花宴の台所便り

北米在住20年、世界の家庭料理を取り混ぜながらのうちの食卓です。 現在はカナダのトロント在住。

タグ:アイリッシュ・シチュー

今年は出遅れてしまいましたが、春を告げるセント・パトリック・デイのアイリッシュ・シチューを!
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アイリッシュ・シチューですが、北米でそう呼ばれるものはいわゆるフランスのポトフ。 諸説あるようですが、15・16世紀の宗教戦争でフランスからアイルランドへ逃げたフランス人が持ち込んだものと言われています。 本家との違いは牛肉を塩漬けにしてから煮込む事。 賢い方法で、この方が肉の臭みが抜けてすっきりと美味しいスープになります。 
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塩漬けの牛肉を仕込みます。 ・・・3・4日は掛かりますので、これが遅れたので今年はセントパトリックに間に合わず(汗)。  一般的にはブリスケットを使いますが、手頃なのがなかったので頬肉を使ってみました。 頬肉はゼラチン室の多い、煮込みにすると美味しい部位です。 多めの塩(二人分くらいの肉で大さじ1)を絡めて冷蔵庫で3・4日寝かせます。 あれば香味野菜など一緒に。
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浸かった肉は一度沸騰したお湯で表面を湯引きして水洗いしてから、煮込みの鍋に移して水から煮込んでいきます。 沸騰したらアクを引いて火を落とし、胡椒の粒を加えて蓋をかけてコトコト。
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肉に竹串がすっと通り、スープも美味しくなっています。 一度肉を取り出して、野菜を硬い順に加えていきます。
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今日はポロネギ、にんじん、セロリ、キャベツ、じゃがいもで。 じゃがいもは別に茹でておいた方が崩れるのを防げます。 ブーケガルニも加えて。
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アイリッシュシチューの場合、欲しいのはキャベツとじゃがいも。 後は冷蔵庫にある野菜と相談して。 
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野菜が煮えたら下茹でしたじゃがいもを加えて、肉を厚くスライスして一緒に温めます。 ル・クルーゼとかストウブの鍋、土鍋などは中身が冷めにくいのでこのまま食卓に出して、好きに取り分けても。
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お味は塩、柚子胡椒も合いますし、マスタードを添えても。 スープもじんわりと美味しいです。 仕上げに少々のバターとお醤油を加えるとご飯にも合います。

柔らかい茹でた肉と根菜、美味しいスープ。 ほっとするお味です。 

3月17日はSt. Patrick's Dayでアメリカとかカナダですと、賑やかなパレードが開催されます。 バグパイプを抱えてタータン・チェックのキルト(プリーツを入れたスカート)姿の皆様が街中の目貫通りを行進、まだまだ寒い時期ですがセント・パトリックと一緒に春がやって来る!
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当日に頂くのがアイリッシュ・シチュー! これはいわゆるフランスのポトフで宗教戦争時代にフランスからアイルランドに移り住んだ移民の伝統とか。 塩漬けの牛肉(ブリスケットが一般的)を煮込んでキャベツとじゃがいもを加えたシンプルですが美味しい料理です。 
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牛肉は煮込みますから安い部位で。 手に入ればブリスケットが一般的です。 今年は丁度良いのがなかったのでシチュー用で。 
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色々やり方はあるのですが、私は肉をプラスチック・バックに入れて塩を多めに塗して(大さじ1くらい)冷蔵庫で寝かせます。 3−4日くらい。 一緒にハーブ類を加えても。  
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漬けた肉は一度湯引きしてから、水をたっぷりと加えて、沸をつけたらアクを引きます。 ローリエと黒粒胡椒を10粒くらい丸ごと加えて、後は蓋をかけて弱火でコトコト。
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加える野菜ですが、アイリッシュ・シチューにはじゃがいもとキャベツが定番ですが、その他にニンジン、セロリ、今日はポロネギも! 香り付けにローリエとパセリ。 
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キャベツは芯をつけたまま6等分か8等分に切って加えます。
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肉と胡椒、ローリエだけで2時間くらい煮込んだところ。 ここに野菜を加えて30分くらい、野菜が好みの硬さになるまで煮込みます。
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じゃがいもだけは崩したくないので注意して下さい。 鍋で一緒に煮る場合、じゃがいもだけは串が通ったら鍋から外しておきます。 別に茹でて最後に加えても。
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頂く直前にパセリの茎とローリエもう一枚、じゃがいもを戻して10分温めて出来上がりです。
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今日はグレビッシュ・ソースも添えて。 アイリッシュ・シチューはそのまま頂くか、ポトフのようにマスタードを添えるのですが、これは”プップおばさんの料理帖”より。 茹でた肉と相性の良いソースです。
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卵は固茹で、黄身とマスタード、塩、ビネガー少々とオイルで混ぜておきます。
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白身はみじん切り、パセリやハーブ類もみじん切り。
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ピクルスもみじん切りにして黄身のソースと合わせ、胡椒を加えます。
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タルタル・ソースより軽くてさっぱりの美味しいソースです。
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こういう料理はお皿を温めておくと美味しさが持続します。 シンクにお皿を並べて熱湯をかけるとか、オーブンで温めておくなどやりやすい方法で。 一般的にポトフですと肉を塩漬けにしないで煮込み始めますが、塩漬けにする事で臭みが和らぎ、美味しいスープが取れます。 冷蔵庫がない時代の塩漬けの保存食の食し方ですが、賢いものです。

セント・パトリックの日はアイリッシュ・バーは大盛況。 酒豪の皆様が緑色のTシャツでテンション・マックス、バーに押しかけ大酒騒ぎになる日です。 この日の為に作られたグリーン・ビール(着色されたもの)なんていうのもあります。  面白い光景ですが、アジア人と違って欧米人はアルコールの摂取量が無甚大、彼らは顔に出難いですが酔ってトラブルも多い夜ですので注意して下さい。 シカゴなど懐かしい、私が住んでいた頃は街を横切るシカゴ川に自然着色剤が撒かれて川まで緑色でした。

先週末はセント・パトリック・デイ、祝日ではありませんが、アイルランドからの移民とその子孫の多い北米では盛り上がるお祭りです。 セント・パトリックのお祭りになると北国もそろそろ春の予感、気温はまだまだ低いですし、雪さえちらつきますが、日差しがぐっと明るく、日が長くなって来るのです。

セント・パトリックのパレードはバクパイプの楽隊やアイリッシュ・ダンスのグループのパフォーマンスで賑やか、街中のパブには緑のTシャツを着たお客が押し寄せて大盛況です! 昔住んでいたシカゴはセント・パトリックが盛大な街で、街を流れるシカゴ河を緑に染める一大イベント。 この日は緑色がお約束カラーですから、テーブルも緑で! 
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セント・パトリックは”浴びるほど飲む日”というイメージがありますが、食事はアイリッシュ・シチュー♩  アイリッシュ・シチューはレシピーが様々でどれが本物!と言い難いのですが、これはニューイングランド風のアイリッシュ・シチュー。 何に似ているかといえばフランスのポトフです。 諸説あるようですが、カソリックとプロテスタントの宗教戦争に絡んだフランスからの移民が持ち込んだ等の説があるとか。 ポトフとの違いは牛肉はブリスケットで、コーンド・ビーフ、いわゆる塩漬けにしてから使うところ。 
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牛肉はブリスケット部分を、強めに塩を振って冷蔵庫で3日くらい寝かせます。 一緒に入れている香味野菜は私の応用で、本来は塩だけ。 
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塩マリネした肉はさっと湯引きしてから、被るくらいの水で煮込むだけです。
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肉が8割がた柔らかくなりましたら、野菜とブーケガルニを。 アイリッシュ・シチューの場合、一番大事なのはキャベツです。 キャベツと牛肉だけでも良いくらいで、後の野菜はご愛嬌程度。 じゃがいもは崩れますので、私は別に茹でて最後に盛り込みます。
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塩漬けした牛肉を使うとお肉にも塩味が効いていて美味しいですし、スープも上々♩  中央の緑はイタリアン・パセリのピュレですが、これはなくても十分です。 

セント・パトリックの夜にアイリッシュ・パブに参戦なさる方は十分注意して下さい。 混んでますし、アイリッシュ系はアルコールが顔に出ませんから、普通に見えてもかなり酔っている可能性があります。 私の印象だけですが、やはりアジア人はお酒の強さに関わらず、顔に出る人が多いようです。
    

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