December 31, 2016

ブログ紹介

エリック・サティ ブログ ~Erik Satie~

このブログはエリック・サティに関するサイト「うぬぼれ少女百貨店」の支店として、サティに関するCDや書籍のレビューをまとめています。

※下まで行っても「次のページへ」はありませんので、TOPページに表示されていない記事への移動は、左の「Categories」や下記のリンク用ページをご利用ください。

→うぬぼれ少女百貨店
http://unubore.michikusa.jp/index.html


inubuyo at 00:00|PermalinkComments(0)その他(レビュー以外) 

May 14, 2016

Febian Reza Pane / アルクイユの春 エリック・サティ作品集第二集


Febian Reza Pane



1987年発売。1枚組。

オリジナルとして
「グノシエンヌ第1〜3番」
「ノクターン第1, 4番」
「サラバンド第1, 3番」
ピアノ,弦楽器,管楽器への編曲ものとして
「優しく」
「シャンソン」 (別の3つの歌曲)
「愛撫」
「金の粉」
「花」 (別の3つの歌曲)
「舞踏への小序曲」
「梨の形をした3つの小品」より「供
 を収録。

1980年代の日本における「サティ・ブーム」を知る上で貴重なCD。

ライナー記載の黒柳徹子氏によるコメントは、ジャケットに使用されている絵画が『こういう風な音楽に合う』というように、あくまでも絵画についてのものであり、こちらが主役であるという論調。サティの曲に対する興味は微塵も感じられない。また記載されている略歴も、ピアニストのフェビアン・レザ・パネのものではなく、ジャケットの絵画を描いた画家のカシニョール氏のそれ(!)という清々しいほどの徹底ぶり。

CDの内容も、「エリック・サティ作品第二集」と銘打っておきながら、13トラック中3トラックはサティに無関係な曲が(作編曲者名の他は)説明も無く挿入されている他、肝心のサティの曲でさえも半数程度はムード音楽調に編曲されている。

これらの特徴は、所謂「ブーム」というものが行き着くところまで行ったらどうなるかを、言い換えれば通俗化の極みとは一体どのようなものかをわかりやすく体現していると言え、そこに捨てがたい魅力を発見せずにはいられない。

当CDが発売された1987年と言えば、全音社のサティ全集(楽譜)が発売された翌年に当たり、日本でサティがブームとなっていた時代とピタリと一致する。実際、当CDライナーでも筑紫哲也氏が『(サティの)「発見」に人々が寄せる熱意のほどは、ブームと呼ばれるさまを呈している』と述べており、制作側自身がブームへの便乗を意識していたことを匂わせている。

残念なことに世代的に私は同時代のそれを体験していない。しかし、このCDのライナーをじっくり眺め、思いを馳せることにより、当時の空気を直に感じ取ることができる気がするのである。その感覚は、ムード音楽調に編曲されたサティの曲たちを再生することで、より強固なものとなる。

サティ・ブームを肌で感じること、それ自体を「サティを愉しむ」ことの一環と捉えることができる方には、当CDは間違いなくお薦めできる。


inubuyo at 11:40|PermalinkComments(0)TrackBack(0)ピアニスト ヤ〜ン | 編曲モノ

January 31, 2016

月刊ショパン 2016年2月号 特集「フランス音楽史の"影の演出家”生誕150周年エリック・サティ」



月刊ショパンはハンナ社刊のピアノ音楽誌。

当巻では、副題「フランス音楽史の"影の演出家”生誕150周年エリック・サティ」の通り、サティの生涯、ピアノ曲小辞典、エピソード集、ピアニストによるエッセイ等、19頁に渡りサティが特集されている。

特筆すべきは「ピアノ曲小辞典」。サティの楽曲についてまとめてある文献で網羅性のあるものは多くない。秋山邦晴著「エリック・サティ覚え書」がそのような文献の筆頭と言えるが、1990年刊行と、いささか情報が古い。

そのため、本書の
「至高存在のライトモティーフ」(『「汎神」のライトモティーフ』と訳している)
「星たちの息子 全曲版」
「モデレ」
「フーガ・ワルツ」
「小さなソナタ」(「小ソナタ」と訳している)
「コ・クオの少年時代」
「ノクターン第6番」
「ノクターン第7番」
等についての言及は貴重。
ただし、雑誌のコンセプト上、あくまで「ピアノ曲」の辞典であり「ピアノ独奏、連弾、2台ピアノで演奏できる既刊の楽曲」についてのみ取り扱われていることに注意。

エピソードについての記述では、サティが所属した機関・組織の解説や、批評家との確執等、他者との関わり合いに重点が置かれている。対人的な振る舞いを知ることは、その人物のシルエットを掴むのにもってこいであり、サティについても例外ではない。一般的な文献で強調されがちな奇異な逸話についての記述は控えめとなっているが、その人物像がすっと浮かび上がってくる。

19頁という紙面の制限から、当然のことながら、単純な情報量はサティ専門書籍とは比較にならない。しかし、情報の新しさやまとまりは秀逸と言え、サティ・ファンなら持っておいて損はない。


inubuyo at 11:39|PermalinkComments(0)TrackBack(0)書籍 

January 16, 2016

Philip Corner / Satie Slowly


Philip Corner



2013年録音2014年発売。2枚組。ジャケットのイラストはサティの自画像。ジムノペディ第1〜3番、グノシエンヌ第1番、オジーヴ第1〜4番、ゴシック舞曲、エンパイア劇場の歌姫等を収録。

タイトルの通り、全体的に、一般的な録音と比べてかなりのスローテンポ。

特にグノシエンヌ第1番では徹底しており、実測で10分程度。テンポの遅い演奏で知られるデ・レーウでさえ同曲は5分半程度で弾いており、極めて異質な演奏と言える。デ・レーウの演奏については、過去に当ブログで「非日常的、異空間的な感覚」という表現で紹介したが、当盤の演奏はそれを同方向へさらに昂進させたものと考えてほぼ差支えない。眼を閉じ静かに耳を傾けると、否応なくある種の瞑想的精神状態へと引きずり込まれる。その非現実的なスピード感により、自分が今居る世界のリアリティが一時的に希薄なものにされていく。

(因みに、筆者が把握している限り、デ・レーウ以上に遅いテンポでこの曲を録音しているピアニストは当記事の録音以外に他に2人いる。ジムノペディとグノシエンヌについては、各ピアニストの演奏時間を姉妹サイト「うぬぼれ少女百貨店」にまとめているので、ご興味お持ちいただけたらご覧いただきたい。)

なお、ジムノペディのテンポは、3曲とも一般的な録音の平均より25%遅い程度に留まっており、グノシエンヌ第1番ほど極端なスローテンポとはなっていない。

エンパイア劇場の歌姫は、恐らくHans Ourdineによる編曲(ト長調)のものをさらに編曲した模様。Hans Ourdineオリジナルと思われる中間部のベース音をクラスタ的な不協和音で強打している。なお、サティオリジナルの歌曲版や、Hans Ourdineや八木正生編曲のピアノ版はト長調であるが、サティ自らの手によるピアノ編曲版はニ長調であることに注意が必要。

当盤に限らず癖のある録音は入門向きとは言えないが、面白さがわかりやすいという意味ではおすすめできる。


inubuyo at 18:15|PermalinkComments(0)TrackBack(0)ピアニスト カ〜コ 

July 08, 2015

エリック・サティとその時代展




エリック・サティとその時代展
(商品リンクなし)



2015年7月8日〜8月30日にBunkamura、9月12日〜11月1日に浜松市美術館にて開催の展覧会、「エリック・サティとその時代展」の展示とその解説をまとめた図録。全171頁。図録部分は142頁でフルカラー(白黒写真は除く)。他に年譜や「スポーツと気晴らし」の邦訳が付録。株式会社アートインプレッションより2600円(消費税8%込)にて発売。

これまで、一般に「エリック・サティ展」と言えば、2000年に東京伊勢丹美術館及び大阪大丸ミュージアムで開催された企画展とその図録(→過去記事参照)を指す言葉であった。そして、図録は「サティを視覚的に理解する」という用途で卓越しており、長らく日本のサティ・ファンのバイブル的文献の一角を占めてきた。今回、新たに展覧会が企画され、それに伴い本項紹介の図録が発売されたわけであるが、こちらも情報の量・質ともに疑う余地もなく素晴らしく、同様のコンセプトの文献として極めて強力なライバルが出現したと言える。

内容は「エリック・サティ展」図録と同様に幅広く、サティの肖像画・自筆譜、楽曲に関する衣装から、同時代のポスターまで、多種多様である。その性質上、両者で重複する内容もかなり多いが、本書「エリック・サティとその時代展」には、本展覧会で初公開された曲の自筆譜等、コアなファン垂涎の新たな情報が少なからず掲載されており、差別化されている。反対に、一部の楽譜を除いてサティの自筆文章やイラストはほとんど掲載されておらず、その点は「エリック・サティ展」が優位と言える。

サティについて良質で情報量の多い文献が新たに発行されたことは大変喜ばしいことで、今後、サティ関連文献のスタンダードの一つとなりえよう。ただし、そのためには展覧会終了後も簡単に入手可能となることが必須であり、そのような環境が用意されることを期待したい。

(一応補足しておくが、視覚的に愉しむというコンセプトの文献としては他に「サティ イメージ博物館」が存在する。ただし、写真やイラストの掲載数は上述の2つの図録より少なく、また、1987年発行で絶版となって久しい。)



【付録CDについて】

非売品のCDが付属していたので紹介する。
(限定品であるのか、あるいは今後も全ての図録に付属するのかは不明。)

1.ジムノペディ第1番
2.ジムノペディ第2番
3.ジムノペディ第3番
4.グノシエンヌ第1番
5.グノシエンヌ第2番
6.グノシエンヌ第3番
7.薔薇十字会の鐘 修道会の歌
8.薔薇十字会の鐘 大司教の歌
9.薔薇十字会の鐘 修道院長の歌
10.ジュ・トゥ・ヴ
11.スポーツと気晴らし
12.メデューサの罠
13.パラード (コラール、赤い幕の前奏曲、中国人の奇術師)
14.パラード (アメリカの少女)
15.パラード (軽業師たち、終曲、赤い幕の前奏曲の続き)
16.びっくり箱

NAXOSレーベル。1〜12, 16はケルメンディによるピアノ。13〜15はカルタンバック指揮、ナンシー歌劇場交響楽団による演奏。標記はないが、演奏時間を確認した限り、恐らくこれまでに同レーベルから販売された「SATIE Piano Works Vol.1~4」や「SATIE Piano Works Selection」と同一の録音がメインと思われる。
(現状、実際に聴き比べてはいないため、あくまで推測の域を出ないことを了承いただきたい。また、ジムノペディやグノシエンヌはこれらとは演奏時間が異なる。現在調査中。)



inubuyo at 22:50|PermalinkComments(0)TrackBack(0)書籍 

November 19, 2013

Jan Kaspersen / Erik Satie Various short pieces


Jan Kaspersen



2013年録音。1枚組。サティの曲は、ジムノペディ第1〜3番、グノシエンヌ第1〜3番、天国の英雄的な門への前奏曲、犬のための本当にぶよぶよした前奏曲、でぶっちょ木製人形へのスケッチとからかい、世紀毎の時間と瞬間の時間を収録。

ヤン・カスパーセンはピアニスト兼作曲家で、主にジャズの分野で活躍。同じようにサティ以外のクラシック曲をほぼ録音していないジャズピアニストとしてミシェル・ルグランが挙げられるが、アプローチは大分異なる。(ルグランによるサティについては当ブログ過去記事http://blog.livedoor.jp/inubuyo/archives/435587.html参照。)

全体的に硬質。豊かな響きは可能な限り抑えているようで、曲にもよるが強弱の抑揚、さらにはルバートも控えている。ジャズピアニストであるという前情報を持った上で聴くと、予想を裏切られる。
このような特徴は、ともすれば、ピアノ教師に「もっと感情を込めて強弱・抑揚を付けて」て言われてしまいそうな初心者のそれが彷彿される演奏になりかねない。が、そこは卓越したバランス感覚により、際どいところで踏みとどまり、独自のサティ像を提案している。

ジムノペディ第1番は3分を切る。グノシエンヌ第2番はかなり独特のリズム感。同第3番は装飾音符の方にアクセントが置かれている部分あり。花崗岩質の狂乱は、タイトルの「狂乱」に掛けたのか、左手が明らかに乱れて駆け込んでいくのが面白い。

なお、ジャケット裏のトラックNo.一覧には誤りがあるので注意が必要。自作の曲を含み全20トラックとの表記となっているが、実際はトラック4に表記されていない「天国の英雄的な門への前奏曲」が 収録されており、全21曲となっている。これに伴い、トラック5以降は実際は全てジャケットの表記に+1したトラックにスライドされている。

inubuyo at 21:49|PermalinkComments(0)TrackBack(0)ピアニスト カ〜コ 

May 06, 2012

color5楽譜 3つのサラバンド


562139845


color5楽譜 3つのサラバンド

T.Fuwa



初期の名曲「3つのサラバンド」の、新記譜法「color5」による楽譜。

「color5」とはWebサイト「楽譜の風景」管理人、T.Fuwa氏出版の譜面に採用されている新記譜法であり、♯=赤、♭=青、ダブル♯=橙、ダブル♭=水色など一定の法則で音符を色分けしてあることを特徴とする。特に臨時記号の多い曲で威力を発揮し、譜読み間違いの防止や、(慣れは必要だが)スピーディーな譜読みへの寄与が期待できる。

画像はサラバンド3番の一部であるが、従来の譜面と比較していただければ一目瞭然、非常にすっきりと、簡潔明快にまとまっている。

5621398452

譜面上に臨時記号が無いことは、譜面の横幅を狭めることにも貢献しており、結果的に譜捲り回数の減少につながることも大きなポイント。(画像の部分でもcolor5で5小節の幅に対して、従来の楽譜では3小節も収まっていない。)

今回紹介のサラバンド1〜3番については、3曲とも各々A3用紙1枚に収められており、譜捲りの必要が全くない。また、DL販売で製本されていないことを逆に利用し、A3楽譜には横に五線が貫くスタイルを採用、さらに見やすくなっている。その上で、A3プリンタ所有者は多くないことや、iPad等の端末での使用も考慮し、A4版も用意されているのが嬉しい。

他に、大譜表におけるト音記号とヘ音記号の間のスペースが、実際の音符の高さの幅と一致していることや、従来は加線を用いて表現していた低音部をもう一段ヘ音記号の五線を用意するなど、「色」以外の要素でも工夫が見られる。とにかく「見やすい楽譜, 譜読みしやすい楽譜」を意図して作られていると言える。

また、底本とされたサラベール版では第1〜3番全てに臨時記号の記入漏れなどが散見されるが、明らかな間違いと判断できるものについては、手直しが加えられていることにも触れておきたい。


このような独自の規格には、反対者も一定の割合で発生するのが常であろう。そしてその批判内容がどのようなものかも大体察しはつく。しかし、ただ単純に「趣味でサティの曲を弾きたい!」という人の、ハードルを下げるためにも、このような一つの「選択肢」が用意されていることは非常に有意義と言えるのではなかろうか。

クラシックをより容易に楽しむための一つの手段として、「color5」は非常に優れた表現法であると言え、今後のさらなる発展を期待したい。

inubuyo at 22:46|PermalinkComments(0)TrackBack(0)楽譜 

March 24, 2012

磯田健一郎 / 近代・現代フランス音楽入門 サティのように聴いてみたい


120324

近代・現代フランス音楽入門―サティのように聴いてみたい

磯田健一郎


近現代のフランスの作曲家について軽い文体でわかりやすく解説。音楽之友より1991年第一刷発行。全235ページ。

サティ, ラヴェル, 六人組などは勿論、デュカス, ルセル, ケクランや、メシアン, ブーレーズまで幅広く取り上げられており、各作曲家のエピソード、代表曲・名曲、推薦CDがテンポ良くまとめられている。

サブタイトルに「サティのように聴いてみたい」とあるが、サティに関して特別に重きをおいた書籍ではなく、サティに関し割かれているページも12ページほど。しかし、サティについてよく知るためには同時代のフランスの作曲家についての知識も重要といえ、サティに関する文献(エリック・サティ覚え書, エリックサティ文集 等)でよく名前が挙がる音楽家が、どのような人物であったかを知っておいて損は無い。

例えば、ポール・デュカスやアルベール・ルセルは、サティが曲名に使用しているくらい関わりの深い人物であるが、彼らについてすらすらと答えられる人は、サティ・ファンでもごくわずかであろう。比較的有名な6人組についても、サティ関連書籍そのものではほとんど触れられていないことが多いため、各人の個性や特徴が平易に理解できるのはありがたい。

注意点は、間違いが多いこと。サティの誕生日が5月18日となっていたり(正しくは17日)、ジムノペティと表記されていたり(正しくはジムノペディ)。ひどいものでは、シレソの和音からドレミの和音への機能和声との表記があり、誤植以前の問題と言わざるを得ない。

あくまで、近現代のフランスの作曲家にはどのような人物がいて、どのように活躍していたかを表面的になぞる程度にとどめ置くべきであり、詳細に関する正確な情報を得たければ他の文献を利用すべきだろう。

"続きを読む" 以下に、とりあげられている作曲家を日本語表記で羅列する。

続きを読む

inubuyo at 18:41|PermalinkComments(0)TrackBack(0)書籍 

January 21, 2012

Jean-Joel Barbier / OUEVRES POUR PIANO


Satie: Worls for Pno (Complete)

Erik Satie OUEVRES POUR PIANO

Jean-Joel Barbier, Jean Wienerr



4枚組のピアノ曲集。1969, 1971年録音。全集と言えるが録音時期が早いため、当時未発見の曲など未収録曲はかなり多い(後述)。

ジャン=ジョエル バルビエはフランスのピアニスト。レコードの時代にはサティ研究の第一人者として知られ、「サティと言えばチッコリーニかバルビエ」という時代が続いた。

サティ録音の黎明期のピアニストであるため、昨今の録音でありがちな、わざとらしさやあざとさとは無縁の演奏。他者との差別化を過度に意識した演奏が散見される現代において、逆説的だが清新に聴こえる。所謂「教科書的演奏」が確立していたはずもなく、譜面上の情報と自身の美意識のみを頼りに築き上げた独自性は本質的で、近年の演奏に多い「作られた個性」とは一線を画す。

全体的に粘度の低いあか抜けた演奏。グノシエンヌ第1番,3番はハイテンポで倦怠感とは無縁。反対に第4番はかなりゆったり。官僚的なソナチネや風変わりな美女は節度が保たれたテンポである一方、薔薇十字会系統の曲は近年の録音では見られぬ速さ。ジュ・トゥ・ヴや金の粉は、伴奏2拍目を長く保つことが多いなど、小節内での揺れが大きい。干乾びた胎児は角がまるい。

2000年代以降に録音されたサティ全集には、グノシエンヌ第7番、ノクターン第6番、コ・クオの少年時代など、新たに発見された曲も収録されていることが多い。当盤には当然これらの曲は収録されていないが、さらにアレグロ、ワルツ・バレエ、幻想ワルツなども未収録なことに注意。また、トラック分けが大雑把なのは惜しい。21曲からなるスポーツと気晴らしまで1トラックにまとめるのはいかがなものか。ただ、全体の出来の良さを考慮すると瑣末な問題と言え、購入を控える要因にはなりえないであろう。

「自分はサティが大好き」と断言できる方には、是非耳を通していただきたいCDである。


inubuyo at 17:56|PermalinkComments(2)TrackBack(0)全集 | ピアニスト ハ〜ホ

October 17, 2011

サティ ピアノ作品集第2巻


サティ ピアノ作品集 第2巻 (zen-on piano library)

サティ ピアノ作品集 第2巻 (zen-on piano library)

校訂:高橋アキ, 解説:秋山邦晴



全音から2011年9月に発行された楽譜。全2巻で、第2巻は全109頁(含む解説23頁)。税抜1700円。

・ジュ・トゥ・ヴ
・エンパイア劇場の歌姫(サティ自身による編曲)
・エンパイア劇場の歌姫(山木正生編曲)
・金の粉
・ピカデリー
・犬のための本当にぶよぶよした前奏曲
・ひからびた胎児
・世紀ごとの時間と瞬間の時間
・最後から二番目の思想
・官僚的なソナチネ
・5つのノクターン
を収録。

当シリーズ「全音 サティ ピアノ作品集」の概要に関しては、第1巻についての記事(http://blog.livedoor.jp/inubuyo/archives/1548904.html)を参照願いたい。

第2巻はシャンソンのピアノ版や所謂「諧謔の時代」のユニークなタイトルの曲を中心にまとめられており、神秘主義的作品に重きを置いた第1巻とは好対照。当巻も第1巻に負けず劣らず選曲が秀逸で、上記特徴からは逸脱するにも関わらず「5つのノクターン」はしっかり収録されているなど、丁寧な吟味の跡が伺える。

ポイントは「エンパイア劇場の歌姫」。サティの楽譜で全音社と双璧を成すドレミ社の楽譜にも掲載されておらず、非常に貴重。過去に出版された全音のピアノ全集第4巻には収録されていたが、今となっては手に入れることは困難であり、ありがたい判断と言える。

原曲はト長調の歌曲だが、サティはこれをニ長調に編曲している。当巻にはサティ版の他に八木正生編曲版を掲載しているが、これはサティの手によるピアノ版が発見される前に八木氏に編曲を依頼したことによるとのこと。その後サティ版が見つかり、上述の全集第4巻の時点で双方が掲載されている。八木版はト長調のままで、中間部に原曲には無いテーマが付け加えられている。(余談だが、フランスの出版社サラベールからはハンス・ウルディンという人物による編曲版が出版されており、こちらもト長調。)

他の曲については、そこまで他社の楽譜との差別化は図られていないが、不自然な音が見当たらないのは当たり前のようでいてそれだけでかなりのプラス要素。特に、5つのノクターンはドレミ版では致命的なミスが散見されるため、この曲目当てで購入を考えるなら当楽譜を強くお奨めする。

また、巻頭にある曲目解説は「エリック・サティ覚え書」によるため極めて詳しく、巧みな選曲と相まって、入門用の楽譜として卓越している。

inubuyo at 22:03|PermalinkComments(0)TrackBack(0)楽譜 

October 11, 2011

サティ ピアノ作品集第1巻


サティ ピアノ作品集 第1巻 (zen-on piano library)

サティ ピアノ作品集 第1巻 (zen-on piano library)

校訂:高橋アキ, 解説:秋山邦晴



全音から2011年9月に発行された楽譜。全2巻で、第1巻は全102頁(含む解説21頁)。税抜1600円。

・ワルツ・バレエ
・3つのサラバンド
・6つのグノシエンヌ
・バラ十字団の最初の思想
・星たちの息子への3つの前奏曲
・天国の英雄的な門への前奏曲
・ヴェクサシオン
・冷たい小品集
を収録。

全音から出版されたサティの楽譜と言えば、1980年代に発行された全13巻の「エリック・サティ ピアノ全集」が著名。本書はその中から、校訂者の判断で抜粋が行われ、再検証・訂正・校訂された上で出版された。1巻には初期の代表曲たちが収録されている。

当然、全集と比べて曲数は大幅に絞られているが、人気や曲調を塾考しつくした上での取捨選択が絶妙。全体としてのバランスも非常に良い。サティについて興味を持ち始めた方が必ず気になるであろうヴェクサシオンもしっかり収録しているなど、抜かりがない。

また、「全集」の時点でドレミ社の楽譜より間違い(一般的なCD等と違う音)が少ないようであったが、さらに校訂し直されたとのことで、安心感もある。「全集」でそうであったように、曲中の書き込みは全てフランス語と日本語訳が併記してあるのもポイント。ドレミ社の全集と比べて全体的に大きい印刷で、見やすいが譜捲り回数は多くなるのは好みが分かれるところか。

故秋山邦晴氏(エリック・サティ覚え書著者)によるサティや収録曲に関する解説の他、校訂者高橋アキによる演奏アドバイスがなかなか面白い。

「ジムノペディの他にもサティの曲を何曲か弾いてみたいな、知りたいな」という方には、価格も考慮すると現在出版されている楽譜ではベストな選択か?ただし、有名曲「ジュ・トゥ・ヴ」は第2巻の方に収録されていることに注意。


inubuyo at 22:10|PermalinkComments(0)TrackBack(0)楽譜 

August 18, 2011

Steffen Schleiermacher / ERIK SATIE PIANO MUSIC 4


Vexations/Carnet D'esquisses Et De Croquis/&

ERIK SATIE PIANO MUSIC 4

Steffen Schleiermacher



ヴェクサシオン(部分), スケッチとクロッキーの手帖, 1906-1913年の6つの小品, 秘めやかな音楽, メデューサの罠を収録。輸入盤。

ステファン・シュライエルマッハーは現代音楽の作曲家で、ピアニストとしてはケージの全集の録音で名高い。サティも全集を録音しており、当CDはその4枚目(セットでは販売されていない)。

全体的に淡々とした演奏だが、音は豊かに響かせている。このような組み合わせはサティでは珍しいが、存外相性が良く魅惑的。若き日のサティは教会に頻繁に通い、そこで得たインスピレーションを作曲に取り入れたそうだが、教会のオルガンのように「淡々且つ響きの豊か」な演奏は初期楽曲と波長が合うのだ。

曲ごとのダイナミックレンジの差異はかなり大きい一方、同曲内では意外なほど小さいのも特徴。

スケッチとクロッキーの手帖は隠れた名曲。ノートへのメモをまとめたもので録音もそう多くはないが、サティらしさが凝縮されており、サティ・ファンであれば是非聴いておきたい。詳しくは楽譜についての過去記事をご覧願いたい。http://blog.livedoor.jp/inubuyo/archives/1318384.html

ヴェクサシオン(部分)は5つのトラックに分けて収録。非常に小さな音量から、ゆっくり時間をかけてクレッシェンドしていき、一定の音量に達したらしばらくキープ、トラック終わりが近くなるとデクレッシェンドして消えゆく。トラックにより収録回数が異なるため、音量の上下のスピードにも隔たりがある。サティの手によりこのような指示は(当然)なされておらず、もはや"シュライエルマッハー編曲"とでも銘打っても差し支えないだろう。この曲の魅力は同じフレーズが変化なく延々と続くことから生まれると言え、編曲により失われた本来の情趣は甚だしい。また、トラック1から当曲が収録されており、上述のように非常に小さな音で始まるため、直後に音量を調整すると後々痛い目を見る。

ヴェクサシオンはいただけないが、前述のとおり、豊饒な響きで、且つ「ため」や「引っ張り」の少ない淡泊な演奏は魅力。いつもと違ったサティが聴きたくなったらどうぞ。

inubuyo at 21:26|PermalinkComments(0)TrackBack(0)ピアニスト サ〜ソ 

July 12, 2011

西脇 睦宏 / Angelic Orgel Eric Satie Best Collection


110613

(商品リンク無し)

Angelic Orgel Eric Satie Best Collection

西脇 睦宏 (オルゴール編曲)



サティの曲をオルゴールアレンジ。ジムノペディ第1番, ジュ・トゥ・ヴ, 金の粉, ピカデリー, シャンソン(別の3つの歌曲), 彼の鼻眼鏡, 逃げ出したくなる歌2, グノシエンヌ第1番, エレジー(3つの歌曲), エンパイア劇場の歌姫を収録。

オルゴールアレンジと聞いて誰もがすぐにイメージするような正統派。楽器の特徴、選曲、編曲…その全てから、甘く夢見るような音楽が生み出される。そこには不安や焦燥、緊張などは微塵も存在しえず、ただ幼い子供が母に抱かれて眠るような安らぎだけが、吐息のように自然に紡がれる。(ただし、グノシエンヌ第1番は除く。)

グノシエンヌ第1番は、原曲以上に不安、そして冷たく暖かい。曲が元々持つノスタルジアが強調され、遥か昔への懐古的郷愁を呼び起される。過去と現在との空間的一体感。

オルゴールという楽器の特性上、音数は減らされているが、逆に原曲に無い音が挿入されている部分も。ジュ・トゥ・ヴやグノシエンヌ第1番で顕著。また、曲によっては移調も。これらは上記のような演奏を作り上げるのに一役買っており、マイナス要素ではない。

サティ自身が大衆向けを意図して作ったシャンソンなどが多く、「らしさ」が前面に出ている曲が少ないのはファンには少々物足りないかもしれない。

また、ライナーノーツは無く、「シャンソン」「エレジー」については曲名もこれしか書いてないため、サティにかなり精通していないと、何のことやら、である。そもそも歌曲自体がかなりマイナーであると言えるため、大元の曲集のタイトル(別の3つの歌, 3つの歌)くらいは記載する配慮がほしかった。

さらに、演奏時間が30分と短いのも惜しい。

しかし、このようなマイナス面を考慮しても「丸々1枚サティのオルゴールアレンジ」のCDが発売されていることは単純にありがたい。

なお、サティのオルゴールアレンジは他に生駒祐子によるものがあるが、こちらはオルゴール以外の要素の主張が強く(過去記事参照http://blog.livedoor.jp/inubuyo/archives/496782.html)、異色と言える。オーソドックスなオルゴール編曲を所望であれば、本記事のCDがお奨め。


inubuyo at 21:53|PermalinkComments(0)TrackBack(0)編曲モノ 

July 06, 2011

Angela Brownridge / SATIE;FAMOUS PIANO PIECES

110706satie

3つのジムノペディ(サティ/ピアノ名曲集)

Angela Brownridge



3つのジムノペディ, 3つのグノシエンヌ, ジュ・トゥ・ヴ, 嫌らしい気取り屋の3つの高雅なワルツ等を収録。スポーツと気晴らしは全21曲から9曲を抜粋。

程よく優雅で程よく無骨。「どっちつかず」ではなく、あくまで両者の長所を兼ね備えるのがポイント。

ナマコの胎児はメロディの音を間違えている部分あり。「歯の痛いウグイスのように」弾く指示がある直後の箇所であり、謂わばこの曲の肝ともなりうる部分のために非常に惜しい。

柄眼類の胎児はここまで緩急の激しい演奏は珍しい。元々、クラシック音楽の結尾部における過剰な演出を皮肉った曲であり、これでもかと言うくらい執拗なコーダを持つが、さらに派手に強調するような演奏。そのような録音は意外と少ないが、作曲者の意図を考えるとなかなか面白い。

グノシエンヌ第2番はフレーズ最初の音を装飾音的に演奏しており、多少前のめり気味。

トラック分けが細かくない(ひからびた胎児は3曲で1トラック等)のは使いにくい要素。日本語ライナーノーツ付属で簡単な曲紹介が読めるのは嬉しい。

「FAMOUS」 PIANO PIECESと銘打っているだけはあり、神秘主義的な作品は1曲も収録されていないため、ある意味わかりやすいCDと言える。


inubuyo at 21:01|PermalinkComments(2)TrackBack(0)ピアニスト ハ〜ホ 

June 09, 2011

SOCRATE Drame Symphonique


SOCRATE


(商品リンク無し)

SOCRATE Drame Symphonique



ソクラテスの楽譜。SERENISSIMA MUSICから出版(輸入版)。

交響的ドラマ ソクラテスはサティ自身の手によりピアノ版とオーケストラ版が作られた。当楽譜はそのピアノ版。アルキビアデス, ソクラテス, ファエドルス, パイドンの4人の男性の役を全て女声が担当する。ソクラテスの肖像, イリソスの岸辺, ソクラテスの死の3部からなり、計30分程度。

「ソクラテスの肖像」はアルキビアデスの語りに対し、ソクラテスが一言応える。「イリソスの岸辺」はソクラテスとファエドルスの対話、「ソクラテスの死」はパイドンの語りとなっている。曲中の歌詞は原作通りすべて仏語で書かれているが、巻末に英訳がまとめて掲載されており、資料として貴重。

大方のサティの曲同様、表現云々を抜きにして指の開きや移動についてのみを考慮した演奏難易度は高くは無い。ただ、根本的な問題が他にある。この曲を「誰とどこで演奏するか」である。必要とする楽器はピアノのみだが、フランス語の女声4名が必要。(ただし、2名以上が同時に発声する部分はないため、声色を変えるなりすれば、それ未満の人数でも可能か?) 30分以上と長い曲であることも敷居を上げており、この曲の人気の無さと相まって、実演にこぎつけるのは困難であろう。

日本でこの楽譜が購入され、実際に演奏された回数はどの程度であろうか。そんなことに思いを馳せつつ、譜面を眺めながらCDを聴く。そのためだけに購入するのも悪くはないのかもしれない。


inubuyo at 19:13|PermalinkComments(0)TrackBack(0)楽譜 

May 29, 2011

Gabriella Morelli, Giancarlo Simonacci / JOHN CAGE PIANO MUSIC


Musique Pour Piano

JOHN CAGE PIANO MUSIC

Gabriella Morelli, Giancarlo Simonacci



タイトルの通り、現代作曲家ケージのピアノ曲集。3枚組で、2枚目に「ソクラテス」をケージが2台ピアノ用に編曲したものを収録。

交響的ドラマ「ソクラテス」はプラトンの「対話篇」から歌詞を引用してメロディを付けたサティ晩年の作品。伴奏はオーケストラ版及びピアノ版が存在する。当CDの2台ピアノ版は、ケージがメロディ(歌)をピアノ編曲し、伴奏と2台のピアノに割り当てたもの。3部からなり、計30分程度。

哲学者、ソクラテスの名が冠されているだけあり、非常に内省的な曲。盛り上がる要素も無ければ、しみじみとした旋律にうっとりする要素も無い。不規則なリズムに、脈絡が希薄な音が淡々と連ねられていく。人の声が使われていない分、原曲よりも大幅に無機的な様相。そして、正にこれこそが編者がこの編曲で目指した世界観であろう。

それは同じく2枚目に収録されている、ケージ作曲の「Cheap Imitation」から聴いてとれる。

Cheap Imitation(チープ・イミテーション)は、ソクラテスの旋律線と伴奏部分の線のリズム、各フレーズの開始部の音程関係をそのまま保存しながら易を使って音を並べるという偶然性の方法により作曲された曲。当然、各音同士の関連性はますます希薄となり、さらに鉱物的となっている。無機質な中に稀に仄かに感じられる寂しさ。却ってそこに一縷の希望が見えてくるような不思議な曲。

サティの曲の中でも聴き手を選ぶ曲であることは間違いないが、例えば家具の音楽やヴェクサシオンを延々と流しておくことに魅力を見出すことができるような方には一聴をおすすめしたい。



本記事を書くにあたり、青土社「エリック・サティ覚え書」http://blog.livedoor.jp/inubuyo/archives/621443.htmlを参考にした。


inubuyo at 22:25|PermalinkComments(0)TrackBack(0)ピアニスト マ〜モ | 編曲モノ

February 19, 2011

ERIK SATIE L'ENFANCE DE KO-QUO

110216a


(商品リンク無し)

ERIK SATIE L'ENFANCE DE KO-QUO



「コ・クオの少年時代」の楽譜。Petersから出版(輸入版)。オルネラ・ヴォルタ氏校訂。

コ・クオの少年時代は「ココアを指につけてなめちゃだめよ」「耳元でこそこそ話してはだめよ」「頭の上に手をよしなさい」の3曲からなるピアノ曲。タイトルから想像できるように、子供のための曲集のひとつである。

最大の特徴は、2000年代になって初めて出版された楽譜であること。それまでは未発見の曲で、録音も2000年代以降に限られる。全集以外で取り上げられることは珍しく、一部のファン以外からは知名度は非常に低い。

作曲された年は1913年で「子供らしさ」「新3つの子供らしさ」と同年。サティの子供のための曲には、「一つの指が担当するのは特定の一つの音のみに限定される」タイプの曲が存在するが、当曲集には当てはまらない。それでもサティの曲の中でも難易度は低く、子供好きのサティらしい可愛らしく優しい曲である。

サティではよくあることだが、譜面には演奏指示の代わりに詩的な文書き込みがされている。この書き込みの全訳を当ブログ姉妹サイト「うぬぼれ少女百貨店」に記載したので、ご興味がある方はどうぞ。恐らく日本語訳は(少なくともWEB上では)世界初公開である。

録音はアリアーノの全集(http://blog.livedoor.jp/inubuyo/archives/85255.html)当たりが比較的手に入りやすい。ティボーデの方(http://blog.livedoor.jp/inubuyo/archives/419686.html)は日本語版は廃盤で値段が高騰しているようである。

inubuyo at 18:48|PermalinkComments(0)TrackBack(0)楽譜 

February 17, 2011

Peter Lawson / サティ 名ピアノ曲集


サティ:3つのジムノペディ(名

サティ 名ピアノ曲集

Peter Lawson



3つのジムノペディ, でぶっちょ木製人形へのスケッチとからかい, あらゆる意味ででっちあげられた数章, パッサカリアなどを収録。1979年録音。東芝EMI RED LINEレーベル。

全体的にテンポは速め。はきはきとした演奏からはチッコリーニのそれが髣髴されるが、数段鮮やかで煌びやか。音質も硬い。それを長所ととらえられるかどうかは、勿論好みにもよるが微妙なところであろう。

官僚的なソナチネ, メデューサの罠などは特に顕著。これらの曲を聴くだけでそのCD全体の傾向がわかってしまうことが多いが、当CDも例外ではない。グノシエンヌ(2番と4番のみ収録)のような曲でさえ、きびきびと、まるで何かから逃げるかのように演奏されている。

自信無さ気に弾くべき、と主張する気は毛頭ないが、どの曲も「この曲はこう弾くべきでしょ?」と言う押し付けがましさが多分に嗅ぎ取られ、さりげなさの美というものに欠けるように感じられる。

四つ折り1枚のライナーが付属。簡単ではあるが日本語で各曲の紹介を読めるのがうれしい。メデューサの罠の第7曲に「ヤンキードゥードゥル(邦題:アルプス一万尺)」が示唆されているとの指摘にははっとさせられた。


inubuyo at 21:13|PermalinkComments(0)TrackBack(0)ピアニスト ヤ〜ン 

January 11, 2011

エリック・サティ ピアノ全集第3巻

110111

エリックサティ ピアノ全集(3)

校訂:高橋アキ, 監修・解説・訳詩:秋山邦晴



全音から出版されていた楽譜。絶版。連弾を含め全13巻。

第3巻には、4つの前奏曲, 天国の英雄的な門への前奏曲, 貧者のミサ, 冷たい小品集, 舞踏への小序曲を収録。



当シリーズ共通の特長として、

1.秋山邦晴による詳しい解説
(「エリック・サティ覚え書」著者。http://blog.livedoor.jp/inubuyo/archives/621443.html

2.曲中指示に日本語訳併記
(ドレミ版も訳は記載されているが、全て巻末にまとめられている。)

3.高橋アキによる校訂
(ドレミ版は一般的録音とは異なった音が散見。)

などが挙げられる



逆に短所は

1.絶版で入手がかなり困難。
(古本屋でも定価以上。Amazonでは10000円以上となっている巻も。)

2.ドレミ版より高価。
(定価で入手できたとしてもかなり開きがある。)

など。



サティ全集ではドレミ版と双璧をなす全音版であるが、上記のように一長一短。どちらか一方にしか掲載されていない曲も存在し、悩ましい。(当ブログ本店「うぬぼれ少女百貨店」にて、曲の重複を考慮した楽譜収集法をまとめている。http://unubore.michikusa.jp/musicsheet0.html

なお、当3巻に掲載されている曲は全てドレミ版の1巻にも掲載されており、収集欲以外から購入意欲が刺激される要素は少ないと言える。



inubuyo at 21:42|PermalinkComments(2)TrackBack(0)楽譜 

January 06, 2011

スィート・ボイス / ジャズ・キャラバン


ジャズ・キャラバン

ジャズ・キャラバン

スィート・ボイス



女声ジャズボーカルカルテット「スィート・ボイス」のサード・アルバム。全14曲中、サティ関連の曲としてはジムノペディの編曲モノ2曲を収録。

「ジムノペディ」のタイトルで収録されているのは、ジムノペディ第1番の一部をボーカライズしたもの。メロディは「ルルルルル、ルルルル〜♪」と、まるでシャワー中などについ口ずさんだ歌声をそのまま録音したかのようで、自由気儘。伴奏も全て人の声が担当しており、本来の楽譜のバスパートは「ン、ン、ン、ン」とハミングとなっているため、これまた解放的。収録時間が非常に短い(44秒)のが惜しい。

「ジムノペディ〜輝く花」は、ジムノペディ第1番に歌詞を付けて歌唱したもの。「黄桜」のCM曲であるため、聞き覚えのある方も多いのでは。(もっとも、CM使用部分はごく短い。)

歌詞は日本語で、これでもかというくらいリラクゼーションを意識したものとなっており、催眠術に近しいものを感じるほど。原曲にないメロディーが途中挿入される部分も。チェロの伴奏及びソロが重厚。

当然ではあるが、サティを楽しみたい、と考えて購入するCDではない。それでも「元々環境音楽の祖とも言われているジムノペディに、敢えて現代風の味付けをほどこすとどうなるか」に興味があったり、「黄桜」CMが気に入ってフルで聴きたい、という場合は買いか。

inubuyo at 22:07|PermalinkComments(0)TrackBack(0)編曲モノ 

December 19, 2010

Ronan O'Hora / ロイヤル・フィル・ハーモニックコレクション サティ

101211




ロイヤル・フィル・ハーモニックコレクション サティ

Ronan O'Hora

(商品リンクなし)



ジムノペディ、グノシエンヌ、ジュ・トゥ・ヴ、ノクターンなどを収録。1997年録音。

税込315円と廉価であるのが最大の特徴。且つ本屋、楽器屋、ホームセンターなどのワゴンで入手可であることから、最も敷居の低いサティのCDであると言える。(100円ショップのCDはサティのみ収録したものは未確認。)

選曲はジムノペディ全曲、グノシエンヌ第1~6番、ジュ・トゥ・ヴといった有名曲を網羅している他、ノクターン第1~5番、干からびた胎児、最後から2番目の思想なども収録されており、初めてサティに触れる人に嬉しい。非常に簡単ではあるが、各曲紹介が日本語で記載されているのも好印象。

演奏は無表情にならぬようコントロールされており、曲によっては多少甘美で夢想的。しかし個性的な味付けは皆無なため、サティは無機質に演奏してこそ、という方にも十分受け入れられるのでは。

コスト、演奏、 録音、日本語の曲名表記、トラック分けの細かさ、すべてが極めて優良。購入を躊躇する要素は何もない。



*当記事は2009年2月11年にアップロードした同CDについての記事を書き直したものである。

inubuyo at 13:05|PermalinkComments(0)TrackBack(0)ピアニスト ア〜オ 

December 08, 2010

Jean-Pierre Armengaud, Dominique Merlet / ERIK SATIE Inte[']grale des oeuvres pour piano


Eric Satie Integrale des oeuvres pour piano - Jean-Pierre Armengaud
Eric Satie Integrale des oeuvres pour piano

Jean-Pierre Armengaud, Dominique Merlet



2009年発売の全集。5枚組。輸入盤。録音時期不明。

連弾も含むピアノ曲全集。最近になって録音されるようになってきた曲(グノシエンヌ第7番, ノクターン第6番, アンゴラの牡牛等)は収録しない。

テンポの速い演奏が多く、ジムノペディ第1番をなんと2分43秒で完奏。ハイテンポで有名なチッコリーニでさえ3分かけて演奏しており、他のピアニストの追随を許さない速さ。ジムノペディを聴きこんでいる人ほど違和感を感じるだろうが、この曲に対する凝り固まったイメージを一度粉砕し、先入観を打破するための良薬になる。

一方でシネマのような躍動的な曲が音量とテンポ控えめで禁欲的に演奏されており、印象深い。

各CDは作曲された年代により明確に分けられており、各時代ごとの曲調の変遷をつかむことができる(ただし5枚目だけは「晩年の作品+習作やその他の作品」となっている)。

5枚目には付録としてサティの詩的文章をまとめたpdfファイルが同封されている。

また、5枚目に"その他の作品"として収録している「小さなソナタ」は、録音が大変レア。 一聴の価値あり。

…と言いたいところであるが、この記事を執筆中の現在、Amazonではなんと11375円の価格設定。セット販売の全集としては他に類を見ないほど高価であり、よほど他の全集を聴きこんで飽きたという方以外にはおすすめできない。(筆者はどこでいくらで購入したか失念。)


inubuyo at 22:10|PermalinkComments(0)TrackBack(0)ピアニスト ア〜オ | 全集

November 23, 2010

CARNET D'ESQUISSES ET DE CROQUIS (スケッチとクロッキーの手帖)


スケッチとクロッキーの手帖

CARNET D'ESQUISSES ET DE CROQUIS
(スケッチとクロッキーの手帖)

(商品リンクなし)



salabert社から出版されている楽譜。「エスキースとクロッキーの手帖」とも訳される。

1897年から1914年にかけてサティがノートにメモしていた小品を、弟子のキャビーがまとめて出版したもの。タイトルもサティ自身によるものでないことに注意。

日本の出版社からは出版されていない珍しい曲集で、録音も全集以外では極めて稀。20曲からなるが、17年に渡る作曲期間のため曲調は様々。和音を並べる形の神秘主義的作品から、大衆受けしそうな雰囲気の作品まで幅広く、寄せ集めであるため当然全体の構成美やまとまりはない。しかし、各曲を取り出して個々に着目すると、全てがサティらしさに溢れる珠玉の作品たちであり、無名であるのがもどかしい。

録音は、低価格でかつ入手しやすいナクソス版がお奨めできる(過去記事参照http://blog.livedoor.jp/inubuyo/archives/1092208.html)。

なお、ドレミのサティ ピアノ全集第1巻にこの曲が掲載されている、という情報をネット上でけっこうな頻度で見かけるが、間違いなので注意してほしい。当該楽譜の目次に「スケッチとクロッキーの手帖(未掲載)」と記載があるが、恐らく(未掲載)を見逃してタイプしたことによるのだろう。



最後に、各曲の日本語訳を付録しておく。ご興味がお有りの方は「続きを読む」よりどうぞ。

続きを読む

inubuyo at 13:20|PermalinkComments(0)TrackBack(0)楽譜 

Gerhard Erber / エリック・サティ 作品集




エリック・サティ ピアノ曲集

Gerhard Erber



官僚的なソナチネ, 5つのノクターン, ジムノペディ第3番, グノシエンヌ第2番や、所謂「諧謔の時代」の作品(≒奇抜なタイトルの曲)を多数収録。1985年録音。

テンポ速めの演奏が多く、全体的にあっさり。ルバートの掛け方は、アマチュア演奏家が採用しがちなスタイルに近しい印象を受けるが、要するに耳馴染みが良いということでありマイナスポイントではない。

最後から二番目の思想は、曲中の書き込みが演奏中フランス語で読み上げられるので、純粋にこの曲を音楽として楽しみたい方は注意が必要。パンタグリュエルの幼年時代の夢想(ソロVer.)は全集以外で収録されているのは珍しい。

トラック分けは細かいが、なぜかノクターンだけは5曲で1トラックとなっている。

ジムノペディ第1番やジュ・トゥ・ヴは未収録と、やや挑戦的な選曲ではあるが、一般に取っ付き難いとされる神秘主義の曲も未収録のため、入門にも向く。音質良好。曲目解説付きの日本語ライナーノーツも嬉しい。価格も1,000円とお手軽であるが、発売されたのが10年以上前ということで入手困難なのが残念。




inubuyo at 12:15|PermalinkComments(0)TrackBack(0)ピアニスト ア〜オ 

October 17, 2010

Ornella Volta / エリック・サティ文集


エリック・サティ文集

エリック・サティ文集

Ornella Volta 編, 岩崎力 訳



サティ自身の文章をまとめた書籍。全490頁。7800円。

サティが書いた手紙、批評は勿論、落書きに類するものまで広く収録。音楽・芸術やそれに関する人物に対する私見、批判が盛り沢山。詩的文章やショート・ショートに類するもの、冗談に近い文章も大量に記載。"すべて目を通すことができれば"、サティという人物の実像に深く迫ることができる。

また、計121ページにわたり、サティの手による落書きがページ左上に記載されているのも大きなポイント。サティの視覚的理解には「エリック・サティ展」(当ブログ過去記事参照http://blog.livedoor.jp/inubuyo/archives/966622.html)という優れた書籍が存在するが、当書籍に記載の落書きの多くは「エリック・サティ展」にも未記載なものであり、隠れた魅力の一つとなっている。自画像(自画イラストと言うべきか?)も複数収録されているなど、一見の価値あり。

後半140ページほどは、著者による分析、解説、補足。こちらも高密度かつ大容量。関連人物の動向や当時の社会情勢なども捕捉されており、サティがその文章を書くにいたった根拠や経緯をつかむことができる。巻末には人物名による索引も付属している他、文章の引用元や、その引用文献とそれを所蔵する図書館(パリがほとんど)の情報も記載されているなど、研究資料的な価値は非常に高い。

上記のように、一見、サティについての知識・理解を増やすのに恰好な書籍のように見える。しかし、実際は膨大な情報量に圧倒され、斜め読みでポイントをつかむような読み方はなかなか困難。価格も7800円と、サティ関連書籍の中でも群を抜いて高価。

「エリック・サティ覚え書」(http://blog.livedoor.jp/inubuyo/archives/621443.html)や「エリック・サティ」(http://blog.livedoor.jp/inubuyo/archives/736381.html)、「卵のように軽やかに」(http://blog.livedoor.jp/inubuyo/archives/580740.html)などを読破した上で購入しても決して遅くはない。


inubuyo at 19:33|PermalinkComments(2)TrackBack(0)書籍 

August 06, 2010

Katia and Marille Labe[`]que / ERIK SATIE


Satie - Piano Works
ERIK SATIE

Katia and Marille Labe[`]que



ラベック姉妹によるピアノ連弾およびソロ。2009年6月録音。輸入版。紙ジャケット。ジムノペディ, グノシエンヌ, スポーツと気晴らし, 梨の形をした3つの小品, 組み立てられた3つの小品などを収録。

連弾といえば彼女たちの十八番であり、当CDも期待を裏切らない完成度と言える。特に掛け合いの面白さに重きがおかれている「組み立てられた3つの小品」では、抜群のコンビネーションに、元々のキレの良い奏法がジャストミート。開放感あふれる突き抜けた演奏が爽快。

ソロは姉カティアと妹マリエルで分担している。全体的に、都会的であか抜けした演奏が多いのが特長だが、鋭利過ぎてもう少々野暮ったいくらいでも良いのでは、と感じる部分も。奏者のうなり声(?)が拾われていたり、鳥の鳴き声を重ねて録音していたり(スポーツと気晴らしより「魚釣り」)と、演奏以外の要素で個性的。

上記の他に、組曲中から一曲のみ選んで収録している曲も数曲あり。これらの特徴やコストを考慮すると、入門用にはやや不向きか。いろんなサティが聴きたくなってきたらどうぞ。

現代のサティ研究の第一人者、オルネラ・ヴォルタ氏による解説付き(英語及びフランス語)で嬉しい。


inubuyo at 21:55|PermalinkComments(0)TrackBack(0)ピアニスト ヤ〜ン 

May 29, 2010

ジムノペディ 第一番連弾ピース (酒井忠政編曲)

100528


ジムノペディ 第一番連弾ピース (酒井忠政編曲)
(商品リンク無し)



全音から出版されている連弾ピアノピース。No.53が割り当てられている。600円。セコンドがB(初級上)、プリモがA(初級)との難易度表記有り。

ただでさえ音数の少ないジムノペディを連弾に…と聞いて、イメージが湧く方はそうはいないだろう。実はドビュッシーによる管弦楽版ジムノペディがそうしたように、伴奏部分の和音をアルペジオに分解して挿入し、そのアルペジオをプリモとセコンドで交代で担当することにより、連弾「らしさ」を造りだしている。

アルペジオの入れ方はドビュッシー版とは異なるが、雰囲気は概ね似たように作られている。だが、以前の記事でも書かせていただいたが(http://blog.livedoor.jp/inubuyo/archives/887131.html)、ピアノの場合、伴奏のアルペジオ化はサティ独特の持ち味を大きく失わせる一方で、得られるものは少ないように感じられてならない。

一人で弾けるような箇所も敢えて二人に振り分けているが、それに関して批判するのはお門違いである。サティオリジナルの連弾曲「風変わりな美女」や「梨の形をした3つの小品」などでもそのような場面に度々出くわす。そして、中には一人で弾いてしまったほうが楽な箇所も相当存在する。それでも敢えて振り分けているのは、恐らくは、単純に二人で弾いたほうが楽しいからであろう。

当楽譜も、演奏効果を上げるためと言うよりは、恐らくはサティをより「楽しく」弾けるよう、連弾編曲を試みたのではなかろうか。全音社に敬意を表したい。

inubuyo at 21:52|PermalinkComments(0)TrackBack(0)楽譜 

May 01, 2010

Reinbert de leeuw / 3つのジムノペディ サティ・ピアノ・ベスト


デレーウ旧録音




3つのジムノペディ / サティ・ピアノ・ベスト

Reinbert de leeuw

(商品リンクなし)



ジムノペディ、サラバンド、グノシエンヌ、舞踏のための小序曲、祈り、ヴェクサシオン(部分)を収録。ヴェクサシオンは1982年、他は1977年に録音。

極端にローテンポの演奏が多く、それがこのCDの魅力と言える。

例えば、一般的に3〜4分かけて演奏されることの多いジムノペディ第1番が約6分かけて演奏されており、明らかに異彩を放っている。譜面の冒頭に「Lent et douloureux(douloureuxは”痛々しく”の意)」とあるが、当録音ではM.M.=40(筆者の実測)で演奏されている。

サティの意図した解釈との差異を論ずるには、当時のLentがどの程度のテンポを想定していたか等を正しく認識する必要があり、慎重さを要する。

が、作曲者が正とする演奏との乖離については着眼(着耳?)せず、敢えて予備知識や背景、薀蓄抜きにして、純粋に音そのものを愉しんでみては。デ・レーウの演奏にはそれだけの価値がある。テンポが遅く、一音一音が頭の中へはっきりと響いてくる。通常の演奏と比べ一拍目のバス音に意識が向かい易く、機能和声への依存を避けた不安定な曲に、不思議な安定感がもたらされて面白い。ここまでテンポの遅い音楽は、普段なかなか耳にすることがないため、違和感やもどかしさを感じるが、そのような非日常的、異空間的な感覚そのものに沈潜すること自体がこのCDの愉しみ方であると言えよう。



なお、デ・レーウは1992年にもサティを録音している。
(→過去記事参照http://blog.livedoor.jp/inubuyo/archives/79520.html)こちらもジムノペディ、グノシエンヌ、サラバンドが収録されているが、全般的に当盤と比較し早めのテンポ。ジムノペディ第1番は、なんと1分以上も短縮されている。当盤のテンポでは遅すぎと判断した上での修正か?

しかし、個人的には1992録音より当盤をよりお勧めしたい。が、Amazonでも購入不可で、入手困難。別CDへの同録音の収録について現在調査中。

inubuyo at 22:36|PermalinkComments(0)TrackBack(0)ピアニスト ヤ〜ン 

March 24, 2010

Margaret Leng Tan / アート・オブ・トイ・ピアノ


アート・オブ・トイ・ピアノ

アート・オブ・トイ・ピアノ

Margaret Leng Tan



トイピアノをメインの楽器として用いた曲集。全12トラック中サティ関連の曲は「サティ・ブルース」と「ジムノペディ第3番」の2曲。

トイピアノはその名の通りおもちゃのピアノで、「プラスチック製のハンマーでスチールの細いプレートを打ってるだけ(ライナーより)」のシンプルな構造。本来、子供のおもちゃを想定して作られているが、ジョン・ケージが専用の楽曲を作曲するなど、その可能性が試されている。突き放すような冷たい音色である一方で、子供らしさが感じられる、なんとも不思議な楽器。

「サティ・ブルース」はグノシエンヌ第3番をモチーフとした6分強の曲で、トビー・トワイニング作曲。メロディにトイピアノ、伴奏に通常のピアノを使用。グノシエンヌの「ララ♯レ♯レ♯ファ♯ファー」というフレーズのパロディと思われるフレーズから始まり、東洋的な音階が多用されるメロディが続く。導入からは冷たく覚めた曲かと予想されるが、それも束の間、トレモロが激しく執拗に繰り返され、いい意味で予想は裏切られる。かと言って決して情熱的な曲ではなく、あくまでも冷笑的な脈動を最後まで貫く。

ジムノペディ第3番は恐らくサティの楽譜そのままの右手担当部(メロディ)をトイピアノに置き換えたもの。ライナーに「(トイピアノは「サティなど、ちょっとハマり過ぎな気もするほどだ」と記されている通り、凄まじい親和性。元々のノスタルジックな曲調に、トイピアノのニヒリスティックな音色が見事に調和。子供の…それもかなり小さい頃を思い出させられるような切なさ。リピートして何度も聴いている内に、今現在の自分は小さい頃の自分が見ている白昼夢にすぎないような、そんな超現実的な感覚に吸い込まれそうになる。

サティの楽曲は意外に多く編曲されているが、これほどまでにしっくりくるものは珍しいのではなかろうか。(もっとも、編曲と言っても楽器の変更だけのため、原曲が際立っていることに起因するかもしれないが。)

明るさや柔らかさも感じられる第1番ではなく、第3番を選んだこともポイントであろう。

ちなみに、商品リンク先は1997年発売のもので、中古で値段が上がっているため購入はお勧めしない。2005年に再発売されており、こちらは新品を定価(1000円!)で手に入れられるはずなので、興味がお有りの方は他から探してほしい。(Amazonでは取り扱っていない模様。)



なお、「サティに関係するものだけを紹介する」という当ブログのポリシーより、他に収録されている10曲の紹介は避けさせていただく。ご理解いただきたい。


inubuyo at 22:53|PermalinkComments(0)TrackBack(0)編曲モノ | ピアニスト タ〜ト

March 17, 2010

Kla[´]ra Ko[¨]rmendi / SATIE Piano Works vol.3


サティ:ピアノ音楽全集 第3集

SATIE Piano Works Vol.3

Kla[´]ra Ko[¨]rmendi



NAXOSレーベル。1993年録音。ワルツ=バレエ, 舞踏への小序曲, ジュ・トゥ・ヴ, スポーツと気晴らし, 4つのプレリュード等を収録。

ケルメンディによるサティ曲集は全4集録音されており、事実上、全集のバラ売りといった形となっている。(セットでは販売されていない。)

当巻は作曲された時代や曲調によるまとまりは無い。

テンポは速めの演奏が多く、他の巻と比較し全体的にクールで軽妙。ジュ・トゥ・ヴにおいても甘さは全く感じられない。(短所ではない。)

当巻最大の特徴は、「スケッチとクロッキーの手帖」を収録していること。他に収録されているCDはそう多くなく、貴重。サティにしては珍しい半音階の使い方をした曲も含まれる。スポーツと気晴らしと違い寄せ集めであるため全体のバランスが考慮された内容ではないが、20曲の小品が、小粒ながら次から次へと瑞々しく輝く。サティファンでこの曲集を未聴の方には是非お奨めしたい。ケルメンディのピアノは常に客観性が保たれ、聴き手が疲れを感じることがない。ちなみに当曲の楽譜は日本の出版社からは出版されていない。



inubuyo at 23:41|PermalinkComments(0)TrackBack(0)ピアニスト カ〜コ