですが、スイス製の安物の皮剥きがあるのですが、これでむくと不思議と薄く上手にむけます。  ブレードが錆びやすく持ち手も扱い難いのですが、アスパラには威力を発揮しますのでアスパラ愛の方ならひとつあると違います。
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アスパラガスに合うのは卵の黄身系のソースで今日はマヨネーズ。 温かくしたオランデーズ・ソースも良く合います。 材料は黄身(生食可能のもの)、塩、マスタード。 攪拌して泡が立ったら白ワイン・ヴィネガーとレモン汁少々を加えて泡立て、ここにオリーブオイルを糸が流れるように加えながら泡立てるとソースにかっちりしたとろみがついてきます。
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胡椒で味を整えた手作りマヨネーズを茹でたてのアスパラガスに添えて!
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ある日はこんな感じで。
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茹で野菜はマヨネーズと合うので、何種か混ぜて茹でサラダもいいかなと思います。

フレッシュの白いアスバラガスは柔らかく、かつシャキッと特別な春のお味です! 私が小さい頃はアスパラガスというのは白も緑も一般には流通していないもので、白アスパラの瓶詰めか缶詰が一般的でした。 シャッキリした茹でアスパラガスと違って指で潰せるような柔らかさ、市販のマヨネーズをつけると子供だった私の好物でした。 あれはあれで懐かしいものです。  
 

3月8日は国際女性デー! 国によって認識度が異なりますが、国連の制定したもので20世紀初頭の女性による社会運動を発端としています。 これはイタリアで国際女性デーに作られるお菓子。
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ミモザ・ケーキです。 スポンジケーキを小さく切ったものや、スポンジのクラムを散らしたケーキはミモザ・ケーキと呼ばれる事が多いです。 ヨーロッパではミモザの黄色い花が春を連れて来る! 時期に合っていて、上手く考えたと思います。 
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 材料は卵3個、グラニュー糖50g、薄力粉50g、植物油大匙1。 白身と黄身は分けて別立てのスポンジ・ケーキを焼きます。 
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普段はロールケーキの生地を焼いて丸く切り取って重ねるのですが、今年はMUJIのボールを使いました。 生地の4分の1くらいをペーパーカップに移して一緒に焼きます。 これはクラム用。 
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175℃で18分くらい。 
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土台のドーム型の生地は間に包丁を入れます。
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クリームの準備! 果物にラズベリーを使いましたので、普段とちょっと味を変えてみました。 これはヴィタリ・ユシュマノフさんのハニーケーキの応用で、グリーク・ヨーグルト少々と練乳を混ぜます。 爽やかで果物と合うクリームのお味に。
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断面にラズベリーのジャムを塗ります。 これは冷凍のラズベリーを使った自家製。 
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上からクリームを厚めに塗って切った生のラズベリーを挟みます。
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 クリームを重ねてドームに戻します。 上面の切り口にもジャムを!
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全体にクリームを塗りつけたらクラムを作ります。
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ボールの脇で別に焼いたスポンジの焼き目を外して粗い降ろしにかけてクラム上にします。
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クラムを全体にまぶしつけるとミモザに!
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中央にシナモンの枝、ローリエ、ラズベリーを飾って完成! クラムが一手間ですが、クリームの絞り出しなどはないので雑でも結構可愛く仕上がります♪ 
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爽やかで可愛いケーキですね! 私の印象ですが、国際女性デーはヨーロッパの方が認識されていて、アメリカでは希薄かなあ。 アメリカ女性は”平等は当たり前、発想自体が気に入らん!”というとこでしょうか? 日本は”・・・の日”は好きそうなのに、国際女性デーはどうもマイナーなようです。 私が就職した頃と較べれば日本人男性の意識は多少は変わりましたが、次世代女子にはどんどん頑張って欲しいものです。 


 

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